SUVともクロスオーバーSUVともいえないような見た目だけの利益重視の「なんちゃってクロスオーバーSUV」モデルを続々発売しているトヨタ、2019年11月にそのラインナップに新たなる1台が加わりました。
それがこのトヨタ・ライズです。
ここではライズがどういう車なのか、そしてクロスオーバーSUVとしてどれくらいの能力を持っているのか検証してみたいと思います。
※ご注意
ここではトヨタ・ライズの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。
目次
トヨタ・ライズはダイハツのOEM供給モデル
トヨタには大型「なんちゃってクロスオーバーSUV」としてRXが、中型「なんちゃってクロスオーバーSUV」としてハリアー、NX、RAV4が、小・中型「なんちゃってクロスオーバーSUV」としてC-HR、UXが、そして小型「なんちゃってクロスオーバーSUV」だけがちゃんとした(そもそも「なんちゃってクロスオーバーSUV」自体がちゃんとしていないが・・・)モデルがなく、無理矢理「プアマンズ・プリウス」と呼ばれているアクアに「クロスオーバー」などといったドレスアップモデルを作ってお茶を濁していますが、その小型「なんちゃってクロスオーバーSUV」の位置の穴を埋めるべく発売されたのがこのライズなのです。
ライズは実のところトヨタオリジナルモデルではなく、トヨタグループの一員でトヨタの子会社となるダイハツの新型モデル「ロッキー」のOEM供給モデルなのです。
OEM供給モデルといいますか、そもそもダイハツはトヨタの下請けみたいなものですから、ダイハツに「小型のクロスオーバーSUVを作ってくれよ~、それもあまりお金をかけないでね」といった形で発注して、出来上がった商品を吸い上げてライズとして販売しているだけですけど、表向きはダイハツからトヨタへOEM供給された形になっています。
こういった形で作られているモデルは実のところ初めてではなく、ここ最近では3台目となります。
(過去をさかのぼればもっとたくさんありますが・・・)
・1台目:ダイハツ名「ブーン」 トヨタ名「パッソ」
・2台目:ダイハツ名「トール」 トヨタ名「タンク・ルーミー兄弟モデル」
といった感じです。
ただ、この両車は基本的な部分が全く同じで、ハッチバックのパッソ(ブーン)にターボエンジンと全高の高いボディ、それに伴ったインテリアを与えて作られたのがスーパーハイトワゴンのタンクやルーミー、そしてトールであるわけで、それ以外の部分はプラットフォームもエンジン形式もトランスミッションもドライブトレーンもサスペンション構造もブレーキ構造も全く同じです。
要するにブーンとブーンベースのスーパーハイトワゴンモデルの両方を表向きのOEM供給モデルとして販売してきたということです。
そして今回、新たにロッキーの(表向き)OEM供給を受けてライズを発売することになったわけですが実はこのライズ(ロッキー)も実はパッソ(ブーン)ベースのモデルなのです。
ライズはパッソベースの「なんちゃってクロスオーバーSUV」
その車がどのモデルをベースにしているのか、何を転用して作っているのか、ベースモデルがあるのかないのか、全くの新規モデルなのかを見るにはプラットフォームと搭載されているエンジンの型式を見ればだいたいのことがわかります。
それに照らし合わせて見ると・・・
●プラットフォーム
・パッソ(ブーン):ダイハツ・Aプラットフォーム
・タンク・ルーミー兄弟モデル(トール):ダイハツ・Aプラットフォーム
・ライズ(ロッキー):DNGA-Aプラットフォーム
●搭載エンジン
・パッソ(ブーン):1KR-FE型
・タンク・ルーミー兄弟モデル(トール):1KR-FE型、1KR-VET型
・ライズ(ロッキー):1KR-VET型
となります。
これだけを見るとパッソ(ブーン)とタンク・ルーミー兄弟モデル(トール)はプラットフォームも搭載エンジンも同じなので転用・流用モデルであることがわかりますが、ライズ(ロッキー)は搭載エンジンだけが同じで、パッソ(ブーン)をベースとした流用・転用モデルではないと思ってしまいます。
そこが販売戦略にたけたトヨタの「トヨタ・マジック」なのです。
プラットフォームを見るとパッソ(ブーン)は一世代前のダイハツ・Aプラットフォームを使って作られているのに対して、ライズ(ロッキー)は新しい規格のDNGA-Aプラットフォームが使われています。
プラットフォームの名称が違うのでこの2つのプラットフォームは全く別もの同士と見てしまいがちですが、実は基本となる部分は全く同じなのです。
