スポーツモデルの中で最下位クラスとなるのが軽スポーツモデル、2019年現在でわずかしか発売されていませんが、その中でも特に過激なモデルがこのホンダ・S660です。
ここではホンダ・S660がどういう車なのか、スポーツモデルとしてのどれくらいに性能を持っているのかと検証してみたいと思います。

※ご注意
ここではホンダ・S660の自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。

軽自動車ながら本格的な作りがされたホンダ・S660

軽自動車におけるスポーツモデルというと古くから既存のハッチバックセダンモデルを改良して作るというのが一般的でした。
例えば、スズキのアルトにターボエンジンを搭載して足回りを固めて、エアロパーツっぽいエクステリアパーツをつけてアルト・ワークスを作るとか、同様の手段でダイハツではミラベースのミラ・TR-XXといったモデルを発売していました。
こういったモデルは経済的な面が厳しい若年層に大人気となり、チューニングをして格上モデルとなるコンパクトスポーツモデルをカモるといった1つの自動車文化も生まれました。
もともとは軽ベーシックモデルであったため、居住性もそれなりになっていたため、日常使いにも十分に対応できていたことも人気に秘密だったのでしょう。

しかし、1980年代末から1990年の頭にかけて巻き起こったバブル景気よって、そういった傾向も贅沢になる軽自動車から登録車へランクアップしていくのと同時に、軽自動車の中でも更なるスポーツモデルらしいスポーツモデルが求められるようになっていったのです。

そこで発売されたのがホンダのビートです。
ビートは、軽自動車でありながらも、軽自動車でありがちなFFレイアウトの共通プラットフォームを使用した車作りではなく、ミッドシップレイアウトのオープンモデルとして専用設計されたシャシーを持つといった贅沢な作りが取られていました。

贅沢なのは骨格だけでなく、エンジンもそうです。
このビートには当時のホンダの軽自動車における主力となる直列3気筒SOHCのE07A型エンジンが搭載されていたのですが、通常、市販車のエンジンというのは複数の気筒を持つエンジンでも1つのスロットルを持つ(V型エンジンでは片バンクにつき1つの場合もある)ものですが、このビートに搭載されたE07型エンジンは各気筒に付き1つにスロットルがついている、要するにオートバイのエンジンと同じような構造が取られていたのです。

これによってビートに搭載されていたエンジンは他の自動車メーカーがターボエンジンで出している64psという軽自動車の自主規制値となる最大出力をNAエンジンで発揮させることができたのです。

そのエンジンをキャビンの後ろに横向きに収め、5速マニュアルトランスミッションを経て、リヤタイヤを駆動するというミッドシップレイアウトを持ち、足まわりは四輪ともマクファーソンストラットの四輪独立懸架、ブレーキも四輪ディスクブレーキ、ボディはソフトトップのロードスターとそれまでの軽自動車、軽スポーツモデルの概念ではなかった構造、考え方を持つモデルとして発売されました。
当然ながら大人気となり、生産が追い付かないぐらいでした。

これを見た他の軽自動車を作る自動車メーカーもビートに対抗すべく軽オープンスポーツモデルを発売してきました。
1991年にスズキのカプチーノ、1992年にマツダのオートザム・AZ-1といった形で一気に軽オープンスポーツモデルが発売されるようになったのです。

ちなみにだいぶ遅れた2002年にダイハツからコペンという軽オープンモデルが発売されましたが、こちらのモデルは同社のミラやムーヴ、タントといった大衆モデルのFFレイアウトのプラットフォームに少し手直しをしたもの使って作られていて、見た目とエンジンはそれらしいものが採用されていたのですが、FFレイアウトであること、大衆モデルと基本を同じとする軟弱なシャシーを使っていること、サスペンションにトーションビームを採用していること、走行性能があまり良くなかったことから軽スポーツモデルではなく、見た目だけの「デートカー」として扱われるようになっています。
これは現行モデルのコペンシリーズも同様です。

