タクシーというとそれまでは小型セダンや中型セダンモデルのエンジンをLPGエンジンに載せ替えたものを使うというのが一般的でしたが、ここ最近はプリウスなどといったハイブリッドカーを使うようになり、更に現在ではタクシー専用モデルとして作られたトヨタのジャパンタクシーというモデルを使うようになってきました。
実はこのジャパンタクシー、個人でも購入することができ、パーソナルカーとしての需要もわずかながらにあるようです。
ここではこのトヨタのジャパンタクシーがどういう車なのかということと同時に、タクシー専用車としてではなくパーソナルカーとしてどれくらいに性能を持っているのかを検証してみたいと思います。
※ご注意
ここではトヨタ・ジャパンタクシーの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。
目次
トヨタ・ジャパンタクシーも使いまわしの流用・転用モデルだった
トヨタのジャパンタクシーは、それまでトヨタがタクシー専用モデルとして発売してきたマークIIベースの「コンフォート」、クラウンベースの「クラウン・コンフォート」に代わる次世代として作られたモデルです。
国土交通省が認定する「ユニバーサルデザインタクシー車両」に合わせたつくりがされており、購入する際にタクシー会社に対して(個人ではないところに注意!)国と都道府県から補助金が支給されています。
ちなみに東京都にあるタクシー会社には国と東京都から約120万円ぐらいの補助金が税金から支払われているようです。
ユニバーサルデザインタクシー車両とは?
ユニバーサルデザインタクシー車両とは国土交通省が定めるユニバーサルデザイン認定制度によるもので、公共的な交通手段となるタクシーにおいて、健常者はもちろんのこと、妊婦、子供連れ、高齢者、身体障碍者、車いす利用者などが快適かつスムーズに乗り降りでき、差別なく快適に利用することができる構造を持っているタクシー車両に対して与える称号です。
この制度が始められたのは2012年3月のこと、でこの制度に認定されますと先ほど言いましたように購入時に補助金が支給されたり、道路交通法で定められた規定の内、一部の規定が除外されるなどのメリットがあります。
この制度が始められた表向きの理由は、健常者のみならず、いろいろな理由でハンディキャップを持つ方にやさしい交通手段を確保する、使いやすい交通手段を用意するといったことらしいですが、実際にはそれだけでなく…というよりそれは理由の中でほんのわずかな部分でしかなく、本当の理由はラグビーワールドカップやオリンピックなどの国際的なイベントにおいて大量の外国人観光客が日本国内に流入してくることを想定し、その外国人観光客の移動手段の確保と「日本は障碍者や高齢者にも優しい国ですよ」ということを周知させるためのものともいわれています。
ジャパンタクシーは本当のユニバーサルデザインタクシーなのか?
ユニバーサルデザインタクシーに認定されているトヨタのジャパンタクシー、さぞかし優しい車に作られているのかと思いきやそれが意外にも結構ざっくりとした作りになっていて、それによって実際のサービスにおいても不具合が出ているようです。
その1つが車椅子を載せることがかなり面倒であるという点です。
ジャパンタクシーでは、リヤシートの座面をチップアップさせて確保したスペース、要するにフロントシートのシートバックとリヤシートのシートバックの間のスペースの助手席側に車椅子を載せる形を取ります。
そこにアクセスするのは助手席側のスライドドアからで、スライドドアを開けたところに専用のスロープを設置して、車椅子を載せる…簡単にいえばこういうことなのですが、スロープを設置するのにかなり煩雑な作業が必要となり、トヨタが言うように4分以内に車椅子を車に乗せるのは至難の業です。
2019年3月以降のモデルで車椅子を載せる行程を見てみますと…
手順1…運転席を前倒しにする(作業スペースの確保)
手順2…助手席側のヒンジドアとスライドドアを開ける
手順3…助手席を前倒しにして前側へスライドさせる(車椅子を載せるスペースの確保)
手順4…リヤシートの座面をチップアップさせる(車椅子を載せるメインスペースの確保)
手順5…リヤシート座面下に置いてあったアルミ製の2枚折りメインスロープを取り出す
手順6…メインスロープを展開してスライドドアの部分にかける
手順7…リヤハッチを開けてリヤラゲッジスペースから樹脂製の延長スロープを取り出す
手順8…メインスロープの下側に延長スロープを置き、固定する
手順9…車椅子を乗せる
