画像引用元:日産:マーチ [ MARCH ] コンパクトカー
目次
日産初のリッターカー、日産・マーチはルノーによって醜い車にされた
1970年代後半あたりから徐々に増え始め、80年代から90年代初頭のバブル景気をピークに自動車免許の取得率が高まった女性ドライバー、そして若年層がパーソナルな車を欲しがるようになった…という二つの理由から当時、急激に需要が増していったのが、いわゆる「コンパクトカー」と呼ばれる車です。
2ボックスハッチバックスタイルの小さなボディを持つことから取り回しが楽で、医学的に機械操作に弱いことが証明されている女性や初心者ドライバーなどでも無理なく運転できる、エンジン排気量も小さく、装備も簡素であるため販売価格が安く設定されていることから、奥様向け、娘さん向けのセカンドカーとしても、経済的に厳しい若年層にも買いやすいということで人気がどんどん高まっていきました。
トヨタでは既にスターレットやターセル・コルサ兄弟車などが発売され、三菱からもミラージュが、ホンダからもシビックといったようなコンパクトカーが発売され、この需要に対応していたのですが、トヨタと並んで大きな自動車メーカーとして有名な日産には、コンパクトカークラスの需要に対応できるモデルがなかったのです。
1970年代後半ぐらいまでは小さい車といっても「チェリー」しかり、「サニー」しかりボディサイズはそこそこあり、エンジン排気量も最低でも1.2リッターはありました。
ボディサイズ的にもエンジン排気量的にも現在でいうところの「コンパクトカー」に近いものがありますが、これらはあくまでも「大きなボディを持つ登録車を小さく作り直した」といった形で作られていたもので、現在のコンパクトカーのように「小さな車を作る」といった形ではなかったのです。
当初はこういった形で作られたモデルでも若年層に受け入れられ、人気モデルとなっていたのですが、他の自動車メーカーから手ごろなサイズ、手ごろな性能、手ごろな価格でコンパクトカーが販売されてからは、その人気をそっくり持っていかれたような形になってしまったのです。
「これはまずい!」
と思った日産は、ここで初めてコンパクトカーの有用性に気が付き、自社生産を始めることにしたのです。
それによって発売されたのがこの「マーチ」でした。
初代モデルは特定のターゲット層を設定せずに広い需要に対応できるようなつくりとされました。
CMには、ニックネームが「マーチ」という車名に似ていたことから、後にレーサーとして、そしてレーシングチームの監督になる当時大人気だった某アイドル起用し注目度を挙げました。
スポーツモデルや競技車両も発売するようになったことから「走り屋」にも人気あるモデルでした。
これが初代モデルとなります。
2代目モデルは時代的に派手な動きをすることができなかったことから、ごく普通の大衆コンパクトカーとして発売されそれなりの人気モデルとなりましたが、このモデルが発売されていた1999年に大事件が起こります。
その大事件というのは、ルノーによる日産の買収でした。
これによってマーチも多大なる影響を受けました。
とりあえずは「ルノーによる車種整理」には引っかからずに後続モデル発売されることになったのですが、2002年のモデルチェンジによって発売された3代目モデルは、日本人の感覚的にはかなりひどい車にされてしまったのです。
当時は、日産が発売する車に関してもルノーの影響が強く…といいますが、実際はほとんどをルノーの手によって作られたといっていい状態で、日本でどういう車が好まれるのか、どういうデザインが好まれるのかといったことを理解しないままに開発・設計に大きな実権を持ったことにより、完全にフランス流のデザインが採用されてしまったのです。
それによって作られたのが3代目モデルとなるもので、それまでの日本の車では絶対に採用されないような、日本人の感覚で言うのであれば「醜い」と言わしめてしまうエクステリアデザインを持つモデルが発売されてしまったのです。
一部の女性ドライバーからは「カエルのような顔を持つ車」として人気があったようですが、それはほんの一部の間でだけのものです。
