数年ぶりの復活を果たしたホンダのシビックシリーズ、その中にあのシビック・タイプRも含まれています。
現在の日本ではスポーツモデルがあまり好まれていないようですが、この車の魅力を知ればきっと欲しくなるでしょう。
ここではそんなホンダ・シビック・タイプRがどういう車なのか、どれだけ素晴らしい性能を持っているのかといったところを検証してみたいと思います。
※ご注意
ここではホンダ・シビック・タイプRの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。
目次
小形から中型と進化したホンダ・シビック・タイプR、今度はカタログモデルになった
エコカーブーム、ハイブリッドカーブーム、ミニバンブームなどといったいろいろなカテゴリーの車が人気となってきた日本の自動車界ですが、全てのブームにおいて言えることはどれも経済的なメリットがあるということです。
エコカーやハイブリッドカーは燃料代や税金が軽減されますし、ミニバンは大人数が乗れて、汎用性があるため費用対効果が高いということが言えます。
最近なってそれが少しずつ変わってゆき、2019年現在では「見た目」と「実用性」を重視した「なんちゃってクロスオーバーSUV」が好まれるようにはなってきましたが、相変わらず自動車本来の性能、自動車が求めなければならない性能である「動力性能」「走行性能」を軽視する傾向が続いています。
その2つの性能を追求したのがいわゆる「スポーツモデル」というもので、経済性、実用性、快適性を犠牲にしてまでも動力性能や走行性能を求める一番車らしい車なのですが、それが現在の「見た目・実用性重視」の需要にあっていないということで人気のない状態がここしばらく続いています。
4つのクラスがあるスポーツモデル
スポーツモデルといってもいろいろで、ざっとクラス分けしても4つに分けることができます。
1つ目は軽スポーツモデルクラス、軽自動車規格内で作られたスポーツモデルで、64psという自主規制値があるため、ずば抜けた動力性能は持っていませんが、軽量化や空力特性の良さ、重量配分の良さなどによって優れた走行性能を持つモデルです。
過去にはホンダのビートやスズキのカプチーノ、アルト・ワークス、マツダのAZ-1といったモデルがありましたが、現在は経済性を求める傾向があるため、ホンダのS660とスズキのアルト・ワークスのたった2車種だけとなっています。
ちなみにダイハツのコペンシリーズは、「ママさん車」のタントをベースにして作られているモデルであるためスポーツモデルではなく、デートカーやスポーティーモデルに該当します。
次にあるのが小型スポーツモデルです。
1000ccから1600ccクラスのエンジン搭載したモデルで、過去には若年層に大人気だったためたくさん販売されていましたが、現在は1台も存在しません。
その上が中型スポーツモデル、こちらは1800ccから2000ccクラスのエンジンを搭載したモデルで、過去には日産のシルビアや180SX、トヨタのセリカ、三菱のランサーエボリューションシリーズやFTO、スバルのインプレッサWRX シリーズ、ホンダのS2000、マツダのRX-7、RX-8などが販売されていましたが現在ではその半分以下の数しかなくなってしまいました。
そして一番上のクラスとなるのが、大型スポーツモデルやスーパースポーツモデルとなるもので、2リッターオーバーの大排気量、ハイパワーのパワーユニットを搭載したモデルで、国産スポーツモデルの最上級クラスにあたるモデルです。
過去からいろいろなモデルが発売されてきましたが、現在でも日産のGT-R、フェアレディZ、ホンダのNSX、トヨタのスープラ、GS F、RC Fといったモデルが発売されています。
最初は小型モデルだった、ホンダ・シビック・タイプR
シビック・タイプRはホンダの小型大衆モデルであるシビックの派生モデルとしてシビックの6代目モデルとなるEK型の事態に初めて発売されました。
その前のモデルにおいてもシビックのスポーツグレードとして「Si」グレードとか「SiR」グレードといった形で似たようなモデルがありましたが、EK型になった際に台数限定の特別モデルとして発売されたの始まりとなります。
この時は小型大衆モデルのシビックをベースにして作られているということからクラスは「小型スポーツモデル」ということになります。
小型スポーツモデルは絶対的なパワーはないものの、コンパクトで扱いやすく、軽量でマス(重心)が中央に集まる傾向を持つことから最高速やゼロヨンを狙うのではなく、ストリートや峠などでのバトルに向いているとされています。
