国産モデルの中で10車種にも満たないスポーツモデル、中でもモータースポーツを源流とする競技車両としての性格が強いモデルはごくわずかです。
そのごくわずかなモデルの1代がこのスバルのWRX STIなのです。
ここではWRX STIがどういった車なのか、スポーツモデルとしてどれくらいの性能を持っているのかといったところを実車インプレ経験を踏まえて検証してみたいと思います。

※ご注意
ここではスバル・WRX STIの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。

最初はインプレッサだったスバル・WRX STI

WRX STIというモデルが発売されたのは意外と最近で2010年7月のことです・・・というとこうおっしゃる方がいます。

「エッ!それは嘘だ!もっと昔からすごいパフォーマンスを持っているスポーツモデルって言われてきているでしょ?」
「それはない!だって過去にWRC世界ラリー選手権で三菱のランサーエボリューションと戦ってきたじゃん」

確かにそうです、そういったことは嘘ではありません。
しかし、それはこのWRX STIのことではないのです。

多分、こういったことを言う方はこの車のことをわかっていない方、車を見た目やイメージだけで判断する方、車自体に興味がない方なのでしょう。
きっとインプレッサシリーズの一モデルとして過去に販売されていた「インプレッサWRX STI」のことを言っているのだと思いますが、実は「WRX STI」と「インプレッサWRX STI」は別のモデルで、きっちりと扱いを分ける必要があるのです。

とはいってもコンセプトは全く同じで、ラリーやダートトライアルなどといったコンペティションベースのスポーツモデルであることには違いはありません。

インプレッサから独立して初めてWRX STIになった

インプレッサWRX STIは、インプレッサシリーズのスポーツモデルとして発売されたモデルです。

このモデルが生まれるきっかけとなったのは、当時のスバルが非常に積極的に行っていたモータースポーツへの参加、特にWRC・世界ラリー選手権にかなり力を入れていたことです。
当時のマシンはスバルの救世主といわれているレガシィのセダンモデルをベースにしたグループAマシンのレガシィRSだったのですが、車に詳しい方ならご存じかと思いますが、このレガシィというモデルは標準でもかなり重たく、ラリーマシンとして改造したレガシィRSも競技車両としては非常に重たかったのです。

0.1秒を競うスペシャルステージを走るラリーマシンにとってボディが重たいのは致命的なハンデであって、その結果思ったほど良い成績を上げることができなかったのです。
そこでスバルは、もっと軽いラリーマシンを投入しようということでレガシィシリーズの格下モデルとして発売した大衆モデルのインプレッサに目をつけ、そのインプレッサを使って次なるラリーマシンを作ることにしたのです。

そしてそのホロモゲ―ションマシンとして発売されたのがインプレッサWRXなのです。
この時はまだインプレッサWRX STIではありませんでした。

インプレッサWRXにSTIという言葉がついたのは、1994年に発売されたSTIのコンプリートモデルである「インプレッサWRX STi」からです。
このモデルはスバルのモータースポーツ部門である「STI(スバル・テクニカ・インターナショナル)」がインプレッサWRXをベースにして作ったモデルで、量販モデルではなく改造モデルとして公認登録を行わなければならない特別なモデルです。

その後、このコンプリートモデルの他にも量産モデルとして「インプレッサWRX RA STi」や量産化されるようになった「インプレッサWRX STi」の「インプレッサWRX STi Version II」、「インプレッサWRX TypeRA STi Version II」など「STi(当時はSTIではなく、小文字のSTiでした)」という名称がついたモデルが続々と発売されました。

そして2代目モデルにおいては当初より「インプレッサWRX STi」がカタログモデルとして発売され、スポーツモデルでとしてまたラリーやダートラを中心とした競技用モデルとして人気を集めていきました。
この2代目モデルの途中で行われたマイナーチェンジでは外観に手が加えられたのと同時に「STi」の「i」が小文字から大文字へと変更になり、晴れて「インプレッサWRX STI」となったのです。
このモデルはライバルモデルとなる三菱・ランサーエボリューションと共に公道最速モデルとして、またチューニングベース車両としてもてはやされ、大変人気の高い車となりました。

