軽自動車のすべてを完全子会社であるダイハツからの書類上だけのOEM供給でまかなっているトヨタ、これまで軽大衆乗用モデルや商用モデルといった需要がそこそこありそうなものだけのOEM供給を受けていましたが、今度は何とほとんど売れていないデートカーを、それもかなりの「飾りつけ」をしてスポーツモデル的な売り方をする形で販売することにしたのです。
それがトヨタ・コペン・GRスポーツです。
トヨタとしてはこのモデルをどうしてもスポーツモデルとして売りたいようですが、それならばこの車がどういう車であるのかとい同時に、どれだけスポーツモデルなのかを検証してみようではありませんか。
※ご注意
ここではトヨタ・コペン・GRスポーツの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。
目次
トヨタ・コペン・GRスポーツはダイハツ・コペンの一部モデルのOEM供給モデル
「コペン」といえばダイハツが製造販売しているデートカーのことですが、それとそっくりな名称を持つモデルがトヨタから発売されています。
それがこの「トヨタ・コペン・GRスポーツ」と呼ばれるモデルなのですが、皆さんもお察しの通り、このモデルはダイハツのコペンのOEM供給モデル、早い話が親会社が子会社の商品を吸い上げて販売しているというモデルです。
トヨタ・コペン・GRスポーツってどんな車なのか
トヨタはこれまでに・・・
・「ダイハツ・ムーヴ・コンテ」を「ピクシス・スペース」として
・「ダイハツ・ミラ・イース」を「ピクシス・エポック」として
・「ダイハツ・ハイゼット・カーゴ」を「ピクシス・バン」として
・「ダイハツ・ハイゼット・トラック」を「ピクシス・トラック」として
・「ダイハツ・ウェイク」を「ピクシス・メガ」として
・「ダイハツ・キャストシリーズ」を「ピクシス・ジョイシリーズ」として
・「ダイハツ・ストーリア」を「デュエット」として
・「ダイハツ・ブーン」を「パッソ」として
・「ダイハツ・トール」を「タンク・ルーミー兄弟モデル」として
・「ダイハツ・ロッキー」を「ライズ」として
・「ダイハツ・キャストシリーズ」を「ピクシス・ジョイシリーズ」として
といった形で子会社のダイハツからOEM供給を受けてきましたが、今回のトヨタ・コペン・GRスポーツも同じようにダイハツからOEM供給モデルとなります。
ただこれまでは、そのモデルに複数のバリエーションがあったとしてもほぼそのまま、全てのバリエーションのOEM供給を受けて発売する形を取っていたのに対して、今回はダイハツで「ダイハツ・コペン」として、ダイハツ・コペンの中のバリエーションのとして用意されている4種類の中から、ごく最近になってから作られたスポーティードレスアップモデルの「GRスポーツ」モデルだけを抜粋し、それだけのOEM供給を受ける形を取ったのです。
要するにこのモデルはダイハツでは「ダイハツ・コペン」の中のひとつの「GRスポーツ」というバリエーションとして存在しているのに対して、トヨタでは「コペン・GRスポーツ」という独立した車種として販売しているというわけです。
通常では子会社からの吸い上げOEM供給モデルでも車種名を変更して販売するものですが、今回トヨタでもOEM元のダイハツで商品名として使っている「コペン」という文言をそのまま使って「トヨタ・コペン・GRスポーツ」といった形で後ろに「GRスポーツ」という言葉を追加することで販売しても何ら問題がないということになります。
ダイハツ・コペンのGRスポーツモデルは実はトヨタが煽って作られた
トヨタ・コペン・GRスポーツのOEM元モデルとなるダイハツのコペンのGRスポーツモデルは、表面的にはショー用にトヨタ自動車と共同で作ったコンセプトモデルを市販化したものとなっていますが、実はそうではありません。
本当は最初からトヨタで発売するモデルとするために親会社のトヨタが子会社のダイハツにそういったモデルを作るようにけしかけて作らせたものだったのです。
皆さんもご存じのようにトヨタにはトヨタオリジナルのスポーツモデルが存在しません。
「86」は、表向きはスバルとの共同開発となっていますが現実的にはスバルのBRZのOEM供給モデルでしかありませんし、「スープラ」も同様に表向きはBMWとの共同開発ということで聞こえが良いようにしていますが実際にはBMWのZ4のクローズモデルをBMWに作らせて、それをトヨタ名義で販売しているといったこちらも事実上はBMWからのOEM供給を受けている形になっています。