手順10…助手席側から車に乗り込んで、車内で車椅子をベルトで固定する
手順11…メインスロープ、延長スロープを取り外し、リヤラゲッジスペースにしまう
手順12…リヤハッチ、スライドドア、助手席ヒンジドアを閉める
手順13…運転席を通常の位置に戻して車に乗り込む
手順14…出発
ある意味で車椅子のお客様にも完全対応となるユニバーサルデザインタクシーでこれだけの工程を経ないとたった1台の車椅子を乗せることができないのはどうなのでしょうか。
これだけの作業を行うのにトヨタでは4分以内でできるとしていますが、毎日毎日この作業を繰り返しているドライバーでも環境が悪いとまず無理でしょう。
現にトヨタのジャパンタクシーのWebカタログを見ると車椅子を載せることを解説したページのところに「スロープ設置から車椅子の固定などにかかる時間は3分程度」と書かれている文章の注釈として小さく「作業の習熟度が高い方の場合」と記載されています。
そして更にスロープを設置するスペースを車の横に確保するのは都心部ではまずできませんし、仮に4分以内で車椅子を乗せることができても、他の車の通行の邪魔になってしまい、都心部では大渋滞を作るきっかけとなってしまいます。
実はこういったことはタクシードライバーは承知の上で、これを避けるための対策を取っています。
その対策とは…乗車拒否です。
これは実際に行われていることで国やトヨタにも苦情が寄せられていることであるため事実です。
車椅子を見かけると無視する、そっぽを向く、スピードを上げる、急に「送迎」モードに切り替えるなどといったことがされています。
確かにそのような煩雑な作業が付きまとい、時間を浪費する車椅子のお客様を乗せるよりもドライバーが車を降りることなくわずか5秒で乗せることができる健常者を乗せた方がドライバーにもタクシー会社にも金銭的なメリットがあるので、そうなってしまうのも仕方ないのかもしれません。
しかし、このジャパンタクシーは税金から支払われた補助金を使って購入される車ですので、そういったことになってしまう原因となる車ではいけないのです。
ジャパンタクシーはシエンタの使いまわし
ジャパンタクシーはタクシー専用モデルとして作られている車ですが、タクシーのために1から開発をし設計図を起こして作るオリジナルモデルを投入するわけがありません。
コスト削減のために、ベースはアクアベースで作られた小型ミニバンのシエンタを「流用・転用モデル」として使用しています。
エンジンベイを含めたフロント部分をアクアやヴィッツなどと同じ小型モデル用のプラットフォームとし、キャビンより後ろをひと昔前まで中型モデル用のプラットフォームとして使っていたMCプラットフォームをつなぎ合わせる形で作られた2代目シエンタのシャシーを使って、リヤサスペンションをタクシーならでは酷使に耐えられるようにとトーションビーム式からプロボックスやサクシードに使われているトレーリングアーム式コイルリジットサスペンションに置き換えたものを土台とし、そしてジャパンタクシー専用のボディを載せる形で構成されています。
パワーユニットはガソリン仕様からLPG仕様に変更した1.5リッターNAエンジンにシエンタと全く同じリダクション機構付きTHS-IIとなります。
要するにボディ形状とインテリア、リヤサスペンション構造、エンジンの燃料が違うだけのシエンタということです。
トヨタ・ジャパンタクシーのこれまでの出来事(2019年10月時点)
●初代モデル NTP10型 2017年10月発売
・2018年4月 イメージダウンを回避すべく「Toyota Safety Sense C」を「Toyota Safety Sense」に改名
・2019年3月 一部改良 車椅子の乗降仕様の変更
トヨタ・ジャパンタクシーが属するカテゴリー
●車格:小型タクシーモデル
●用途・目的:業務用 生活用
●車両カテゴリー:トールワゴン
●エンジン排気量クラス:1.5リッターハイブリッドクラス
トヨタ・ジャパンタクシーのオーナー層
●年齢層:特になし
●性別:特になし
●経済力:高収入層(新車購入)、大衆層(新車購入)、
●その他:主にタクシー会社に買われるが送迎用の車両としても買われている。かなり少数派だが個人で買う方もいる
トヨタ・ジャパンタクシーの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・LPGエンジン+ハイブリッドシステム
●トランスミッション
・ギヤ式無段変速機
