クロスオーバーSUVブームが巻き起こる中、各社からいろいろなクロスオーバーSUVが発売されているわけですが、そういった中でここ最近特にもてはやされているのがスポーティーなイメージを持つクロスオーバーSUVです。
そんなスポーティーなイメージを持つクロスオーバーSUVとして三菱から発売されたのがこのエクリプス・クロスです。
ここではエクリプス・クロスがどういった車なのか、クロスオーバーSUVとして性能はどうなのか、自動車としての走りの性能はどうなのか…といったところを検証してみたいと思います。
※ご注意
ここでは三菱・エクリプス・クロスの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。
目次
スポーティーでも本物のクロスオーバーSUV、三菱・エクリプス・クロス
アメリカ人がアウトドアスポーツやアウトドアレジャーを楽しむために4WDのピックアップトラックを使い始めたのをきっかけに生み出されたSUV、そのSUVをモノコックフレームで作ったのがクロスオーバーSUVなのですが、ここ最近のに日本国内の自動車メーカーはこの部分をまるですっかり忘れてしまったかのように見た目だけのクロスオーバーSUV「なんちゃってクロスオーバーSUV」を増産しています。
軽自動車は生産コスト的に仕方がない部分がありますが、一部のメーカーがクロスオーバーSUVとして発売しているモデル、全てがSUVでもないクロスオーバーSUVでもない「なんちゃってクロスオーバーSUV」になっています。
「なんちゃってクロスオーバーSUV」とは開発コストを安く抑えるため、生産コストを安く抑えるため、短期間で発売にこぎつけたいために、既存のセダンやトールワゴンなどをベースにして、大部分の部品を流用する形で作られたクロスオーバーSUV風の乗用車のことで、セダンやトールワゴンをベースにして作られているため、クロスオーバーSUVに求められるオフロード走行性能をまったくもっていません。
見た目だけで中身が全くないクロスオーバーSUV…ということで「な~んちゃって」クロスオーバーSUV、「なんちゃってクロスオーバーSUV」と裏で呼ばれることになったわけです。
当然ながらどのモデルもオフロード走行をしたらすぐにスタックしますし、雪道などでもFFモデル並みに走りしかできません。
その反面、オンロードは大衆車レベルの走りができるといった感じで、もはや「SUV」とか「クロスオーバーSUV」という言葉を使ってもらいたくない、販売戦略のためとはいえ使わない方がいいといったひどいモデルが目立ちます。
特に最近は、プリウスの「なんちゃってクロスオーバーSUV」バージョンであるC-HRが発売されたことによって、クロスオーバーSUVでとても重要な性能であるオフロード走行性能を無視するばかりではなく、オンロード走行をメインに置いた「なんちゃってクロスオーバーSUV」が注目を集めるようになり、消費者もそういった販売戦略にまんまと騙されて「スポーティーなクロスオーバーSUV」を求めるようになってしまったのです。
クロスオーバーSUVはオンもオフも両方いけるのが良いところです。
そういった車なのですからオンロード走行性能に特化し、更にスポーティーさを与える前にオフロード走行性能を磨くのが優先だと思います。
これが現在の日本国内のクロスオーバーSUV事情であるわけですが、何もすべての自動車メーカーがこういった考え方を持っているわけではありません。
三菱は違います。
クロスオーバーSUVを作る時も何かのセダンモデルやトールワゴンモデルを流用転用しているわけでもなく、オフロード走行性能を無視するような作りはせずに、過去から培った優れた4WD技術を使ったクロスカントリー4WDモデルやSUVにも引けを取らない優れたオフロード走行性能とオンロード走行性能を持った正真正銘のクロスオーバーSUVを作っているのです。
三菱には中・大型クロスオーバーSUVとしてアウトランダーが、小型クロスオーバーSUVとしてRVRがすでに発売されていましたが、その第三弾モデルとして2018年3月に発売されたのがこのエクリプス・クロスです。
「エクリプス」ときいて1990年に発売された2ドアスポーツクーペモデルのエクリプスと思い浮かべる方も多いかと思いますが、この「エクリプス・クロス」はそのエクリプスとは全く関係の無い本格的なクロスオーバーSUVです。