この2つのOEM供給モデルで現在のトヨタのスポーツモデルシリーズを形成しているわけですが、86は中型、スープラは大型ということで今度は最小のスポーツモデル、軽スポーツモデルをトヨタのスポーツモデル・ラインナップに加えたいということになったわけです。
ちなみに・・・この時に小型のスポーツモデルを望まなかったのは2020年あたりにヴィッツが新しくなり「ヤリス」となった際にスポーツモデル相当のモデルを発売することが決まっているからです。
しかし、スポーツモデルが、販売台数の伸びない車であること、儲けがでない車であることを知っているトヨタは、そんなものに多額の開発費用を出すことはしません。
実は86もスープラもこういった理由があることからスバルからの、BMWからのOEM供給モデルでお茶を濁しているわけで、今回の軽スポーツモデルの発売も同じ形を取ることにしたのです。
そこで白羽の矢が立ったのは子会社のダイハツ、他の軽自動車同様にダイハツからOEM供給モデルを受けるという形を取ることにしたのです。
しかし、残念ながらダイハツにはスポーツモデルとして魅力的なモデルが皆無な状態でした。
そこでトヨタが取った策は、スポーツモデルになりきれていないデートカーとして発売されてコペンを何とかスポーツモデルらしく改良して、それをダイハツで売り出し、更にそのモデルだけをOEM供給を受けてトヨタでも販売するということだったのです。
そこで普通に改良しただけでは商売としてあまり良くないので、既にスポーティードレスアップモデル(スポーツモデルではありません!)としてある程度名の通っている「GRスポーツ」という文言を使って、「GAZOOが手を入れたモデル」ということをうたって、モデル名も「コペン・GRスポーツ」として販売することを計画していたのです。
コンセプトカーから市販モデルになったわけではなく、市販するモデルを東京オートサロンでコンセプトカーとして注目を浴びさせ、それをあたかも「支持があったことから市販しました」とした方が販売戦略的に良いということでこういった策を取ったのです。
本当にトヨタはやり手です。
ダイハツ・コペンのGRスポーツモデルとトヨタ・コペン・GRスポーツの違い
トヨタのコペン・GRスポーツはダイハツのコペンの「GRスポーツ」モデルの完全なるバッジエンジニアリングとして作られているもので、エンブレムやステッカー以外の部分に違いはありません。
グレード構成も単一グレードで同じですし、装備も全く同じです。
全く同じ車といっていいでしょう。
ダイハツ・コペンのローブとトヨタ・コペン・GRスポーツの違い
トヨタではコペン・GRスポーツ以外のモデルが発売されておらず、標準モデルとの違いを比較することができませんので、ここではダイハツで発売されているコペンの標準モデルとなるローブと比較して、このトヨタ・コペン・GRスポーツにどれだけ特別な部品や装備が使われているのか、何が違うのかを見ていきたいと思います。
●相違点
・フロントバンパー形状
・フロントグリル形状
・ヘッドライトアッセンブリー
・リヤコンビネーションランプ
・アルミホイールデザイン(サイズは同じ)
・タイヤ銘柄(サイズは同じ)
・フロア下補強部品(フロントブレース、センターブレース)
・フロア下スパッツ
・ショックアブソーバー
・レッド塗装コイルスプリング(スプリングレートは同じ)
・レカロ製OEMシート
・MOMO製OEMステアリングホイール
・メーターアッセンブリー
・インテリアパネルデザイン・カラー
●共通点
・シャシー
・エンジン(パワースペックも全く同じ)
・トランスミッション
・サスペンション構造
・ボディパネル形状
・インテリアパネル形状
・アクティブトップ
などほとんどの部分
こうしてみると主に見た目だけのグレードアップで、動力性能の向上につながる部分は皆無、走行性能の向上につながる部分はショックアブソーバーだけといった感じあることがわかります。
フロア下の補強はボディ剛性やシャシー強度を向上させることにはなっていますが、これだけのものをつけてやっとこの車に求められる剛性や強度を確保しただけに過ぎませんので、走行性能を向上させるというよりも「やっとこれで普通になった」といった感じですのでプラス要素にはなりません。
これでお判りいただけたかと思いますが、トヨタはこのモデルを一所懸命になってスポーツモデルに仕立て上げていますが、所詮はドレスアップモデルでしかないのです。
非常にトヨタらしい売り方です。
トヨタ・コペン・GRスポーツのこれまでの出来事(2019年11月現在)