後に2005年に発売された大型クロスオーバーSUVのムラーノと2010年に発売された小型クロスオーバーSUVのジュークの2台とこの3代目マーチをあせた3代のモデルを
「日産三大醜車」…ルノー日産が日本のマーケットをよく知らずに作ったデザインが醜い3車種
と呼ぶほどでした。
このことを大いに悔いたのでしょう、モデルチェンジをして発売するモデルの開発をルノー陣営ではなく、旧日産陣営によって行うようにシフトしました。
それによって発売されたのが2019年5月時点で現行モデルとなっている4代目モデルです。
このモデルからまた日産らしい2代目モデル以前のような車になりました。
日産・マーチのこれまでの出来事
●初代モデル K10型 1982年10月発売
・1985年 1リッターターボエンジンモデル「マーチ・ターボ」を発売
・1988年 国内ラリー向け競技車両ベースモデルで930ccツインチャージエンジン搭載の「マーチR」を発売
・1989年 マーチRの公道用モデル、「マーチ・スーパーターボ」を発売
●2代目モデル K11型 1992年1月発売
・当初より1.3リッターエンジンが追加された
・1997年 カブリオレモデルの発売
・1999年 ステーションワゴンモデルの「マーチBOX」の発売
・1999年 日産がルノー傘下の企業となる
●3代目モデル K12型 2002年2月発売
・2002年 電動モーター式4WDシステム「e-4WD」を搭載した4WDモデルの追加
・2003年 1リッターモデルの廃止
・2004年 女性向けモデル「ボレロ」の発売
・2005年 1.5リッターエンジンモデルの追加
●4代目モデル K13型 2010年7月発売
・2013年 スポーティーモデルの「NISMO」シリーズを追加
日産・マーチが属するカテゴリー
●車格:大衆コンパクトカー
●用途・目的:生活車
●車両カテゴリー:ハッチバックモデル
●エンジン排気量クラス:1.2リッター~1.5リッタークラス
日産・マーチのオーナー層
●年齢層:18歳ぐらいから80歳ぐらいまで(NISMOモデル=18歳ぐらいから40歳ぐらいまで)
●性別:男性・女性 比率としては男性2:女性8(NISMOモデル=男性9:女性1)
●経済力:大衆層 低収入層
●その他:基本的には「女性向けモデル」としてみることができる
日産・マーチの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・1.2リッターNAガソリンエンジン
・1.5リッターNAガソリンエンジン
●トランスミッション
・5速マニュアルトランスミッション
・CVT
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FF
・スタンバイ式4WD(電気モーター式)
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:トーションビーム(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ディスクブレーキ(ベンチレーテッドディスク)
・リヤ:ドラムブレーキ(リーディングトレーリング)
●ベースモデル
・なし
●兄弟車
・あり…ノート、キューブ(K12型の兄弟車)
日産・マーチのモデル構成とグレード構成
マーチには3つのモデルがあります。
・標準モデル
・ボレロモデル
・NISMOモデル
標準モデル
標準モデルには装備違いの4つのグレードと1つのサブグレードが設定されています。
・S グレード(2WD)
・Sプラムインテリア グレード(2WD)
・X Vセレクション グレード(2WD・4WD)
・X Vセレクション パーソナライゼーション グレード(2WD・4WD)
・G グレード(2WD・4WD)
・G パーソナライゼーション グレード(2WD・4WD)
●「S」グレードの主な装備
・UVカット断熱グリーンフロントドアガラス
・グリーンリヤドアガラス
・グリーンバックドアガラス
・電動格納式リモコンカラードドアミラー
・リモートコントロールエントリーシステム
・マニュアルエアコン
・オーディオレス
・リヤ可倒式ベンチシート
・165/70サイズタイヤ
・14インチ×5.5Jスチールホイール・フルホイールカバー