見た目こそトヨタのC-HRのようなスポーティーなイメージになっていますが、クロスオーバーSUVとしての性能をしっかりと持った形で作られていることがこのモデルの最大の特徴でしょう。
そのクロスオーバーSUVとしての性能を裏付けるのがこのモデルはアウトランダーがベースになっているということです。
アウトランダーも乗用モデルを流用転用して作られた「なんちゃってクロスオーバーSUV」ではなく、このモデルのために設計が起こされた本格的なクロスオーバーSUVです。
そのモデルのコンポーネントを利用して一回り小さなクロスオーバーSUVとして作られたのがエクリプス・クロスですので、このモデルも純粋なクロスオーバーSUVとなります。
三菱・エクリプス・クロスのこれまでの出来事(2019年9月時点)
●初代モデル GK型 2018年3月発売
・2018年12月 一部改良
・2018年12月 「BLACK Edition」の追加
・2019年6月 ディーゼルターボエンジンモデルの追加
三菱・エクリプス・クロスが属するカテゴリー
●車格:中型大衆モデル
●用途・目的:生活車、レジャー用
●車両カテゴリー:中型クロスオーバーSUV
●エンジン排気量クラス:1.5リッターターボクラス、2.2リッターディーゼルターボクラス
三菱・エクリプス・クロスのオーナー層
●年齢層:20歳ぐらいから60歳ぐらいまで
●性別:男性
●経済力:高収入層(新車購入)、大衆層(新車購入)、低収入層(中古車購入)
●その他:正しい意味での「クロスオーバーSUV」を求めている方に購入されることが多い
三菱・エクリプス・クロスの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・ガソリンエンジン
・ディーゼルエンジン
●トランスミッション
・8速オートマチックトランスミッション
・CVT
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FF
・センターデフ付きフルタイム4WD
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:マルチリンク(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:ソリッドディスク ディスクブレーキ
●ベースモデル
・アウトランダー
●兄弟車
・なし
三菱・エクリプス・クロスのモデル構成とグレード構成
エクリプス・クロスにはパワーユニットが違う2つのモデルが用意されています。
ガソリンエンジンモデル
このモデルには3つのグレードが用意されています。
・ガソリンエンジン M グレード(2WD・4WD)
・ガソリンエンジン G グレード(2WD・4WD)
・ガソリンエンジン G Plus Package グレード(2WD・4WD)
●「ガソリンエンジン M」グレードの主な装備
・ハロゲンヘッドライト
・LEDデイライト
・LEDポジションランプ
・LEDリヤコンビネーションランプ
・フロントフォグランプ風タウンランプ
・カラード ドアアウターハンドル
・サイドアンダーミラー付カラードLEDターンランプ付電動格納式リモコンドアミラー
・シルバー フロントグリル
・メッキ サイドウィンドウモール
・メッキ サイドアッパーモール
・スキッドプレート
・ブラック サイドドアガーニッシュ
・ルーフスポイラー
・ルーフレール
・シャークフィンアンテナ
・ハイマウントストップランプ
・UVカットフロントウィンドウシールドガラス
・UVカットフロントドアガラス
・UVカット機能付プライバシー リヤドアガラス
・UVカット機能付プライバシー テールゲートガラス
・雨滴感知式オートワイパー
・リヤ間欠ワイパー
・リヤデフォッガー
・ハイコントラストメーター
・マルチインフォメーションディスプレイ
・ECOモードスイッチ
・本革巻きステアリングホイール
・本革巻きセレクターノブ
・パドルレバー
・クリーンエアフィルター付左右独立温度コントロール式フルオートエアコン
・ファブリック シート生地
・運転席ハイトアジャスター
・リヤシート 6:4分割式スライド&リクライニング調整機能
・リヤシートセンターアームレスト