●初代モデル LA400A型 2019年10月発売
・2019年10月 ダイハツ・コペンに「GRスポーツ」モデルが追加 トヨタにOEM供給の開始
トヨタ・コペン・GRスポーツが属するカテゴリー
●車格:軽自動車
●用途・目的:生活車 デートカー
●車両カテゴリー:軽オープン大衆モデル(カブリオレ)
●エンジン排気量クラス:軽自動車クラス
トヨタ・コペン・GRスポーツのオーナー層
●年齢層:18歳ぐらいから30歳ぐらいまで
●性別:男性
●経済力:高収入層(新車購入)、大衆層(新車購入)
●その他:実用性が全くないデートカーなので、セカンドカーや家族の車として買われることがほとんど、それとスポーツモデルと勘違いして購入する若年層が非常に多い
トヨタ・コペン・GRスポーツの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・ガソリンエンジン
●トランスミッション
・5速マニュアルトランスミッション
・CVT
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FF
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:トーションビーム(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
●ベースモデル
・あり・・・LA600S系型タント
●兄弟車
・あり・・・LA600S系型タント、ウェイク、ムーヴ・キャンバス、ムーヴ、キャスト、ミラ・イース、ミラ・トコットなど
トヨタ・コペン・GRスポーツのモデル構成とグレード構成
トヨタ・コペン・GRスポーツはもともとはダイハツ・コペンの1モデルであったため、それより下層となる位置ではモデル構成はありません。
標準モデル
トヨタ・コペン・GRスポーツは単一グレードになっています。
・ベースグレード(2WD・4WD)
●ベースグレードの主な装備
・165/50R16サイズ タイヤ(ブリヂストン POTENZA RE050A)
・16インチ×4.5J BBS製OEM 鍛造アルミホイール
・フロント/リヤ スタビライザー
・フロント スーパーLSD
・アイドリングストップ機能
・ブラック塗装 樹脂ルーフ
・ブラック塗装 バックパネル
・アクティブトップ
・樹脂製 ボンネットフード
・樹脂製 トランクフード
・樹脂製フロントフェンダーパネル
・樹脂製 リヤフェンダーパネル
・樹脂製 ロッカーパネル
・樹脂製 フューエルリッド
・全面UVカットガラス
・リヤウィンドウ スモークドガラス
・デュアルエキゾーストテールパイプ
・シルバー ドアアウターハンドル
・ブラックエクステンション加飾 LEDヘッドランプ(ロービームのみ)
・LEDクリアランスランプ
・ブラックエクステンション加飾 LEDリヤコンビネーションランプ
・LEDフォグランプ風タウンランプ
・ブラック 電動リモコンカラードドアミラー
・クリアボディサイドターンランプ
・LEDハイマウントストップランプ
・防眩ルームミラー
・車速感応式間欠フロントワイパー
・リヤウインドゥデフォッガー
・VSC
・TRC
・EBD機能付ABS
・ブレーキオーバーライドシステム
・クラッチスタートシステム(マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・エマージェンシーストップシグナル
・運転席/助手席 デュアルSRSエアバッグ
・エアロディフレクター付ロールバー
・デュアルホーン
・MOMO製OEM 革巻ステアリングホイール
・電動式パワーステアリング
・パドルレバー(CVTモデルのみ)
・ステアリングスイッチ
・自発光式3眼メーター
・マルチインフォメーションディスプレイ
・プッシュボタンスタート
・キーフリーシステム
・イモビライザー
・タコメーター
・チルトステアリング調整機構
・フューエルリッドオープナー
・パワーウインドウ
・電磁式トランクフードオープナー
・トランクフードイージークローザー
・クロムメッキ加飾 シフトノブ(マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・クロムメッキ加飾 セレクターノブ(CVTモデルのみ)
・ブラック スエード調ファブリック シート生地
・レカロ製OEMシート
・シートヒーター
・カーボン調インパネガーニッシュ
・ピアノブラック調加飾付 カーボン調センタークラスター
