クロスオーバーSUVが流行る中でどれだけクロスオーバーSUVとして忠実な作りをしている車があるでしょうか。
私が知る限り、たった数車種で数える程度のしかありません。
その中の1台となるのがこの日産のエクストレイルです。
では日産・エクストレイルがどういった車なのか、クロスオーバーSUVとしてどこまで作り込まれているのかを検証していきたいと思います。
※ご注意
ここでは日産・エクストレイルの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わるボディ形状やエクステリアデザイン、インテリアデザインなどには一切触れていません。
目次
クロスオーバーSUVはこうありたい、日産・エクストレイル
クロスオーバーSUVというと2019年6月時点では、トヨタのC-HRとかRAV4とか、ホンダのヴェゼルなどといったモデルが人気になっているためそういったモデルが頭にすぐに思い浮かぶと思いますが、残念ながらそれらの車はSUVでない、更に言えばクロスオーバーSUVでもありません。
ではなんなのかといいますと、こういう車のことを「裏・自動車界」ではこう呼んでいます。
「なんちゃってクロスオーバーSUV」
そもそもクロスオーバーSUV自体がSUVを作るときにモノコックフレームをつかって簡単に作った「なんちゃってSUV」なわけですが、その「なんちゃってSUV」のクロスオーバーSUVの更なる「なんちゃって」バージョンが「なんちゃってクロスオーバーSUV」なのです。
何が「なんちゃって」なのかを知るにはSUVやクロスオーバーSUVのこと知らなければならないでしょう。
SUVとクロスオーバーSUVとなんちゃってクロスオーバーSUV
SUVとは、アウトドアスポーツやアウトドアレジャーを楽しむための車を指します。
アウトドアスポーツやアウトドアレジャーを楽しむためには、どうしてもその場所へ行き来する時に自然の中や道路整備がされていないところを走ることが多くなります。
そのため、クロスカントリー4WDのようなバリバリのオフロード走行性能まではいかなくてもそれなりのオフロード走行性能を持っていなければなりません。
それからアウトドアスポーツやアウトドアレジャーというのは何かと荷物が多くなるもので(キャンプやスキューバダイビング、スキーなどをしたことがある方はわかってくれると思います)、それらを積むそれなりの積載能力を持っていなければなりません。
こういった使い方にピッタリなのが、アメリカの若年層の中で人気となっている4WDのピックアップトラックで、それをアウトドアスポーツやアウトドアレジャーに行く時に使い始めたのがSUVの始まりなのです。
ですので、SUVは4WDのピックアップトラックと同じような構造を持っていることになり、車の骨格をなすものは乗用車でよく使われているモノコックフレームではなく、ラダーフレームでなければならないのです。
ここからSUVの定義とは以下のようなものであることがわかります。
・使用目的にアウトドアスポーツやアウトドアレジャーが含まれていること
・それなりのオフロード走行性能を持っていること(4WDシステムは必須)
・ラゲッジスペースが広いこと
・ラダーフレームを使って作られていることです。
若干、クロスカントリー4WDモデルとかぶる部分がありますが、クロスカントリー4WDの使用目的が、「悪路を走破すること」である点が大きく違います。
次にクロスオーバーSUVですが、クロスオーバーSUVは上記のSUVの最低条件の「ラダーフレームを使って作られている」を満たしていない車のことを言います。
これは乗用車を作る際にモノコックフレームを使って作るようになったことから乗用車向けのラダーフレームを自動車メーカーが作らなくなったことが由来しており、表面上ではモノコックフレームを持つ乗用車とSUVをクロスオーバーさせたモデルという形にしています。
しかし実際にはSUVの人気が高まり、それの人気にあわせて新たなSUVを作ろうとした時にラダーフレームがないことに気づき、仕方がないから既存のモノコックフレームを使ってSUVを作ったのが「クロスオーバーSUV」だったのです。