・メッキ インナードアハンドル
・フロアコンソールボックス
・マップランプ
・ルームランプ
・ラゲッジルームランプ
・チケットホルダー付バニティミラー&ライト
・DC12Vアクセサリーソケット
・イルミネーション付ドリンクホルダー
・フロントドア/リヤドア ボトルホルダー
・スマートフォントレイ
・ラゲッジフック
・可倒式アシストグリップ
・コートフック
・グローブボックス
・ラゲッジアンダーボックス
・合成皮革ドアアームレスト
・6スピーカー
・ステアリングオーディオリモコンスイッチ
・S-AWC(4WDモデルのみ)
・AYC(アクティブヨーコントロール)
・ASC(アクティブスタビリティコントロール)
・EDB付ABS
・e-Assist:衝突被害軽減ブレーキシステム
・e-Assist:車線逸脱警報システム
・e-Assist:オートマチックハイビーム
・e-Assist:誤発進抑制機能
・パーキングセンサー
・ヒルスタートアシスト
・エマージェンシーストップシグナルシステム
・ブレーキアシスト
・オートストップ&ゴー
・215/70R16サイズ タイヤ
・16インチ アルミホイール
・クルーズコントロール
・キーレスオペレーションシステム
・全席パワーウィンドウ
・寒冷地仕様
・オートライトコントロール
・チルト&テレスコピックステアリング調整機能
・集中ドアロック
・セキュリティアラーム
・イモビライザー
など
●「ガソリンエンジン G」グレードの主な装備
「ガソリンエンジン M」グレードの装備に加えて
・LEDヘッドライト
・シルバー+メッキ フロントグリル
・ピアノブラック フロントバンパーセンター
・シルバー加飾付 サイドドアガーニッシュ
・メッキ テールゲートガーニッシュ
・ヘッドアップディスプレイ
・運転席・助手席シートヒーター
・大型フロアコンソールボックス
・e-Assist:レーダークルーズコントロールシステム
・225/55R18サイズ タイヤ
・18インチ アルミホイール
・電動パーキングブレーキ
・ブレーキオートホールド
・全席オートアップ機能付パワーウィンドウ
・自動防眩ルームミラー
が追加されています。
●「ガソリンエンジン G Plus Package」グレードの主な装備
「ガソリンエンジン G」グレードの装備に加えて
・カラードLEDターンランプ付電動格納式リモコンドアミラー
・スマートフォン連携ナビゲーションシステム
・e-Assist:レーンチェンジアシスト機能付後側方車両検知警報システム
・e-Assist:後退時車両検知警報システム
が追加されています。
ディーゼルターボエンジンモデル
このモデルには3つのグレードが用意されています。
・ディーゼルエンジン M グレード(4WD)
・ディーゼルエンジン G グレード(4WD)
・ディーゼルエンジン G Plus Package グレード(4WD)
●「ディーゼルエンジン M」グレードの主な装備
・ハロゲンヘッドライト
・LEDデイライト
・LEDポジションランプ
・LEDリヤコンビネーションランプ
・フロントフォグランプ風タウンランプ
・カラード ドアアウターハンドル
・サイドアンダーミラー付カラードLEDターンランプ付電動格納式リモコンドアミラー
・シルバー フロントグリル
・メッキ サイドウィンドウモール
・メッキ サイドアッパーモール
・スキッドプレート
・ブラック サイドドアガーニッシュ
・ルーフスポイラー
・ルーフレール
・シャークフィンアンテナ
・ハイマウントストップランプ
・UVカットフロントウィンドウシールドガラス
・UVカットフロントドアガラス
・UVカット機能付プライバシー リヤドアガラス
・UVカット機能付プライバシー テールゲートガラス
・雨滴感知式オートワイパー
・リヤ間欠ワイパー
・リヤデフォッガー
・ハイコントラストメーター
・マルチインフォメーションディスプレイ
・ECOモードスイッチ
・本革巻きステアリングホイール
・本革巻きセレクターノブ
・パドルレバー
・クリーンエアフィルター付左右独立温度コントロール式フルオートエアコン
・ファブリック シート生地
・運転席ハイトアジャスター
・リヤシート 6:4分割式スライド&リクライニング調整機能
・リヤシートセンターアームレスト
