3代目フィットの発売以降、フィット兄弟モデルの拡大を行ってきたホンダ、そのホンダがフィット兄弟モデルの第3弾モデルとして発売したのが、小型4ドアノッチバックセダンモデルのホンダ・グレイスです。
ここでは、グレイスがどういう経緯で販売されるようになったのか、4ドアセダンモデルとしてどれくらいの走りの性能を持っているのかといったところを検証してみたいと思います。
※ご注意
ここではホンダ・グレイスの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。
目次
フィットの4ドアノッチバックセダンモデルのホンダ・グレイス
ホンダのグレイスは、3代目フィット兄弟モデルの一員として弾3弾モデルとして発売されたモデルです。
ホンダでは販売の主力となるコンパクトカークラスのモデルすべてをフィットの派生モデル、要するにフィット兄弟モデルにすることで低コストでたくさんのモデルを作るようにしています。
これがトヨタのようにベースとなるモデルがひどい車であったりするとその派生モデルもとんでもない車になってしまいますが、フィット兄弟モデルにおいてはフィット自体がしっかりと作られているため、派生モデルもなかなかいいモデルになっているようです。
ベースモデルのフィットはハッチバックモデル、第二弾モデルのヴェゼルは「なんちゃってクロスオーバーSUV」、そして第三弾として発売されたグレイスは、4ドアノッチバックセダンモデルということになっています。
このモデル、2014年の12月に発売されたものなのですが、実はインドで2014年の1月に「シティ」という車名で販売されていたのです。
日本人にとってシティといえば、1981年に発売された「ブルドッグ」の愛称で親しまれていたコンパクトハッチバックモデルが有名ですが、そのモデルは1986年に発売された2代目モデルを持って日本国内では生産終了となりました。
しかし、小型セダンモデルの需要が高い東南アジアでアコードよりも一回り小さなモデルが求められていたため、ホンダはそれに反応するかのようにシビックのセダンモデルとして発売していたシビック・フェリオを流用したモデルを「シティ」という名称をつけて東南アジア向けとして発売したのです。
日本国内で終わっていたシティも実は海外向けモデルとして生きていたわけで、そのモデルの6代目モデルとして発売されていたGM6型シティが実はグレイスの兄弟モデルなのです。
6代目シティは3代目フィットをベースにして作られたこちらもフィット兄弟モデルとなるもので、フィットのプラットフォームのシャシーのホイールベースを7センチほど延長したもの4ドアノッチバックセダンボディをかぶせるような形で作られたモデルで、パワーユニットもホンダのL型エンジンを搭載する形になっていました。(ディーゼルエンジンもある)
このモデルを日本国内向けに改良し、パワーユニットも3代目フィットに搭載されていた1.5リッターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-DCD」を搭載するハイブリッド専用モデルとして発売したのがこのグレイスなのです。
後に1.5リッターNAエンジンを搭載するモデルも発売され、ハイブリッド専用モデルではなくなりましたが、グレイスは3代目フィットをベースにして作られた東南アジア向けモデル「シティ」の兄弟モデルであって、3代目フィットの兄弟モデルであることに違いがないことがわかります。
日本国内ではサイズ問わず、ノッチバックセダンモデルがあまり売れない状態となっていますが、大衆車の中の大衆車であるトヨタのカローラ・アクシオに対抗するためにモデルとして発売されたのです。
ホンダ・グレイスのこれまでの出来事(2019年11月現在)
●初代モデル GM4/5/6/9型 2014年12月発売
・2015年6月 1.5リッターNAエンジンモデルの追加
・2015年9月 ハイブリッドモデルの一部改良
・2016年9月 「HYBRID LX STYLE EDITION」「HYBRID EX STYLE EDITION」の追加
・2017年5月 ボディカラーの変更
・2017年7月 マイナーチェンジ デザインの小変更 先進安全装備「Honda SENSING」の採用
・2017年10月 ボディカラーの変更
・2018年12月 「HYBRID LX Honda SENSING BLACK STYLE」と「HYBRID EX Honda SENSING BLACK STYLE」の追加