クロスオーバーSUVは本来ラダーフレームでなければならないところをモノコックフレームにしただけのもので他のSUVの条件はクリアしていなければなりません。
エクストレイルはこれに該当するのですが、それ以外の今人気となっているクロスオーバーSUVのほとんどはSUVの他の条件すらクリアできていない、場合によってはすべての条件をクリアしていないものまであります。
自動車メーカーはそれを「オンロード向けクロスオーバーSUV」とか「都会派クロスオーバーSUV」など表現を駆使してクロスオーバーSUVとしての条件(SUVの条件から“ラダーフレーム”の件を差しひいたもの)すら持っていないことを分かりづらくして販売しているわけです。
こういったクロスオーバーSUVとしての条件をも持っていない自称「クロスオーバーSUV」のことを裏の自動車界では「なんちゃってクロスオーバーSUV」と呼びます。
日産・エクストレイルはクロスオーバーSUV
エクストレイルは初代モデルからモノコックフレームを使ったクロスオーバーSUVとして作られているわけですが、とかくビジュアル性を重視した流線形のボディ形状を持ったり、クーペスタイルを採用したりしてラゲッジスペースを狭くしたり、スタンバイ4WDといったオフロードでの走りを軽視した構造が付けられたりすることはなく、純粋に「SUV-ラダーフレーム=クロスオーバーSUV」という公式を守った形で作られた正真正銘のクロスオーバーSUVです。
ボディ形状は若干ですが野暮ったさを感じますが、ボディ形状のためにラゲッジスペースの積載能力が犠牲になっているわけではありません。
足回りも四輪独立懸架ですがかなりのロードクリアランスとサスペンションストロークを持っています。
4WDシステムもスタンバイ4WDに近いものですが、前後トルク配分をドライバーが制御できるようになっていて、まるでセンターデフ付きのフルタイム4WDのような使い方ができます。
このようにエクストレイルはクロスオーバーSUVですが、「都会派クロスオーバーSUV」でもありませんし「オンロード志向クロスオーバーSUV」でもありません。
逆に「オン」も「オフ」もなく両方とも快適に走れなければならないためあえて「オフロード志向」というのもおかしいでしょう。
クロスオーバーSUVはクロスオーバーSUVです、オンもオフも都会派もシティ派も何もありません。
まさにクロスオーバーSUVの基本に忠実に作られているのがエクストレイルなのです。
日産・エクストレイルのこれまでの出来事
●初代モデル T30型 2000年11月発売
・2001年2月 2リッターターボエンジンモデルの「GT」の追加
・2001年10月 「ライダー」モデルの追加
・2003年6月 マイナーチェンジ デザイン小変更
●2代目モデル T31型 2007年8月発売
・2008年9月 ディーゼルエンジンモデル「20GT」の追加
・2008年11月 「アクシス パフォーマンススペック」の追加
・2010年7月 マイナーチェンジ 「エクストリーマーX」の追加
●3代目モデル T32型 2013年12月発売
・2015年1月 「20X ブラック エクストリーマーX」の追加
・2015年2月 T31型ディーゼルエンジンモデルの生産終了
・2015年4月 ハイブリッドモデルの追加
・2015年7月 「モード・プレミア」の追加
・2017年6月 マイナーチェンジ
・2019年11月 「AUTECH」モデルの追加
日産・エクストレイルが属するカテゴリー
●車格:大衆中型モデル
●用途・目的:生活車 アウトドアスポーツ・アウトドアレジャー用
●車両カテゴリー:中型クロスオーバーSUV
●エンジン排気量クラス:2リッタークラス
日産・エクストレイルのオーナー層
●年齢層:25歳ぐらいから55歳ぐらいまで
●性別:男性
●経済力:大衆層
●その他:アウトドアスポーツ・アウトドアレジャーを趣味に持つ方
日産・エクストレイルの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・ガソリンエンジン
・ガソリンエンジン+ハイブリッドシステム
●トランスミッション
・CVT
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FF