・メッキ インナードアハンドル
・フロアコンソールボックス
・マップランプ
・ルームランプ
・ラゲッジルームランプ
・チケットホルダー付バニティミラー&ライト
・DC12Vアクセサリーソケット
・イルミネーション付ドリンクホルダー
・フロントドア/リヤドア ボトルホルダー
・スマートフォントレイ
・ラゲッジフック
・可倒式アシストグリップ
・コートフック
・グローブボックス
・ラゲッジアンダーボックス
・合成皮革ドアアームレスト
・6スピーカー
・ステアリングオーディオリモコンスイッチ
・S-AWC
・AYC(アクティブヨーコントロール)
・ASC(アクティブスタビリティコントロール)
・EDB付ABS
・e-Assist:衝突被害軽減ブレーキシステム
・e-Assist:車線逸脱警報システム
・e-Assist:オートマチックハイビーム
・e-Assist:誤発進抑制機能
・パーキングセンサー
・ヒルスタートアシスト
・エマージェンシーストップシグナルシステム
・ブレーキアシスト
・オートストップ&ゴー
・215/70R16サイズ タイヤ
・16インチ アルミホイール
・クルーズコントロール
・キーレスオペレーションシステム
・全席パワーウィンドウ
・寒冷地仕様
・オートライトコントロール
・チルト&テレスコピックステアリング調整機能
・集中ドアロック
・セキュリティアラーム
・イモビライザー
など
●「ディーゼルエンジン G」グレードの主な装備
「ディーゼルエンジン M」グレードの装備に加えて
・LEDヘッドライト
・シルバー+メッキ フロントグリル
・ピアノブラック フロントバンパーセンター
・シルバー加飾付 サイドドアガーニッシュ
・メッキ テールゲートガーニッシュ
・ヘッドアップディスプレイ
・運転席・助手席シートヒーター
・大型フロアコンソールボックス
・e-Assist:レーダークルーズコントロールシステム
・225/55R18サイズ タイヤ
・18インチ アルミホイール
・電動パーキングブレーキ
・ブレーキオートホールド
・全席オートアップ機能付パワーウィンドウ
・自動防眩ルームミラー
が追加されています。
●「ディーゼルエンジン G Plus Package」グレードの主な装備
「Gディーゼルエンジン 」グレードの装備に加えて
・カラードLEDターンランプ付電動格納式リモコンドアミラー
・スマートフォン連携ナビゲーションシステム
・e-Assist:レーンチェンジアシスト機能付後側方車両検知警報システム
・e-Assist:後退時車両検知警報システム
が追加されています。
三菱・エクリプス・クロスに搭載されるパワーユニットと動力性能
三菱・エクリプス・クロスには2種類のパワーユニットが設定されています。
●1.5リッターターボエンジン
・エンジン型式:4B40型
・エンジン排気量:1,498cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・燃料供給:筒内直接噴射(DI)+ポート噴射(MPI)
・過給器:ターボチャージャー
・特別な機能:MIVEC
◆スペック
・最大出力:150ps/5,500rpm
・最大トルク:24.5kgf・m/2,000rpm~3,500rpm
・1リッターあたりのパワー:約100ps
・パワーウェイトレシオ:約10.3kg/ps
このパワーユニットはガソリンエンジンモデルの全グレードに採用されているものです。
国内ではこのエクリプス・クロスが初搭載モデルとなった新しいエンジンで、1.5リッターエンジンにターボチャージャーをつけたターボエンジンとなります。
パワースペックを見てもお分かりのようにモアパワーを稼ぐためのターボエンジンではなく、低燃費のためのいわゆるダウンサイジングターボエンジンと呼ばれるもので、エンジン排気量を少なくしてエンジンの絶対的な燃料消費量を減らして低燃費につなげる、それではパワーダウンは必至なのでそのパワーダウンをターボチャージャーの過給によって補うといった概念に沿って作られたものです。
ターボチャージャーはエキゾーストマニホールド一体型の専用のものとし、ブースト圧の調整をするためのウェイストゲートバルブを稼働は圧力式のアクチュエーターではなく、ソレノイドを使った電気式となっています。
