「公道・国道は誰が使ってもどれだけ使っても無料である」
このような考え方は、日本の一般道路においてほぼ共通の認識である。
一方、しっかりと料金を取る高速道路。これは国から言わせれば…
高速料金は「通行料ではなく、高速道路の設備費用、維持管理をするための費用を負担してもらっているだけ」というスタンスであるようですが、現実的に
「この道路を利用する時は○○円支払わなければいけない」
「どこからどこまで高速道路を使ったら××円を支払う」
といったように、利用するたびに、あるいは利用した距離にあわせて料金を支払うというかたちになっていることから通行料、高速代金が徴収されているというのが体感的な感想です。
たた、国が言っている意味もわからないではありません。
何を作るにも何を維持するのにもお金がかかるわけですから、ある程度の金額であれば負担することも必要かもしれません。
しかし問題はその金額。
例えば高速道路として有名な「東名高速道路」では区間距離100km程の利用で2,500円以上の料金を請求されてしまい、そのまま愛知県にある岡崎東インターチェンジまで行ったとしたらなんと6,300円もの請求がされます。
これはちょっと高すぎると感じる人が多いのではないでしょうか。
しかし、曲がりくねった道をまっすぐ走ることができる、山も迂回せずトンネルで通過できる、信号もない、スピードレンジも高いということで、確かに短時間でドライバーへの負担も少なく移動できるのでかなり便利なことに間違いはなく、現代社会において全く使わないということは現実的とは言えません。
そこで頭に浮かぶのは、少しでも安く高速道路を利用できないか、少しでも高速代金を節約できないかという考えです。
では、どうやったら高速代金を安く済ませることができるのかを見ていきたいと思います。
目次
高速代金の節約はETCの活用で決まる
「利用した・しない」「どこから乗ってどこで降りた」という明確な料金体系がある中で高速代金を節約するのは非常に難しいことなのですが、料金体系自体が安く設定されているETCサービスを利用することで、多少は安く済ませることができます。
ETCの仕組みと情報、お金の流れ
ETCとは高速道路、有料道路で用いられる電子料金収受システムのことで、自動車側に設置している端末、ETC車載器と料金所などに設置されている複数のセンサーやカメラ、送受信機を組み合わせた装置同士で無線通信を行うことで、この自動車がいつ・どこで・どこからどこまで、高速道路・有料道路を利用したかがわかるようになっているものです。
ETC車載器は「ETCカード」と呼ばれる専用のICチップ入りカードが挿入されたものを設置することで使用可能になっており、ETCカードが挿さっていなければ、車載器だけが設置されていてもサービスを利用することができません。
ETC車載器ならびにETCカードには、通行料金を請求するうえで必要なデータが入力されていて、ETC機器を設置した入口や料金所(ETCゲート)を通過した際にその情報の一部がETCゲートに送信されます。
ETC車載器ならびにETCカードに記録されているデータは以下のようなものとなります。
●ETC車載器
・車両の所有者(一部で使用者)の氏名、現住所、電話番号などに紐づけされた車載器管理番号
・車両番号(ナンバープレートの番号)
・車種区分(大型車か普通車か?などの情報)
●ETCカード
・ETCカードの所有者情報(氏名、住所、電話番号など)と紐づけされているETCカード番号
・通行料金の請求先情報(クレジットカード会社、パーソナルカードなど)
これらの情報の一部がETCゲートを通過した時に車載器からETCゲートへ送信されることになります。
次に、ETCを利用した時の具体的なアクションは下記のようになります。
1…高速道路・有料道路に乗る
高速道路・有料道路に乗る時に通過した料金所、あるいは入り口にある無線機から車体に付けられているETC車載器に向けて高速道路・有料道路に利用を開始したという信号とETCゲート(入口)を判別するための信号、通過した時の日付、時間などを発信し、車載器はそれを受けて記憶します。
2…走行中
走行中は入り口のETCゲートで受信したデータを記憶、保持し続けます。