●「Sプラムインテリア」グレードの主な装備
「S」グレードの装備に加えて・・・
・シルバーフィニッシャーインテリアパネル
・シルバーフィニッシャステアリングホイール
・シルバーフィニッシャーセレクターノブ
・メッキエアコンセンター吹き出し口ノブ
・リヤ可倒式6:4分割シート
・メッキインナードアハンドル
・メッキ加飾付きフロントバンパーロアグリル
・メッキアウトサイドドアハンドル
・カラードアウトサイドリヤハッチドアハンドル
●「X Vセレクション」グレードの主な装備
「Sプラムインテリア」グレードの装備に加えて…
・UVカット断熱機能付プライバシーリヤドアガラス
・UVカット断熱機能付プライバシーバックドアガラス
・インテリジェントオートライトシステム
・シルバーフィニッシャステアリングホイール
・シルバーフィニッシャーセレクターノブ
・プッシュエンジンスターター
・インテリジェントキー
・運転席バニティミラー
・インストアッパーボックス
・リヤ可倒式ベンチシート
・カラードアウトサイドドアハンドル
・アイドリングストップ
・エンジンイモビライザー
・メッキ加飾付きフロントバンパーロアグリルの廃止
●「X Vセレクション パーソナライゼーション」グレードの主な装備
「X Vセレクション」グレードの装備に加えて…
・パーソナライゼーション専用カラー塗装ドアミラー
・パーソナライゼーション専用カラー塗装アウトサイドドアハンドル
・パーソナライゼーション専用カラー塗装フルホイールカバー
●「G」グレードの主な装備
「X Vセレクション」グレードの装備に加えて…
・メッキ加飾付きフロントバンパーロアグリル
・シルバーフィニッシャーインテリアパネル
・シルバーフィニッシャステアリングホイール
・シルバーフィニッシャーセレクターノブ
・メッキエアコンセンター吹き出し口ノブ
・メーター内ディスプレイ
・メッキリング付スピードメーター
・タコメーター
・外気温度計
・リヤ可倒式6:4分割シート
・メッキインナードアハンドル
●「G パーソナライゼーション」グレードの主な装備
「G」グレードの装備に加えて…
・パーソナライゼーション専用カラー塗装ドアミラー
・パーソナライゼーション専用カラー塗装アウトサイドドアハンドル
・パーソナライゼーション専用カラー塗装フルホイールカバー
ボレロモデル
ボレロモデルとは日産の特装部門であるオーテックジャパンが製作した、より大人の女性のためのモデルです。
グレード構成はモノグレードとなります。
・ボレロ グレード(2WD・4WD)
●「ボレロ」グレードの主な装備
ボレロモデルは標準モデルにある「X Vセレクション」グレードをベースに、ボレロ専用部品を採用した形で作られています。
標準モデル「X Vセレクション」グレードの装備に加えて…
・ボレロ専用本革巻3本スポークステアリング
・ボレロ専用マーブル柄センタークラスターフィニッシャー
・ボレロ専用ボーダー柄シート地生地
・ボレロ専用ドアトリム(フロント)
・ボレロ専用フロントグリル
・ボレロ専用フロントバンパー〈光輝モール付〉
・ボレロ専用エンブレム
・ボレロ専用14インチ×5.5Jアルミホイール
・フロントパワーウインドウスイッチベースシルバーフィニッシャー
・オートエアコン
・メッキインナードアハンドル
・メッキアウトサイドドアハンドル
といった装備を追加した形で構成されています。
動力性能や走行性能は標準モデルと何一つ変わりません。
NISMOモデル
NISMOモデルは日産の既存モデルをスポーティーモデル、あるいはスポーティードレスアップモデルとして手を加えたもので、日産のモータースポーツ部門であるNISMOが手掛けています。
マーチにはスポーティードレスアップモデルとスポーティーモデルの2種類がグレードとして用意されています。
・NISMO グレード(2WD)
・NISMO S グレード(2WD)
●「NISMO」グレードの主な装備
NISMOモデルの「NISMO」グレードは標準モデルにある「X Vセレクション」グレードをベースに、NISMOモデル専用部品を追加、またはそれに交換する形で作られています。