ノーマルので最大ブースト圧は約150kPaという三菱のエンジンらしいハイブースト仕様となっています。
燃料供給方法は、ポート噴射のMPIと筒内直接噴射のDIの両方を用いる半直噴仕様で、このエンジンでは通常はポート噴射のみで機能し、エンジンに負荷がかかった時だけ筒内直接噴射も併用するという制御が取られています。
これによってトヨタの直噴エンジン、半直噴エンジンでよくある「カーボンの蓄積によるトラブル」を回避することできているようです。
可変バルブタイミング機構は、MIVECでこのクラスのエンジンでは珍しく吸気側・排気側の両方に採用されています。
パワー的には2リッターNAエンジンレベルのパワーしかありませんが、ターボエンジンらしく太いトルクがあるため、実際に運転をしてみるとよくわかるのですが、150ps以上のパワーがあるのではないかと勘違いしてしまうぐらいの走りができます。
数字以上に元気なエンジンといってよく、ターボエンジンですのでチューニングも楽しみなエンジンです。
※パワーユニットの評価:★★★★☆(4)
●2.2リッターディーゼルターボエンジン
・エンジン型式:4N14型
・エンジン排気量:2,267cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・燃料供給:コモンレール式燃料噴射装置
・過給器:ターボチャージャー
◆スペック
・最大出力:145ps/3,500rpm
・最大トルク:38.7kgf・m/2,000rpm
・1リッターあたりのパワー:約65.9ps
・パワーウェイトレシオ:約11.58kg/ps
このパワーユニットはディーゼルターボエンジンモデルのすべてのグレードに採用されているエンジンです。
このエンジンは、三菱のミニバン型SUVであるデリカD:5に搭載されていたものと同じもので、スペックも全く同じとなります。
いわゆる「クリーンディーゼル」と呼ばれるディーゼルエンジンで、2つの燃料ポンプで燃料を加圧するコモンレール式の燃料噴射装置と排気ガス内の有害物質を化学反応を用いて窒素と水分に変化させる尿素SCRシステムなどによって、それまでのディーゼルエンジンでは考えられないほどきれいな排気ガスを排出するエンジンになっています。
パワー的には1.5リッターターボエンジンモデルや一般的な2リッターNAエンジンと同程度のパワーしかありませんが、ディーゼルエンジン特有の低回転域から発生される大トルクは3リッターNAエンジンをしのぐほどのものがあります。
実際に運転してみるとよくわかるのですが、街乗り程度のスピードレンジならば2,000rpmも回っていれば十分な走りを得ることができますし、フル定員、荷物満載でもその走りはあまり変わりません。
オンロード走行のみならず、低速域での走りが多くなるオフロード走行においてもこれだけのトルクがあれば十分です。
ディーゼルエンジンであることから少々「ガラガラ音」が気になることはありますが、エンジンの振動を感じることもなく、排気ガスの臭さもあまり感じることなく、意外と快適に走ることができます。
オフロード走行が多い方、ノーマル状態で乗り続ける方はガソリンエンジンモデルよりもこのディーゼルターボエンジンモデルを選んだ方がいいかと思います。
※パワーユニットの評価:★★★★★(5)
三菱・エクリプス・クロスに採用されているトランスミッション
エクリプス・クロスにはパワーユニットに対応した2種類のトランスミッションが用意されています。
●8速オートマチックトランスミッション
このトランスミッションは、大トルクを発生するディーゼルターボエンジンモデル用に採用されているのものです。
このオートマチックトランスミッションは、三菱では「8速スポーツモードオートマチックトランスミッション」と呼ばれているもので、4N14型ディーゼルターボエンジン同様にデリカD:5に採用されているものと全く同じです。
メーカーは「アイシンAW」、なんと日産グループの三菱の車体にトヨタグループ傘下の企業が作った部品が使われていることになっているではありませんか。
性能的には特に良くも悪くもなく、故障や不具合が遠いわけではないのでそれはそれでいいとは思うのですが、ちょっと納得がいかない部分もあります。