車両価格も比較的安く、実用性も高い、そして何よりもカムプロフィールが違うカムを切り替えて走るVTECを採用し、NAエンジンながらターボエンジンを搭載したモデルと対等に戦うことができるパワーユニットが搭載されていたことから峠のバトルでは「格上モデルをカモることができるモデル」として、その当時の若年層に人気でした。
このモデルはベースモデルのシビックと同じように2000年まで発売されたのちにモデルチェンジを行いシビック・タイプRとして2代目モデルを発売することになったのですが、この2代目モデルから日本仕様のシビックをベースにして作るのではなく、ヨーロッパ向けのイギリス工場で生産されている2リッターエンジンモデルをベースにして作られたものとなり、生産もイギリスで行われたためにいわゆる「逆輸入車」的な扱いとなりました。
この時にエンジンが2リッターエンジンとなったことからこのシビック・タイプRは中型スポーツモデルへと格上げされました。
そして2005年に国内向けシビックがモデルチェンジを行いFD型となった際に、フィットとの競合を避けるために標準モデルのシビックも2リッターNAエンジンを搭載するようになり、更にハッチバックモデルが国内では廃止となり、4ドアノッチバックセダンモデルだけとなったことからシビック・タイプRも初の4ドアノッチバックセダンモデルとなりました。
このモデルは排気ガス規制に適合させることができないという理由で2010年9月に販売終了されるまで発売されましたが、標準モデルのシビックが販売不振で販売終了となったタイミングと同じであるため、シビック・タイプRの販売終了の理由も実は販売不振であることがわかっています。
シビックシリーズが販売不振で販売終了となったわけですから、その次のモデルは日本国内では発売されませんでした。
しかし、あまりにもシビック・タイプRを求める声が高まったため、2015年の12月に750台という台数限定で、海外向けモデルとして発売されていたFK2型シビック・タイプRを発売することにしたのです。
このモデルはかなりの人気となり、販売台数である750台を上回る応募があり、結局は抽選による販売となりました。
このシビック・タイプRの人気ぶりと日本国内における「車の選び方」が変わってきたことを見て、ホンダはシビックシリーズを復活させました。
ただ、新しいモデルを最初からということではなく、2015年に北米エリアで発売されてから約2年遅れのタイミングで発売となり、モデルも先代モデルまでのように標準モデルの派生モデルという形ではなく、ハッチバックモデルと同じボディは使っているものの基礎部分からシビック・タイプRならではの設計が与えられ、見た目は似ていますが、中身はほぼ専用設計とされています。
そして更にこのモデルでは、それまでのような台数限定の特別モデルとし手ではなく、シビック・セダン、シビック・ハッチバックと並んで、シビック・タイプRという一つのカタログモデルとしての販売となりました。
これが2019年12月現在のシビック・タイプRです。
ホンダ・シビック・タイプRのこれまでの出来事(2019年12月現在)
●初代モデル EK9型 1997年8月発売
・1995年9月 EK型シビックの発売
・1997年8月 「シビック・タイプR」の追加
・1998年9月 マイナーチェンジ デザインの小変更
・1999年12月 「シビック・タイプR・X」の追加
●2代目モデル EP3型 2001年12月発売
・2000年9月 EU型シビックの発売
・2001年12月 「シビック・タイプR」の追加
・2004年1月 マイナーチェンジ デザインの小変更
●3代目モデル FD2型 2007年3月発売
・2005年9月 FD型シビックの発売
・2007年3月 「シビック・タイプR」の追加
・2008年9月 マイナーチェンジ デザインの小変更
・2010年9月 販売終了
●4代目モデル FK2型 2015年12月発売
・2015年12月 750台限定発売
●5代目モデル FK8型 2017年8月発売
・2017年9月 日本国内での販売開始
ホンダ・シビック・タイプRが属するカテゴリー
●車格:中型スポーツモデル
●用途・目的:生活車 スポーツ走行用 競技車両
●車両カテゴリー:中型FFスポーツモデル
●エンジン排気量クラス:2リッタークラスなど
ホンダ・シビック・タイプRのオーナー層
●年齢層:20歳ぐらいから60歳ぐらいまで
●性別:男性
●経済力:富裕層(新車購入)、高収入層(新車購入)、大衆層(新車購入)
●その他:販売台数は多くはないが、コアなファンから根強い人気がある