標準モデル「X Vセレクション」グレードの装備に加えて…
・NISMO専用本革・アルカンターラR巻3本スポークステアリング
・NISMO専用エンブレム
・NISMO専用205/45サイズタイヤ(ブリヂストンPOTENZA RE-11)
・NISMO専用16インチ×7Jアルミホイール
・NISMO専用フロントグリル
・NISMO専用フロントバンパー
・NISMO専用サイドシルプロテクター
・NISMO専用リヤバンパー
・NISMO専用ルーフスポイラー
・NISMO専用フェンダーモール
・NISMO専用エキゾーストフィニッシャー
・NISMO専用車速感応式電動パワーステアリング
・NISMO専用サスペンション(コイルスプリング)
・NISMO専用サスペンション(ショックアブソーバー)
・NISMO専用レッド塗装 ドアロック連動自動格納機能付電動格納式リモコンカラードドアミラー
・LEDハイパーデイライト
・リヤフォグランプ
・シルバーフィニッシャーセンタークラスターサイド
・シルバーフィニッシャーセレクターノブ
・CVTシフトポジションインジケーター
・フットレスト
・運転席 バニティミラー
・インストアッパーボックス
・ドアサッシュブラックアウト
・アイドリングストップ
を追加したもので、エンジンもトランスミッションも標準モデルと全く同じであるため、動力性能や走行性能も全く同じ、要するに見た目だけスポーティーなスポーティードレスアップモデルとなります。
●「NISMO S」グレードの主な装備
NISMOモデルの「NISMO S」グレードは標準モデルにある「S」グレードをベースに、エンジンをノートやキューブに使われている1.5リッターNAエンジンへ置換、トランスミッションを5速マニュアルトランスミッションにしたものに更にNISMOモデル専用部品を追加、またはそれに交換する形で作られています。
標準モデル「S」グレードの装備に加えて…
HR12DE型からHR15DE型へ置換
CVTを5速マニュアルトランスミッションへ置換
といった構造の変更と…
・NISMO S専用エキゾーストシステム
・NISMO S専用ブレーキシステム
・NISMO S専用チューニングコンピューター
・NISMO S専用サスペンション(コイルスプリング)
・NISMO S専用サスペンション(ショックアブソーバー)
・NISMO S専用サスペンション(スタビライザー)
・NISMO S専用ボディ補強パーツ(フロントサスペンションメンバーステー)
・NISMO S専用ボディ補強パーツ(リヤサスペンションステー)
・NISMO S専用ボディ補強パーツ(トンネルステー)
・NISMO S専用ボディ補強パーツ(テールクロスバー)
・NISMO S専用エンブレム
・NISMO S専用シフトノブ
・NISMO S専用シフトブーツ
・NISMO S専用コンビメーター
・NISMO S専用アルミ製アクセルペダル
・NISMO S専用アルミ製ブレーキペダル
・NISMO S専用アルミ製クラッチペダル
・NISMO S専用アルミ製フットレスト
・NISMO S専用スポーツシート
・NISMO専用本革・アルカンターラR巻3本スポークステアリング
・NISMO専用ピアノ調フィニッシャーインテリアパネル
・NISMO専用205/45サイズタイヤ(ブリヂストンPOTENZA RE-11)
・NISMO専用16インチ×7Jアルミホイール
・NISMO専用フロントグリル
・NISMO専用フロントバンパー
・NISMO専用サイドシルプロテクター
・NISMO専用リヤバンパー
・NISMO専用ルーフスポイラー
・NISMO専用フェンダーモール
・NISMO専用車速感応式電動パワーステアリング
・NISMO専用サスペンション(コイルスプリング)
・NISMO専用サスペンション(ショックアブソーバー)
・NISMO専用レッド塗装 ドアロック連動自動格納機能付電動格納式リモコンカラードドアミラー
・LEDハイパーデイライト
・リヤフォグランプ
・シルバーフィニッシャーセンタークラスターサイド
・ドアサッシュブラックアウト
・メッキインナードアハンドル
といった装備を追加・交換した形で作られています。