・センターデフ付きフルタイム4WD(インテリジェント 4×4)
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:マルチリンク(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
●ベースモデル
・なし
●兄弟車
・あり…ローグ(日本未発売)、キャシュカイ(日本未発売)
日産・エクストレイルのモデル構成とグレード構成
エクストレイルには4つのモデルが設定されています。
ガソリンエンジンモデル
このモデルには3つのグレードが用意されています。
・20S グレード(5人乗り)(2WD・4WD)
・20X グレード(5人乗り・7人乗り)(2WD・4WD)
・20Xi グレード(5人乗り)(2WD・4WD)
●「20S」グレードの主な装備
・ハロゲンヘッドランプ
・リモートコントロールエントリーシステム
・足踏み式パーキングブレーキ
・マニュアルエアコン
・225/65R17サイズ タイヤ
・17インチ×7Jスチールホイール
・ホイールキャップ
・ECOモーター式アイドリングストップ
・フロントスタビライザー
・防水フレキシブルラゲッジ
・防水ラゲッジボード
・防水シート
・6:4分割式リヤ可倒式シート
・4スピーカー
など
●「20X」グレードの主な装備
「20S」グレードの装備に加えて
・3列シートモデルの選択肢
・LEDヘッドライト
・フォグランプ風タウンランプ
・本革巻ステアリングホイール
・本革巻セレクターノブ
・インテリジェントキー
・プッシュエンジンスターター
・照明付前席サンバイザー
・リモコンオートバックドア
・225/60R18サイズ タイヤ
・18インチ×7Jアルミホイール
・4:2:4分割式セカンドシート
・5:5分割、リクライニング機能付サードシート(7人乗り)
・独立温度調整機能付オートエアコン
が追加されています。
●「20Xi」グレードの主な装備
「20X」グレードの装備に加えて
・インテリジェントアラウンドビューモニター
・インテリジェントルームミラー
・プロパイロット機能付ステアリングスイッチ
・電動パーキングブレーキ
・オートブレーキホールド
・プロパイロット
・インテリジェント LI
・BSW(後側方車両検知警報)
・RCTA(後退時車両検知警報)
が追加されています。
ハイブリッドモデル
ハイブリッドモデルには3つのグレードが用意されています。
・20S HYBRID グレード(5人乗り)(2WD・4WD)
・20X HYBRID グレード(5人乗り)(2WD・4WD)
・20Xi HYBRID グレード(5人乗り)(2WD・4WD)
●「20S HYBRID」グレードの主な装備
・ハロゲンヘッドランプ
・インテリジェントキー
・プッシュエンジンスターター
・足踏み式パーキングブレーキ
・独立温度調整機能付オートエアコン
・ドアロアクロームモール
・225/65R17サイズ タイヤ
・17インチ×7Jスチールホイール
・ホイールキャップ
・ラゲッジスペースカーペット
・アイドリングストップ
・フロント・リヤ スタビライザー
・防水シート
・6:4分割式リヤ可倒式シート
・4スピーカー
・車両接近通報装置
など
●「20X HYBRID」グレードの主な装備
「20S HYBRID」グレードの装備に加えて
・LEDヘッドライト
・フォグランプ風タウンランプ
・本革巻ステアリングホイール
・本革巻セレクターノブ
・インテリジェントキー
・プッシュエンジンスターター
・照明付前席サンバイザー
・リモコンオートバックドア
・17インチ×7Jアルミホイール
・6:4分割式セリヤシート
が追加されています。
●「20Xi HYBRID」グレードの主な装備
「20X HYBRID」グレードの装備に加えて
・インテリジェントアラウンドビューモニター
・インテリジェントルームミラー
・プロパイロット機能付ステアリングスイッチ
・電動パーキングブレーキ
・オートブレーキホールド
・プロパイロット
・インテリジェント LI
・BSW(後側方車両検知警報)