S660はビートの後継モデル

ビートは、1991年に発売され、景気の悪化からくる「スポーツモデルが売れない」傾向が生まれたことで1996年に生産終了となりました。
しかし、生産終了後もこの車の人気は衰えることもなく、中古車市場で新車販売価格を上回る金額で販売されることもあったぐらいになったこともあり、再販や後継モデルの発売を熱望する声も高かったのですが、当時のホンダは軽自動車において不調が続いている時で、更に日本の自動車界全体において実用性重視、経済性重視の傾向が強くなっていたことから、ホンダはこの車を再販したり、後継モデルの開発をすすめることはなかったのです。

しかし、時代が変わり「実用性重視」のミニバンブーム、「経済性重視」のエコカーブームが一段落、特にエコブームに対する見方が変わって「燃費性能が良ければ良い車」という傾向が無くなりつつあり、少しずつ自由に、そして何にもとらわれることのない車選びがされるようになったこと、そしてN-BOXやN-ONEといったホンダの新しい軽自動車シリーズのNシリーズが大成功を収めたことからホンダはやっと次なる軽スポーツモデルを作ることにしたのです。

それがこのS660です。
このモデルは1991年に発売されたビートと同じように軽オープンスポーツモデルとして作られており、スタイルやコンセプトだけでなく、ミッドシップレイアウトであること、四輪独立懸架であること、四輪ディスクブレーキであることなどビートに似ている部分がたくさんあるのです。
逆に違うといえば、ルーフの開閉機構がフルオープンのロードスターではなくリヤウィンドウが残るタルガトップになったこと、エンジンがNAエンジンではなくターボエンジンになったことぐらいでそれ以外の部分は具体的な構造は違いますが、構造の基本は同じとなります。

従って、このモデルはビートの後継モデルであるといっていいでしょう。

ホンダ・S660のこれまでの出来事(2019年12月現在)

●初代モデル JW5型 2015年3月発売

・2015年3月 発売と同時に「S660 CONCEPT EDITION」の追加
・2017年5月 「Bruno Leather Edition」の追加
・2017年10月 「#komorebi edition」の追加
・2018年5月 一部仕様変更 デザインの小変更 ボディカラーの変更 「Modulo X」の追加
・2018年12月 「Trad Leather Edition」の追加

ホンダ・S660が属するカテゴリー

●車格:軽スポーツモデル
●用途・目的:生活車 スポーツ走行用
●車両カテゴリー:軽オープンスポーツモデル
●エンジン排気量クラス:軽自動車クラス

ホンダ・S660のオーナー層

●年齢層:18歳ぐらいから40歳ぐらいまで
●性別:男性
●経済力:富裕層(新車購入)、高収入層(新車購入)、大衆層(新車購入)、低収入層(中古車購入)
●その他:セカンドカーとしても人気高い

ホンダ・S660の車体の構成・選択肢

●パワーユニット

・ガソリンエンジン

●トランスミッション

・6速マニュアルトランスミッション
・CVT

●エンジン・ドライブトレーンレイアウト

・ミッドシップ

●サスペンション構造

・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)

●ブレーキシステム

・フロント:ソリッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:ソリッドディスク ディスクブレーキ

●ベースモデル

・なし

●兄弟車

・なし

ホンダ・S660のモデル構成とグレード構成

S660には外観や装備の違いよる2つモデルが用意されています。

標準モデル

このモデルには3つのグレードが用意されています。

・β グレード(2WD)
・α グレード(2WD)
・αトラッドレザーエディション グレード(2WD)(特別仕様車)