動力性能や走行性能も標準モデルとは違う面があるため、このグレードはスポーティーモデルといえるでしょう。
日産・マーチに搭載されるパワーユニットと動力性能
日産・マーチには 2種類のパワーユニットが設定されています。
●1.2リッターNAエンジン
・エンジン型式:HR12DE型
・エンジン排気量:1198cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:3気筒
・バルブ構造:DOHC12バルブ
・燃料供給:ポート噴射
・過給器:なし
◆スペック
・最大出力:79ps/6,000rpm
・最大トルク:10.8kgf・m/4,400rpm
・1リッターあたりのパワー:約65.8ps
・パワーウェイトレシオ:約12.0kg/ps
※パワーユニットの評価:★☆☆☆☆(1)
このパワーユニットは…
・標準モデル 全グレード
・ボレロモデル 全グレード
・NISMOモデル 「NISMO」グレード
に採用されているエンジンです。
日産の自社モデルに採用されているエンジンの中で一番小さいエンジンとなっており、いわゆる実用型エンジンといえるものです。
●1.5リッターNAエンジン
・エンジン型式:HR15DE型
・エンジン排気量:1498cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・燃料供給:ポート噴射
・過給器:なし
◆スペック
・最大出力:116ps/6,000rpm
・最大トルク:15.9kgf・m/3,600rpm
・1リッターあたりのパワー:約77.3ps
・パワーウェイトレシオ:約8.7kg/ps
※パワーユニットの評価:★★☆☆☆(2)
このエンジンはキューブに搭載されているものと全く同じものですが、ECUのプログラムデータが改良されていることからキューブよりも7psほどパワーアップしています。
動力性能的にはたいしたことはありませんが、1.2リッターNAエンジンが標準のマーチとしてみればかなりパワーアップがされているので評価に値します。
日産・マーチに採用されているトランスミッション
マーチには2種類のトランスミッションが用意されています。
●5速マニュアルトランスミッション
このトランスミッションはNISMOモデルの「NISMO S」グレードだけに採用されているもので、ノートのNISMOモデルにある「NISMO S」グレードと同じ構造のものです。
※トランスミッションの評価:★★★☆☆(3)
●CVT
「NISMO S」グレード以外のすべてのマーチに搭載されているのが、このCVTです。
日産名「エクストロニックCVT」と呼ばれているもので、アウトプット側のドリブンプーリーに二段変速式の副変速機を持ついわゆる「副変速機付きCVT」となるものです。
クラッチ代わりのトルクコンバーターに電子制御・油圧作動式のベルト無段変速機をあわせたごく普通のCVTです。
女性ドライバー向けの標準モデルやボレロモデルであればいいですが、いくらドレスアップモデルといっても仮にも「スポーティーさ」をうたっているNISMOモデルに採用するというのはちょっといただけません。
※トランスミッションの評価:★☆☆☆☆(1)
日産・マーチの走行性能を決める構造
日産・マーチのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
マーチには日産内では最小のプラットフォームとなるVプラットフォームが採用されています。
このプラットフォームはノートに使われているものと同じですが、いわゆる「大衆コンパクトカー用のプラットフォーム」「廉価モデル用のプラットフォーム」として設計されたものとなる関係上、走行性能を高めるだけの剛性は持っていません。
NISMOモデルではボディ補強パーツが採用され、標準モデルなどと比較するとだいぶボディ剛性が高まってはいるものの、もともとの剛性が低いため、補強をしてやっと標準レベルの剛性を得ることができたといった具合で、補強されているからといってがっちりしたシャシーが与えられているということではありません。