・RCTA(後退時車両検知警報)
が追加されています。
AUTECHモデル
AUTECHモデルは、日産の特装部門であるオーテック・ジャパンによって作られるスポーティーさを醸し出したドレスアップモデルです。
ドレスアップモデルですので、動力性能や走行性能が高められているといったことはありません。
あくまでも見た目だけのものです。
このモデルには4グレードが用意されています。
・AUTECH グレード(5人乗り・7人乗り)(2WD・4WD)
・AUTECH i パッケージ グレード(5人乗り)(2WD・4WD)
・AUTECH HYBRID グレード(5人乗り)(2WD・4WD)
・AUTECH HYBRID i パッケージ グレード(5人乗り)(2WD・4WD)
●「AUTECH」グレードの主な装備
ガソリンモデルの「20X」グレードの装備に加えて
・サイドターンランプ付電動格納式リモコンドアミラー
・本革巻3本スポークステアリングホイール
・本革巻セレクターノブ
・PTC素子ヒーター
・AUTECH専用インテリアブラックレザーシート
・AUTECH専用レザー調インストパネル
・AUTECH専用ドアトリム
・AUTECH専用センターコンソールボックス
・AUTECH専用エンブレム
・AUTECH専用フロアカーペット
・AUTECH専用ラゲッジカーペット
・AUTECH専用ラゲッジボードカーペット
・クイックコンフォートシートヒーター
を追加したものです。
●「AUTECH i パッケージ」グレードの主な装備
ガソリンモデルの「20Xi」グレードの装備に加えて
・フロントマーカーLED
・サイドターンランプ付電動格納式リモコンドアミラー
・本革巻3本スポークステアリングホイール
・本革巻セレクターノブ
・PTC素子ヒーター
・AUTECH専用インテリアブラックレザーシート
・AUTECH専用レザー調インストパネル
・AUTECH専用ドアトリム
・AUTECH専用センターコンソールボックス
・AUTECH専用エンブレム
・AUTECH専用フロアカーペット
・AUTECH専用ラゲッジカーペット
・AUTECH専用ラゲッジボードカーペット
・クイックコンフォートシートヒーター
を追加したものです。
●「AUTECH HYBRID」グレードの主な装備
ハイブリッドモデルの「20X HYBRID」グレードの装備に加えて
・フロントマーカーLED
・サイドターンランプ付電動格納式リモコンドアミラー
・本革巻3本スポークステアリングホイール
・本革巻セレクターノブ
・PTC素子ヒーター
・AUTECH専用インテリアブラックレザーシート
・AUTECH専用レザー調インストパネル
・AUTECH専用ドアトリム
・AUTECH専用センターコンソールボックス
・AUTECH専用エンブレム
・AUTECH専用フロアカーペット
・AUTECH専用ラゲッジカーペット
・AUTECH専用ラゲッジボードカーペット
を追加したものです。
●「AUTECH HYBRID i パッケージ」グレードの主な装備
ハイブリッドモデルの「20Xi HYBRID」グレードの装備に加えて
・フロントマーカーLED
・サイドターンランプ付電動格納式リモコンドアミラー
・本革巻3本スポークステアリングホイール
・本革巻セレクターノブ
・PTC素子ヒーター
・AUTECH専用インテリアブラックレザーシート
・AUTECH専用レザー調インストパネル
・AUTECH専用ドアトリム
・AUTECH専用センターコンソールボックス
・AUTECH専用エンブレム
・AUTECH専用フロアカーペット
・AUTECH専用ラゲッジカーペット
・AUTECH専用ラゲッジボードカーペット
を追加したものです。
エクストリーマーXモデル
エクストリーマーXモデルは、エクストレイルをよりワイルドに、オフロード走行が似合うようにドレスアップしたモデルです。
ドレスアップモデルですので、動力性能やオフロード走行性能が高められているといったことはありません。
4グレードが用意されています。
・20XエクストリーマーX グレード(5人乗り・7人乗り)(2WD・4WD)
・20XiエクストリーマーX グレード(5人乗り)(2WD・4WD)