ホンダ・グレイスが属するカテゴリー
●車格:小型大衆モデル
●用途・目的:生活車
●車両カテゴリー:小型4ドアノッチバックセダン
●エンジン排気量クラス:1.5リッタークラス、1.5リッターハイブリッドクラス
ホンダ・グレイスのオーナー層
●年齢層:40歳ぐらいから80歳ぐらいまで
●性別:男性
●経済力:高収入層(新車購入)、大衆層(新車購入)、低収入層(中古車購入)
●その他:主に高齢者に買われている
ホンダ・グレイスの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・ガソリンエンジン
・ガソリンエンジン+ハイブリッドシステム
●トランスミッション
・CVT
・7速DCT
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FF
・スタンバイ式4WD
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:FF=トーションビーム(コイルスプリング) 4WD=ド・ディオン(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
●ベースモデル
・あり・・・フィット
●兄弟車
・あり・・・海外向けシティ、フィット、フリード、ヴェゼル、シャトル、ジェイド
ホンダ・グレイスのモデル構成とグレード構成
グレイスにはパワーユニットの違いによって2つのモデルが用意されています。
1.5リッターNAエンジンモデル
このモデルはモノグレードとなります。
・LX グレード(2WD・4WD)
●「LX」グレードの主な装備
・マルチリフレクターハロゲンヘッドライト
・エコアシスト
・オートライトコントロール
・LEDハイマウントストップランプ
・運転席用 i-SRSエアバッグシステム
・助手席用 SRSエアバッグシステム
・VSA
・EBD付ABS
・エマージェンシーストップシグナル
・ヒルスタートアシスト機能
・頚部衝撃緩和フロントシート
・アイドリングストップシステム
・イモビライザー
・セキュリティアラーム
・4スピーカー
・運転席/助手席 シートヒーター(4WDモデルのみ)
・DC12V アクセサリーソケット
・インフォメーションディスプレイ
・タコメーター
・アレルフリー高性能脱臭フィルター付プラズマクラスター技術搭載フルオート・エアコンディショナー
・パワースイッチ
・Hondaスマートキーシステム
・ワンタッチウインカー
・テレスコピック&チルトステアリング調整機構
・運転席ドアワンタッチ式パワーウインドウ
・リアエアコンアウトレット
・リアヒーターダクト
・パワードアロック
・車速連動オートドアロック
・イルミネーションコントロールスイッチ
・運転席ハイトアジャスター
・ヘッドライトオートオフ機能
・本革巻ステアリングホイール
・ソフトパッドパネル(助手席インストルメントパネル部)
・メタル調ドアスイッチパネル
・クロームメッキ インナードアハンドル
・クロームメッキ フロント&リアエアコンアウトレットノブ
・クロームメッキ パーキングブレーキノブ
・LEDマップランプ
・LEDルームランプ
・防眩ルームミラー
・助手席 シルバー塗装エアコンアウトレットガーニッシュ
・助手席 シートバックポケット
・運転席/助手席 バニティミラー付サンバイザー
・トランクスルー機構付6:4分割可倒式リアシート
・アームレスト付センターコンソールボックス
・ドリンクホルダー付リアセンターアームレスト
・運転席/助手席/リヤ左右席 グラブレール
・リヤ右席 コートフック
・トランクランプ
・クロームメッキ フロントグリル
・クロームメッキ ヘッドライトガーニッシュ
・クロームメッキ アウタードアハンドル
・クロームメッキ リアライセンスガーニッシュ
・LED リアライセンスランプ
・コンフォートビューパッケージ:親水/ヒーテッドドアミラー(4WDモデルのみ)
・コンフォートビューパッケージ:フロントドア撥水ガラス(4WDモデルのみ)
・コンフォートビューパッケージ:熱線入りフロントウインドウ(4WDモデルのみ)
・吸音タイプ リアインナーフェンダー
・リバース連動ウオッシャー付間欠リアワイパー(4WDモデルのみ)
・アクセサリーランプ機能付LEDポジションランプ