ダイハツのDNGA-Aプラットフォームは、トヨタグループの共通のプラットフォームでトヨタのCセグメント(小・中型クラス)用のプラットフォーム、TNGA-Cプラットフォームのひとつ下のクラス用として開発されたもので、小型モデルのほとんどをダイハツに丸投げして作らせている関係上、名称はトヨタの「T」ではなく、ダイハツの「D」になって「DNGA」とされますが、実際は同じ技術(技術といえるものではないが・・・)で作られたトヨタグループの一連の新しいプラットフォームです。
この新しいプラットフォーム群、TNGA、DNGAはそれまでトヨタやダイハツが行ってきたプラットフォームの流用術・・・要するにその車に合わせたプラットフォームを使って車を作るのでなく、コストを削減するために既存の車種で使われている複数のプラットフォーム(シャシー)を切り刻んで、それをこれから作る車にあうように組み立てなおして新しいモデルを作る・・・ということをさも新しい技術であるかのように、また切った貼ったをして新しいモデル用のプラットフォーム(シャシー)を作り出すことを堂々とできるようにしたものです。
例えばTNGA-Cプラットフォームですが、これはZVW50型プリウス、C-HR、カローラシリーズ、UXなどに使わていますが、名目上は「TNGA-Cプラットフォーム」としながらも基本的な部分は、同じCセグメント(小・中型クラス)用のプラットフォームである既存の「MCプラットフォーム」「新MCプラットフォーム」とほぼ同じです。
もっと細かくいえばTNGA-Cプラットフォームになってからの方がコスト削減のために質の低い鋼材、薄い鋼板を使って作られていることからシャシーやフレームの性能は低くなっていて「進化」ではなく「退化」しています。
これと同じようにDNGA-Aプラットフォームはそれまで使ってきたダイハツ・Aプラットフォームとほぼ同じものでこちらもコスト削減のために性能が退化しているものとなります。
ただ、DNGA-Aプラットフォームはちょっと特別で、このプラットフォームでAセグメント(リッターカークラス)だけを作るのではなく、1つの基礎プラットフォームをつかい、ホイールベースを伸ばしたり縮めたり、エンジンベイを変更したりして軽自動車から1.5リッターエンジンクラスとなるBセグメントといった広い車種をカバーするようになっています。
これは共通プラットフォームを使うことが多い軽自動車と車種が少ないAセグメントを車種の多いBセグメントと共通とすることでより一層のコストダウンを狙ったものと思われます。
要するに「Bセグメント以下は皆同じ」といった、いかにもコスト削減に躍起になっているトヨタグループがやりそうなことです。
これによって・・・
ダイハツ・Aプラットフォーム≒DNGA-Aプラットフォーム
(ほぼ「=」ですが・・・)
ということが言え、パッソ(ブーン)とタンク・ルーミー兄弟モデル(トール)、ライズ(ロッキー)はほぼ同じ車で、ライズ(ロッキー)はパッソ(ブーン)ベースの「なんちゃってクロスオーバーSUV」であることがわかります。
ちなみのどうして「クロスオーバーSUV」ではなく、「なんちゃってクロスオーバーSUV」なのかというとそれはこの後、部分ごとに細かく見ていくことではっきりすると思います。
トヨタ・ライズのこれまでの出来事(2019年11月現在)
●初代モデル A200A/210A系型 2019年11月発売
トヨタ・ライズが属するカテゴリー
●車格:小型大衆モデル
●用途・目的:生活車
●車両カテゴリー:小型クロスオーバーSUV(なんちゃってクロスオーバーSUV)
●エンジン排気量クラス:1リッタークラス
トヨタ・ライズのオーナー層
●年齢層:18歳ぐらいから40歳ぐらいまで
●性別:男性
●経済力:高収入層(新車購入)、大衆層(新車購入)、低収入層(新車購入・中古車購入)
●その他:クロスオーバーSUVをまったく理解していない方が購入する
トヨタ・ライズの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・ガソリンエンジン
●トランスミッション
・CVT
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FF
・スタンバイ式4WD
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:トーションビーム(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
●ベースモデル
・あり・・・トヨタ・パッソ(ダイハツ・ブーン)
●兄弟車
・あり・・・トヨタ・パッソ、ダイハツ・ブーン、トヨタ・タンク、トヨタ・ルーミー、ダイハツ・トール、スバル・ジャスティ