・ピアノブラック調加飾 ドアグリップ
・メッキ インナードアハンドル
・メッキ パーキングレバーボタン
・メッキ エアコンレジスターノブ
・ブラック インパネトリム
・ブラック ファブリックインサート ドアトリム
・インパネオーディオクラスター
・グローブボックス
・センターコンソールボックス
・メッシュタイプ バックパネルポケット
・ウィンド&サンバイザー
・ラゲージパーティション
・12V アクセサリーソケット
・左右 メッシュタイプ ドアポケット
・センターコンソール付カップホルダー
・スカッフプレート
・残照式ルームランプ
・クリーンエアフィルター付オートエアコン
・オーディオレス
・フロントガラス プリントアンテナ
・セキュリティアラーム
など
トヨタ・コペン・GRスポーツに搭載されるパワーユニットと動力性能
トヨタ・コペン・GRスポーツには1種類のパワーユニットが設定されています。
●ターボエンジン
・エンジン型式:KF-DET型
・エンジン排気量:0.658cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:3気筒
・バルブ構造:DOHC12バルブ
・燃料供給:ポート噴射
・過給器:ターボチャージャー
◆スペック
・最大出力:64ps/6400rpm
・最大トルク:9.4kgf・m/3200rpm
・1リッターあたりのパワー:約96ps
・パワーウェイトレシオ:約13.5kg/ps
このパワーユニットは、ダイハツの軽自動車、OEM供給されている各社の軽自動車のターボエンジンモデルに搭載されているものと全く同じもので、パワースペックも全く同じです。
軽自動車には64psという自主規制値があるので例えこのモデルがトヨタがしたいようにスポーツモデルであったとしてもパワーアップすることは許されませんが、トルクには制限はないので、そちらでスポーツモデルらしくトルクアップを実現してもらいたいものです。
それも全くしておらず、ママさん車のタントと全く同じパワーユニットをそのまま搭載しているのでは、スポーツモデルとは絶対に言うことはできず、デートカーや譲ってもスポーティードレスアップモデルにしかならないでしょう。
それにこのエンジンは低燃費型のエンジンで高回転を嫌うエンジンですので、その時点でスポーツモデル失格です。
※パワーユニットの評価:★☆☆☆☆(1)
トヨタ・コペン・GRスポーツに採用されているトランスミッション
●5速マニュアルトランスミッション
トヨタ・コペン・GRスポーツでメインとなるトランスミッションがこの5速マニュアルトランスミッションです。
といっても特別なものではなく、ダイハツの商用モデルであるハイゼット・カーゴやハイゼット・トラックに採用されているマニュアルトランスミッションとおなじもので、いわゆる「実用型マニュアルトランスミッション」と呼ばれるものです。
ハイゼット・トラックやハイゼット・カーゴのマニュアルトランスミッションと違うところはギヤ比だけでそれ以外の基本的な部分は全く同じです。
さすが流用・転用術にたけたトヨタグループです。
これでスポーツモデルだというのですから笑ってしまいます。
※トランスミッションの評価:★★☆☆☆(2)
●CVT
このモデルがどんなに飾り付けてもスポーツモデルに絶対になれない部分のひとつがこのCVTの採用です。
そもそもCVTというトランスミッションは燃費性能を向上させるために走行性能を犠牲した形で作られたものです。
それをトヨタやダイハツがいうところの走行性能を求めるスポーツモデルに採用してしまうとは呆れたものです。
マニュアルモードやパドルレバーをつけても騙されません。
そこまでしてAT免許取得者の需要が欲しいのであれば、CVTではなくせめて多段式オートマチックトランスミッションを採用するのが筋でしょう。
アトレーワゴンに採用されているものをつければ構造的にも無理はないと思います。
走りは最悪、ドライバーの意思に反する変速をしますし、マニュアルモードで変速してもアクセルペダルをベタふみにするだけでエンジン回転数だけが上がって加速力に鈍いこと・・・これではだめです。
このモデルはおすすめできないのでできれば違う自動車メーカーの車を買ってもらいたいのですが、どうしてもこのモデルでなければならないということであれば、5速マニュアルトランスミッションモデルを買ってください。
悪いことはいいません、そうしてください。
※トランスミッションの評価:☆☆☆☆☆(0)
トヨタ・コペン・GRスポーツの走行性能を決める構造