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FF
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:トレーリングアーム式3リンクコイルリジットサスペンション(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
●ベースモデル
・あり…シエンタ(アクア)
●兄弟車
・あり…シエンタ
トヨタ・ジャパンタクシーのモデル構成とグレード構成
ジャパンタクシーは単一モデルとなります。
ベースモデル
このモデルには2つのグレードが用意されています。
・和 グレード(2WD)
・匠 グレード(2WD)
●「和」グレードの主な装備
・185/65R15サイズ タイヤ
・15インチ×5.5J スチールホイール
・樹脂製 シルバーメタリック塗装 フルホイールキャップ
・シルバー塗装+素地 フロントグリル
・高遮音性ガラス・IRカット機能付グリーン合わせ ウインドシールドガラス
・スーパーUVカット機能・IRカット機能付 フロントドアガラス
・スーパーUVカット機能・IRカット機能付プライバシー リヤドアガラス
・UVカット機能付プライバシー リヤクォーターガラス
・プライバシー バックドアソフトガラス
・Toyota Safety Sense(Toyota Safety Sense C):プリクラッシュセーフティ
・Toyota Safety Sense(Toyota Safety Sense C):レーンディパーチャーアラート
・Toyota Safety Sense(Toyota Safety Sense C):オートマチックハイビーム
・先行車発進告知機能
・ヒルスタートアシストコントロール
・車両接近通報装置
・ドアオープンランプ
・S-VSC
・運転席/助手席 SRSエアバッグ
・運転席/助手席 SRSサイドエアバッグ
・SRSカーテンシールドエアバッグ
・ハロゲンヘッドランプ
・クリアランスランプ
・リヤコンビネーションランプ
・電動リモコンフェンダーミラー
・4.2インチTFTカラー マルチインフォメーションディスプレイ
・助手席側パワースライドドア
・ブラック ウレタン3本スポークステアリングホイール
・ステアリングスイッチ
・ブラック セレクターレバー&ノブ
・ワイヤレスドアロックリモートコントロール
・合成皮革 シート生地
・運転席 6ウェイマニュアル調整機能付シート
・助手席 タンブル機能/4ウェイマニュアル調整機能付シート
・上下調整式運転席ヘッドレスト
・格納式 助手席ヘッドレスト
・固定式リヤヘッドレスト
・後席6:4分割チップアップシート
・ブラック サイドレジスター
・イエロー パワーウインドゥスイッチベゼル
・イエロー リヤドアトリムオーナメント
・センター・リヤピラーアッパーガーニッシュ
・リヤドアトリムロア
・シートバックアシストボード
・後席左側 乗降用アシストグリップ
・後席左右 つり革型アシストグリップ
・後席左側 チャイルドグリップ
・運転席・助手席・リヤ右側 ブラック インサイドドアハンドル
・助手席・リヤ右側 イエロー ドアプルハンドル
・料金トレー
・クリーンエアフィルター付オートエアコン
・ナノイー
・日報灯
・ドア連動 リヤルームランプ
・左右 リヤ読書灯
・リヤ足元イルミネーション
・イモビライザーシステム
・LPG燃料冷却装置
・足踏み式パーキングブレーキ
・フロント スタビライザー
・EBD付ABS
・ブレーキアシスト
・LEDハイマウントストップランプ
・後席右側 チャイルドプロテクター
・ドライブスタートコントロール
・緊急ブレーキシグナル
・ウォッシャー連動時間調整式間欠フロントワイパー
・間欠リヤワイパー
・防眩インナーミラー
・タイマー付リヤウインドゥデフォッガー
・デジタル時計
・チルトステアリング調整機能
・パワーウインドウ
・ドアキー連動電気式ドアロック
・ドアアームレスト(運転席)
・ボトルホルダー付運転席ドアポケット
・ドアスカッフプレート
・リヤヒーターダクト
・フロントコンソールボックス
・運転席チケットホルダー+バニティミラー付サンバイザー
・デッキボード
・DC12V アクセサリーソケット
・ラゲージトレイ
・デッキフック
など
●「匠」グレードの主な装備
「和」グレードの装備に加えて
・樹脂製 スーパークロムメタリック塗装 フルホイールキャップ
・ボディ色塗装+中央部ブラック塗装 フロントバンパー
・ボディ色塗装 リヤバンパー