トヨタ・ライズのモデル構成とグレード構成
このモデルは単一モデル構成となっています。
ベースモデル
このモデルには3つのグレードと1つのサブグレードが用意されています。
・X グレード(2WD・4WD)
・X Sサブグレード(2WD・4WD)
・G グレード(2WD・4WD)
・Z グレード(2WD・4WD)
●「X」グレードの主な装備
・195/65R16サイズ タイヤ
・16インチ×6J スチールホイール
・樹脂製フルホイールキャップ
・カラード アウトサイドドアハンドル
・ブラック バックドアガーニッシュ
・UVカット機能付高遮音性グリーン ウインドシールドガラス
・UVカット機能付グリーン フロントドアガラス
・アイドリングストップ機構
・フロント・リヤ スタビライザー
・サイドマッドガード
・ルーフスポイラー
・リヤサイドスポイラー
・UVカット機能付プライバシー リヤドアガラス
・UVカット機能付プライバシー リヤクォーターガラス
・UVカット機能付プライバシー バックドアガラス
・スイッチ式バックドアオープナー
・フロント・リヤ ホイールアーチモールディング
・レバー式パーキングブレーキ
・フロント・リヤ エアスパッツ
・エンジンアンダーカバー&プロテクター
・ヒルスタートアシストコントロール・
・マニュアルレベリング機能付LEDヘッドランプ
・LEDクリアランスランプ
・サイドアンダーミラー付オート電動格納式リモコンカラードドアミラー
・車速感応式・ミスト機能付ウォッシャー連動間欠フロントワイパー(4WDモデルのみ)
・ミスト機能付ウォッシャー連動間欠フロントワイパー(2WDモデルのみ)
・一部LEDリヤコンビネーションランプ
・LEDハイマウントストップランプ
・コンライト
・防眩インナーミラー
・リバース連動間欠リヤワイパー
・リヤウインドゥデフォッガー
・VSC
・TRC
・EBD付ABS
・ブレーキアシスト
・緊急ブレーキシグナル
・運転席・助手席 SRSエアバッグ
・運転席・助手席 SRSサイドエアバッグ
・SRSカーテンシールドエアバッグ
・衝撃感知式フューエルカットシステム
・ウレタン 3本スポークステアリングホイール
・パワー走行モード操作 ステアリングスイッチ
・シングルステッチ セレクターレバーブーツ
・キーフリーシステム
・イモビライザー
・オートアラーム
・運転席 ワンモーションドアアンロック
・オプティトロンメーター
・電動パワーステアリング
・チルトステアリング調整機構
・ワンタッチターンシグナル機能付方向指示スイッチ
・プッシュボタンスタート
・テクスチャー加工シフトベゼル
・シフトロックシステム
・パワードアロック
・パワーウインドウ
・デジタルクロック
・エコドライブインジケーター
・シフトポジションインジケーター
・2スピーカー
・フロントセパレートシート
・リクライニング機構付6:4分割可倒式リヤシート
・全席ヘッドレスト
・ファブリック シート生地
・運転席・助手席 シートヒーター(4WDモデルのみ)
・シルバー塗装 フロントドアグリップ
・フロントドアアームレスト
・メッキ加飾 インサイドドアハンドル
・ブラック センターレジスターリング
・ブラック サイドレジスターリング
・ブラック センターコンソールサイドポケット
・アームレスト付センターコンソールボックス
・2段デッキボード
・クリーンエアフィルター付マニュアルエアコン
・リヤヒーターダクト
・充電用USB端子
・ヒーター付ドアミラー(4WDモデルのみ)
・ウインドシールドデアイサー(4WDモデルのみ)
・PTCヒーター(4WDモデルのみ)
・運転席・助手席カップホルダー
・助手席グローブボックス
・LED照明付センターオープントレイ
・センターコンソール小物入れ
・シルバー塗装 センターコンソールサイド
・運転席・助手席 バニティミラー・チケットホルダー付サンバイザー
・フロントドアポケット
・フロントボトルホルダー
・リヤドアポケット
・助手席シートバックポケット
・アシストグリップ
・デッキフック
・デッキボード下収納
・フロントパーソナルランプ
・ルームランプ
・ラゲージルームランプ
・DC12Vアクセサリーソケット
など
●「X S」サブグレードの主な装備
「X」グレードの装備に加えて・・・