・20X HYBRIDDエクストリーマーX グレード(5人乗り)(2WD・4WD)
・20Xi HYBRIDエクストリーマーX グレード(5人乗り)(2WD・4WD)
各グレードの装備はベースグレードに下記のようなエクストリーマーX専用パーツを追加した形となります。
●ベースグレード
・20XエクストリーマーX グレード:ガソリンモデルの「20X」グレード
・20XiエクストリーマーX グレード:ガソリンモデルの「20Xi」グレード
・20X HYBRIDDエクストリーマーX グレード:ハイブリッドモデルの「20X HYBRID」グレード
・20Xi HYBRIDエクストリーマーX グレード:ハイブリッドモデルの「20Xi HYBRID」グレード
●エクストリーマーX専用装備
・フロントマーカーLED
・サイドターンランプ付電動格納式リモコンドアミラー
・エクストリーマーX専用18インチ×7Jアルミホイール
・エクストリーマーX専用ダーククロムフロントグリル
・エクストリーマーX専用ダークメタリックフロントスタイリングガード
・エクストリーマーX専用タウンランプフィニッシャー
・エクストリーマーX専用ダークメタリックサイドスタイリングガード
・エクストリーマーX専用ダークメタリックリヤスタイリングガード
・マッドガード
日産・エクストレイルに搭載されるパワーユニットと動力性能
日産・エクストレイルは2種類のパワーユニットが用意されています。
●2リッターNAエンジン
・エンジン型式:MR20DD型
・エンジン排気量:1,997cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・燃料供給:筒内直接噴射
◆スペック
・最大出力:147ps/6,000rpm
・最大トルク:21.1kgf・m/4,400rpm
・1リッターあたりのパワー:約73.5ps
・パワーウェイトレシオ:約10.8kg/ps
このパワーユニットは、ガソリンエンジンモデル、AUTECHモデルのハイブリッドモデル、エクストリーマーXモデルのハイブリッドモデルに採用されているものです。
2リッターNAエンジンとしてはごく普通のパワーを発揮するエンジンといえますが、クロスオーバーSUVのエンジンとしてはもう少しパワーもトルクも欲しいところです。
直噴エンジンですのでエンジンオイルを頻繁に交換するといったまめなメンテナンスが求められます。
※パワーユニットの評価:★☆☆☆☆(1)
●2リッターNAエンジン+ハイブリッドシステム
○エンジン
・エンジン型式:MR20DD型
・エンジン排気量:1,997cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・燃料供給:筒内直接噴射
○電気モーター
・電気モーター形式:RM31型
○ハイブリッドシステム:インテリジェント デュアル クラッチ コントロール
○ハイブリッドバッテリー:リチウムイオンバッテリー
◆スペック
○エンジン
・最大出力:147ps/6,000rpm
・最大トルク:21.1kgf・m/4,400rpm
○電気モーター
・最大出力:41ps
・最大トルク:16.3kgf・m
○システムパワー:182ps
・1リッターあたりのパワー:約91ps
・パワーウェイトレシオ:約9.0kg/ps
このパワーユニットは、ハイブリッドモデル、AUTECHモデルのハイブリッドモデル、エクストリーマーXモデルのハイブリッドモデルに採用されているものです。
ガソリンエンジンモデルに搭載されているエンジンに電気モーターを加えた形で構成されるため、その分だけパワースペックが高くなります。
これくらいのパワーがあればきっと走りを楽しむことができると思います。
特に低回転トルクがありがたいオフロード走行では電気モーターのトルクが威力を発揮します。
※パワーユニットの評価:★★★☆☆(3)
日産・エクストレイルに採用されているトランスミッション
●CVT
エクストレイルでは全モデルで共通のトランスミッションとして「エクストロニックCVT」と呼ばれるCVTが搭載されています。