・メッキ+ブラック塗装 フロントグリル
・スーパーUVカット機能・IRカット・遮音性機能付プライバシー リヤドアガラス
・UVカット機能付プライバシー厚板 リヤクォーターガラス
・ボディ色+メッキ リヤ左側サイドプロテクションモール
・メッキ バックドアガーニッシュ
・メッキ アウトサイドドアハンドル
・Bi-Beam LEDヘッドランプ
・LEDクリアランスランプ
・LEDデイライト
・コンライト
・リヤランプ付リヤコンビネーションランプ
・メッキ 電動リモコンフェンダーミラー
・サテンメッキ加飾 ウレタン3本スポークステアリングホイール
・サテンメッキ加飾 セレクターレバー&ノブ
・ステッチ付合成皮革 シート生地
・リヤシートヒーター
・クロムメッキ加飾 サイドレジスター
・サテンメッキ加飾 パワーウインドゥスイッチベゼル
・合成皮革+ステッチ付+サテンメッキ調加飾 リヤドアトリムオーナメント
・植毛 センター・リヤピラーアッパーガーニッシュ
・カーペット材 リヤドアトリムロア
・運転席・助手席・リヤ右側 サテンメッキ加飾 インサイドドアハンドル
・助手席・リヤ右側 サテンメッキ加飾 ドアプルハンドル
・サテンメッキ加飾 天井サーキュレーター
が追加されています。
トヨタ・ジャパンタクシーに搭載されるパワーユニットと動力性能
トヨタ・ジャパンタクシーには1種類のパワーユニットが設定されています。
●1.5リッターLPG仕様NAエンジン+ハイブリッドシステム
○エンジン
・エンジン型式:1NZ-FXP型
・エンジン排気量:1496cc
・エンジン形状:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・燃料供給:ポート噴射
・特別な機能:可変バルブタイミング機構によるミラーサイクル制御
○電気モーター
・電気モーター形式:2LM型
○ハイブリッドシステム:リダクション機構付きTHS-II
○ハイブリッドバッテリー:ニッケル水素バッテリー
◆スペック
○エンジン
・最大出力:74ps/4,800rpm
・最大トルク:11.3kgf・m/2,800~4,400rpm
○電気モーター
・最大出力:61ps
・最大トルク:17.2kgf・m
○システムパワー:100ps
・1リッターあたりのパワー:約66.6ps
・パワーウェイトレシオ:約14.1kg/ps
このパワーユニットはハイブリッドモデルに用意されているものです。
ベースモデルとなるシエンタのハイブリッドモデルのエンジンをガソリンエンジンからLPGエンジンに変更したものです。
※ジャパンタクシーのLPGエンジンとは
LPGエンジンとはプロパンガスを燃料としたエンジンです。
プロパンガスは地方都市などで家庭用のガスとして使われているものと基本的には同じもので、それをガソリンの代わりに使います。
エンジンの構造は、ガソリンを使用したエンジンとさほど違いはなく、このジャパンタクシーにおいてはシエンタやそのまたベースモデルとなるアクアに搭載されている1NZ-FXE型エンジンに、耐久性を高めるための手段として、ピストン、ピストンリング、バルブシートの変更やバルブ構造をローラーロッカーアーム式にしたこと、センサー付のスパークプラグの使用、高圧に耐える専用のインジェクターを使用するなどといった程度の変更点を与えたものとしています。
それと当然ながらガソリンタンクの代わりにLPGボンベが必要になりますので、シエンタではセカンドシートの下に位置に置かれていたガソリンタンクの代わりにリヤラゲッジスペースの位置に52リッターが収まるLPGタンクが置かれていて、そこからのエンジンルームまでに伸びる燃料パイプも高圧に耐えられる強化品に交換されています。
パワースペックもさることながらシエンタやアクアのエンジンと同じエンジンと思っていいと思います。
パワー的には約1.4トンの車体に100psですので十分とは言えません。
トヨタ・ジャパンタクシーに採用されているトランスミッション
●ギヤ式無段変速機
LPGエンジンを使ったハイブリッドモデルと言ってもハイブリッドシステム自体がシエンタやアクアなどと全く同じ、しいてはトヨタのハイブリッドモデル全モデルと共通のものですので、トランスミッションもリダクション機構付きTHS-IIで標準装備となる「電気式無段変速機」が採用されています。
このトランスミッションは、トランスミッションとしてだけの機能だけでなく、ハイブリッドシステムの動力減の切り替え、分配、発電制御などを行うギヤボックスとしても機能しているもので、いわばハイブリッドシステムの一部となるものです。