その後、インプレッサWRX STIもインプレッサシリーズと同時にモデルチェンジを行い3代目モデルとなります。
このモデルでは先代モデルまでずっと2ドアノッチバッククーペや4ドアノッチバックセダンだったのに対して、初めて5ドアハッチバックボディを使ったモデルとなりました。
しかし、このハッチバックモデルが意外と評判がよくなかったことから3代目モデルが発売されてから約3年後となる2010年7月に4ドアセダンモデルが追加され、ハッチバックモデルと4ドアセダンモデルが選べるようになったのです。
そしてこの時、インプレッサWRX STIに大きな出来事がありました。
それがWRX STIの独立です。

独立といっても新たなモデルが作られるということではなく、同じモデルで「インプレッサWRX STI」から「インプレッサ」が取り外され、新たなモデル系統「WRX STI」となっただけの話です。
スバルとしてはそれまでインプレッサWRX STIがあったことでインプレッサシリーズがスポーツ色の強い車になってしまったことから大衆層が寄り付きにくく販売台数が伸びなかった・・・そこでインプレッサWRX STIシリーズを切り離して別のモデルとすることで大衆層が買いやすい大衆車に戻して販売台数を伸ばそうとしたわけです。

これが現在のWRX STIの始まりのモデルとなります。

その後はインプレッサシリーズとは別の路線を歩んでいきます。
インプレッサシリーズは2011年にモデルチェンジを行って4代目モデルとなりますが、インプレッサの3代目モデルを使って作られた初代WRX STIは2014年7月まで販売されていました。
そして2014年8月に独立して初めてのモデルチェンジを行ったのです。

それが2020年1月現在で発売されている現行モデルとなります。
このモデルでは「WRX STI」だけではなく、WRX STIの廉価スポーツセダン的なモデルとしてCVTを搭載したWRX S4も同時に発売されました。

しかし残念ながらWRX STIは2019年に生産終了となっていて、2020年1月現在では在庫販売のみとなってしまっています。

スバル・WRX STIのこれまでの出来事(2020年1月現在)

●初代モデル GC8型 1992年10月発売

※インプレッサWRX/WRX STi時代

・1993年9月 一部改良 オートマチックトランスミッションモデルの追加
・1994年1月 STIモデル「WRX STi」の販売
・1994年10月 一部改良 エンジンの仕様変更 「WRX RA STi」の追加
・1995年10月 「STi Version II」の追加 「STi Version II 555」の限定販売
・1996年9月 マイナーチェンジ デザインの小変更 エンジンの仕様変更 「HX-20S」「WRX TypeR STi」の追加
・1997年9月 一部改良 「STi Version IV」の追加
・1998年9月 マイナーチェンジ デザインの小変更 「STi Version V」の追加
・1999年9月 一部改良 デザインの小変更 「STi Version VI」の追加

●2代目モデル GDA/GDB型 2000年8月発売

※インプレッサWRX STi時代

・2000年10月 「WRX STi」の追加
・2001年11月 一部改良 デザインの小変更 グレード構成の変更 ボディーカラーの変更
・2001年12月 「WRX STi type RA specC」の追加
・2002年11月 マイナーチェンジ デザインの小変更
・2004年6月 マイナーチェンジ 「STi」のフロントハブの強化、リアオーバーフェンダーの追加、ホイールPCDを114.3mmに変更

※インプレッサWRX STI時代

・2005年6月 マイナーチェンジ デザインの小変更 「STi」を「STI」へ変更
・2006年6月 一部改良
・2006年11月 「WRX STI specC type RA-R」の追加

●3代目モデル GRB型 2007年10月発売

※インプレッサWRX STI時代

・2008年10月 「STI 20th ANNIVERSARY」の追加
・2009年2月 一部改良 「WRX STI A-Line」の追加
・2009年7月 「STI spec C」の追加
・2009年9月 一部改良 デザインの小変更 ボディーカラーの変更
・2010年1月 「WRX STI A-Line type S」の追加
・2010年6月 一部改良

