冷房、暖房、除湿、送風、そして最近のものはイオンによる空気清浄機能を持つものもあらわれました。
エアコンの種類も昔ながらのダイヤルやレバーを使って操作するマニュアルエアコンの他に、一度温度を設定すれば、その温度を保ってくれるオートエアコンなども出てきました。
現状としてはよほどの廉価モデルでない限り、ほとんどのモデルにオートエアコンが付けられるようになりましたが、そのエアコンを使うことで燃費性能が悪化することもありますので注意したいところです。
特に気温が高く、湿度も高い夏場の燃費性能の悪化は目を見張るものがあります。
ここではどうして夏場のエアコン使用で燃費性能が悪化するのか、それを何とか防いでガソリン代の節約につなげることができないのか、ということについて見ていきたいと思います。
目次
夏にエアコン使っている時はガソリン代の節約が難しい?~冷房機能の仕組み

どうして?と考える前にまずはカーエアコンの仕組みを知る必要があります。
これを知らずしてエアコン(冷房機能)を語ることはできません。
カーエアコンにおける冷房機能をもたらすには以下のような部品や機器が必要になります。
・エアコンガス
・エアコンコンプレッサー
・コンデンサ
・レシーバー(ドライヤー)
・エキスパンションバルブ
・エバポレーター
・ブロアファン(ブロアモーター)
エアコンガス
エアコンガスはいわゆる「冷媒」と呼ばれるもので、熱の伝達をするために入れられているガスです。
エアコンの冷房機能は一種の「熱交換器」であるため熱を伝えるための冷媒が欠かせません。
カーエアコンの冷房機能には、通称「フロン」と呼ばれているガスが用いられています。
当初はCFC(クロロフルオロカーボン)といういわゆる「フロンガス」が使われていたのですが、そのフロンガスを廃棄する際に大気中へ放出してしまうことで成層圏にあるオゾン層を破壊してしまう可能性があり、有害な紫外線をカットすることができなくなるということから、このガスは生産終了となりました。最近では「代替ガス」と呼ばれる大気に放出してもオゾン層を破壊しにくいとされているHFC(ハイドロフルオロカーボン)が使われるようになりました。
カーエアコンでは「R134a」といった代替ガスがよく使われています。
これは車によって違う場合がありますがそのガスを約0.2MPaの圧力でカーエアコンのエアコンガス経路に注入して使います。
エアコンコンプレッサー
カーエアコンの冷房機能はエアコンガスの液化と気化の繰り返しによってもたらされるものです。
その液化をもたらすのがこのエアコンコンプレッサーの役目です。
エアコンコンプレッサーはエンジンによって回されるもので、クランクシャフトに付けられているクランクシャフトプーリーとエアコンコンプレッサーに付けられているプーリーをVベルトで繋ぎ、それによってエンジンの回転を受け止めるようになっています。
エアコンコンプレッサー側のプーリーには電磁クラッチが内蔵されていて、電気信号によってその電磁クラッチの結合・切断を行い、エアコンコンプレッサー過剰稼働による焼き付きを防いだり、エンジンへの負担を減らすようにしています。
冷房機能を使っているとエンジンルームから時々「カチッ!」という音が聞こえてきますがそれがプーリー内にある電磁クラッチのオンオフ音です。
エアコンコンプレッサーでエアコンガスを圧縮するとエアンガスが気体から液体になろうとします。
ここで間違ってはいけないのは液体になるのではなく加圧されて液体になろうとしているだけであるということです。
コンデンサ
コンデンサはエンジンの冷却水を冷やすためのラジエーター、エンジンオイルなどを冷やすためのオイルクーラー、ターボチャージャーによって圧縮された吸気を冷やすためのインタークーラーと同じように熱電度率の高いアルミ合金でできた熱交換器で、ラジエーターなどと同様に走行風があたるようにフロントグリル内に置かれるものです。
冷却能力を高めるために裏側に電動ファンが付けられており、それが常に稼働している状態となります。
一般的にはコンデンサだけを独立した形で配置されますが、一部のモデルや輸入モデルではラジエーターと一体型になっているものもあります。