ホンダ・シビック・タイプRの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・ガソリンエンジン
●トランスミッション
・6速マニュアルトランスミッション
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FF
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:マルチリンク(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:ソリッドディスク ディスクブレーキ
●ベースモデル
・FK7型シビック・ハッチバック
●兄弟車
・あり・・・シビック・セダン、シビック・ハッチバック
ホンダ・シビック・タイプRのモデル構成とグレード構成
このモデルは単一モデル構成となります。
ベースモデル
このモデルはモノグレードとなります。
・ベースグレード(2WD)
●ベースグレードの主な装備
・ラックススェード×メッシュ コンビシート生地 Honda TYPE R専用フロントシート
・TYPE R専用ステアリングエンブレム/チタニウムシルバートリム付スムースレザー本革巻ステアリングホイール
・ステンレス製スポーツペダル
・アルミ製シフトノブ
・自動防眩ルームミラー
・カーボン調×アルマイト調 インストルメントパネル
・カーボン調×アルマイト調 フロントドアパネル
・ソフトウィーブシート生地 6:4分割可倒式リアシート
・メタリック塗装 インナードアハンドル
・照明付運転席用&助手席用バニティーミラー付サンバイザー
・ハイデッキセンターコンソール
・アームレスト付コンソールボックス
・照明付センターポケット
・フロントコンソールトレー
・インストルメントパネル ソフトパッド
・フロントドア ソフトパッド
・ボトルホルダー付ドアポケット
・照明付グローブボックス
・全席グラブレール
・リヤ左右席コートフック
・カーゴエリアカバー
・LEDアンビエントランプ
・フロントマップランプ
・ルームランプ
・ラゲッジルームランプ
・ラゲッジルーム コンビニフック
・タイダウンフック
・シリアルナンバー入りアルミ製エンブレム
・TYPE R専用フロントグリル
・TYPE R専用エアロダイナミクス・カラードフロントバンパー
・TYPE R専用エアロダイナミクス・カラードリアバンパー
・カーボン調フロントスポイラー
・ピアノブラック 大型リアスポイラー
・カラード ボルテックスジェネレーター
・カーボン調サイドシルガーニッシュ
・LEDウインカー付、オートリトラミラー付電動格納式リモコンカラードドアミラー
・カーボン調リアディフューザー
・トリプルエキゾーストシステム
・アルミ製フロントフード
・ハーフシェイド/遮音/IR・UVカット機能付フロントウィンドウガラス
・撥水/IR・スーパーUVカット機能付フロントドアガラス
・UVカット機能付プライバシー リヤドアガラス
・UVカット機能付プライバシー テールゲートガラス
・雨滴検知式、ミスト機構付車速連動/バリアブル間欠フロントワイパー
・リバース連動ウォッシャー付間欠リアワイパー
・アダプティブ・ダンパー・システム
・TYPE R専用サスペンション
・245/30ZR2090Yサイズ タイヤ
・20インチ×8.5J 軽量アルミホイール
・TYPE R専用ホイールセンターキャップ
・Brembo社製φ350mmベンチレーテッドディスク フロントブレーキローター
・Brembo社製フロントアルミ対向4ポットキャリパー
・φ305mm ソリッドディスク リヤブレーキローター
・ヘリカルLSD
・ドライブモードスイッチ
・レブマッチシステム
・デュアルピニオンアシストEPS
・アジャイルハンドリングアシスト
・クルーズコントロール
・VSA
・オートライトコントロール機構付LEDヘッドライト
・LEDフォグライト風タウンランプ
・導光タイプLEDポジションランプ
・ヒルスタートアシスト機能
・EBD付ABS
・運転席用 i-SRSエアバッグシステム
・助手席用 i-SRSエアバッグシステム
・前席用i-サイドエアバッグシステム
・前席/後席対応サイドカーテンエアバッグシステム
・ポップアップフードシステム
・イモビライザー
・セキュリティーアラーム
・電子制御パーキングブレーキ
・オートブレーキホールド機能
・アイドリングストップシステム
・LEDリアライセンスランプ
・ダブルホーン
・TYPE R専用メーター
・TYPE R専用マルチインフォメーション・ディスプレイ
・Hondaスマートキーシステム