構造はいたって普通のプラネタリーギヤのギヤボックスとトルクコンバーターを組み合わせたもので、ステアリングコラムに付けられているパドルレバーでマニュアル変速操作ができるスポーツモードも採用されています。
※トランスミッションの評価:★★★☆☆(3)
●CVT
CVTは、1.5リッターターボエンジンを搭載しているモデルに採用されているトランスミッションです。
このトランスミッションはオートマチックトランスミッションと違って、同じ日産グループのジャトコで作られたもので、基本的にはベースモデルとなるアウトランダーに採用となっていた「INVECS-Ⅲ6速スポーツモードCVT」と同じで、スポーツモードという疑似有段変速制御を6速から8速に変更しただけのものといっていいでしょう。
構造もごく普通のもので、金属ベルトを使ったベルト式無段変速機にトルクコンバーターを組み合わせたもので、走りの性能としても特にこれといってよいところも悪いところもないといったような感じです。
ただ、ターボチャージャーのブーストがかかってトルクが突然に上がるような状態になると一瞬ベルトが滑っているのを感じることがあり、その際に加速が拍子抜けするような感じになることがあります。
※トランスミッションの評価:★☆☆☆☆(1)
三菱・エクリプス・クロスの走行性能を決める構造
三菱・エクリプス・クロスのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
エクリプス・クロスのプラットフォームはベースモデルとなるアウトランダーと全く同じのGSプラットフォームの改良型のPMプラットフォームとなります。
シャシー構造はほぼ全く同じで、ホイールベースもアウトランダーと同じ 2,670mmとなっています。
三菱のプラットフォームは昔から頑丈で剛性の高いものとして知られていて、このPMプラットフォームも同様にかなりの強度、剛性を持ちます。
更にこのモデルではボディ剛性を高めるために構造用接着剤を使ったボディの組み立てや3点式のフロントストラットタワーバーの採用などが行われており、ベースモデルとなるアウトランダーよいも更にボディ剛性がアップされています。
あまりにもボディ剛性、シャシー強度などが高いため、オンロードを走っている時に若干、乗り心地に悪さを感じることがありますが、オンでもオフでもしっかりと車体を支え、サスペンションの動きを阻害することないのはさすが三菱です。
※ボディ剛性の評価:★★★★☆(4)
三菱・エクリプス・クロスの走りの質を決めるサスペンション構造
サスペンション構造もベースモデルとなるアウトランダーと全く同じ形式のものが採用されています。
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:マルチリンク
四輪独立懸架の割には非常にサスペンションストロークが多いですし、サスペンション構造が付けられている部分もしっかりしている、更に前後の各サスペンションアームもかなりの強度があるため、オンロードだけではなくオフロードも意外とガンガンいける足回りとなっています。
※サスペンション構造の評価:★★★★☆(4)
三菱・エクリプス・クロスのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
一番軽いもので1.46トン、一番重たいもので1.68トンといった車両重量に最大で150psを発生するパワーユニットを搭載するエクリプス・クロスにおいてはこのブレーキで十分かと思います。
・フロント:1ポットフローティングキャリパー+ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:1ポットフローティングキャリパー+ソリッドディスク ディスクブレーキ
実はこのブレーキシステムもアウトランダーと全く同じものとなりますが、もっと重たくもっとパワーのあるエンジンを搭載しているアウトランダーでも十分とされているのですからエクリプス・クロスにとってはより十分と言えるのではないかと思います。
※ブレーキシステムの評価:★★★☆☆(3)
三菱・エクリプス・クロスに搭載されている4WDシステム
エクリプス・クロスに採用されている4WDシステムは、いわゆるセンターデフ付きのフルタイム4WDと呼ばれる類のもので、三菱ではこの電子制御4WDに姿勢制御やブレーキ制御などを付加した統合的な車両運動統合制御システムとして「S-AWC」と呼んでいます。