コンデンサの役割は、エアコンコンプレッサーで圧縮されて熱を持ったエアコンガスを冷やすことです。
加圧されたエアコンガスは気体から液体になろうとしているのですが、熱によって膨張していることから液体になりきれないでいます。
そこでこのコンデンサで冷やすことでエアコンガスの膨張を減らし、液体化を促進することができるのです。
レシーバー(ドライヤー)
レシーバーはコンデンサの脇に付けられているアルミ合金製の筒状のものです。
この中には個包装された乾燥材が入れられています
レシーバーの役目は液化したエアコンガスに含まれている不純物や水分を吸着することで一種のエアコンガスのフィルターのような作用があります。
エアコンガス経路には金属パイプなどの金属パーツ、ゴムホースの他にもエアコンコンプレッサーという金属製の部品が動く部分があるため、場合によっては細かいゴミやチリなどが発生してしまい、それがエアコンガス内に含まれてしまうことがあります。
そして水分においても、エアコンガス経路は基本的に密閉状態になっているもののミュー単位で見れば結合部分などにわずかな隙間があり、そこから大気中の水分などが入ってきたりする場合があります。
ゴミにしても水分にしてもエアコンガス経路を詰まらせてしまったり、錆つかせてしまったりして冷房機能の構造に悪影響を与えることが考えられるため、このレシーバーで取り除くわけです。
エキスパンションバルブ
冷房機能はエアコンガスの液化・気化を繰り返すことで効果を得ることができるものなのですが、液化を行うのがエアコンコンプレッサーであるのであれな、それを液化するのがこのエキスパンジョンバルブです。
エキスパンジョンバルブは金属製の小さな部品で片方はレシーバーからの延びているアルミ合金製の配管が付けられており、反対側には非常に小さな穴があけられています。
エキスパンジョンバルブの役目は液体のエアコンガスを噴霧することです。
レシーバーから流れてきたきれいな状態の加圧状態の液化エアコンガスがエキスパンジョンバルブの小さな穴を通った時に急激に圧力が低下することで噴霧される形で気化します。
その気化の時に発生する気化熱によってエアコンガスが冷たいガスとなるわけです。
エバポレーター
エボパレーターはキャビン側にあるもので、ダッシュボードの奥深くに置かれているものです。
形状としてはラジエーターのような形をしており熱伝導率の高いアルミ合金でできていいます。
エボパレーターの役目はエアコンガスの「冷え」を冷風に変えることです。
エキスパンジョンバルブで気化されて冷えたエアコンガスを即座にこのエボパレーターに流すことでエボパレーター自体も冷やされます。
この冷えたエボパレーターに外部から風を当てることでエボパレーターのまわりやフィンの隙間を通った風も冷やされて冷風となるのです。
エボパレーターを通過したエアコンガスは温まりながら配管と通ってまたエアコンコンプレッサーに戻っていき、また同じサイクルで循環する形なります。
ブロアファン(ブロアモーター)
ブロアファンはブロアモーターと呼ばれる電気モーターで回されるファンです。
ブロアファンの役目はエアコンの風を作ることです。
このブロアファンで生み出した風を冷えたエアコンガスによってキンキンに冷やされたエボパレーターに向けて当てることで、エボパレーターを通過した時に風も冷やされて、冷風となります。
その冷風がダクトを通ってエアコンの吹き出し口から流れてくることで「冷房機能」という形になるわけです。
エアコンの風量の強弱を生み出しているのもこのブロアファンであって、これは冷房機能だけでなく、暖房や送風にも利用されます。
夏のエアコンでガソリン代の節約を妨げているのはエアコンコンプレッサーだ

このようにカーエアコンの冷房機能はいろいろな部品で様々な工程を経てもたらされているわけですが、どうしてこの冷房機能を使うと燃費性能が悪化するのか、ガソリン代の節約を妨げるようになってしまうのかというと、それはエアコンコンプレッサーがあるからです。
燃費性能というものはエンジンの回転に対する抵抗の度合いによって変わるものです。
例えば、同じエンジン、同じドライブトレーンでも流線形のボディを持ち「空気抵抗」が少ないスポーツモデルと真四角なボディを持ち「空気抵抗」が強いワンボックスカーとではスポーツモデルの方が燃費はよくなります。
