中古車は早い話が「他人のお古」…ということは最低でも1度誰かが新車として買ってそれを売りに出しているというわけですが、そうなるとおのずと新車の販売台数が多かったり、何かしらの理由で売りに出させることが多い車の中古車が多くなるということになります。
その後者に該当するのがトヨタのヴォクシーという車です。
ではどうしてトヨタのヴォクシーが売りに出されることが多いのか、車の本来の性能を含めて見ていきましょう。
画像引用元:ヴォクシー(2007年6月~2014年1月)| トヨタ自動車のクルマ情報サイト‐GAZOO
目次
トヨタ・ヴォクシーってこんな車だった~概要
トヨタのヴォクシーは、トヨタの中型トールミニバンクラスのモデルとして発売されている「ノア3兄弟車」の中の1台となるモデルです。
「ノア3兄弟車」とは、「ノア」「ヴォクシー」「エスクァイア」の3モデルのこといい、販売面では
「販売チャネル違いの兄弟車」
といった形となり、構造面から見れば
「コストがかからない部品だけを付け替えた流用モデル」
ということになります。
販売チャネルの違いは…
・ノア:カローラ店
・ヴォクシー:ネッツ店
・エスクァイア:トヨペット店、トヨタ店
といった感じでレクサス店を除いた4店舗をすべて網羅する形となっています。
一方、構造の違いは…
・フロントバンパー
・ヘッドライトアッセンブリー
・リヤコンビネーションランプ
・リアガーニッシュ
・ボディカラーバリエーション
といった部分に加えてモデルによっては
・ボンネットフード
・フロントフェンダーパネル
の形状にも違いが設けられていますが、逆に言えばたったそれだけです。
自動車の性質や個性、性能に違いもたらす部分
・プラットフォーム
・シャシー
・フレーム
・ボディ形状
・ほとんどのボディパネル
・エクステリアパーツ
・エンジン
・ハイブリッドシステム
・ハイブリッドモデル用電気モーター
・トランスミッション
・ドライブトレーン
・インパネ
・シート
・快適装備
・インテリアパネル
・インテリアカラー
・パワースペック
・燃費性能
・走行性能
などは全く同じとなります。
要するにトヨタがお得意とする「既存モデルの流用手法」で作られているということです。
これがヴォクシーが置かれる現在の「ノア3兄弟車」ですが、実は最初は3兄弟ではなく、2兄弟だったのです。
ノア3兄弟車とは
ヴォクシーが発売されたのは2001年のこととなりますが、このモデル系統はもっと昔からありました。
ヴォクシーのもとをたどるとパブリカをベースにして設計され、ダイハツで作られていたライトエースという小型ワンボックスカーに突き当たります。
このモデルは1970年に発売開始されたもので、一連のワンボックスカーのようにメインは商用バンとして、そのボディを流用してワゴンモデルも作られていました。
そのワゴンモデルだけを当時流行っていた「ミニバンブーム」に乗るためか車名を「ライトエース」から「ライトエース・ノア」に変えつつ独立させたというのがミニバンとしての始まりで、同じくライトエースの販売チャネル違いの兄弟車として(当初は車格違いのモデルでしたが)発売されていた「タウンエース」のワゴンモデル抜粋版として「タウンエース・ノア」が作られていたことから、この時点で「ライトエース・ノア」と「タウンエース・ノア」といった中型ミニバンの兄弟モデルが出来上がっていました。
その後、2001年にライトエース、タウンエースから完全なる独立を果たすために、車名から両車の名前が取られ、「タウンエース・ノア」は「ノア」として、「ライトエース・ノア」はヴォクシーとして発売されることになったのです。
この時点ではまだヴォクシーとノアの2台だけとなっていますが、2014年に行われたノア・ヴォクシー兄弟車のモデルチェンジの際に新たにエスクァイアが加わることになるのです。
エスクァイアが新たにノア・ヴォクシー兄弟車に加わった理由は表向きは「トヨタ店とトヨペット店で売る中型ミニバンがない」ということに対する補填ということになっていますが、実際には全く違った理由があります。
それは
「経済的に大型ミニバンを買うことができない方のための受け皿としてのモデル」
ということでした。
「本当は大型ミニバンを買ってブイブイ言わせては知りたいがお金がない、ローンを組んでもちょっと苦しい。しかし、中型ミニバンは安っぽいし、ないよりも自慢ができない…どこかに大型ミニバンのような高級感と押し出し感を持っている中型ミニバンはないものか?」