・ハーフシェイド/IRカット/UVカット機能付 フロントウインドウガラス
・IRカット/スーパーUVカット機能付 フロントドアガラス
・高熱線吸収/UVカット機能付プライバシー リアドアガラス
・高熱線吸収/UVカット機能付プライバシー リアドアクォーターガラス
・高熱線吸収/UVカット機能付プライバシー リアウインドウガラス
・トランクスポイラー(LEDハイマウントストップランプ内蔵)
・シャークフィンアンテナ
・ミスト機構付車速連動間欠/バリアブル間欠フロントワイパー
・フロントウインドウウォッシャー
・熱線式リアウインドウデフォッガー
・LEDウインカー付/オートリトラミラー電動格納式リモコンカラードドアミラー・
・185/60R15 84Hサイズ タイヤ
・15インチ×6J スチールホイール
・樹脂製フルホイールキャップ
など
1.5リッターハイブリッドモデル
このモデルには3つのグレードが用意されています。
・HYBRID DX グレード(2WD・4WD)
・HYBRID LX Honda SENSING グレード(2WD・4WD)
・HYBRID EX Honda SENSING グレード(2WD・4WD)
●「HYBRID DX」グレードの主な装備
・マルチリフレクターハロゲンヘッドライト
・車両接近通報装置
・ティーチング機能付エコアシスト
・オートライトコントロール
・LEDハイマウントストップランプ
・運転席用 i-SRSエアバッグシステム
・助手席用 SRSエアバッグシステム
・VSA
・EBD付ABS
・エマージェンシーストップシグナル
・ヒルスタートアシスト機能
・頚部衝撃緩和フロントシート
・アイドリングストップシステム
・イモビライザー
・セキュリティアラーム
・4スピーカー
・DC12V アクセサリーソケット
・マルチインフォメーションディスプレイ
・タコメーター
・アレルフリー高性能脱臭フィルター付プラズマクラスター技術搭載フルオート・エアコンディショナー
・パワースイッチ
・Hondaスマートキーシステム
・ワンタッチウインカー
・テレスコピック&チルトステアリング調整機構
・運転席ドアワンタッチ式パワーウインドウ
・リアエアコンアウトレット
・リアヒーターダクト
・パワードアロック
・車速連動オートドアロック
・イルミネーションコントロールスイッチ
・運転席ハイトアジャスター
・ヘッドライトオートオフ機能
・マップランプ
・ルームランプ
・防眩ルームミラー
・助手席 シルバー塗装エアコンアウトレットガーニッシュ
・助手席 シートバックポケット
・運転席/助手席 バニティミラー付サンバイザー
・トランクスルー機構付6:4分割可倒式リアシート
・アームレスト付センターコンソールボックス
・ドリンクホルダー付リアセンターアームレスト
・運転席/助手席/リヤ左右席 グラブレール
・リヤ右席 コートフック
・トランクランプ
・クロームメッキ フロントグリル
・クロームメッキ ヘッドライトガーニッシュ
・カラード アウタードアハンドル
・クロームメッキ リアライセンスガーニッシュ
・導光チューブタイプ LEDリアコンビネーションランプ
・リアライセンスランプ
・コンフォートビューパッケージ:親水/ヒーテッドドアミラー(4WDモデルのみ)
・コンフォートビューパッケージ:フロントドア撥水ガラス(4WDモデルのみ)
・コンフォートビューパッケージ:熱線入りフロントウインドウ(4WDモデルのみ)
・フラットアンダーカバー(2WDモデルのみ)
・リアサスペンションアンダーカバー(2WDモデルのみ)
・リバース連動ウオッシャー付間欠リアワイパー(4WDモデルのみ)
・アクセサリーランプ機能付LEDポジションランプ
・ハーフシェイド/UVカット機能付 フロントウインドウガラス
・IRカット/スーパーUVカット機能付 フロントドアガラス
・高熱線吸収/UVカット機能付プライバシー リアドアガラス
・高熱線吸収/UVカット機能付プライバシー リアドアクォーターガラス
・高熱線吸収/UVカット機能付プライバシー リアウインドウガラス
・トランクスポイラー(LEDハイマウントストップランプ内蔵)
・シャークフィンアンテナ
・ミスト機構付車速連動間欠/バリアブル間欠フロントワイパー
・フロントウインドウウォッシャー
・熱線式リアウインドウデフォッガー
・LEDウインカー付/オートリトラミラー電動格納式リモコンカラードドアミラー・