※WRX STI時代(WRX STI初代モデル)

・2010年7月 「WRX STI」のマイナーチェンジ インプレッサから独立 「WRX STI」に4ドアモデルの追加
・2010年12月「WRX STI spec C」の追加
・2011年1月「WRX STI tS」「WRX STI A-Line tS」の限定発売
・2011年11月 「WRX STI A-Line type S」「WRX STI S206」の追加
・2012年7月 一部改良 デザインの小変更 「A-Line type S」グレード、「A-Line S Package」グレードの追加
・2013年7月 STIモデル「WRX STI tS TYPE RA」の発売

●2代目モデル VAB型 2014年8月発売

※WRX STI時代

・2015年6月 一部改良 「アドバンスドセイフティパッケージ」の採用
・2015年10月 「S207」「NBR CHALLENGE PACKAGE」の限定発売
・2016年4月 一部改良 デザインの小変更
・2017年5月 マイナーチェンジ デザインの変更 新電子制御マルチモードDCCDの採用 ブレーキのグレードアップ
・2017年10月 「S208」「NBR CHALLENGE PACKAGE」の限定発売
・2018年4月 一部改良 サンルーフをメーカーオプション設定
・2018年7月 「TYPE RA-R」の限定発売
・2019年6月 一部改良 デザインの小変更
・2019年10月 「EJ20 Final Edition」の予約受付開始
・2019年12月 生産終了

スバル・WRX STIが属するカテゴリー

●車格:中型スポーツモデル
●用途・目的:生活車 スポーツ走行用 競技車両
●車両カテゴリー:中型スポーツセダンモデル
●エンジン排気量クラス:2リッタークラス

スバル・WRX STIのオーナー層

●年齢層:35歳ぐらいから60歳ぐらいまで
●性別:男性
●経済力:富裕層(新車購入・中古車購入)、高収入層(新車購入・中古車購入)、大衆層(新車購入・中古車購入)、低収入層(中古車購入)
●その他:若年層より中年層より上の年齢層に人気がある

スバル・WRX STIの車体の構成・選択肢

●パワーユニット

・ガソリンエンジン

●トランスミッション

・6速マニュアルトランスミッション

●エンジン・ドライブトレーンレイアウト

・スポーツ4WD(FFベース)

●サスペンション構造

・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:ダブルウィッシュボーン(コイルスプリング)

●ブレーキシステム

・フロント:ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ

●ベースモデル

・あり・・・GP/GJ系インプレッサシリーズ

●兄弟車

・あり・・・WRX S4、レヴォーグ

スバル・WRX STIのモデル構成とグレード構成

ベースモデル

このモデルには2つのグレードが用意されています。

・ベースグレード(2WD・4WD)
・Type S グレード(2WD・4WD)