例えエンジンを止めてもバッテリーを取り外しても、ETCカードを抜いても記録は消えません。
3…高速道路・有料道路を降りる
高速道路・有料道路を降りたインターチェンジや出口にあるETCゲートを通過した際に、車載器側からETCゲートにある送受信機に向けて、利用を開始したインターチェンジあるいは入り口の個別信号と利用を開始した日付や日時、車体の判別や所有者を判別するための車載器管理番号、車両番号、車種区分、通行料金の請求場所を判別するためのETCカード番号などを送信した後に、今回のETCサービスを終了する処理が行われます。
また、東京都にある有料道路、首都高速道路のように利用距離によって通行料金を決めるのではなく、利用しただけで一定の料金が請求されるような場合は、この処理を入り口にあるETCゲートで行います。
4…料金請求処理
出口にあたるETCゲート(料金一定の有料道路では入り口にあたるETCゲート)を通過すると、すぐに料金の請求処理がなされます。
最後のETCゲートを通過した際に得た情報を元にして、通行料金の金額、ETCカード番号から請求方法、請求先を割り出して、それに応じてクレジットカード会社や、パーソナルカードの場合はネクスコの担当事務局へ請求をします。
ETCを利用するだけで高速代金が安くなることもある
ETCカードを利用しての高速道路・有料道路の利用は単に料金所での手間が省けるといったことだけではなく、通行料金を節約することにも役立ちます。
割引率は高速道路・有料道路、道路を管轄する団体によって異なりますが、料金所において現金で通行料金の支払いをした時よりも最大で75%ぐらいの値引きがされることもあります。
例えば、東京湾を東西に横切るような形で走っている東京湾アクアラインでは以下のような金額で利用することができます。
※東京湾アクアラインの例
軽自動車:現金での支払い時=2,470円 ETCで支払う時=640円
普通車:現金での支払い時=3,090円 ETCで支払う時=800円
中型車:現金での支払い時=3,700円 ETCで支払う時=960円
大型車:現金での支払い時=5,090円 ETCで支払う時=1,320円
特大車:現金での支払い時=8,490円 ETCで支払う時=2,200円
ETCの割引サービスを活用する
ETCで通行料金の支払いをする形で高速道路・有料道路を利用した場合、条件によってさらにいろいろな割引制度が適用されることがあります。
●深夜割引
これは通年適用される割引制度で、午前0:00から午前4:00の間に該当する高速道路・有料道路を利用した時に適用されるものです。
割引率は約3割となります。
割引条件である「午前0:00から午前4:00の間に該当する高速道路・有料道路を利用する」というのは、一見するとちょっとわかりにくいですが、要は以下のような状況である場合のことを言います。
1.高速道路・有料道路の入り口にあたるETCゲートを午前0:00から午前4:00の間に通過する。
2.高速道路・有料道路の出口にあたるETCゲートを午前0:00から午前4:00の間に通過する。
3.高速道路・有料道路の入り口にあたるETCゲートを通過した時間から出口にあたるETCゲートを追加した時間の中に午前0:00から午前4:00が含まれている。
※具体的な適用例:()は適用される条件
・午前1:00に高速道路に入って午前8:00に降りた。(1)
・午前1:00に高速道路に入って午前3:00に降りた。(1・2)
・前日の午後11:00に高速道路に入って午前3:00に降りた。(2)
・前日の午後11:00に高速道路に入って午前7:00に降りた。(3)
これらはすべて適用とされます。
●休日割引
これは土曜日、日曜日、国民の祝日に指定された日(以下休日と呼ぶ)に該当する高速道路・有料道路を軽自動車や普通車で利用した時に適用されるものです。
割引率は約3割となります。
1.高速道路・有料道路の入り口にあたるETCゲートを休日の午前0:00から午後11:59の間に通過する。
2.高速道路・有料道路の出口にあたるETCゲートを休日の午前0:00から午後11:59の間に通過する。