といった声にこたえる形で発売されたのがエスクァイアであって、要するに「アルファード廉価版」であるということです。
なので、エスクァイアにはノアやヴォクシーのような歴史や先代モデルが存在しません。
ヴォクシーの歴史
●初代モデル R60G型(2001年~2007年)
画像引用元:ヴォクシー(2007年6月~2014年1月)| トヨタ自動車のクルマ情報サイト‐GAZOO
2007年のモデルチェンジで作られたR70系型は基本的には初代モデルの流用で作れました。
プラットフォームはMCプラットフォーム、エンジンも3ZR型エンジン、FFレイアウトにCVTといった基本となる部分のほとんどを初代モデルと同じとします。
ただそれでも発売当初は「新型モデル需要」もあってそれなりに売れたのですが、2012年を境にパタリと頭打ちになります。
その理由はライバルであるセレナにハイブリッドモデルが発売されたことです。
今でこそヴォクシーにもハイブリッドモデルがありますが、当時は中型ミニバンクラス自体にハイブリッドモデルはありませんでした。
その中で簡易型とは言え「S-HYBRID」というハイブリッドシステムを搭載してモデルが出たとなれば、中型ミニバンを買おうと思っている方が飛びつくわけです。
特に当時は「燃費が良いのがいい車」とされていた時代でしたので、1km/Lでも数字が良い車に注目が集まったわけです。
おかげさまで日産のセレナは「日本で一番売れているミニバン」という称号を手に入れました。
2019年4月時点の中古車市場にあるヴォクシーの約5割がこの2代目モデルとなります。
●3代目モデル R80系型(2014年~2019年現在)
画像引用元:トヨタ ヴォクシー | トヨタ自動車WEBサイト
セレナのおかげでさんざんな結果となってしまった2代目モデルですが、起死回生を狙うべく2014年にモデルチェンジを行いました。
攻撃的なフロント周りのデザインも含めて見た目は先代モデルのものを踏襲しましたが中身はそれなりに変更点が与えられました。
1つはプラットフォームが変更されたこと…初代モデル、2代目モデルではMCプラットフォームが使われていましたがこのモデルで新MCプラットフォームに変更されています。
そしてもう1つの変更点はハイブリッドモデルが用意されたことです。
ヴォクシーにハイブリッドモデルが用意されたといってもこのモデル用に新規に設計されたものではなく、ただ単に既存モデルとして当時発売されていた3代目プリウスなるZVW30型に使われていたエンジン、ハイブリッドシステム、ハイブリッドバッテリーなどをそっくりそのまま移植する形で作られた、目立って珍しくもなく特別でもない車として作られています。
通常、中型ミニバンは2リッターNAエンジンを搭載するのが一般的なのですが、1.8リッターNAエンジンを搭載するプリウスのコンポーネントを流用したことから中型ミニバンでありながらこのヴォクシーも1.8リッターエンジンを搭載することになってしまいました…流用モデルの副作用です。
とはいってもこのモデルの発売でライバル車の売り上げを鈍らせたのは確かです。
簡易型ハイブリッドシステムのセレナに対して、本格的なハイブリッドシステムを持つヴォクシーですからどう見ても燃費で車の良し悪しを決めるユーザー視点から見ればヴォクシーに魅力を感じることになるでしょう。
ただその後、セレナにシリーズハイブリッドモデルのe-POWERモデルが追加されたことでまた逆転することになってしまいましたが、トヨタ愛用者を中心に今でもそこそこの売り上げを挙げているようです。
このモデルは2019年4月時点の中古車市場にあるヴォクシーの約4割を占めます。
トヨタ・ヴォクシーにはこんなモデルがあった~モデル構成
ここからは中古車市場にあるヴォクシーの大半を占める2代目モデルと3代目モデルについて見ていきたいと思います。
2代目モデル(R70系型)
●標準モデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 5人乗りモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 4WD 5人乗りモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 7人乗りモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 8人乗りモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 4WD 7人乗りモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 4WD 8人乗りモデル
●スポーティードレスアップモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 7人乗りモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 8人乗りモデル
5人乗りモデルはサードシートを取り外して、トールワゴン化させた「トランス-X」モデルのこと、スポーティードレスアップモデルは、G'sモデルのことです。
3代目モデル(R80系型)
●標準モデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 7人乗りモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 8人乗りモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 4WD 7人乗りモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 4WD 8人乗りモデル
●ハイブリッドモデル
・1.8リッターNAエンジン+THS-II+無段変速機 2WD 7人乗りモデル
●スポーティードレスアップモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 7人乗りモデル
スポーティードレスアップモデルは、GRスポーツ(旧G's)モデルのことです。
ちなみにGRスポーツモデル(旧G'sも含む)のことをトヨタはスポーツコンバージョンモデルという扱いをしていますが、標準モデルでは足りないボディ剛性の補強とプラシーボ効果を狙った硬さの目立つ足周り、そして全く効果の望めないエアロパーツ風エクステリアパーツで見た目をそれらしく見せただけのあくまでも「ドレスアップモデル」でしかないため、これを買ったからといって速くかっこよく走れるわけではありません。
それにそもそも大衆ファミリーミニバンのスポーティーさは無用です。
トヨタ・ヴォクシーのパワーユニット~動力性能
2代目モデル(R70系型)
●2リッターガソリンエンジン
・エンジン型式:3ZR-FAE型
・エンジン排気量:約2リッター
・エンジン形状:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・バルブマチック
スペックは
・最大出力:158ps/6,200rpm
・最大トルク:20.0kgf・m/4,400rpm
※リッターあたり:約79ps
※パワーウェイトレシオ:約10.1kg/ps
3代目モデル(R80系型)
●2リッターガソリンエンジン
・エンジン型式:3ZR-FAE型
・エンジン排気量:約2リッター
・エンジン形状:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・バルブマチック
スペックは
・最大出力:152ps/6,100rpm
・最大トルク:19.7kgf・m/3,800rpm
※リッターあたり:約76ps
※パワーウェイトレシオ:約10.8kg/ps
このエンジンは2代目モデル、3代目モデルで共通となるものですが、3代目モデルのエンジンは燃費性能を向上させるためにパワーダウンされています。
2代目モデルの時でもかなり苦しい走りしかできなかったのに更にパワーダウンされてしまったらと思うと…軽自動車から乗り換えた方なら大丈夫かと思いますが…。
1.8リッターハイブリッドシステム
●エンジン
・エンジン型式:2ZR-FXE型
・エンジン排気量:約1.8リッター
・エンジン形状:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・ミラーサイクル
スペックは
・最大出力:99ps/5,200rpm
・最大トルク:14.5kgf・m/4,000rpm
●電気モーター
・形式:5JM型
スペックは
・最大出力:82ps
・最大トルク:21.1kgf・m