・プッシュエンジンスタート/ストップスイッチ
・ナビ装着用スペシャルパッケージ:リアワイドカメラ
・ナビ装着用スペシャルパッケージ:オーディオリモートコントロールスイッチ
・ナビ装着用スペシャルパッケージ:ハンズフリーテレホンスイッチ
・ナビ装着用スペシャルパッケージ:音声認識スイッチ
・ナビ装着用スペシャルパッケージ:USBジャック
・ナビ装着用スペシャルパッケージ:専用ワイヤーハーネス
・ETC車載器
・アレルフリー高性能脱臭フィルター付フルオート・エアコンディショナー
・リアヒーターダクト
・テレスコピック&チルトステアリング調整機構
・運転席ハイトアジャスター
・運転席&助手席ドアワンタッチ式パワーウインドウ
・オーディオレス
・8スピーカー(4スピーカー+4ツィーター)
・DC12Vアクセサリーソケット
・テールゲート連動車速連動オートドアロック
・ワンタッチウインカー
・ヘッドライトオートオフ機能
など
ホンダ・シビック・タイプRに搭載されるパワーユニットと動力性能
ホンダ・シビック・タイプRには1種類のパワーユニットが設定されています。
●2リッターターボエンジン
・エンジン型式:K20C型
・エンジン排気量:1995cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ VTC(吸・排気両方)+VTEC(排気側のみ)
・燃料供給:筒内直接噴射
・過給器:電動ウェイストゲート式ターボチャージャー
・特別な機能:ナトリウム封入エキゾーストバルブ、クーリングチャンネル付ピストン、水冷エキゾーストマニホールド
◆スペック
・最大出力:320ps/6500rpm
・最大トルク:40.8kgf・m/2500rpm~4500rpm
・1リッターあたりのパワー:約160ps
・パワーウェイトレシオ:約4.34kg/ps
このパワーユニットは、シビック・タイプRのために作られたものです。
ベースになっているのは2000年にストリームに搭載されて登場したK20A型エンジンで、それを改良しEP3型シビック・タイプRに搭載したものを更に改良し、ターボチャージャーを搭載したものがこのK20C型エンジンです。
バルブ機構としてVTCとVTECが装着されていて、バルブタイミングと排気側だけとなりますが排気バルブのリフト量も連続可変としています。
VTCは「バリアブル・タイミング・コントール」の略で、カムシャフトとカムスプロケットの位置関係(位相)を油圧で変更することで、バルブの開閉タイミングをずらすことができる機能です。
一般的に「可変バルブタイミング機構」と呼ばれるもので構造的には他の自動車メーカーが使っている可変バルブタイミング機構とほぼ同じものです。
このエンジンには吸気側、排気側両方に採用されています。
VTECは、2種類のカムプロフィールを持つカムが付けられたカムシャフトを使い、ロッカーアームを制御することによって違うカムプロフィールを瞬時に切りかえる機能です。
カムプロフィールを切り替えるわけですからVTCのようにバルブタイミングだけでなく、バルブのリフト量も変更することができ、エンジン回転数にあわせて最適な排気バルブのバルブタイミングとリフト量を得ることができます。
ホンダのハイパワーユニットで古くから使われているもので、このシビック・タイプRのエンジンには排気側だけに採用されいています。
ターボチャージャーは、絶対的なブースト圧を稼ぐのではなく、ターボラグを減らしピックアップよくするために小さめのものが採用されていて、最大ブースト圧も120kPaと300psオーバーの2リッターターボエンジンとしては比較的低めの設定がされています。
それでいて320psを発生させているのですからエンジン単体でのパワーがよほど高いのでしょう。
どこを走らせても全く申し分ないハイパワーエンジンです。
※パワーユニットの評価:★★★★★(5)
ホンダ・シビック・タイプRに採用されているトランスミッション
●6速マニュアルトランスミッション
シビック・タイプRではトランスミッションの選択肢は設定されておらず、この6速マニュアルトランスミッションだけとなります。
このマニュアルトランスミッションはシビック・ハッチバックに採用されているものと構造が全く同じものですが更に改良が加えらており、非常に短いシフトストロークとカチッと入るフィーリングが特徴です。
シフトストロークはカタログ上では「40mm」となっていますが、実際に運転してみるともっと短いような気がします。
これは多分、ギヤの入りがよいこと、グニャグニャ感が全くないことからより一層に短く感じるのでしょう。