●「β」グレードの主な装備

・運転席用i-SRSエアバッグシステム
・助手席用i-SRSエアバッグシステム
・i-サイドエアバッグシステム
・クラッチスタートシステム(マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・アイドリングストップシステム(CVTモデルのみ)
・VSA
・EBD付ABS
・ヒルスタートアシスト機能
・オートライトコントロール機構付LEDヘッドライト
・導光タイプLEDポジションランプ
・エマージェンシーストップシグナル
・頚部衝撃緩和シート
・LEDハイマウント・ストップランプ
・イモビライザー
・セキュリティーアラーム
・SPORTスイッチ(CVTモデルのみ)
・SELECTスイッチ (マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・アレルフリー高性能脱臭フィルター付ミッドモード付フルオート・エアコンディショナー
・iPod対応USBプレーヤー/AM・FMチューナー
・AUXジャック(HDMIジャック)
・USBジャック
・Hondaスマートキーシステム ピアノブラック
・照明付オーディオリモートコントロールスイッチ
・プッシュエンジンスタート/ストップスイッチ
・チルトステアリング
・パワードアロック
・ワンタッチウインカー
・運転席/助手席パワーウインドウ
・パワーリアウインドウ
・アンビエントメーター
・インフォメーション・ディスプレイ
・フロント 2スピーカー
・DC12Vアクセサリーソケット
・インテリアランプ
・ピアノブラック メーターバイザーリング
・ブラック パーキングブレーキノブ
・ブラック エアコンアウトレットノブ
・ピアノブラック プッシュエンジンスタート/ストップスイッチリング
・ピアノブラック SPORTスイッチリング (CVTモデルのみ)
・ピアノブラック SELECTスイッチリング (マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・ブラック インナードアハンドル
・ブラック×ピアノブラック ステアリングガーニッシュ
・メッシュ×ファブリック コンビシート生地 スポーツシート
・運転席フットレスト
・防眩ルームミラー
・キーロック機構付グローブボックス
・LED照明付フロントコンソールトレー
・コンソールポケット
・リアコンソールトレー
・リアコンソール ドリンクホルダー
・助手席シートバックポケット
・リヤ中央コンビニフック
・UVカット機能付 フロントウインドウガラス
・高熱線吸収/UVカット機能付 フロントドアガラス
・高熱線吸収/UVカット機能付 リアガラス
・アンバー サイドターンランプ
・ロールトップ
・ミスト機構付バリアブル間欠フロントワイパー
・スプレータイプフロントウインドウウオッシャー
・LEDリアコンビネーションランプ
・プリントアンテナ
・フロントフード内ユーティリティーボックス
・アジャイルハンドリングアシスト
・165/55R15 75Vサイズ フロントタイヤ 銘柄=ヨコハマタイヤ ADVAN NEOVA AD08R
・195/45R16 80Wサイズ リヤタイヤ 銘柄=ヨコハマタイヤ ADVAN NEOVA AD08R
・15インチ×5J シルバーカラー フロントアルミホイール
・16×6.5J シルバーカラー リヤアルミホイール
・パドルレバー(CVTモデルのみ)
・フロント/リア スタビライザー

など

●「α」グレードの主な装備

「β」グレードの装備に加えて・・・

・クルーズコントロール
・ナビ装着用スペシャルパッケージ
・オーディオレス
・Hondaスマートキーシステム カーボン調
・LEDインテリアランプ
・高輝度シルバー塗装 メーターバイザーリング
・クロームメッキ パーキングブレーキノブ
・クロームメッキ エアコンアウトレットノブ
・クロームメッキ プッシュエンジンスタート/ストップスイッチリング
・クロームメッキ SPORTスイッチリング (CVTモデルのみ)
・クロームメッキ SELECTスイッチリング (マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・クロームメッキ インナードアハンドル
・ステンレス製スポーツペダル
・本革巻シフトノブ(マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・本革巻セレクターレバー(CVTモデルのみ)
・本革巻ステアリングホイール
・カーボン調×高輝度シルバー塗装 ステアリングガーニッシュ
・本革×ラックススェード コンビシート生地 スポーツシート
・クリア サイドターンランプ
・15インチ×5J ブラック×シルバーカラー フロントアルミホイール
・16×6.5J ブラック×シルバーカラー リヤアルミホイール