・185/60R15 84Hサイズ タイヤ
・15インチ×6J スチールホイール
・樹脂製フルホイールキャップ
・電動サーボブレーキシステム
・Sモードスイッチ
など
●「HYBRID LX Honda SENSING」グレードの主な装備
「HYBRID DX」グレードの装備に加えて・・・
・HondaSENSING 衝突軽減ブレーキ
・HondaSENSING 誤発進抑制機能
・HondaSENSING 歩行者事故低減ステアリング
・HondaSENSING 路外逸脱抑制機能
・HondaSENSING アダプティブ・クルーズ・コントロール
・HondaSENSING 車線維持支援システム
・HondaSENSING 先行車発進お知らせ機能
・HondaSENSING 標識認識機能
・インラインタイプLEDヘッドライト
・前席用 i-サイドエアバッグシステム
・サイドカーテンエアバッグシステム
・ナビ装着用スペシャルパッケージ
・ETC車載器
・運転席/助手席 シートヒーター(4WDモデルのみ)
・本革巻ステアリングホイール
・助手席インストルメントパネル部 ソフトパッドパネル
・メタル調ドアスイッチパネル
・クロームメッキ インナードアハンドル
・クロームメッキ フロント&リアエアコンアウトレットノブ
・クロームメッキ パーキングブレーキノブ
・LEDマップランプ
・LEDルームランプ
・自動防眩ルームミラー
・クロームメッキ アウタードアハンドル
・LED リアライセンスランプ
・IRカット/スーパーUVカット機能付 フロントドアガラス
・吸音タイプ リアインナーフェンダー
が追加されています。
●「HYBRID EX Honda SENSING」グレードの主な装備
「HYBRID LX Honda SENSING」グレードの装備に加えて・・・
・LEDフォグライト風タウンランプ
・高輝度シルバー塗装スピーカーリング
・8スピーカー
・運転席/助手席 シートヒーター
・プライムスムース(合成皮革)×ファブリック コンビシート生地
・コンフォートビューパッケージ:親水/ヒーテッドドアミラー
・コンフォートビューパッケージ:フロントドア撥水ガラス
・コンフォートビューパッケージ:熱線入りフロントウインドウ
・ハーフシェイド/遮音/IRカット/UVカット機能付 フロントウインドウガラス
・185/55R16 83Vサイズ タイヤ
・16インチ×6J アルミホイール
・パドルレバー
が追加されています。
ホンダ・グレイスに搭載されるパワーユニットと動力性能
ホンダ・グレイスには2種類のパワーユニットが設定されています。
●1.5リッターNAエンジン
・エンジン型式:L15B型
・エンジン排気量:1496cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・燃料供給:筒内直接噴射
・特別な機能:可変バルブタイミング機構によるミラーサイクル制御
◆スペック
・最大出力:132ps/6600rpm
・最大トルク:15.8kgf・m/4600rpm
・1リッターあたりのパワー:約88ps
・パワーウェイトレシオ:約8.86kg/ps
このパワーユニットは1.5リッターNAエンジンを搭載する「LX」グレードに採用されているものです。
「フィット兄弟モデル」で定番の1.5リッターNAエンジンで、いろいろなモデルに使われていますがパワースペックは、純粋なオンロードモデルの中で一番高い132psとなります。
重くても1.2トンにも満たない軽量ボディのおかげで、たった132psでも意外と軽快な動きができ、腕があれば峠道も楽しく走れるぐらいの動力性能を持ちます。
※パワーユニットの評価:★★★★☆(2)
●1.5リッターNAエンジン+ハイブリッドシステム
○エンジン
・エンジン型式:LEB型
・エンジン排気量:1496cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・燃料供給:ポート噴射
・特別な機能:可変バルブタイミング機構によるミラーサイクル制御
○電気モーター
・電気モーター形式:H1型
○ハイブリッドシステム:SPORT HYBRID i-DCD
○ハイブリッドバッテリー:リチウムイオンバッテリー
◆スペック
○エンジン
・最大出力:110ps/6000rpm
・最大トルク:13.7kgf・m/5000rpm