・スマートアシスト(スマートアシストIII):衝突回避支援ブレーキ機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):衝突警報機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):車線逸脱警報機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):車線逸脱抑制制御機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):ブレーキ制御付誤発進抑制機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):先行車発進お知らせ機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):オートハ イビーム
・スマートアシスト(スマートアシストIII):コーナーセンサー
が追加されています。
●「G」グレードの主な装備
「X」グレードの装備に加えて・・・
・16インチ×6J シルバー塗装 アルミホイール
・メッキ アウトサイドドアハンドル
・艶あり黒塗装 バックドアガーニッシュ
・UVカット・IRカット機能付高遮音性グリーン ウインドシールドガラス
・スーパーUVカット・IRカット機能付グリーン フロントドアガラス
・車速感応式・ミスト機能付ウォッシャー連動間欠フロントワイパー
・スマートアシスト(スマートアシストIII):衝突回避支援ブレーキ機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):衝突警報機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):車線逸脱警報機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):車線逸脱抑制制御機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):ブレーキ制御付誤発進抑制機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):先行車発進お知らせ機能
・スマートアシスト(スマートアシストIII):オートハ イビーム
・スマートアシスト(スマートアシストIII):コーナーセンサー
・スマートアシスト(スマートアシストIII):標識認識機能
・シルバー塗装付ウレタン 3本スポークステアリングホイール
・マルチインフォメーションディスプレイ操作 ステアリングスイッチ
・ダブルステッチ セレクターレバーブーツ
・LEDデジタルスピードメーター
・マルチインフォメーションディスプレイ付7インチTFTカラー液晶ディスプレイ
・6スピーカー
・前席レッドパイピング付ファブリック シート生地
・運転席シート上下アジャスター
・レッド&シルバー塗装 フロントドアグリップ
・メッキ加飾 レジスターノブ
・メッキ加飾 パーキングブレーキボタン
・シルバー塗装 センターレジスターリング
・レッド&シルバー塗装 サイドレジスターリング
・レッド センターコンソールサイドポケット
・助手席シートアンダートレイ
・クリーンエアフィルター付オートエアコン
が追加されています。
●「Z」グレードの主な装備
「G」グレードの装備に加えて・・・
・195/60R17サイズ タイヤ
・17インチ×6J 切削光輝+ブラック塗装 アルミホイール
・オートレベリング機能付LEDヘッドランプ
・LEDフロントシーケンシャルターンランプ
・LEDフロントフォグランプ風タウンランプ
・LEDイルミネーションランプ
・LEDリヤフォグランプ
・スマートアシスト(スマートアシストIII):アダプティブドライビングビーム
・スマートアシスト(スマートアシストIII):全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロール
・スマートアシスト(スマートアシストIII):サイドビューランプ
・スマートアシスト(スマートアシストIII):レーンキープコントロール
・シルバー塗装付本革巻 3本スポークステアリングホイール
・全車速追従機能付ACC操作 ステアリングスイッチ
・オーナメント付本革巻き セレクターノブ
・運転席・助手席シートヒーター
・ソフトパッド フロントドアアームレスト
・メッキ加飾 シフトベゼルオーナメント
・ソフトパッドアームレスト付センターコンソールボックス
が追加されています。
トヨタ・ライズに搭載されるパワーユニットと動力性能
トヨタ・ライズには1種類のパワーユニットが設定されています。
●1リッターターボエンジン
・エンジン型式:1KR-VET型
・エンジン排気量:996cc
・エンジン形状:直列
・シリンダー数:3気筒
・バルブ構造:DOHC12バルブ
・燃料供給:ポート噴射
・過給器:ターボチャージャー
◆スペック