●ハイブリッドシステム:リダクション機構付きTHS-II
●ハイブリッドバッテリー:ニッケル水素バッテリー
※システムパワー:136ps
※リッターあたり:約75.5ps
※パワーウェイトレシオ:約11.9kg/ps
このパワーユニットはZVW30型プリウスに搭載されているものをそっくりそのまま移植した形で採用したものです。
一応、新しいモデルということで駆動用電気モーターが3JM型から消費電力の少ない5JM型に置き換えられていますがスペック的には全く同じです。
1.6トンを超える車に136ps…いくら低回転トルクのある電気モーターを使っているからといってもこのパワーではまとも走りは期待できません。
少なくともガソリンエンジンモデルより速く走ることはできないでしょう。
しかし、5ドアハッチバックセダンのプリウスから中型ミニバンへと見事に移植したものです。
トヨタの流用技術、移植技術、再利用技術は天下一品です。
トヨタ・ヴォクシーの走りはどうだった?~走行性能
ボディ剛性・シャシー性能
コスト削減のためとはいえ、強度のない鋼材を仕入れて、それを許される限り薄く薄く延ばして作られたシャシー、フレーム、ボディパネル…これら使って全高が高くて開口面積が広い車を作ったらどんなボディ剛性が得らるか、私が言わなくても誰でもわかることでしょう。
いうなれば「ボディ全体がサスペンション」になっているということです。
まともな状態は、もって5年がいいところですので、中古車市場に入ってくる頃のモデルはすべてボディは捻じれ、ヨレヨレの状態になっているといっても過言ではありません。
トランスミッション
●CVT
これは2代目モデルのすべて、3代目モデルのガソリンエンジンモデルに採用されているごく普通のCVTです。
トヨタでは「Super CVT-i」と呼んでいるそうです。
クラッチ代わりのトルクコンバーターと金属ベルトがかけられている一組のプーリー、作動原理は油圧でその油圧を細かく制御するのが電子制御といった具合の一般的なCVTです。
もちろんベルトが滑ることでダラダラした走りが目立つのも一般的なCVTと同じです。
●ギヤ式無段変速機
このトランスミッションはハイブリッドモデルだけに採用されているものです。
それもそのはずこのトランスミッションもハイブリッドシステムの一部となっているのですから、THS-IIが採用されているモデルはすべてこのギヤ式の無段変速機となります。
これはプラネタリーギヤとそれに付けられた電気モーターの抵抗を使ったもので、通常のCVTのような金属ベルトはなく、すべてギヤによって変速動作が行われています。
サスペンション構造
2代目モデルと3代目モデルとではMCプラットフォームと新MCプラットフォームと違うものが使われているのですが、MCプラットフォームの改良版が新MCプラットフォームであることからサスペンション構造などの部分はほぼ同じといっていいでしょう。
低価格大衆ファミリーFFモデルによく使われる
・フロント:マクファーソンストラット
・リヤ:トーションビーム
の組み合わせです。
特にリヤサスペンションとして使われているトーションビームはまっすぐ走るためのもの、「乗り心地」の件で家族から文句が出ない程度のものと思えばどういう感じかわかるかと思います。
ちなみにGRスポーツ(旧G's)でも硬いだけで性能は全く変わりません。
トヨタ・ヴォクシーって燃費は良かったの?~燃費性能
●2代目モデル(R70系型)
○標準モデル
・2WD 5人乗りモデル:カタログ燃費:最大13.6km/L実燃費:約9km/L
・4WD 5人乗りモデル:カタログ燃費:最大13.0km/L実燃費:約8km/L
・2WD 7人乗りモデル:カタログ燃費:最大13.6km/L実燃費:約8km/L
・2WD 8人乗りモデル:カタログ燃費:最大13.6km/L実燃費:約8km/L
・4WD 7人乗りモデル:カタログ燃費:最大13.0km/L実燃費:約7km/L
・4WD 8人乗りモデル:カタログ燃費:最大13.0km/L実燃費:約7km/L
○スポーティードレスアップモデル
・2WD 7人乗りモデル:カタログ燃費:最大13.6km/L実燃費:約6km/L
・2WD 8人乗りモデル:カタログ燃費:最大13.0km/L実燃費:約5km/L
●3代目モデル(R80系型)
○標準モデル
・2WD 7人乗りモデル:カタログ燃費:最大16.0km/L実燃費:約11km/L