○電気モーター
・最大出力:29.5ps
・最大トルク:16.3kgf・m
○システムパワー:約137ps
・1リッターあたりのパワー:約91.3ps
・パワーウェイトレシオ:約9.19kg/ps
こちらもフィット兄弟モデルで定番のハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-DCD」となります。
パワースペックはフィットに採用されているものと全く同じ、システムパワー137psとなり、このクラスとしてはパワフルなパワーユニットであるといえます。
実際の走りもなかなかで、特に電気モーターのアシストが入るとまるでターボチャージャーを搭載するエンジンで軽くブースト圧がかかった時のような後ろから軽く押されているような感覚を味わうことができます。
この部分をコーナーリングの出口で使えれば結構速く走れると思います。
※パワーユニットの評価:★★★★☆(4)
ホンダ・グレイスに採用されているトランスミッション
●CVT
グレイスでは1.5リッターNAエンジンモデルのトランスミッションとしてCVTを設定しています。
選択肢はなく、ガソリンエンジンモデルを購入すると必ずこのCVTがトランスミッションとして装着されることになります。
このCVTは要するにどこにでもよくある普通のCVTで、構造もトルクコンバーターと金属ベルト式のベルト無段変速機を組み合わせただけのものです。
低燃費のためのトランスミッションですので、走行性能にプラスになることはなく、むしろベルトが滑ることによる「加速不良」「エンジン回転数が抑え込まれてしまう」「スピードが乗っていかない」「メリハリのない走り」といったマイナスしかもたらしません。
最悪のトランスミッションです。
できれば教習所使用モデルに採用されている5速マニュアルトランスミッションを選択肢に入れてもらいたかったです。
※トランスミッションの評価:★☆☆☆☆(1)
●7速デュアルクラッチトランスミッション
これはハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-DCD」の構造の一部とされているもので、トランスミッションとしてだけでなく、動力の切り替えや混合比率の調整、分割を行うギヤボックスとしても機能しているものです。
構造は、フォルクスワーゲンや日産、三菱などのモデルに搭載されているDCTと同じようなもので、奇数段(1速、3速、5速、7速)担当ギヤボックスと偶数段(2速、4速、6速)担当ギヤボックスといった2つのマニュアルトランスミッションのようなギヤボックスをもち、それぞれにギヤボックスに付けられているクラッチを繋ぎ変え、ギヤボックスを交互に使うことで変速していくというものです。
ハイブリッドシステムも電気モーターもこのトランスミッションに内蔵されている形となっており、変速機能と同時に動力制御も行います。
性能としては、トヨタのハイブリッドシステムのように燃費性能のためにパワーを無駄にしているといったようなものではなく、電気モーターの力を低燃費のためのアシストとして使うだけでなく、モアパワーのために使うような仕組みになっているため、トヨタの同じクラスのハイブリッドモデルのアクアよりはるかに優れたパワーを持ち、実際の走りにおいてもかなりパワフルな走りを体感することができます。
※トランスミッションの評価:★★★★☆(4)
ホンダ・グレイスの走行性能を決める構造
ホンダ・グレイスのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
3代目フィットのシャシーのホイールベースをわずかに伸ばして作られたものを土台として作られているグレイスもフィット同様に優れたボディ剛性、強度を持つ車となっています。
はっきり言ってボディ剛性は、軟弱プラットフォームで有名なトヨタのものと比較してみると1クラスも2クラスも上のクラスに属する高額モデル並みのものといっていいでしょう。
これをホンダでは1.5リッタークラスの大衆セダンに使っているのですから、車やプラットフォームの良し悪しだけでなく、車作りに対する考え方の違いもよくわかるというものです。
走りにもかなりいい影響を与えており、サスペンションの動きの良さを感じることもできます。
※ボディ剛性の評価:★★★★☆(4)
ホンダ・グレイスの走りの質を決めるサスペンション構造