・最大出力:98ps/6000rpm
・最大トルク:14.3kgf・m/2400rpm~4400rpm
・1リッターあたりのパワー:約98ps
・パワーウェイトレシオ:約10kg/ps
このエンジンは、パッソやブーンに搭載されているダイハツ製1KR-FE型をターボチャージ化させたもので、このモデル以外にもトヨタ・タンク、トヨタ・ルーミー、ダイハツ・トール、スバル・ジャスティにも搭載されています。
パワースペック的にはどうなのでしょう、これが1リッターのNAエンジンで98psを発生させているのであれば褒めるべきところですが、ターボエンジンでこの数字はかなりガッカリするところです。
現在の技術であれば、過給器なしでリッターあたり100psは余裕で出すことができるのにターボチャージャーをつけても100psに達しないのはいただけません。
これが女性向けハッチバックモデルのパッソ(ブーン)や大衆ファミリーカーのタンク・ルーミー兄弟モデル(トール)、スバルのジャスティならまだ理解できますが、多少のオフロード走行性能も持っていなければならないクロスオーバーSUVとして作られたライズにおいて、この非力なパワーはオフロードのみならずオンロードの走りもかなり貧弱といえるでしょう。
この点がライズが「クロスオーバーSUV」ではなく、「なんちゃってクロスオーバーSUV」である理由のひとつです。
※パワーユニットの評価:★☆☆☆☆(1)
トヨタ・ライズに採用されているトランスミッション
●CVT
ライズでは全モデルにCVTが採用されています。
まずCVTが採用されている時点で「クロスオーバーSUV」失格でこのライズという車が「なんちゃってクロスオーバーSUV」であるといえるでしょう。
このCVTは、ダイハツ製の「D-CVT」と呼ばれるもので、軽スーパーハイトワゴンのタントに採用されているものと同じものです。
従来のベルト変速機にプラネタリーギヤを挟んで直接的にギヤで駆動させる機能が付けられたもので、CVT特有のベルト滑りによるパワーロス、加速不足、燃費性能の悪化を軽減することができるとされています。
仕組みとしてはスピードレンジやスピードの変化に応じて、「ベルト駆動10:ギヤ駆動0」から「ベルト駆動1:ギヤ駆動9」の間で、内部のクラッチとプラネタリーギヤによって駆動配分を変化させるといった形になります。
ただ構造的にギヤ駆動が優先となるのは、スピードが安定した中・高速域だけで、オンロードモデルのようにそういった走りだけをするだけであればある程度の恩恵はありますが、スピードレンジが低くゴーストップの多い街乗りやクロスオーバーSUVらしい低速域で多少のオフロード走行ではほぼ普通のCVTと同様に完全ベルト駆動で、D-CVTのメリットを生かすことはできません。
それにそもそもクロスオーバーSUVにCVTはあり得えません。
実際の走りにおいても70km/h以上で一定のスピードを保っていないとCVT特有の「ベルトズルズル」の走りしかできません。
※トランスミッションの評価:☆☆☆☆☆(0)
トヨタ・ライズの走行性能を決める構造
トヨタ・ライズのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
冒頭でも言いましたようにライズ(ロッキー)には、DNGA-Aプラットフォームという名称が付けられたダイハツ・Aプラットフォームが採用されています。
パッソやブーン、タンク、ルーミー、トール、ジャスティでもおなじみのプラットフォームですが、DNGA-Aプラットフォームと改名されてからというもの更にコスト削減策が取り入れられており、シャシーやフレームの剛性、強度、耐久性が著しく低下しています。
そもそも1万キロも走らないうちにグニャグニャになるボディとシャシーを持つ軽自動車のタントと基本部分を同じとするものを登録車のリッターカー、それも多少なりともオフロード走行を強いられるクロスオーバーSUVに使ってはいけません。
この部分もこのモデルが「クロスオーバーSUV」ではなく「なんちゃってクロスオーバーSUV」である所以です。
※ボディ剛性の評価:☆☆☆☆☆(0)
トヨタ・ライズの走りの質を決めるサスペンション構造
サスペンション構造もダイハツ・Aプラットフォームを使って作られているパッソ(ブーン)と全く同じ・・・
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:トーションビーム
が採用されています。
ただ、1つだけパッソ(ブーン)と違う部分があって、パッソ(ブーン)では、4WDモデルにはトレーリングアーム式コイルリジットサスペンションが採用されていたのですが、このライズ(ロッキー)では、リヤデファレンシャルギヤをシャシー側に固定する形を取ったことで4WDモデルにもトーションビームが採用されています。