その中で無段変速を実現しているわけですが、無段変速機といってもCVTのように金属ベルトを使っているわけではなく、プラネタリーギヤの組み合わせで無段変速機能を持たせていることからパワーロスが少なく、走行フィーリングの悪さもあまりありません。
ただ、それでも無段変速機特有のメリハリの無い走りは改善されていません。
※トランスミッションの評価:★☆☆☆☆(1)
トヨタ・ジャパンタクシーの走行性能を決める構造
トヨタ・ジャパンタクシーのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
冒頭でも言いましたようにジャパンタクシーはシエンタのシャシーを使って作られいています。
シエンタのシャシーといえば前半分は小型モデル用のBプラットフォーム、後ろ半分は昔の中型モデル用のMCプラットフォームを繋いで作られたもので、シャシーが波打つかのようにグニャグニャと捻じれながら走ることで有名なものなのですが、それをそのままタクシー専用モデルのジャパンタクシーに採用してしまってはボディ剛性とか走行性能とかいう以前に耐久性が著しく悪くなってしまうため、そのシャシーやボディフレームにかなりの補強を施したものをこのジャパンタクシーに採用しています。
それでももともとのシャシー、フレームが軟弱なため「優れたボディ剛性」とまでは言えませんが、レクサス店販売のLSと同じぐらいボディ剛性、強度、それ以上の耐久性を持っている頑丈な車体といっていいでしょう。
※ボディ剛性の評価:★★★☆☆(3)
トヨタ・ジャパンタクシーの走りの質を決めるサスペンション構造
ベースモデルのシエンタと大きく違う部分のひとつがこのサスペンション構造です。
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:トレーリングアーム式3リンクコイルリジットサスペンション
フロントサスペンションこそシエンタと全く同じですがリヤサスペンションは耐久性を考えて最悪のFF向けサスペンションのトーションビームからライトバンのサクシード・プロボックス兄弟モデルに採用されているトレーリングアーム式のリジットサスペンションに変更されています。
このサスペンション構造は走行性能を向上させるようなものではありませんが、耐久性はかなり向上しています。
※サスペンション構造の評価:★★★☆☆(3)
トヨタ・ジャパンタクシーのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
ブレーキシステムもベースモデルのシエンタとはちょっとだけ違いがもうけられています。
・フロント:1ポットフローティングキャリパー+ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
フロントは同じ1ポットのベンチレーテッドディスクブレーキとなりますが、リヤブレーキは定員が5人とシエンタより少ない設定になっているのとランニングコスト、耐久性の観点からドラムブレーキにされています。
実際、これで十分な効き目を発揮しているので問題ないでしょう。
ただし、山道・峠道は要注意です。
※ブレーキシステムの評価:★★☆☆☆(2)
トヨタ・ジャパンタクシーの燃費性能
トヨタ・ジャパンタクシーのカタログ燃費と実燃費
ジャパンタクシーはLPGエンジンを搭載するモデルですので通常のガソリンエンジンモデルと同様にリッターあたりでどれくらい走るのかという形で出してもあまりピンとこないと思いますので、ここでは1kmの距離を走るのにどれくらいの燃料代が掛かるのかを見ていきたいと思います。
○計算に使用するデータ
・カタログ燃費(JC08モード):19.4km/L
・実燃費:約12km/L
・LPガス単価:1リッターあたり80円
○カタログ値計算
80円(LPガス1リッター分の価格)÷19.4km/L(カタログ燃費)=約4.12円
・カタログ値:約4.12円/km
○実値計算
80円(LPガス1リッター分の価格)÷12km/L(実燃費)=約6.6円
・実値:約6.6円/km
※参考値(ガソリン単価=137円 1kWhあたりの電気代=約30円)
・シエンタ(ガソリンエンジンモデル) 実燃費=約12km/L:約11.4円/km
・シエンタ(ハイブリッドモデル) 実燃費=約15km/L:約9.13円/km
・アクア 実燃費=約25km/L:約5.48円/km