サスペンション構造はフィット兄弟モデルで定番となる・・・
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:FF=トーションビーム 4WD=ド・ディオン
が採用されています。
フロントサスペンションは性能も優れており、実績がある独立懸架のマクファーソンストラット、リヤサスペンションは駆動方式でトーションビームとド・ディオンに分けられています。
どちらもいわゆるコイルリジットサスペンションとなるものですが、トーションビームは最悪、ド・ディオンはコンパクトカーのサスペンションとしての強度と安定性はバッチリといったように両極端なものを持ちます。
その結果、抜群のサスペンションセッティングも手伝って、何かとこういった部分を軽視される大衆セダンモデルにしてはかなりいい走りをします。
腕がある人ならトヨタの「86」もカモれるかもしれません。
特に4WDモデルのリヤタイヤの接地感が抜群です。
※サスペンション構造の評価:★★★☆☆(3)
ホンダ・グレイスのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
ブレーキシステムもフィット兄弟モデルで定番となっている・・・
・フロント:1ポットフローティングキャリパー+ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
となっています。
フィット兄弟モデルではパワーがあったり、重量が重たくなったり、スポーティーな走りに使われるといったモデルにのみリヤブレーキにも1ポットフローティングキャリパーにソリッドディスクのディスクブレーキが採用されることがあります。
それにあてはめてみるとこのグレイスはわずかではありますが1.5リッターNAエンジンモデルの中では一番パワフルなパワーユニットを搭載しているモデルですし、ハイブリッドモデルも他のフィット兄弟モデル同様にパワーがそこそこあるので、リヤブレーキがディスクブレーキのものにしてもよさそうなものですが、ドラムブレーキのローパワー・軽量モデル向けのドラムブレーキを用いたものにされてしまっています。
こういったことになってしまっているのは実は兄弟モデルの東南アジア向けシティがドラムブレーキ仕様となっているからでグレイスにもそれがそのまま採用されてしまっているからなのです。
ちょっとがっかりな気がしますが、仕方ありません。
とりあえずは効き目に問題はありませんし、ブレーキパッドやブレーキシューを社外品に交換すれば対フェード性やダルな効き方を解消することができるので「良し」としておきましょう。
※ブレーキシステムの評価:★★☆☆☆(2)
ホンダ・グレイスに搭載されている4WDシステム
フィット兄弟モデルでは、4WDモデル用の4WDシステムとして電気ポンプ式油圧カップリングを用いたスタンバイ4WDシステム「リアルタイムAWD」を用いるのが標準とされているのですが、このグレイスではそれではなく、軽自動車やトヨタの大衆モデルなどに採用されているビスカスカップリング式のスタンバイ4WDが採用されています。
これはこのモデルの兄弟モデルとなる東南アジア向けシティに4WDモデルがないことから他のフィット兄弟モデルで採用している「リアルタイムAWD」をつけるスペースがなかったことから、取り付けスペースが少しで済むリヤデファレンシャルギヤ内にリヤタイヤのトラクションの調整を行うビスカスカップリングを内蔵したものにしただけです。
ビスカスカップリング式のスタンバイ4WDですから日常生活で時々出くわすスリッピーな路面を何とか走り抜けるだけのトラクション性能しか持っていません。
※4WDシステムの評価:☆☆☆☆☆(0)
ホンダ・グレイスの燃費性能
ホンダ・グレイスのカタログ燃費と実燃費
●1.5リッターNAエンジンモデル(2WDモデル)
・カタログ燃費(JC08モード):最大22.0km/L
・実燃費:約17km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
●1.5リッターNAエンジンモデル(4WDモデル)
・カタログ燃費(JC08モード):最大19.6km/L
・実燃費:約13km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
●1.5リッターNAエンジン+ハイブリッドモデル(2WDモデル)