●ベースグレードの主な装備

・18インチ×8.5J ダークガンメタリック塗装 アルミホイール
・245/40R18サイズ タイヤ
・ピロボールブッシュ付アルミ鍛造製フロントロアアーム
・フロントデフ:ヘリカルLSD
・リヤデフ:トルセンLSD
・SI-DRIVE
・高強度鋳造ピストン
・強化エンジンマウント
・大型インタークーラー
・ツイン・デュアルテールパイプ
・フロント/リヤ スタビライザー
・赤チヂミ塗装インテークマニホールド
・等長等爆エキゾーストマニホールド
・ヒルスタートアシスト
・LEDハイ&ロービームヘッドランプ
・ステアリング連動ヘッドランプ
・リヤフォグランプ
・サイドターンランプ&ターンインジケーター付電動格納式リモコンカラードドアミラー
・雨滴感知オートワイパー
・オートライト
・ヒーテッドドアミラー
・LEDリヤコンビネーションランプ
・リヤウインドゥデフォッガー
・拡散式ウォッシャー連動間欠調整式フィン一体フロントワイパー
・リヤ間欠ワイパー&ウォッシャー
・ハイグロスブラックベゼル+レッドステッチ入り 本革巻ステアリングホイール
・レッドオーナメント付本革巻シフトノブ
・サテンメッキリング付ハイグロスブラック加飾パネル
・レッドステッチ入り シフトブーツ
・本革巻ハンドブレーキレバー
・アルミパッド付スポーツペダル
・メッキリング&レッド照明付エアコンダイヤル/クリーンフィルター付左右独立温度調整機能付フルオートエアコン
・マルチインフォメーションディスプレイ付ルミネセントメーター
・シフトアップインジケーター
・マルチファンクションディスプレイ
・レザー調素材巻+レッドステッチ入り インパネセンターバイザー
・キーレスアクセス&プッシュスタート
・イモビライザー
・アラーム表示機能付盗難警報装置
・クイックステアリングギヤレシオ
・チルト&テレスコピックステアリング調整機構
・パワーステアリング
・方向指示器のワンタッチ機能
・パワーウインドウ
・アンサーバック機能付電波式リモコンドアロック
・リモコントランクオープナー
・集中ドアロック
・ツイントリップメーター
・メーター・イルミネーションコントロール
・オーディオリモートコントロールスイッチ
・フロント2+リヤ2 4スピーカー
・シャークフィンタイプ ルーフアンテナ
・フロントスポーツシート
・レッドステッチ+レッドアクセント+STIロゴ入り ウルトラスエード/本革 コンビシート生地
・レバー式運転席シートリフター
・6:4分割可倒式トランクスルーリヤシート
・カップホルダー付リヤシートセンターアームレスト
・フロントシートバックポケット
・可倒式フロントシートヘッドレスト
・上下調整式3名分リヤシートヘッドレスト
・ハイグロスブラック インパネ加飾パネル&ドアスイッチパネル
・パワーウインドウスイッチメッキ加飾
・メッキ インナードアハンドル
・STIロゴ入りステンレス製サイドシルプレート
・フロント&リヤ ボトルホルダー付大型ドアポケット
・USB電源
・オフディレイルームランプ
・スポットマップランプ
・スライドカバー付前席カップホルダー
・DC12V/120W電源ソケット
・運転席+助手席+後席左右 アシストグリップ
・リヤ左右席コートフック
・レッド照明付/STIエンブレム付 センタートレイ
・照明付グローブボックス
・DC12V/120W インパネアクセサリーソケット
・フロアコンソールボックス
・運転席・助手席 照明付バニティミラー
・トランクルームランプ
・STIエンブレム付フロントグリル
・大型アンダーカバー
・大型フロア下アンダーカバー
・サイドシルスポイラー
・STIエンブレム付サイドガーニッシュ
・UV&IRカット機能付 フロントガラス
・UVカット機能付 フロントドアガラス
・UVカット機能付濃色 リヤドアガラス
・UVカット機能付濃色 リヤガラス
・ディフューザータイプ リヤバンパー
・キャリアブラケット内蔵ルーフモール
・デュアルSRSエアバッグ
・SRSサイドエアバッグ
・SRSカーテンエアバッグ
・運転席SRSニーエアバッグ
・EBD付4センサー4チャンネルABS
・マルチモードVDC
・アクティブ・トルク・ベクタリング
・ブレーキアシスト
・ブレーキオーバーライド
・エマージェンシーストップシグナル
・ハイマウントストップランプ
・セイフティペダル
・セイフティフットレスト

など

●「Type S」グレードの主な装備

ベースグレードの装備に加えて・・・

・19インチ×8.5J ダークガンメタリック塗装+切削光輝 アルミホイール
・245/35R19サイズ タイヤ
・ビルシュタイン製ショックアブソーバー
・コールドウェザーパック:フロントワイパーデアイサー
・コールドウェザーパック:フロントシートヒーター
・運転席10ウェイパワーシート
・スーパーUVカット&撥水加工付 フロントドアガラス
・トランクリップスポイラー