CVTの構造としてはごく普通のもので、トルクコンバーターと1対のプーリー、そして金属ベルトで構成されているよくある構造です。
疑似有段機能となるマニュアルモードはついておらず、走行中はDレンジに入れっぱなしにしておくタイプのものです。
せっかく良いパワーユニット、良い足周り、良い4WDシステムが与えられているのにこのCVTの搭載ですべてが台無しになってしまっています。
クロスオーバーSUVだったら負担のかかるオフロード走行のことを考えてパワーロスの少ない多段式オートマチックトランスミッションを搭載するのが妥当かと思います。
実際に私がこの車を運転して走り回った時に唯一、ダメなところとして挙げたのがこのCVTでした。
特に中間加速やオフロードでの低速域から一気に脱出するような場面ではエンジン回転数ばかりが高まるだけでなかなか加速しなかったことを覚えています。
※トランスミッションの評価:★☆☆☆☆(1)
日産・エクストレイルの走行性能を決める構造
日産・エクストレイルのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
エクストレイルは現行モデルとなる3代目モデルになった時にルノー日産の新しいプラットフォームが与えられました。
これはCMFと呼ばれるもので、シャシーをいくつかに分けてそれらをいろいろ組み合わせることで複数のモデルに対応できるようにしたものです。
これと同じ考え方のものがトヨタのTNGAですが、トヨタはこれを新たな技術としてそれまでの「切った貼ったの車作り」で作ってきたことをスポイルするための「隠れ蓑」として使っていますが、ルノー日産ではそういったことは特に提唱せず、本当の意味での新しい技術として2013年から使い始めました。
そしてそのCMFを使って作ったモデルの最初のモデルとなったのがこのエクストレイルなのです。
正確にいうとCMF-Cプラットフォームと呼ばれるもので、それまでの日産のCプラットフォームの後継型となります。
このプラットフォームはEU圏で発売するモデルにも使用することを踏まえて作られているので、国産モデルとしては非常に高い剛性を持つものとして作られています。
そして更に日産はクロスオーバーSUVにふさわしい剛性感のあるフレームを与えたことでこのクラスのクロスオーバーSUVとしてはかなり優れたボディ剛性を持つことになりました。
ただ、やはりこの車はクロスオーバーSUVですので、クロスカントリー4WDモデルやSUVがするような激しいオフロード走行を繰り返しているとだんだんフレームがゆがんできます。
あくまでもクロスオーバーSUVとして、ときどきオフロード走行をする程度といった使い方をしましょう。
場合によってはボディ剛性補強パーツをつけるのもいいかもしれません。
※ボディ剛性の評価:★★☆☆☆(2)
日産・エクストレイルの走りの質を決めるサスペンション構造
エクストレイルにはこのクラスのモデルにしては中々贅沢な四輪独立懸架が採用されています。
もっと細かく言うと
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:マルチリンク
ということになりますが、オンロード走行においてはこれで十分といっていいでしょう。
スプリングレートもショックアブソーバーの減衰力もちょうどいいかもしれません。
しかし、これがオフロードとなるとちょっと話が変わってきます。
一番気になるのがリヤサスペンションのサスペンションストロークです。
クロスオーバーSUVらしいちょっとしたオフロード走行であれば全く問題ないのですが、4WDシステムをロック状態にするぐらいの起伏の激しい路面を走るとすぐにリヤサスペンションが底付きしてしまい3輪だけが接地しているという形になってしまいます。
ただ、この車でそこまでの走りをするかといったらほとんどないと思いますし、リジットサスペンションにはかなわないのでそれはそれで良いと思います。
私が過去にそういった運転をしたことがあり、その時に脱出のちょっと苦労したことがあったので感想を述べたまでです。
サスペンション構造としては優れているといっていいでしょう。
※サスペンション構造の評価:★★★☆☆(3)