それこそ手首だけでシフトチェンジできるといった具合で、とても気持ちよく運転できます。
ギヤボックスの変速比はシビック・ハッチバックのものと比べてクロス化されており、パワーバンドの4000rpmから6000rpmの間を常に保ちながらの運転が可能です。
最高のマニュアルトランスミッションといっていいでしょう。
※トランスミッションの評価:★★★★★(5)
ホンダ・シビック・タイプRの走行性能を決める構造
ホンダ・シビック・タイプRのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
シビック・タイプRはボディ形状こそシビック・ハッチバックとほぼ同形状ですが、その中身は全く別ものであちこち補強材を追加するだけでなく、骨格本体も使用する鋼材の質を変えることで剛性、強度をアップさせています。
320psのパワーをしっかりと支えることができているシャシー、フレームといっていいでしょう。
※ボディ剛性の評価:★★★★★(5)
ホンダ・シビック・タイプRの走りの質を決めるサスペンション構造
シビック・タイプRのサスペンション構造は、シビック・ハッチバックやシビック・セダンと同じ形式の・・・
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンションは:マルチリンク
が採用されています。
ただ、シビック・ハッチバックやシビック・セダンとは違う部分も多々あります。
その1つがフロントサスペンションのマクファーソンストラットです。
通常、マクファーソンストラットはストラットとロアアームが離れており、ナックルを挟む形で間接的に繋がっている形を取っているのですが、このシビック・タイプRでは、デュアル・アクシス・ストラット式というストラットとロアアームがアルミ製のダンパーフォークという全く別の部品で結合されており、そのダンパーフォークがナックルを上下から保持するという形を取っています。
この形にすることでジオメトリー(各部品の位置関係)の自由度が広がり、強度も確保でき、それによってトルクステアを少なくすることができ、機敏な動きやタイヤのグリップをフルに使うことができるようになるのです。
それからリヤサスペンションのマルチリンクですが、こちらもシビック・タイプR用の剛性の高い部品を使って作らているので、シビック・ハッチバックと見た目は同じように見えてもその乗り味は全く違うものとなります。
それと前後のサスペンションに採用されているアダプティブ・ダンパー・システム、これはショックアブソーバー内に金属粉を多量に含んだ専用オイルを封入したものでアウターチューブに内蔵された電磁コイルによって磁力を与えることでオイルの硬さを調整して減衰力を可変にすることができるものです。
NSXにも採用されているもので、まさにスポーツモデルのためのショックアブソーバーといっていいでしょう。
乗り心地はホンダらしく終始硬めで、路面のつなぎ目や2重、3重に塗り重ねられた車線のペイントの段差も拾うぐらいですが、スピードを上げることでその硬さが「しっかり感」「安心感」に変化するといった感じです。
FFモデルならではパワーアンダーステア傾向はありますが、常に安定していて相当無理をしない限り、ブレークすることはありません。
コーナーリング性能はかなり高いといっていいでしょう。
※サスペンション構造の評価:★★★★★(5)
ホンダ・シビック・タイプRのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
シビック・タイプRはブレーキシステムにおいてもかなり贅沢な仕様となっています。
・フロント:ブレンボ製アルミモノブロック4ポット対向ピストンキャリパー+φ350mmドリルド&ピラーフィンベンチレーテッドディスク
・リヤ:1ポットフローティングキャリパー+φ305mmソリッドディスク
効き目もブレーキペダルのタッチも対フェード性もバッチリで、ブレーキパッドだけモータースポーツ用のものに交換すれば、そのままサーキット走行ができてしまうぐらいです。
標準装備のブレーキパッドの減りが早いようですがそれも社外品に交換することで解消できますので、たいした問題ではありません。
ただ、これだけのパワーを持っているですからリヤブレーキも対向ピストンキャリパーにしてもらいたかったです。
※ブレーキシステムの評価:★★★★☆(4)
ホンダ・シビック・タイプRの燃費性能
ホンダ・シビック・タイプRのカタログ燃費と実燃費
・カタログ燃費(JC08モード):最大12.8km/L
・実燃費:約7km/L
※燃費性能の評価:★☆☆☆☆(1)