が追加されています。

スバル・WRX STIに搭載されるパワーユニットと動力性能

スバル・WRX STIには1種類のパワーユニットが用意されています。

●2リッターターボエンジン

・エンジン型式:EJ20型
・エンジン排気量:1994cc
・シリンダー配列:水平対向
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・燃料供給:ポート噴射
・過給器:ツインスクロールターボ
・特別な機能:デュアルAVCS

◆スペック

・最大出力:308ps/6400rpm
・最大トルク:43.0kgf・m/4400rpm

・1リッターあたりのパワー:約154ps
・パワーウェイトレシオ:約4.83kg/ps

このエンジンは現在のスバルで主力エンジンとなっているFA型、FB型エンジンの前身となる機種で、F○型エンジンが登場する前は広く使われていました。

F○型エンジンは徹底した低燃費型エンジンとなっていますが、このEJ20型エンジンはショートストロークの高回転型エンジンとなっています。
バルブ機構として吸気側・排気側の両方に可変バルブタイミング機構としてAVCSを搭載してパワー重視のエンジンでありながらもなんとなく燃費性能を気にしているようです。

このWRX STIが販売されていた時点でもこのモデルが最後のEJ20型エンジン搭載モデルとされてきましたが、WRX STIの生産が終了になったのと同時にこのエンジンの製造も2019年で終わっています。

パワーは2リッターターボエンジンで308ps、リッターあたり154psというかなりパワフルなもので、市販車としてはかなり満足のいくものなっています。
実際に運転してみても「パワーが足りない」と思うことはほとんどなく、街乗りでも峠でも高速道路でも元気に走ることができました。
ターボチャージャーの特性も極端なターボラグもなく、2000rpmも回っていればいつでも暴力的な加速を始めることができます。

ただ、水平対向エンジン特有のシリンダーヘッドからのエンジンオイル漏れには頭を悩ませることでしょう。

※パワーユニットの評価:★★★★★(5)

スバル・WRX STIに採用されているトランスミッション

スバル・WRX STIには 種類のトランスミッションが用意されています。

●6速マニュアルトランスミッション

やっぱりスポーツモデル、それもコンペティションモデルにはマニュアルトランスミッションが一番!ということでこのWRX STIには6速マニュアルトランスミッションが採用されています。

このマニュアルトランスミッションはまだWRX STIがインプレッサWRX STIと呼ばれていたGRB型に採用されていたものと基本設計が同じもので、事実上その時のものをキャリーオーバーしたような形となっていますが、もともとの作りがよかったのか、WRX STIとなってからも性能の衰えを感じさせません。
シフトフィールが少々ダルで気になるところがありますが、シフトストロークは比較的短めですし、シフトの入りもいいので、極限状態でのシフトミスもあまりないかと思います。

※トランスミッションの評価:★★★★★(5)

スバル・WRX STIの走行性能を決める構造

スバル・WRX STIのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー

WRX STIのプラットフォームは、レヴォーグと同じようにインプレッサで使われているものを少し手を加えたものなのですが、インプレッサといっても「スバル・グローバル・プラットフォーム」を採用した2020年1月現在で現行モデルとなっているGT/GK系型ではなく、その1つ前のモデルとなるGP/GJ系型と同じとなっています。

古いモデルのプラットフォーム、シャシーといってもそこは頑丈なボディを作ることにたけたスバルです。
その辺の最新型のスポーツモデルと同等、いやそれ以上のボディ剛性を発揮させることができています。

どんなに激しい運転をしてもグラベル程度の荒れた路面でも全くびくともしません。
まさに競技車両の車体といえます。

※ボディ剛性の評価:★★★★★(5)