・2WD 8人乗りモデル:カタログ燃費:最大16.0km/L実燃費:約11km/L
・4WD 7人乗りモデル:カタログ燃費:最大15.0km/L実燃費:約9km/L
・4WD 8人乗りモデル:カタログ燃費:最大15.0km/L実燃費:約9km/L
○ハイブリッドモデル
・2WD 7人乗りモデル:カタログ燃費:最大23.8km/L実燃費:約15km/L
○スポーティードレスアップモデル
・2WD 7人乗りモデル:カタログ燃費:最大16km/L実燃費:約10km/L
こうしてみるとカタログ燃費の数字を鵜呑みにできないことがよくわかります。
特に低燃費が売りでご自慢のハイブリッドモデルではカタログ燃費よりもかなり低い実燃費となってしまっているのが実情です。
トヨタ・ヴォクシーを買ってみる~中古車購入
トヨタ・ヴォクシーはこんな人に向いている
トヨタが行っている販売戦略からこのヴォクシーがノア3兄弟モデルの中でどのようなキャラクターを持たされているモデルなのかということが容易に見ることができます。
そしてそのキャラクターにあった人間がヴォクシーを買うにふさわしい人でないかと思います。
ではヴォクシーがどういったキャラクターを持っているのかというと、まずは古くから兄弟関係を持つノアとの比較で、ノアは家族思いでアットホームなお父さん、休みの日には家族総出でどこかに遊びに行くといった感じでやさしさを感じますが、それに対してヴォクシーは若いころのやんちゃさが抜け切れていないお父さんが運転をするような、やや攻めた印象を受けます。
実際にオーナー層を見てもそういった方が非常に多く、お父さんの職業もホワイトカラーよりもブルーカラー、特に土建関係の方が多いことがわかっています。
そうした若いころも気持ちを思い出す魅力が強いということでしょう。
トヨタ・ヴォクシーを中古車として買う時の注意点
ヴォクシーの中古車を買う時に必ず見ておかなかればならないところが2つほどあります。
まず1つ目はボディの歪みです。
「ボディ剛性」のところでもお話しました通り、この車は国産登録車の中でも1、2を争うほどボディ剛性が軟な作りになっているといって言うぐらい、華奢なフレームを持っています。
そのため荒々しい運転をするとか、常に重量オーバーで走っているといったことをしなくても走行距離に比例してどんどんボディが捻じれていってしまうという性質を持っています。
特に3代目モデルにあたるハイブリッドモデルは前後に重たいものが分けて積まれている形になっているので、スライドドアの部分を中心にねじれが発生しやすくなっています。
だいたい3万キロあたりから症状が出始め、5万キロあたりで半数以上のものに不具合が出る、そして8万キロを超えたあたりのものではほぼすべてのものにボディの捻じれや変形が見られるようになります。
ボディが捻じれるとスライドドアやリヤハッチ、ヒンジドアの閉まりが悪くなり、走っている最中ずっとどこかから何かがこすれ合うような「キュッキュッ」音や「ギシギシ」音が聞こえてきたり、外れた部品が暴れるような「コトコト」音や「ゴトゴト」音が聞こえてくるようになります。
もっとひどくなるとタイヤが片減りをしたり、まっすぐできれいな舗装がされているところでステアリングホイールの中立を保っていても左右どちらかに寄っていってしまうといったことも起こります。
こればかりは消費者側がどうすることもできませんので、この症状と付き合いながら乗り続けることを覚悟するか、新車を買う、あるいは他社の車を買うといったことで対策を取るしかありません。
それからもう1つ、これは2代目モデルと3代目モデルのガソリンエンジンモデルにおいて言えることなのですが、搭載されている3ZR-FAE型に故障とまでは行かないトラブルが続出していますのでそれに注意していただきたいです。
トラブルの原因は低燃費技術としてエンジンに採用されているバルブマチックという機能です。
バルブマチックとは早い話、スロットルバルブでエンジンの出力を調整するのではなく、吸気バルブのリフト量で出力を調整する機能のことです。
難しく言うとスロットルバルブからシリンダー内部まで間で発生する強いバキュームによってパワーロスが生まれる(これをポンピングロスといいます)ことを避けるために吸気バルブのリフト量でシリンダー内に吸入される空気量を調整するといったことを行う技術で、トヨタでは予備でスロットルバルブを備える構造を使っています。