試乗レポート記事などで「GT-Rに近いボディ剛性」「まるでドイツ車並み」などといっている方がいますが、マーチNISMO Sでそういった感想を持てるのはその方は太鼓持ちのような意見であるという印象を持ちます。
※ボディ剛性の評価:★☆☆☆☆(1)
日産・マーチの走りの質を決めるサスペンション構造
シャシーが廉価モデル用として作られているわけですので、それにつけられることになるサスペンション構造も同様に廉価モデル用としての作りしか与えられていません。
特にリヤサスペンションのトーションビームは、低コスト・低スペースに特化したサスペンション構造であるため、NISMOモデルで特別なコイルスプリング、ショックアブソーバー、スタビライザーが付けられているといってもサスペンション構造の剛性が弱いのではそれらの性能をフルに発揮させることはできません。
これは社外品として販売されている車高調をつけても同じです。
サスペンション構造自体が軟なので、その部分を何とかしないとNISMOモデルでも高い水準の走りはできないでしょう。
※サスペンション構造の評価:★☆☆☆☆(1)
日産・マーチのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
ブレーキシステムも大衆コンパクトカーでごく一般的なものが採用されています。
リヤブレーキがドラムブレーキとなっていますが、これはこの車の性質、オーナー層を考えれば十分だと思います。
問題はNISMOモデルです。
特に1.5リッターNAエンジンに置換され、パワーも上がっている「NISMO S」グレードでブレーキが標準モデルと同じではちょっとばかり心もとないところです。
一応、このグレードには特別なブレーキが与えられているようですが、構造的には標準モデルと全く同じで、ブレーキパッドとブレーキシューが違うだけです。
※ブレーキシステムの評価:標準モデル=★★★☆☆(3) NISMOモデル=★☆☆☆☆(1)
日産・マーチの燃費性能
日産・マーチのカタログ燃費と実燃費
●標準モデル
・カタログ燃費(JC08モード):最大23km/L
・実燃費:約19km/L
※燃費性能の評価:★★★☆☆(3)
●ボレロモデル
・カタログ燃費(JC08モード):最大23km/L
・実燃費:約19km/L
※燃費性能の評価:★★★☆☆(3)
●NISMOモデル
・カタログ燃費(JC08モード):最大約21km/L(非公表値)
・実燃費:約17km/L
※燃費性能の評価:★★★☆☆(3)
●NISMOモデル(「NISMO S」グレード)
・カタログ燃費(JC08モード):最大約17km/L(非公表値)
・実燃費:約13km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
どのモデルもごく普通の実燃費型NAエンジンですので、取り立てて燃費性能がいいわけでもありませんし、悪いわけでもありません。
日産・マーチに採用されている低燃費装備
●1.2リッターNAエンジン搭載モデル
(「S」グレード、「Sプラムインテリア」グレード、4WDモデル)
・可変バルブタイミング機構
・CVT
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
●1.2リッターNAエンジン搭載モデル
(上記以外の1.2リッターNAエンジン搭載グレード)
・可変バルブタイミング機構
・CVT
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
・アイドリングストップ機構
●1.5リッターNAエンジン搭載モデル(「NISMO S」グレード)
・可変バルブタイミング機構
・電動パワーステアリング機構
低燃費装備に関しても大衆コンパクトカーらしくお金がかかるようなものは採用されていません。
まとめ
一時は、かなり心配した時期もありましたが現行モデルになって日産らしい車に戻ってくれて安心しました。
ただ一つだけ欲を言えば、初代モデルのようにスポーツモデルや競技車両のベース車両になるような過激なモデルが欲しいところです。
1つ格上となるモデルのエンジンを搭載しただけのスポーティーモデル「風」はもうお腹いっぱいという方も多いのではないでしょうか。
※総合評価:★★☆☆☆(2)