が追加されています。

●「αトラッドレザーエディション」グレードの主な装備

「α」グレードの装備に加えて・・・

・トラッドレザーインテリア:本革×ラックススェード コンビシート生地 スポーツシート
・トラッドレザーインテリア:本革巻ステアリングホイール
・トラッドレザーインテリア:インパネソフトパッド
・カーボン調×ピアノブラック ステアリングガーニッシュ
・ピアノブラック メーターバイザーリング
・アルミ製コンソールプレート
・15インチ×5J ブラッククリア塗装 フロントアルミホイール
・16×6.5J ブラッククリア塗装 リヤアルミホイール
・ブラウンロールトップ
・シティーブレーキアクティブシステム
・internaviPOCKET連携対応センターディスプレイ

が追加されています。

スポーティードレスアップモデル

・Modulo X グレード(2WD)

このモデルは「Modulo X」と呼ばれるもので、標準モデルの「α」グレードをベースにしてホンダが作成したコンプリートカーで、若干のチューニングとドレスアップが施されています。
チューニングといってもサスペンション回りとブレーキ回りを少しだけグレードアップさせただけで、性能としても走行性能がわずかに向上したぐらいとなることから「メーカー製チューニングモデル」ではなく、「メーカー製スポーティードレスアップモデル」となります。