・・・ん~、やっていることが全く逆です、これがオンロードモデルであれば最悪のサスペンション構造と呼ばれているトーションビームでもなんとか我慢して対応できますが、多少なりともオフロード走行が強いられるこのライズ(ロッキー)では4WDモデルをトーションビームにするのではなく、全てのモデルでトレーリングアーム式コイルリジットサスペンションにするべきでした。
実はこれはダイハツ・Aプラットフォーム(DNGA-Aプラットフォームも含む)を使うモデル、すべてにおいてリヤサスペンションをトーションビームにすることで部品のコストを抑えることができるからで、それで4WDモデルには全く向かないトーションビームをリヤデファレンシャルギヤケースを無理やりやシャシーに固定して採用することになったわけです。
トヨタグループにとってはメリットして働きますが、クロスオーバーSUVとしての車体や消費者にとってはデメリットでしかありません。
これもこのモデルが「クロスオーバーSUV」ではなく「なんちゃってクロスオーバーSUV」である理由のひとつです。
※サスペンション構造の評価:☆☆☆☆☆(0)
トヨタ・ライズのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
ブレーキシステムもこれもまたパッソやブーン、タンク、ルーミー、トール、ジャスティと全く同じ・・・
・フロント:1ポットフローティングキャリパー+ベンチレーテッドディスクのディスクブレーキ
・リヤ:リーディング・トレーリングのドラムブレーキ
が採用されています。
いわゆる生活向け大衆車のブレーキシステムというやつで、決してクロスオーバーSUVに適したものではありません。
ただ、街乗りレベルの走りであれば十分対応できているようです。
※ブレーキシステムの評価:★☆☆☆☆(1)
トヨタ・ライズに搭載されている4WDシステム
ベースモデルのパッソ(ブーン)や兄弟モデルのタンク、ルーミー、トール、ジャスティでは4WDモデルに与えられる4WDシステムを一番簡易的なビスカスカップリングを用いたスタンバイ4WDシステムとしていましたが、このライズ(ロッキー)には、C-HRやRAV4の一部モデルといったトヨタの「なんちゃってクロスオーバーSUV」シリーズにすでに採用されている「ダイナミックトルクコントロール4WD」が搭載されています。
これはビスカスカップリングに変わり、電子制御式のカップリング(湿式多板クラッチ)を使ったもので、完全受動型であったビスカスカップリングに対して部分的に能動的な動きをするようになりました。
といっても通常は完全FF状態で、フロントタイヤの空転時、ゼロ発進時、低速域での加速時、上り坂を検知した時だけリヤタイヤにもトラクションを与えて4WD状態になるといった形でスタンバイ4WDシステムの域を出ていません。
ですので、オンロードでの走りがよくなるわけでもなく、オフロードでのトラクション性能が劇的によくなるわけでもなく、生活圏内で滑りやすい路面に出くわしてしまった時に重宝するといった感じの「生活四駆」以外の何物でもありません。
タイヤが1つでも浮いてしまったらそれでおしまいです。
JAFのお世話になります。
※4WDシステムの評価:★☆☆☆☆(1)
トヨタ・ライズの燃費性能
トヨタ・ライズのカタログ燃費と実燃費
●2WDモデル
・カタログ燃費(WLTCモード):最大18.6km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・市街地):最大14.4km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・郊外):最大20.2km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・高速道路):最大20.1km/L
・実燃費:約12km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
●4WDモデル
・カタログ燃費(WLTCモード):最大17.4km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・市街地):最大13.3km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・郊外):最大18.8km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・高速道路):最大19.0km/L