3.高速道路・有料道路の入り口にあたるETCゲートを通過した時間から出口にあたるETCゲートを追加した時間の中に休日の午前0:00から午後11:59が含まれていること。
※具体的な適用例:()は適用された条件
・日曜日の午後11:00に高速道路に入って平日となる月曜日の午前5:00に降りた(1)
・土曜日の午前1:00に高速道路に入って午前6:00に降りた(1・2)
・平日金曜日の午後10:00に高速道路に入って土曜日の午前3:00に降りた(2)
・平日金曜日の午後10:00に高速道路に入って平日月曜日の午前3:00に降りた(3)
これらすべてに休日割引が適用とされます。
ただ、深夜割引など他の割引制度と重なる場合は、併用ではなく割引率の高い割引制度が適用されることになります。
●平日朝夕割引
これは平日の
・午前6:00から午前9:00
・午後5:00から午後8:00
の間に高速道路・有料道路の入り口・出口にあたるETCゲートを通過した実績によって割引制度が適用されるものです。
具体的には
・高速道路・有料道路の入り口にあたるETCゲートを指定時間内に通過する。
・高速道路・有料道路の出口にあたるETCゲートを指定時間内に通過する。
・上記の通行実績が最低でも付きで5回以上あること
となります。
割引率は通行実績によってランク付けされており
・5~9回の実績:約30%
・10回以上の実績:約50%
となり、100km分の通行料を最大として利用分から上記の割引額が計算されます。
ただし、この割引制度は通行料から直接的に割引がされるのではなく後日、ETCマイレージサービスに無料走行分として付与される形となります。
従って、この割引制度を利用するには前もってETCマイレージサービスに登録をしておく必要があるので忘れずに手続きを行いましょう。
ETCカードのポイント制度を活用する
これはETCマイレージサービスに登録をしている方のみ適用となるので注意が必要です。ETCでの高速道路・有料道路の利用距離に対して付与されるETCマイレージポイントをためることで、それを無料走行分とすることができるというものです。
ETCマイレージポイントの還元割合ですが、これは管理団体や高速道路・有料道路によってまちまちで、通行料金10円に対して1点~100円に対して1点といった形になります。
そのポイントをためて無料走行分へ交換する形になるわけですが、その交換比率もまちまちで「1点あたりで0.5円」~「1点あたり1円」といった幅が存在します。
クレジットカードのポイント制度を活用する
これはETCカードによる割引サービスと切り離した活用法で、ETCカードの利用料金の支払いをクレジットカードで行った際に発生する、クレジットカードのポイント制度による間接的な割引を受けるというものです。
割引率も還元率もクレジットカード会社によって全く違うので、ここでは具体的な例は避けておきます。
ドライバーの心がけでも高速代金の節約ができる
これまで見てきた具体的な割引制度によって、高速代金を節約するのもいいですが、もっと根本的な部分に戻って「高速代金の節約」を考えてみましょう。
途中で高速道路から降りる
どこか遠方への外出となると、どうしても「早く」「楽して」現地まで行きたくなってしまい、現地に一番近いインターチェンジまで高速道路を利用する方が多いでしょう。
それが仕事でそこへ行かなければならないということであれば別ですが、遊びで行くのであれば1つでも2つでも手前のインターチェンジで降りて、一般道を走って現地の雰囲気やその近辺にあるレジャー施設や自然を満喫してみるのも良いかと思います。
基本的に左右は防音のためのフェンスや擁壁に挟まれている高速道路からでは見えない、現地へ向かう雰囲気をより楽しむことができるかもしれません。
少し時間的な余裕を作れれば、少し手前のインターチェンジで降りていろいろなものを見ることができますし、高速代金の節約できるといった感じで一挙両得となるのではないでしょうか。
高速道路を使わないルートを選ぶ
高速代金が気になるのであれば、いっそのこと高速道路・有料道路を使わないというのも思いきった手段です。
これは私の経験ですが、だいたい250kmぐらいであればプロのドライバーでなくても一般道だけを利用した移動でもそれほど苦にはなりませんでした。