同じ車でもグリップが高く「転がり抵抗」も高いスポーツタイヤを履いた場合と硬いコンパウンドでグリップは低いが「転がり抵抗」が低いエコタイヤを履いた場合ではエコタイヤを履いた方が燃費性能はよくなるものです。
要するにどれだけ抵抗があるかということなのですが、それにあてはめてみるとエアコンコンプレッサーはかなりの抵抗を生み出すものであるわけです。
エアコンコンプレッサーは気体のエアコンガスを液体にさせようとする機械でそれを実現しようとするには相当の圧力でエアコンガスを圧縮しなければなりません。
その圧力を小さなエアコンコンプレッサーのインペラーで生み出すためには相当な力で回さなければならないのです。
その回転を作り出すのは、Vベルト越しに繋がっているクランクシャフトで、エアコンコンプレッサーを回すだけでエンジンに対して抵抗を与えている形になります。
先ほど言いましたように抵抗があればあるだけ燃費性能が悪化するわけですから、エアコンコンプレッサーが回っている間(正確にはプーリー内の電磁クラッチが結合されている時だけ)は常に抵抗がかかっていてその分だけ燃費性能が悪化しているということになるわけです。
エアコンコンプレッサーの抵抗がどれだけエンジンの負担になっているのかということは知るのは簡単です。
冷房機能を使って走行している時にエンジンルームから「カツン」という音がした瞬間にエンジン回転数が落ちたり、加速が鈍ったり、スピードがわずかに低下するということを経験したことがあるかと思いますが、その状態がエアコンコンプレッサーによる抵抗が掛かった状態です。しばらくしてまたエンジンルームから「カツン」という音がした途端にスピードが上がったり、加速がよくなったり、走りが軽くなったような感じになった時がエアコンコンプレッサーの抵抗がかかっていない状態です。
その2つの挙動の違いがまさにエアコンコンプレッサーの抵抗といえましょう。
通常の車ではエンジンの回転を使ってエアコンコンプレッサーを回しますが、ハイブリッドカーや一部のエコカーなど、燃費性能の向上を主眼においた車においてはこのエアコンコンプレッサーによる燃費性能の低下を嫌って、エアコンコンプレッサーを独立した電気モーターで回すようにしたり、電気モーターを内蔵したエアコンコンプレッサーを使ったりします。
ちなみにエンジンの無いEVも電気モーター内蔵型のエアコンコンプレッサーを使っています。
夏にエアコン使っている時はガソリン代の節約はやっぱり難しい~せめてもの節約方法

冷房機能を使って走るだけで燃費性能が悪化してガソリン代の節約ができなくなってしまうわけですからそれを冷房機能を使っていない時と同じ程度の燃費性能にしろというのもかなり無理がありますが、それ極力近づける方法はいくつかあります。
A/Cボタンをまめに切る
マニュアルエアコンにしてもオートエアコンにしてもエアコンの制御パネルには必ず「A/C」と書かれたボダンが用意されています。
そのボタンはエアコンコンプレッサーの作動スイッチで、オンにするといかなる場合でもエアコンコンプレッサーが稼働、オフにすると逆にいかなる場合でもエアコンコンプレッサーが稼働しないようになります。
冷房機能を使おうとする時は通常、そのスイッチをオンにしてエアコンコンプレッサーを稼働させる形にするのですが、A/Cスイッチがオンになっている時は例え、オートエアコンで設定した温度よりもキャビン内の温度が低くても通常どおりに定期的な稼働・休止を繰り返します。
この辺が家庭用のエアコンと違って、必要のない時はエアコンコンプレッサーを完全に停止させるということができないのです。
カーエアコンでエアコンコンプレッサーの稼働を完全停止させる方法はA/Cボタンをオフにすることだけで、ドライバー自らがA/Cボタンを操作して必要のない時はオフにするしかありません。
冷房機能を使わない
これが究極の方法です。
冷房機能を使えば燃費性能が悪くなりガソリン代の節約の邪魔になるのであれば、いっそのこと冷房機能を使わなければいいだけです。
A/Cボタンを切って送風だけで走るかサイドウィンドウを開けて走行風を利用すればいいです。