・実燃費:約10km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
これがトヨタオリジナルモデルということであればハイブリッドシステムの採用で劇的なカタログ燃費をみることになると思うのですが、このモデルはハイブリッドシステムを持たないダイハツが作った車であるため、頑張ってもこれくらいにしかなりません。
それでも実燃費で10km/L以上走りますので十分ではないでしょうか。
トヨタ・ライズに採用されている低燃費装備
●全モデル
・可変バルブタイミング機構
・CVT
・電動パワーステアリング機構
・充電制御
・アイドリングストップ機構
トヨタ・ライズのライバルモデル比較
トヨタ・ライズのライバルとなるのはスズキ・クロスビー
ライズはダイハツの1リッターターボエンジンを搭載する「なんちゃってクロスオーバーSUV」です。
となるとライバルとなるのはスズキから同じく1リッターターボエンジンを搭載した「なんちゃってクロスオーバーSUV」として発売されているクロスビーでしょう。
クロスビーもスイフトやソリオなどといったスズキの小型モデル共通プラットフォームを使って作られたクロスオーバーSUVで、エンジンバリエーションは1リッターの直噴ターボエンジンに簡易的なハイブリッドシステムを搭載したハイブリッドモデルだけとなります。
●トヨタ・ライズの概要
・カテゴリー:小型クロスオーバーSUV(なんちゃってクロスオーバーSUV)
・車格:小型大衆モデル
・エンジン排気量:約1リッター
・エンジン形式:1KR-VET型
・比較対象グレード:「Z」グレード
●スズキ・クロスビーの概要
・カテゴリー:小型クロスオーバーSUV(なんちゃってクロスオーバーSUV)
・車格:小型大衆モデル
・エンジン排気量:約1リッター
・パワーユニット形式:K10C型+WA05A型
・比較対象グレード:「HYBRID MZ」グレード
トヨタ・ライズとスズキ・クロスビーのパワースペック比較
●トヨタ・ライズ
・最大出力:98ps/6000rpm
・最大トルク:14.3kgf・m/2400rpm~4400rpm
●スズキ・クロスビー
・システムパワー:99ps
※パワースペック比較結果
クロスビーはハイブリッドモデルとなるため一応はシステムパワーとなりますが、簡易型ハイブリッドシステムであるため、電気モーターのパワーがモアパワーとならず、実際にはエンジンだけのパワースペックとなります。
わずか1psの違いしかありませんので動力性能はほぼ同じといっていいでしょう。
トヨタ・ライズとスズキ・クロスビーの燃費性能比較
●トヨタ・ライズ(4WDモデル)
・カタログ燃費(JC08モード):最大22.8km/L
・実燃費:約10km/L
●スズキ・クロスビー(4WDモデル)
・カタログ燃費(JC08モード):最大20.6km/L
・実燃費:約15km/L
※燃費性能比較結果
カタログ燃費ではライズの方が上回っているのに実燃費では大逆転・・・トヨタグループの車ではよくあることです。
トヨタ・ライズとスズキ・クロスビーの販売価格帯比較
ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。
●トヨタ・ライズ
約168万円~約206万円
●スズキ・クロスビー
約179万円~約222万円
※販売価格帯比較結果
全体的にクロスビーの方が高い設定となっていますが、この差額はハイブリッドシステムの金額と解釈していいと思います。
まとめ
トヨタグループの自動車メーカーというのはとことん新規モデルを作りたがらないことがよくわかります。
ZVW50型プリウスから始まったC-HR、UX、カローラ、カローラ・ツーリング、カローラ・スポーツといった小・中型兄弟モデルだけでなく、ダイハツのブーンから始まったパッソ、トール、タンク、ルーミー、ジャスティ、そして今回のライズ、ロッキーと、1つのモデルを飽きられるまで、使いまわしがバレて悪評が広がる前まで徹底的に使いまわすのには驚きや恐怖さえ感じます。
そのうちダイハツやトヨタの車はみんな同じ車でボディ形状が違うだけになってしまうのではないかと思ってしまいます。
クロスオーバーSUVとしてもエンジンはパワーがない、サスペンションはトーションビーム、ボディやシャシーはフニャフニャ、4WDシステムはスタンバイ4WDといった感じで最悪の出来で、まさしくC-HRやRAV4、ハリアーと同じようにオンロードしか走れない「なんちゃってクロスオーバーSUV」として普通のハッチバックモデルと同じ扱いをするのが正しい扱い方であるようです。
※総合評価:★☆☆☆☆(1)