・カタログ燃費(JC08モード):最大34.8km/L
・実燃費:約27km/L
※燃費性能の評価:★★★★☆(4)
●1.5リッターNAエンジン+ハイブリッドモデル(4WDモデル)
・カタログ燃費(JC08モード):最大29.6km/L
・実燃費:約22km/L
※燃費性能の評価:★★★★☆(4)
ホンダ・グレイスに採用されている低燃費装備
●1.5リッターNAエンジンモデル
・ミラーサイクル制御
・可変バルブタイミング機構
・CVT
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
・アイドリングストップ機構
・直噴エンジン
●1.5リッターNAエンジン+ハイブリッドモデル
・ハイブリッドシステム
・ミラーサイクル制御
・可変バルブタイミング機構
・電動パワーステアリング機構
・充電制御
・アイドリングストップ機構
ホンダ・グレイスのライバルモデル比較
ホンダ・グレイスのライバルとなるのはトヨタ・カローラ・アクシオ
1.5リッターNAエンジンにハイブリッドシステムを組み合わせたパワーユニットを搭載する小型大衆ノッチバックセダンモデルといえば、このグレイスの他にはトヨタのカローラ・アクシオしかありません。
カローラ・アクシオはカローラシリーズのノッチバックセダンモデルとして作られているモデルで、後継モデルとなるカローラのセダンモデルが発売されても、カローラのセダンモデルが1.8リッタークラスへと格上げされたことから低価格の大衆セダンモデルを残すということでカローラのセダンモデルと同時に販売が続けられています。
ここではハイブリッドモデル同士で比較してみたいと思います。
●ホンダ・グレイスの概要
・カテゴリー:小型4ドアノッチバックセダン
・車格:小型大衆モデル
・エンジン排気量:約1.5リッター
・エンジン形式:LEB型+H1型 「SPORT HYBRID i-DCD」
・比較対象グレード:「HYBRID DX」グレード
●トヨタ・カローラ・アクシオの概要
・カテゴリー:小型4ドアノッチバックセダン
・車格:小型大衆モデル
・エンジン排気量:約1.5リッター
・パワーユニット形式:1NZ-FXE型+1LM型 「リダクション機構付きTHS-II」
・比較対象グレード:「ハイブリッドEX」グレード
ホンダ・グレイスとトヨタ・カローラ・アクシオのパワースペック比較
●ホンダ・グレイス
・システムパワー:約137ps
●トヨタ・カローラ・アクシオ
・システムパワー:約100ps以下
※パワースペック比較結果
トヨタのハイブリッドシステムは低燃費を狙うためのものですからパワースペックは酷いものです。
そもそもコンパクトカーのアクアのためにハイブリッドシステムですので役不足です。
ちなみに・・・アクアのハイブリッドシステムでは実際には100psも出ていません。
ダイナパック(パワーを測る機械)で80ps程度しか出ませんでした。
ホンダ・グレイスとトヨタ・カローラ・アクシオの燃費性能比較
●ホンダ・グレイス
・カタログ燃費(JC08モード):最大34.8km/L
・実燃費:約27km/L
●トヨタ・カローラ・アクシオ
・カタログ燃費(JC08モード):最大34.4km/L
・実燃費:約20km/L
※燃費性能比較結果
どちらも同じような構成のハイブリッドシステムが搭載されていますが、こんなに実燃費に違いが出てしまいました・・・やはりトヨタのモデルのカタログ燃費は「トヨタ・マジック」でしょうか?
ホンダ・グレイスとトヨタ・カローラ・アクシオの販売価格帯比較
ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。
●ホンダ・グレイス
約180万円~約261万円
●トヨタ・カローラ・アクシオ
約154万円~約212万円
※販売価格帯比較結果
グレイスは現在も現役のモデル、対してカローラ・アクシオは一応は現役ですが、モデルとしてはもう終わっている車ですので、安くなっていても当然です・・・といいますか安くなければいけません。
まとめ
日本国内ではイマイチ需要が少なく、あったとしても高齢者ドライバーに買われるといった小型ノッチバックセダンですが、グレイスの走りの性能を見るとこの車を高齢者ドライバーだけに乗らせておくのはもったいないような気がします。
意外と走る車であることがよくわかりました・・・侮れません、フィット兄弟モデル。
※総合評価:★★★★☆(4)