トヨタ・コペン・GRスポーツのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
ダイハツのWebサイトを見ても、トヨタのWebサイトを見ても「高剛性のD-Frameを採用」などといってあたかもこのモデルの骨格が特別で優れたボディ剛性を持っているかのような表現がされていますが、実際はそうではありません、単なる商売文句です。
トヨタ・コペン・GRスポーツ(ダイハツ・コペンシリーズ)に使われているプラットフォームは、トヨタ・ダイハツAプラットフォームと呼ばれるもので、2019年6月以前までに発売されたトヨタやダイハツの軽自動車から小型モデルまでのすべてに採用されているものです。
1つのプラットフォーム(シャシーやフレームの規格)で軽自動車、リッタークラス、1.3リッタークラスといった3つクラスのすべてに対応できるものです。
その中の軽自動車向けのシャシーやフレームは、2019年6月以前に発売された軽自動車すべてにおいて使われており、その始まりは2013年の9月に発売されたママさん車のLA600S型タントとなります。
要するにそのタント以降から2019年6月以前に作られたダイハツの軽自動車はすべてLA600S型タントのシャシーを使って使って作られたということになるのです。
それはこのトヨタ・コペン・GRスポーツ(ダイハツ・コペンシリーズ)も例外ではなく、LA600S型タントのシャシーのホイールベースを短くしたものにオープンモデルのコペンのフレームを載せた形で作られています。
これは現在のDNGAでもそうなのですがダイハツのプラットフォームやシャシー、フレームは剛性や強度が非常に弱い軟なものであると裏の自動車界ではよく言われています。
その理由は親会社であるトヨタの言いつけによって生産コストを徹底的に安くしなければならず、シャシーやフレームにおいても安くて質の悪い鋼材を使い、使用料も減らすために厚みを薄くして作らなければならなかったのです。
質が悪くて薄っぺらではどんなに複雑な構造をとってもまともに剛性や強度を確保することなどできません。
その軟なシャシーやフレームを使って作られたLA600S型タントと同じものを使って作られているわけですからこのトヨタ・コペン・GRスポーツのベースとなっているダイハツ・コペンシリーズも基本は軟なシャシーやフレームを持つことになります。
ただ、オープンモデルとして作るということでサイドフレームの作りやフロア下に補強を入れるなどして他のダイハツの軽自動車のものよりは剛性や強度をわずかに高めることができています・・・といってもそれでもダイハツやトヨタが言うところの軽スポーツモデルのボディ剛性やシャシー強度にはまだまだ達しておらず、サスペンションの作りも悪いことからちょっとでも激しい運転をするとシャシーが音を上げ、運転している人間でもシャシーやボディが大きく捻じれていることに気が付くぐらいです。
そしてコペンシリーズに「GRスポーツ」モデルを作る際に更なる補強パーツをつけて剛性やシャシー強度を高めるようしたわけですが、それによっては多少はよくなりましたが、それでもやっと剛性やシャシー強度がこの車に必要なものになったといった程度で、剛性やシャシー強度が高いとは言えません。
なぜならこの車のボディ剛性やシャシー強度を弱くしているのはシャシーやフレームの構造、形状ではなくそれに使われている鋼材とその厚みがダメだからです。
なので、鋼材を質の良いものにし、しっかりと厚みを持たせない限りいくら補強を行っても無駄ということです
トヨタ・コペン・GRスポーツ(ダイハツ・コペンシリーズ)になって多少はボディ剛性やシャシー強度が高まりましたが、これがデートカーということであれば合格なのですが、トヨタはダイハツが言うスポーツモデルとしてみるとこのモデルでやっと「マイナスからゼロ」になったと言えるぐらいです。
まっすぐに走る程度や街乗り程度であれば十分ですが峠やサーキットには向きません。
※ボディ剛性の評価:☆☆☆☆☆(0)
トヨタ・コペン・GRスポーツの走りの質を決めるサスペンション構造
トヨタ・コペン・GRスポーツをデートカーと言わしめる理由のひとつとなるのがこのサスペンション構造です。
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:トーションビーム
実はこのサスペンション構造は、ベースモデルのタントや他のダイハツの軽自動車と寸分狂わず全く同じものです。