エンジンパワーは一切、向上されていません。

●「Modulo X」グレードの主な装備

・運転席用i-SRSエアバッグシステム
・助手席用i-SRSエアバッグシステム
・i-サイドエアバッグシステム
・クラッチスタートシステム(マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・アイドリングストップシステム(CVTモデルのみ)
・クルーズコントロール
・VSA
・EBD付ABS
・ヒルスタートアシスト機能
・オートライトコントロール機構付LEDヘッドライト
・導光タイプLEDポジションランプ
・エマージェンシーストップシグナル
・頚部衝撃緩和シート
・LEDハイマウント・ストップランプ
・イモビライザー
・セキュリティーアラーム
・SPORTスイッチ(CVTモデルのみ)
・SELECTスイッチ (マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・アレルフリー高性能脱臭フィルター付ミッドモード付フルオート・エアコンディショナー
・ナビ装着用スペシャルパッケージ
・オーディオレス
・Hondaスマートキーシステム カーボン調
・照明付オーディオリモートコントロールスイッチ
・プッシュエンジンスタート/ストップスイッチ
・チルトステアリング
・パワードアロック
・ワンタッチウインカー
・運転席/助手席パワーウインドウ
・パワーリアウインドウ
・アンビエントメーター
・インフォメーション・ディスプレイ
・フロント 2スピーカー
・DC12Vアクセサリーソケット
・LEDインテリアランプ
・高輝度シルバー塗装 メーターバイザーリング
・クロームメッキ パーキングブレーキノブ
・クロームメッキ エアコンアウトレットノブ
・クロームメッキ プッシュエンジンスタート/ストップスイッチリング
・クロームメッキ SPORTスイッチリング (CVTモデルのみ)
・クロームメッキ SELECTスイッチリング (マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・クロームメッキ インナードアハンドル
・ステンレス製スポーツペダル
・カーボン調×高輝度シルバー塗装 ステアリングガーニッシュ
・運転席フットレスト
・防眩ルームミラー
・キーロック機構付グローブボックス
・LED照明付フロントコンソールトレー
・コンソールポケット
・リアコンソールトレー
・リアコンソール ドリンクホルダー
・助手席シートバックポケット
・リヤ中央コンビニフック
・UVカット機能付 フロントウインドウガラス
・高熱線吸収/UVカット機能付 フロントドアガラス
・高熱線吸収/UVカット機能付 リアガラス
・クリア サイドターンランプ
・ミスト機構付バリアブル間欠フロントワイパー
・スプレータイプフロントウインドウウオッシャー
・LEDリアコンビネーションランプ
・プリントアンテナ
・フロントフード内ユーティリティーボックス
・アジャイルハンドリングアシスト
・165/55R15 75Vサイズ フロントタイヤ 銘柄=ヨコハマタイヤ ADVAN NEOVA AD08R
・195/45R16 80Wサイズ リヤタイヤ 銘柄=ヨコハマタイヤ ADVAN NEOVA AD08R
・パドルレバー(CVTモデルのみ)
・フロント/リア スタビライザー
・「Modulo X」モデル専用パーツ:15インチ×5J ステルスブラック塗装 フロントアルミホイール
・「Modulo X」モデル専用パーツ:6×6.5J ステルスブラック塗装 リヤアルミホイール
・「Modulo X」モデル専用パーツ:アルミホイール用ブラック ホイールナット
・「Modulo X」モデル専用パーツ:グリル一体型専用フロントバンパー
・「Modulo X」モデル専用パーツ:専用LEDフォグライト風タウンランプ
・「Modulo X」モデル専用パーツ:ブラック 専用カラードドアミラー
・「Modulo X」モデル専用パーツ:ガーニーフラップ付専用アクティブスポイラー
・「Modulo X」モデル専用パーツ:リアロアバンパー
・「Modulo X」モデル専用パーツ:専用リアエンブレム
・「Modulo X」モデル専用パーツ:5段階減衰力調整機構付専用サスペンション
・「Modulo X」モデル専用パーツ:ドリルドディスク ブレーキローター
・「Modulo X」モデル専用パーツ:スポーツブレーキパッド
・「Modulo X」モデル専用パーツ:専用ModuloXロゴ入りメーター
・「Modulo X」モデル専用パーツ:専用ModuloXロゴ入りアルミ製コンソールプレート
・「Modulo X」モデル専用パーツ:専用ボルドーレッド インパネソフトパッド
・「Modulo X」モデル専用パーツ:専用ボルドーレッド×ブラック/ModuloXアルミ製エンブレム付フロアカーペットマット
・「Modulo X」モデル専用パーツ:チタン製シフトノブ(マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・「Modulo X」モデル専用パーツ:グレーステッチ入りシフトブーツ(マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・「Modulo X」モデル専用パーツ:専用本革製 ボルドーレッド×ブラック セレクターレバー(CVTモデルのみ)
・「Modulo X」モデル専用パーツ:専用ボルドーレッド×ブラック サイドブレーキカバー
・「Modulo X」モデル専用パーツ:専用ボルドーレッド×ブラック 本革巻ステアリングホイール
・「Modulo X」モデル専用パーツ:本革×ラックススェード コンビシート生地 ボルドーレッド×ブラック/ModuloXロゴ入り専用スポーツシート
・「Modulo X」モデル専用パーツ:ボルドーレッド ロールトップ

など

ホンダ・S660に搭載されるパワーユニットと動力性能

ホンダ・S660には1種類のパワーユニットが設定されています。

●0.66リッターターボエンジン

・エンジン型式:S07A型
・エンジン排気量:658cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:3気筒
・バルブ構造:DOHC12バルブ
・燃料供給:ポート噴射 
・過給器:ターボチャージャー

◆スペック

・最大出力:64ps/6000rpm
・最大トルク:10.6kgf・m/2600rpm

・1リッターあたりのパワー:約96ps
・パワーウェイトレシオ:約13.2kg/ps

先代モデルにあたるビートがNAエンジンだったのに対してこのS660ではターボエンジンを採用しました。
このエンジンは現在のホンダの軽自動車シリーズであるNシリーズに採用されているもので形式的には他のNシリーズと全く同じものですが、内部はS660用に手が加えられていて(バランス取りやクリアランス調整など)他のNシリーズに採用されているS07A型エンジンよりエンジンが回るようになっています。

ターボチャージャーは絶対的なブースト圧よりもピックアップの良さを重視して小型ものが採用されており、そのおかげで最大トルクの発生回転数が2600rpmとターボエンジンだとしても低めの設定となっています。