スバル・WRX STIの走りの質を決めるサスペンション構造

このモデルのサスペンション構造は、先代インプレッサやそれをベースとするレヴォーグと全く同じ・・・

・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:ダブルウィッシュボーン

といった四輪独立懸架が採用されています。
構造も優れモノですが何といってもセッティグが絶妙で、ステアリングを切ると切った分だけ素直に曲がりますし、その反応もかなりスピーディーでとにかく気持ちよく曲がれます。
これには「13:1」という市販車両としてはかなりクイックなギヤレシオとなるパワーステアリング機構も一枚かんでいるようです。

上級グレードの「Type-S」グレードには前後にビルシュタイン製ショックアブソーバーが採用されていますがこちらも素晴らしいコーナーリングを得ることができます。
ベースグレードに採用されているショックアブソーバーのものと乗り比べるとベースグレードのものは減衰力自体は硬くも柔らかくもないのですがちょっとゴツゴツ間を感じるといった感じ、対してビルシュタイン製のショックアブソーバーが採用されているものは意外と減衰力をしっかり感じながらも動きがしなやかなせいか、ゴツゴツ感をあまり感じません。

このビルシュタイン製のショックアブソーバーは、かなり過激な走りも十分こなすぐらいの能力はあると思います。
サーキット走行もOKだと思います。

※サスペンション構造の評価:★★★★★(5)

スバル・WRX STIのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム

スポーツモデルにはスポーツモデルらしいブレーキが必要ということでこのWRX STIにはとても高性能なブレーキシステムが採用されています。

・フロント:ブレンボ製モノブロック6ポット対向ピストンキャリパー+18インチ・ドリルドベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:ブレンボ製モノブロック2ポット対向ピストンキャリパー+18インチ・ドリルドベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ

前後ともキャリパーはブレンボ製で、キャリパーの開きに強いモノブロックを採用、そしてブレーキローターはベンチレーテッドディスクであるのは当たり前、ブレーキパッドの表面を常にクリーンにすることができるドリルホール付きのものとされています。
これだけでも驚きの装備なのに更にフロントブレーキのブレーキキャリパーは6ポットとなっているのです。
両側から3つのピストンでブレーキパッドをまんべんなくブレーキローターに押し付けることで選られるストッピングパワーはまさに競技車両並みです。

ノーマルのブレーキパッドもなかなか良いようで対フェード性も高く、峠道程度ならノーマルで十分だと思います。

※ブレーキシステムの評価:★★★★★(5)

スバル・WRX STIに搭載されている4WDシステム

このモデルに採用されている4WDシステムは、このWRX STIだけが唯一採用しているもので「DCCD-AWD」と呼ばれています。

この4WDシステムはいわゆる「スポーツ4WD」とされるもので、オフロード走行を高めるための4WDシステムではなく、ターマック(舗装路)やグラベル(未舗装路)、浅い雪道などで速く走るためのトラクションを稼ぐためのものです。

構造としてはレヴォーグやWRX S4に採用されているVTD-AWD(バリアブル・トルク・ディストリビューションAWD)によく似ているのですが、このDCCD-AWDは前後トルク配分をリヤ寄りの「前41:後59」で固定とし、センターデフに内蔵されている電子制御式LSD(油圧湿式多板クラッチ)を操作してLSDのロック率を走行状態に合わせて調整するといった制御を取ります。
この仕組みでは前後トルク配分がリヤ寄りとなっているため、コーナーへ飛び込んだ時の回頭性が非常によくなっています。

更にフロントデフとして複数のヘリカルギヤを内蔵したヘリカルLSDを、リヤデフとしてウォームギヤを使ったトルクセンシングデフもそれぞれ備えていてトルクの抜けを防止しています。

センターデフのロック率は調整することができるようになっており、走行状態に合わせてロック率を可変とする「AUTO」モードが3種とロック率をフリー状態から完全ロックまでの6段階の中からドライバーが選択できる「MANUAL」モードが用意されています。