・プリウス 実燃費=約25km/L:約5.48円/km
・i-MiEV(EV):約4円/km
・リーフ(62kWhモデル):約4.42円/km
燃料単価は劇的に安いですが燃費性能自体があまり良くないので、ガソリンエンジンのハイブリッドモデルと同等レベルといったところになります。
※燃費性能の評価:★★★☆☆(3)
トヨタ・ジャパンタクシーに採用されている低燃費装備
●全モデル
・ハイブリッドシステム
・可変バルブタイミング機構
・ギヤ式無段変速機
・電動パワーステアリング機構
・アイドリングストップ機構
トヨタ・ジャパンタクシーのライバルモデル比較
トヨタ・ジャパンタクシーのライバルとなるのは日産・NV200タクシー
トヨタのタクシー専用モデルがジャパンタクシーならライバルは日産のタクシー専用モデルであるNV200タクシーということになるでしょう。
NV200タクシーは中型ワンボックスバン、ワンボックスワゴンのNV200をベースにして作られたタクシー専用モデルで1.6リッターガソリンエンジンモデルとガソリン・LPGの両方の燃料を使うことができるLPGバイフューエルモデルの2つのバリエーションがあります。
ジャパンタクシーがLPGモデルということで、ここではLPGバイフューエルモデルで比較してみたいと思います。
●トヨタ・ジャパンタクシーの概要
・カテゴリー:トールワゴン
・車格:小型タクシーモデル
・エンジン排気量:約1.5リッター
・パワーユニット形式:1NZ-FXP型+2LM型 リダクション機構付きTHS-II
・比較対象グレード:「和」グレード
●日産・NV200タクシーの概要
・カテゴリー:ワンボックスワゴン
・車格:中型タクシーモデル
・エンジン排気量:約1.6リッター
・エンジン形式:HR16DE型
・比較対象グレード:「NV200タクシーユニバーサルデザイン」グレード
トヨタ・ジャパンタクシーと日産・NV200タクシーのパワースペック比較
●トヨタ・ジャパンタクシー
○エンジン
・最大出力:74ps/4,800rpm
・最大トルク:11.3kgf・m/2,800~4,400rpm
○電気モーター
・最大出力:61ps
・最大トルク:17.2kgf・m
システムパワー:100ps
●日産・NV200タクシー
・最大出力:109ps/6,000rpm
・最大トルク:15.5kgf・m/4,400rpm
※パワースペック比較結果
エンジン排気量が100ccほど違いますが、ジャパンタクシーはハイブリッドモデルであるためその分を電気モーターで補っています。
トヨタ・ジャパンタクシーと日産・NV200タクシーの燃費性能比較
●トヨタ・ジャパンタクシー
・カタログ燃費(JC08モード):19.4km/L
・実燃費:約12km/L
●日産・NV200タクシー
・カタログ燃費:非公開
・実燃費:約11km/L
※燃費性能比較結果
NV200タクシーのLPGバイフューエルモデルは、HKSによる改造車扱いになりますので、カタログ燃費の公表はされていませんが、実燃費だけで比べて見ると同じぐらいであることがわかりました。
ただし、NV200タクシーの方はガソリンを使うことも想定してですので、燃料費としてはジャパンタクシーの方が安く済むと思われます。
トヨタ・ジャパンタクシーと日産・NV200タクシーの販売価格帯比較
●トヨタ・ジャパンタクシー
約333万円~約356万円
●日産・NV200タクシー
約281万円~約301万円
※販売価格帯比較結果
まとめ
タクシーモデルというと法人が購入して業務に使うものというイメージがありますが、シエンタベースのジャパンタクシーは、パーソナルユースとしても十分に使える車であることがわかりました。
もちろん法的にも個人が購入してマイカーとして使うことができます。
むしろ軟弱ボディでサードシートがほとんど使えないシエンタのハイブリッドモデルを買うよりもこのジャパンタクシーを買ってトールワゴンとして割り切って使った方が使い勝手が良いように思えます。
燃料のLPGもタクシー同様にガススタンドに乗り入れてタクシーの運転手と並んで補給することも可能ですし、タクシー会社がある地域には必ず一つはガススタンドがあるので補充に困ることもないでしょう。
多分、この時が「LPGモデルにしてよかった!」と一番思う時ではないかと思います。
とにかく燃料代が安い、満タンにしても4,000円以下で済みます。
走りの性能は決して褒められたものではありませんが生活用の車として使うのであれば、全く問題はないと思います。
※総合評価:★★★☆☆(3)