フロントサスペンションのマクファーソンストラットがいいとしても、仮にもトヨタやダイハツが言うようにスポーツモデルとしてみた時にリヤサスペンションのトーションビームは考えられません。
トーションビームは低コスト・省スペースを実現するために作られたサスペンション構造で、左右が物理的に繋がっているリジットサスペンションです。
ビームが捻じれる設計なっているため完全なリジットサスペンションよりは融通が利きますが、逆にそれがサスペンション構造の強度の低下とセッティングの難しさを作ってしまい、スポーツ走行を伴うスポーツモデルには適していないサスペンション構造であることがわかっています。
それ故このサスペンション構造を採用しているのは、だいたいが大衆モデルということになるのですが、それを仮にもスポーツモデルとする、スポーツモデルとしたいと思っているこのモデルに使ってはいけません。
このモデルでは専用のショックアブソーバーと赤く塗っただけの標準装備のコイルスプリングが採用されているようですが、小手先だけいろいろといじってもトーションビームであることが性能を悪化させているわけですから「立て板に水」です。
まっすぐ走らない、コーナーリングで踏ん張ってくれない・・・といったようにスポーツモデルとしては最悪の走りを見せます。
これに乗って「ハンドリングがいい」といっている自動車評論家や元レーシングドライバーさんたちは相当高いギャラをもらっているのでしょう。
※サスペンション構造の評価:★☆☆☆☆(1)
トヨタ・コペン・GRスポーツのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
ブレーキシステムもこのトヨタ・コペン・GRスポーツ(ダイハツ・コペンシリーズ)がスポーツモデルではなく、デートカーであることを証明しています。
・フロント:1ポットフローティングキャリパー+ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
仮にスポーツモデルだとしてみるとリヤブレーキがドラムブレーキあることが信じられません。
実はこのブレーキシステムはタントやムーヴなどに使われているものと全く同じものです。
要するに大衆モデルと同じブレーキが過激な走りをするためのスポーツモデル(仮)に使われているということです。
街乗り程度であれば十分な効き目を発揮しますが、峠やサーキットでは最初の10分がいいところで、それ以降はスカスカになります。
これはリヤのドラムブレーキがフェードして効き目がほとんどなくなっていることとフロントの冷却性が悪いことからベンチレーテッドディスクでもすぐにフェード気味になってしまうからです。
※ブレーキシステムの評価:★☆☆☆☆(1)
トヨタ・コペン・GRスポーツの燃費性能
トヨタ・コペン・GRスポーツのカタログ燃費と実燃費
●5速マニュアルトランスミッションモデル
・カタログ燃費(WLTCモード):最大18.6km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・市街地):最大14.2km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・郊外):最大20.0km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・高速道路):最大20.4km/L
・実燃費:約10km/L
※燃費性能の評価:★☆☆☆☆(1)
●CVTモデル
・カタログ燃費(WLTCモード):最大19.2km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・市街地):最大15.2km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・郊外):最大20.5km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・高速道路):最大20.6km/L
・実燃費:約10km/L
※燃費性能の評価:★☆☆☆☆(1)
実燃費は5速マニュアルトランスミッションモデルもCVTモデルもたいした違いはないようです。
それにしてもカタログ燃費との乖離が激しすぎます、トヨタグループの車は・・・。
トヨタ・コペン・GRスポーツに採用されている低燃費装備
●5速マニュアルトランスミッションモデル
・可変バルブタイミング機構