ただ、この調整が意外と難しく、相当乗り込んでこの車の挙動をすべて把握している方でないと「MANUAL」モードで最適なロック率を選択することはなかなかできないようです。
基本的には3つある「AUTO」モードの中から選ぶようにして、通常は「AUTO」モード、コーナーリングを攻める時はロック率が低めの「AUTO-」モード、スリッピーな路面ではロック率が高い「AUTO+」モードを使うといった形を取ることをおすすめします。

※4WDシステムの評価:★★★★★(5)

スバル・WRX STIの燃費性能

スバル・WRX STIのカタログ燃費と実燃費

●全モデル
・カタログ燃費(JC08モード):最大9.4km/L
・実燃費:約5km/L

※燃費性能の評価:★☆☆☆☆(1)

スバル・WRX STIに採用されている低燃費装備

●全モデル

・可変バルブタイミング機構

スバル・WRX STIのライバルモデル比較

スバル・WRX STIのライバルとなるのは三菱・ランサーエボリューションX

WRX STIはWRCでランサーエボリューションと戦うために作られたようなものですのでライバルは三菱のランサーエボリューションの最終モデルであるランサーエボリューションXということになります。

ここではランサーエボリューションXの最後のモデルとなる「ファイナルエディション」と比較してみたいと思います。

●スバル・WRX STIの概要
・カテゴリー:中型スポーツセダンモデル
・車格:中型スポーツモデル
・エンジン排気量:約2リッターターボ
・エンジン形式:EJ20型
・比較対象グレード:「Type-S」グレード

●三菱・ランサーエボリューションXの概要
・カテゴリー:中型スポーツセダンモデル
・車格:中型スポーツモデル
・エンジン排気量:約2リッターターボ
・エンジン形式:4B11型
・比較対象グレード:「ファイナルエディション」グレード

スバル・WRX STIと三菱・ランサーエボリューションXのパワースペック比較

●スバル・WRX STI

・最大出力:308ps/6400rpm
・最大トルク:43.0kgf・m/4400rpm

●三菱・ランサーエボリューションX

・最大出力:313ps/6500rpm
・最大トルク:43.7kgf・m/3500rpm

※パワースペック比較結果
パワーもトルクもわずかにランサーエボリューションXの方が上回っていますが実際に乗り比べてみてもそのパーの違いがはっきりするほどの違いは感じられません。
ただトルク特性が全く違い、WRX STIはエンジンをそれなりに回さないと欲しいと思っているトルクを得ることができないのに対して、ランサーエボリューションXの4B11型エンジンは低回転から図太いトルクを得ることができます。

スバル・WRX STIと三菱・ランサーエボリューションXの燃費性能比較

●スバル・WRX STI

・カタログ燃費(JC08モード):最大9.4km/L
・実燃費:約5km/L

●三菱・ランサーエボリューションX
・カタログ燃費(JC08モード・WLTCモード):最大10.4km/L
・実燃費:約6km/L

※燃費性能比較結果

低回転トルクが細いWRX STIはどうしてもエンジン回転数が高めになるためその分だけ実燃費が悪くなってしまうのでしょう・・・といってもほんのわずかです。

スバル・WRX STIと三菱・ランサーエボリューションXの販売価格帯比較

ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。

●スバル・WRX STI

約394万円~約414万円

●三菱・ランサーエボリューションX(ファイナルエディションのみ)

約430万円

※販売価格帯比較結果

性能は同じようなものですが、ランサーエボリューションXの方が快適装備がたくさんつけられているのと、電子制御デバイスがたくさん採用されていることからその分だけランサーエボリューションXの方が高くなってしまうのでしょう。

まとめ

2019年12月に生産終了となり2020年1月現在では在庫のみの販売となっている現行モデルのWRX STIですが、実は次期モデルが発売されることがわかっています。
2020年8月ごろに発売されるようですが、今度のモデルも2リッターターボエンジンを搭載した過激なスポーツモデルになるようです。
現在のWRX STIでも申し分ない性能を持っているのですから次なるモデルも期待できると思います。

このWRX STIは久しぶりに見た完璧に近いぐらいのモデルといっていいでしょう。

※総合評価:★★★★★(5)

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