日産・エクストレイルのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
エクストレイルには重量級のボディを支えることと過酷な走行条件にさらされることを想定して、前後ともディスクブレーキが採用されています。
ブレーキローターもぬかりなく前後ともベンチレーテッドディスクとなりますが、ブレーキキャリパーが
・フロント:2ポット フローティングキャリパー
・リヤ:1ポット フローティングキャリパー
といった感じで少々頼りないものとなっています。
実際にこの車に乗って高速道路でちょっとパニックブレーキをかけた時にブレーキペダルを踏んだ力に対して制動力が弱いと感じることがありました。
ブレーキパッドが悪いのか(その車はノーマルのブレーキパッドだった)ブレーキの容量が足りないのかはわかりませんが、優れたブレーキ性能を得るためには何かしらの手を打たなければならないでしょう。
※ブレーキシステムの評価:★★☆☆☆(2)
日産・エクストレイルに搭載されている4WDシステム
エクストレイルの4WDモデルには「インテリジェント 4×4」という4WDシステムが採用されています。
このシステムは過去にあった「ALL MODE 4×4-i」の進化版としてい続けられるもので、前後のトルク配分を自動的に変化させるものですが、昨今の低燃費ブームの影響で、基本は常にFF状態となっており、必要な時だけリヤタイヤにも駆動力を伝えるというスタンバイ4WDと同じスタイルを持っています。
ただ、トヨタやダイハツのスタンバイ4WDのように前輪が完全に空転してからリヤタイヤが回り始めるわけではなく、タイヤの空転状態や加速度、横Gなどから随時リヤタイヤにも駆動力が伝えられているので、完全なスタンバイ4WDとはちょっと違った挙動を示します。
そして更にセンターデフをロックするような制御もできるようになっているので、およそスタンバイ4WDとは全く違うものといえるでしょう。
クロスオーバーSUVにピッタリな4WDシステムといえます。
※4WDシステムの評価:★★★☆☆(3)
日産・エクストレイルの燃費性能
日産・エクストレイルのカタログ燃費と実燃費
●ガソリンエンジン搭載モデル(FFモデル)
・カタログ燃費(JC08モード):最大16.4km/L
・実燃費:約14km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
●ガソリンエンジン搭載モデル(4WDモデル)
・カタログ燃費(JC08モード):最大16.0km/L
・実燃費:約12km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
●ハイブリッドモデル(FFモデル)
・カタログ燃費(JC08モード):最大20.8km/L
・実燃費:約17m/L
※燃費性能の評価:★★★☆☆(3)
●ハイブリッドモデル(4WDモデル)
・カタログ燃費(JC08モード):最大20.0km/L
・実燃費:最大16km/L
※燃費性能の評価:★★★☆☆(3)
どのモデルにおいてもこのクラスのモデルとしては平均的な数字といえるでしょう。
ただ、ハイブリッドモデルの実燃費が意外に良いのは驚きです。
日産・エクストレイルに採用されている低燃費装備
日産には低燃費だけを狙うといったおろかな車はありませんし、日産自体も「燃費性能」といったものにあまり魅力を感じていないことから低燃費装備の開発にも消極的で、定番となっているもの以外で特にこれといったものはハイブリッドシステムぐらいなものでしょう。
●ガソリンエンジン搭載モデル
・エコモーター式アイドリングストップ機構
・直噴エンジン
・連続可変バルブタイミング機構
・CVT
・オルタネーター制御
・電動パワーステアリング機構
●ハイブリッドモデル
・ハイブリッドシステム
・アイドリングストップ機構
・直噴エンジン
・連続可変バルブタイミング機構
・CVT
・電動パワーステアリング機構
日産・エクストレイルのライバルモデル比較
日産・エクストレイルのライバルとなるのはスバル・フォレスター
エクストレイルはクロスオーバーSUVといって発売されているモデルの中でも非常に珍しいオフロードを走ることも考えらえた正真正銘のクロスオーバーSUVです。