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
●CVTモデル
・可変バルブタイミング機構
・CVT
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
・アイドリングストップ機構
トヨタ・コペン・GRスポーツのライバルモデル比較
トヨタ・コペン・GRスポーツのライバルとなるのはホンダ・S660
軽自動車クラスで2シーターオープンのボディを持つモデルはこのトヨタ・コペン・GRスポーツ(ダイハツ・コペンシリーズ)以外にホンダのS660しか存在しません。
しかし、トヨタ・コペン・GRスポーツ(ダイハツ・コペンシリーズ)はデートカー、S660は本格的なスポーツモデルということで土俵が全く違います。
ただ、トヨタやダイハツはこの車をスポーツモデルとして扱ってもらいたいようなので、ここではS660と比較してみたいと思います。
●トヨタ・コペン・GRスポーツの概要
・カテゴリー:軽オープン大衆モデル(カブリオレ)
・車格:軽自動車
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:KF-DET型
・比較対象グレード:ベースグレード
●ホンダ・S660の概要
・カテゴリー::軽オープンスポーツモデル(タルガトップ)
・車格:軽自動車
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:S07A型
・比較対象グレード:「α」グレード
トヨタ・コペン・GRスポーツとホンダ・S660のパワースペック比較
●トヨタ・コペン・GRスポーツ
・最大出力:64ps/6400rpm
・最大トルク:9.4kgf・m/3200rpm
●ホンダ・S660
・最大出力:64ps/6000rpm
・最大トルク:10.6kgf・m/2600rpm
※パワースペック比較結果
パワーはどちらも自主規制値となる64psとなっていますが、トルクは圧倒的にS660の方が優れていて、なおかつ2600rpmという低回転で最大トルクを発生させているところがメリットです。
このエンジンをミッドシップレイアウトに収めたS660は抜群の動力性能と走行性能を持ちます。
それに比べてタント譲りのFFレイアウトのトヨタ・コペン・GRスポーツははっきり言ってかなりガッカリな走りしかできません。
とにかくコーナーの出口でアクセルペダルを踏むことがなかなかできないのですから困ったものです。
トヨタ・コペン・GRスポーツとホンダ・S660の燃費性能比較
●トヨタ・コペン・GRスポーツ(マニュアルトランスミッションモデル)
・カタログ燃費(JC08モード換算):最大22.2km/L
・実燃費:約10km/L
●ホンダ・S660(マニュアルトランスミッションモデル)
・カタログ燃費(JC08モード):最大21.2km/L
・実燃費:約13km/L
※燃費性能比較結果
スポーツモデルであるとしたら燃費性能などどうでもいいのですが、どうでもよい本当のスポーツモデルの方が実燃費がいいのには笑ってしまいます。
トヨタ・コペン・GRスポーツとホンダ・S660の販売価格帯比較
ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。
●トヨタ・コペン・GRスポーツ
約238万円~約244万円
●ホンダ・S660
約202万円~約290万円
※販売価格帯比較結果
S660は、このモデルぐらいの走りができるのであれば、この金額は決して高くはないかと思いますが、タントやムーヴと同じような走りしかできないのにドレスアップしただけのトヨタ・コペン・GRスポーツはかなり高すぎます。
この価格帯ではきっと売れないでしょう。
まとめ
トヨタという自動車メーカーは本当にコストをかけることが嫌いなようで、特に売れるかどうか信憑性の低いスポーツモデルにはお金を使いたくないようです。
だからといってスポーツモデルをすべてOEM供給モデル(事実上のOEM供給モデルも含む)でまかなおうとしたり、既存の大衆車に無理矢理エアロパーツ風のエクステリアパーツや車高を落としたサスペンションキットをつけてそれらしくして売ったりするのはもういい加減にやめてほしいです。
残念ながらトヨタ・コペン・GRスポーツはそういった類の車で、間違ってもスポーツモデルと呼ぶべき車ではありません。
スポーツモデルを売りたいのであれば、誰の力も借りずにトヨタ自らの技術で作ってもらいたいと思います。
※総合評価:★☆☆☆☆(1)