文字情報でいうとたいしたことがないように思えますがこれを実際に制御するとなると非常に繊細で難しい制御を行わなえればなりません。
残念ながら現在のトヨタの技術では(もともとトヨタはエンジンを作るのが不得手)、それをうまく機能させることができずに、大量のスラッジを発生させてしまったり、大量の未燃焼ガス、生ガスを生み出してしまうことがあるのです。
その大量のスラッジが燃焼室から排気系、それからEGRを介して吸気系にまわることからいろいろなところに蓄積してしまい、空気の流れを悪くしたり、エンジンオイルもかなり汚すためそれによって油圧で動く可変バルブタイミング機構や可動部分の動きを悪くすることでエンジントラブルを起こしてしまうのです。
試乗をした際にアイドリング回転数が落ち着かない、エンジンストールを起こす、加速が鈍い、息継ぎをする、排気ガスが黒い…などといった症状があった場合はその車のエンジン内部はスラッジまみれになっているので避けた方がいいでしょう。
トヨタ・ヴォクシーの中古車市場での価値動向
●2代目モデル(R70系型)
○標準モデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 5人乗りモデル:E
・2リッターNAエンジン+CVT 4WD 5人乗りモデル:E
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 7人乗りモデル:D
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 8人乗りモデル:D
・2リッターNAエンジン+CVT 4WD 7人乗りモデル:D
・2リッターNAエンジン+CVT 4WD 8人乗りモデル:D
○スポーティードレスアップモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 7人乗りモデル:D
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 8人乗りモデル:D
●3代目モデル(R80系型)
○標準モデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 7人乗りモデル:C
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 8人乗りモデル:C
・2リッターNAエンジン+CVT 4WD 7人乗りモデル:C
・2リッターNAエンジン+CVT 4WD 8人乗りモデル:C
○ハイブリッドモデル
・1.8リッターNAエンジン+THS-II+無段変速機 2WD 7人乗りモデル:B
○スポーティードレスアップモデル
・2リッターNAエンジン+CVT 2WD 7人乗りモデル:C
(A:価値高 B:やや価値高 C:標準的な価値 D:価値低め E:価値なし)
まとめ
ヴォクシーという車が「クルマ」としての性能が高い分類にないことがお分かりいただけたかと思いますが、そうなるとこの車に残されたメリットは「大衆ファミリーミニバンである」ということになるわけです。
大衆ファミリーミニバンとしての性能はここでは一切触れていませんが、調べたところによるとなかなかのものであるようで、購入する方も最初からそれを求めて新車なり、中古車なりを選んで買っているようです。
しかしこういった大衆ファミリーミニバンの悲しさは、必要とされる期間が非常に短いということです。
早い話、大衆ファミリーミニバンという車は子供がいて初めて必要になるものですからある程度大きくなると必要がなくなり、お父さんもセダンやワゴンや今流行りの車に乗り換えていくわけです。
その間のわずかな数年の間…だいたい5年から8年ぐらいでしょうか。この期間だけヴォクシーのような大衆ファミリーミニバンを乗って期間が過ぎたら売り払う…こういった流れを持つことから頻繁に中古車市場にまわってくるようになるわけです。
5年乗って売りに出す、また他のオーナーが5年のって売りに出す…これを繰り返していくわけです。
特にこのヴォクシーはそのキャラクターゆえ、より一層短期間で中古車市場に出回る傾向にあります。
中古車市場に出回ることが多いということは中古車市場にあるヴォクシーが1オーナーカーである確率が低いということにもなりますので、中古車選びもより慎重にしなければいけません。できれば、新車を買っていただく方が理想的かもしれません。