パワー的には、軽自動車において自主規制値というものがあるので64ps以上のパワーを出すことができないのでこの車もそれに則って64psとなっています。
なので、数字的には他のターボエンジンを搭載した軽自動車と同じとなりますが、実際に運転してみると64ps以上のパワーが出ているように感じます。
多分、それは下からモリモリと湧いてくるトルクのおかげなのでしょう。

マニュアルトランスミッションで「ちょっと苦しいなぁ」と思うような状態でもものぐさをしてシフトダウンをしないで無理やりアクセルペダル踏み続けるといったような運転をしても結構耐えてくれるのには驚きました。

かといってエンジンが回らないわけではなく、レッドゾーンが始まるちょっと手前の7500rpmまできれいに回りますので、高回転を維持して「パワーで走る」といったこともできます。

非常に楽しめるエンジンに仕上がっているといっていいと思います。

※パワーユニットの評価:★★★★★(5)

ホンダ・S660に採用されているトランスミッション

●6速マニュアルトランスミッション

S660でメインとなるトランスミッションがこの6速マニュアルトランスミッションです。
軽自動車では初となる6速マニュアルトランスミッションですが、軽自動車のマニュアルトランスミッションとしては非常によくできていると思います。

ミッドシップレイアウトなのでシフトリンケージは比較的長め、シフトリンケージ自体の構造もシフトレバーまわりだけが金属製のリンケージで、それ以降はワイヤー式といったFFのマニュアルトランスミッションによくあるようなものです。
途中にワイヤーが挟まるとどうしてもシフトフィーリングがグニャグニャとなりがちですが、このS660のものはワイヤー式でもそれがうまく抑え込まれています。
FRレイアウトのシフトリンケージがトランスミッションにダイレクトに繋がっているものと比較してしまうとダルな感じを受けますが、確実にそれに近いところまで来ています。

若干、縦方向のシフトストロークが長いのが難ですが、それでもスポーツ走行を楽しむのには十分な機能と性能を持っています

ギヤ比はかなりのクロスレシオで、街乗りでも頻繁にシフトチェンジを求められることになりますが、走るステージが一転して峠道に変わるとそれが武器となり、どのようなコーナーでもエンジン回転数をパワーバンドに入れておくことが可能で、コーナーの出口では常にロケット加速をすることができるでしょう。

※トランスミッションの評価:★★★★★(5)

●CVT

S660にどうしてCVTが必要なのでしょうか?
そんなにAT限定免許取得者が大事なのでしょうか?

こうも言いたくなります。
先代モデルのビートではマニュアルトランスミッション・オンリーだけだったのに対してこのS660ではなんとCVTが用意されてしまいました。

構造的には他のNシリーズに搭載されているものと全く同じで、おもちゃとしてパドルレバーによるパドルシフト機能が付けられているだけです。

走りも最悪、加速したくても加速してくれない、うかうかしているとすぐにエンジン回転数を下げられてしまうといったスポーツモデルとして見ればとんだ体たらくです。

CVTを選ぶのならS660は買わない方がいいと思います。

※トランスミッションの評価:☆☆☆☆☆(0)

ホンダ・S660の走行性能を決める構造

ホンダ・S660のボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー

S660のプラットフォームは基本の基本部分は他のNシリーズと同じ、Nシリーズ共通のプラットフォームとなりますが、同じなのは非常にわずかな部分でそのほとんどはタルガトップのオープンボディとミッドシップレイアウトのための改良が加えられていることで別物と言えるぐらいの違いがあります。

標準のNシリーズ共通プラットフォームでも軽自動車としての十分な剛性を持っていますが、このS660のものはスポーツ走行をすることやタルガトップというルーフで強度を確保することができないボディ形状を持っていることからそれよりもさらに頑丈で強固なシャシー、フレームとなっています。