ホンダ・シビック・タイプRに採用されている低燃費装備
・可変バルブタイミング機構
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
・アイドリングストップ機構
・直噴エンジン
ホンダ・シビック・タイプRのライバルモデル比較
ホンダ・シビック・タイプRのライバルとなるのはスバル・WRX STI
シビック・タイプRは、2リッターターボエンジンを搭載するスポーツモデルです。
国産車の中でシビック・タイプR以外に2リッターターボエンジンを搭載しているスポーツモデルといえば、昔はたくさんありましたが現在はスバルのWRX STIしか存在していません。
●ホンダ・シビック・タイプRの概要
・カテゴリー:中型FFスポーツモデル
・車格:中型スポーツモデル
・エンジン排気量:約2リッター
・エンジン形式:K20C型
・比較対象グレード:ベースグレード
●スバル・WRX STIの概要
・カテゴリー:中型4WDスポーツモデル
・車格:中型スポーツモデル
・エンジン排気量:約2リッター
・エンジン形式:EJ20型
・比較対象グレード:「STI」グレード
ホンダ・シビック・タイプRとスバル・WRX STIのパワースペック比較
●ホンダ・シビック・タイプR
・最大出力:320ps/6500rpm
・最大トルク:40.8kgf・m/2500rpm~4500rpm
●スバル・WRX STI
・最大出力:308ps/6400rpm
・最大トルク:43.0kgf・m/4400rpm
※パワースペック比較結果
パワーはシビック・タイプRの方が12psほど上、トルクはWRX STIの方が2.2kgf・mほど上ということになっていますが、これは多分エンジン形式の違い(シビック・タイプRは直列4気筒、WRX STIは水平対向4気筒)が出たものと思われます。
ただ実際に乗り比べてみるとやはりシビック・タイプRの方が速く感じました。
ホンダ・シビック・タイプRとスバル・WRX STIの燃費性能比較
●ホンダ・シビック・タイプR
・カタログ燃費(JC08モード):最大12.8km/L
・実燃費:約7km/L
●スバル・WRX STI
・カタログ燃費(JC08モード):最大9.4km/L
・実燃費:約5km/L
※燃費性能比較結果
スバルのEJ20型エンジンはちょっと前に開発された設計の古いエンジンですし、ホンダのK20C型エンジンは直噴エンジンですのでそのあたりで燃費性能の差が出たものと思われます。
ただ、スポーツモデルは燃費性能を気にして乗るような車ではないため、どうでもよいことです。
ホンダ・シビック・タイプRとスバル・WRX STIの販売価格帯比較
ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。
●ホンダ・シビック・タイプR
約458万円
●スバル・WRX STI
約394万円~約414万円
※販売価格帯比較結果
シビック・タイプRはあちこちにこのモデル専用の部品や装備が付けられていますので、どうしてもそういったところでコストがかさみ、価格も高くなってしまいます。
それにシビック・タイプRはイギリスで作られているモデルであってそれを逆輸入する形での販売となっているためそういった点でも高くなってしまうわけです。
まとめ
「スポーツモデルが売れないのは、若年層が車に興味を持たなくなったため」などとよく言われていますが、そうではないように思えます。
私が思うにはこのシビック・タイプRのような過激なモデルが非常に高い金額で売られているからだと思います。
ひと昔前の若年層がそれこそシビックだとかスターレットだとかカローラ・レビンといったようなモデルを購入して乗り回していた時代では、貨幣価値の変化もあってまっとうに比較することはできませんが、だいたい100万円から200万円ぐらいを出せば、スポーツ走行を楽しめるまともな車を手にすることができました。
それが今では400万円だ、500万円だといった感じで到底若年層が気軽に買える値段ではなくなっているのです。
このシビック・タイプRもそうです、パワーもあって走りも最高なのに約460万円もするのではいくら欲しくても経済的に厳しい一面を持つ若年層が買うことなどできません。
これがスポーツモデルが売れない理由、しいては若年層がマイカーを買おうとしない理由だと思います。
シビック・タイプRのようなモデルがせめて300万円台前半ぐらいの価格で売られていたらきっともっと売れていたことでしょう。
こんなに良い車を手に入れないのはもったいないです。
※総合評価:★★★★★(5)