こういったモデルはとても少ないのですが、唯一スバルにエクストレイルと似たようなクロスオーバーSUVを見つけました。
それがフォレスターです。
フォレスターはスバルの大型クロスオーバーSUVで基本となるのは2.5リッターエンジンを搭載したモデルとなるのですが、低燃費モデルとして2リッターNAエンジンにハイブリッドシステムを組み合わせたハイブリッドモデルが用意されていますので、そのモデルとエクストレイルのハイブリッドモデルとで比較してみたいと思います。
●日産・エクストレイルの概要
・カテゴリー:クロスオーバーSUV(本当の意味でのクロスオーバーSUV)
・車格:中型モデル
・エンジン排気量:約2リッター
・パワーユニット形式:MR20DD型+RM31型
・比較対象グレード:「20S HYBRID」グレード(4WDモデル)
●スバル・フォレスターの概要
・カテゴリー:クロスオーバーSUV(本当の意味でのクロスオーバーSUV)
・車格:大型モデル
・エンジン排気量:約2リッター
・パワーユニット形式:FB20型+MA1型
・比較対象グレード:「Advance」グレード
日産・エクストレイルとスバル・フォレスターのパワースペック比較
●日産・エクストレイル
○エンジン
・最大出力:147ps/6,000rpm
・最大トルク:21.1kgf・m/4,400rpm
○電気モーター
・最大出力:41ps
・最大トルク:16.3kgf・m
○システムパワー:182ps
●スバル・フォレスター
○エンジン
・最大出力:145ps/6,000rpm
・最大トルク:19.2kgf・m/4,000rpm
○電気モーター
・最大出力:13.6ps
・最大トルク:6.6kgf・m
○システムパワー:約150ps
※パワースペック比較結果
ハイブリッドシステムの制御方法と電気モーターのパワーの違いから圧倒的にエクストレイルのほうがパワフルといえるでしょう。
車両重量も含めて考えると動きもエクストレイルの方がよさそうです。
日産・エクストレイルとスバル・フォレスターの燃費性能比較
●日産・エクストレイル
・カタログ燃費(JC08モード):最大20.0km/L
・実燃費:最大16km/L
●スバル・フォレスター
・カタログ燃費(JC08モード):最大18.6km/L
・実燃費:約14km/L
※燃費性能比較結果
サイズが大きく重たいボディを持つフォレスターの方がやはり燃費性能的には不利なようです。
日産・エクストレイルとスバル・フォレスターの販売価格帯比較
ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。
●日産・エクストレイル
約224万円~約360万円(標準モデルのみの場合:~約331万円)
●スバル・フォレスター
約281万円~約310万円
※販売価格帯比較結果
エクストレイルと比べて一つ上の車格を持つフォレスターの方が販売価格が高くなっているかと思ったら実際には車格が下となるエクストレイルの方が高くなっているようです。
ただエクストレイルの高額側の金額はドレスアップモデルのAUTECHモデルの価格となりますので、それを除いた標準モデルだけで見ると約331万円となることからそれほど違いないように思えます。
まとめ
「なんちゃってクロスオーバーSUV」が約9割を占める世界のクロスオーバーSUVの中で、「本格的なクロスオーバーSUV」「ラダーフレームを使っていないだけのクロスオーバーSUV」といえる数少ないモデルの1台であるエクストレイル、本当のクロスオーバーSUVが欲しいと思っている方にはぜひとも乗っていた抱きたいモデルでもあります。
その反面で、「クロスオーバーSUVが流行っているから」とか「車高が高いのがカッコいいから」とか思っている方やクロスオーバーSUVが何たるかを知らない方、ワゴンモデルと思っている方などには買ってもらいたくない車でもあります。
なぜならそういった方にとってはこの車は扱いにくい車であるからです。
分かる人だけに乗ってもらいたい…エクストレイルはそんな車だと思います。
※総合評価:★★★★☆(4)