国産のオープンモデルに何車種も運転したことがあるのですが、そのほとんどがボディ剛性の低さから段差を超えるだけであちこちからキシミ音が聞こえたものですが、このS660では相当ボディが捻じれるほどの段差でない限り異音が聞こえてくることはありませんでした。

それだけしっかりとしたシャシー、フレームを持っているということです。

※ボディ剛性の評価:★★★★★(5)

ホンダ・S660の走りの質を決めるサスペンション構造

S660のサスペンション構造は・・・

・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:マクファーソンストラット

といった四輪独立懸架となっています。
軽自動車ではコスト削減のためにリヤサスペンションを安価なリジットサスペンションにすることが多いのですが、このS660ではスポーツモデルらしくリヤサスペンションも独立懸架とされました。

サスペンション構造を見てみるとロアアームが貧弱で「これでスポーツ走行ができるのか?」と思ってしまいますが、スポーツモデルといってもたかが64psですし、重量も重くても850kgといった感じですので、それで十分であるようです。
実際に運転してみてスラロームとか峠を攻めたりした時もサスペンション構造の弱さを感じることはありませんでした。

セッティングについては全体的に固めですがこれがスポーツ走行をするとしっくりきます。
むしろもう少し硬くてもいいぐらいです。

コンプリートカー扱いの「Modulo X」モデルにはスプリングレートを高めた専用スプリングと減衰力を5段階に調整できる専用ショックアブソーバーが採用されていますが、こちらのセッティングの方がS660にちょうど良いかもしれません。

※サスペンション構造の評価:★★★★☆(4)

ホンダ・S660のストッピングパワーを生み出すブレーキシステム

軽自動車のブレーキというとフロントはディスクブレーキですがリヤはコスト削減のためにドラムブレーキになっていることが多いのですが、このモデルでは・・・

・フロント:1ポットフローティングキャリパー+φ260mmソリッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ::1ポットフローティングキャリパー+φ260mmソリッドディスク ディスクブレーキ

といった前後ともディスクブレーキとなっています。

これはこのモデルがスポーツモデルであるということもそうですが、ミッドシップレイアウトを持つモデルであるということも理由となります。

ミッドシップレイアウトでは重たいエンジンがリヤアクスル上に置かれているため重心が後ろ寄りで、ブレーキングをした時もフロントエンジンの車と比べて、リヤタイヤにかかる荷重が大きくなるのです。
そのため、通常ではフロントブレーキばかりを強化するのに対して、ミッドシップレイアウトではリヤブレーキも同時に強化しなければならないのです。

ちょっと残念なのがブレーキローターがベンチレーテッドディスクではなく、ソリッドディスクであることです。
軽自動車でパワーもなく、重量も軽いことからソリッドディスクでも十分なのかもしれませんがスポーツモデルですのでせめてフロントブレーキだけでもベンチレーテッドディスクを採用してもらいたかったです。

ブレーキシステムにおいてもコンプリートカー扱いの「Modulo X」モデルでは特別なものが与えられています。
1つは専用ブレーキローター、これはソリッドディスクにドリル加工を施したもので、ブレーキパッドの表面に蓄積したブレーキパッドのカスや熱によって固着してしまったカスをドリルホールが通過することで削り落とすことでブレーキパッドの表面を常にクリーンしておき、常に安定して最大のストッピングパワーを発揮させるようにしたものです。

もう1つはブレーキパッド、こちらはいわゆる「スポーツタイプのブレーキパッド」と言われるもので、対フェード性が高く、効き目を高めたパッド素材を使用したものです。

標準装備のブレーキと比べてみるとやはり「Modulo X」モデルの方が確実に制動距離が縮まり、コントロールもしやすくなっているようです。

※ブレーキシステムの評価:★★★★☆(4)

ホンダ・S660の燃費性能

ホンダ・S660のカタログ燃費と実燃費

●6速マニュアルトランスミッションモデル

・カタログ燃費(JC08モード):最大21.2km/L
・実燃費:約17km/L

※燃費性能の評価:★★★☆☆(3)

●CVTモデル

・カタログ燃費(JC08モード):最大24.2km/L
・実燃費:約18km/L

※燃費性能の評価:★★★☆☆(3)

ホンダ・S660に採用されている低燃費装備

●6速マニュアルトランスミッションモデル

・可変バルブタイミング機構
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御

●CVTモデル

・アイドリングストップ機構
・可変バルブタイミング機構
・CVT
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御

ホンダ・S660のライバルモデル比較

ホンダ・S660のライバルとなるのはアルト・ワークス

S660のライバルというとその見た目からダイハツのコペンシリーズとされることが多いのですが、コペンシリーズはママさん車であるダイハツ・タントのプラットフォームを流用して作られた大衆モデル、いわゆる「デートカー」ですので、スポーツモデルではありません。
実際に走りもまさにタントでボディがフニャフニャと曲がり、スポーツ走行どころではありません。

2019年12月現在でS660と同じ軽スポーツモデルにカテゴライズされているのはたった1台、スズキのアルト・ワークスしかありません。

●ホンダ・S660の概要

・カテゴリー:軽オープンスポーツモデル
・車格:軽スポーツモデル
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:S07A型
・比較対象グレード:「α」グレード

●アルト・ワークスの概要

・カテゴリー:軽スポーツモデル
・車格:軽スポーツモデル
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:R06A型
・比較対象グレード:ベースグレード

ホンダ・S660とアルト・ワークスのパワースペック比較

●ホンダ・S660

・最大出力:64ps/6000rpm
・最大トルク:10.6kgf・m/2600rpm

●アルト・ワークス

・最大出力:64ps/6000rpm
・最大トルク:10.2kgf・m/3000rpm

※パワースペック比較結果

共に自主規制値の中でのパワースペックですので似たり寄ったりの数字になっています。
わずかにS660のトルクが勝っていますが実際に運転してその違いに気がつくことはないかと思います。

ホンダ・S660とアルト・ワークスの燃費性能比較

●ホンダ・S660

・カタログ燃費(JC08モード):最大21.2km/L
・実燃費:約17km/L

●アルト・ワークス

・カタログ燃費(JC08モード):最大23.0km/L
・実燃費:約20km/L

※燃費性能比較結果

スズキのR06A型エンジンはそもそも低燃費のためのエンジンですからそういった潜在的な能力が発揮されたのかもしれません。
ただ、どちらもターボエンジンを搭載したモデルですので、運転の仕方次第で燃費性能は大きく変わりますので、一概にアルト・ワークスの方が燃費性能が優れているともいえません。

ホンダ・S660とアルト・ワークスの販売価格帯比較

ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。

●ホンダ・S660

約202万円~約290万円

●アルト・ワークス

約151万円~約165万円

※販売価格帯比較結果

S660はほぼ専用設計の車、対してアルト・ワークスはアルトベースの派生モデル的な車、開発にかかる費用や部品コストが全く違いますのでそれが価格に反映されたのでしょう。

まとめ

日本ではあまり活気のないスポーツモデルですが、そのため自動車メーカーはスポーツモデルを作らず、既存モデルに手を加えてつくった「スポーティーモデル」や「スポーティードレスアップモデル」といった車を作って誤魔化すことがほとんど、どれも見た目はいいですが実際に運転してみるとごく普通の「大衆車の走り」しかできないのが悲しいところです。

それをスポーツモデルと勘違いして購入してしまう方もいるので自動車メーカーがすべて悪いとは言えないのですが、そういった中でS660のような純粋なスポーツモデルを売ることは、とても良いことですし嬉しいことだと思います。

NSXには手が届きませんがこのS660なら手は届くと思います。
ぜひともS660でスポーツモデルの良さを理解してください。

性能も何から何まで最高の軽自動車です。

※総合評価:★★★★★(5)

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