「電子制御4WD」と呼ばれている4WDシステムだけで見れば、リヤデファレンシャルギヤ直前に置かれた電子制御式カップリングをセンターデフとし、それを制御することで走行状態に合わせて前後トルク配分を調整するといった機能があります。
前後トルク配分の調整は、S-AWCの他の機能と一緒にドライブモードによって設定されており
・「AUTO」モード:「前:100 後:0」の完全FF状態から最大で「前:55 後:45」といったトルク配分の範囲を走行状態に合わせて調整して走るモード
・「SNOW」モード:トルク配分「前70:後30」を基本として走行状態に合わせて前後トルク配分を柔軟に変化させるモード
・「GRAVEL」モード:前後トルク配分「前55:後45」というパートタイム4WDにかなり近い状態を作るモード
といった中からドライバーが選択する形となっています。
前後ともにデファレンシャルギヤは普通のオープンデフとなっていますが、S-AWCの1つの機能となるブレーキ制御で空転してトラクションが抜けているタイヤにだけブレーキをかけて、その反対側のタイヤにトラクションを発生させるいわゆる「疑似LSD」状態を作ることでLSDを搭載しなくても優れた悪路走破性を発揮することができています。
ちなみにAYC、アクティブヨーコントロールもランサーエボリューションXのようにデファレンシャルギヤ内部の電磁クラッチを作用させて行う方法ではなく、こちらもブレーキ制御によってもたらされています。
基本はアウトランダーの4WDシステムと同じですが、アウトランダーに採用されていたAFD(アクティブフロントデフ)は、エクリプス・クロスでは採用されていません。
それでも「これぞ本当のクロスオーバーSUV」と言えるほどの優れたトラクション性能、オフロード走行性能を発揮することができているのはさすが「4WDの三菱」です。
※4WDシステムの評価:★★★★★(5)
三菱・エクリプス・クロスの燃費性能
三菱・エクリプス・クロスのカタログ燃費と実燃費
●ガソリンエンジンモデル(2WD)
・カタログ燃費(JC08モード):最大15.0km/L
・実燃費:約11km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
●ガソリンエンジンモデル(4WD)
・カタログ燃費(JC08モード):最大14.0km/L
・実燃費:約10km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
●ディーゼルターボエンジンモデル(4WD)
・カタログ燃費(WLTCモード):最大14.2km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・市街地):最大11.0km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・郊外):最大14.0km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・高速道路):最大16.4km/L
・実燃費:約11km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
ガソリンエンジンモデルはハイブーストのターボエンジンであるため、運転し方次第で実燃費が大きく変わるものですので多少悪くなっても仕方がないでしょう。
それが嫌ならブーストがかからないような運転をするしかありません。
ディーゼルターボエンジンも思いのほかよくはありませんが、こちらは「燃費性能」ではなく「燃料費」で勝負しましょう。
三菱・エクリプス・クロスに採用されている低燃費装備
●ガソリンエンジンモデル
・可変バルブタイミング機構
・CVT
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
・アイドリングストップ機構
・半直噴エンジン
●ディーゼルターボエンジンモデル
・可変バルブタイミング機構
・コモンレール式燃料噴射装置
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
・アイドリングストップ機構
三菱・エクリプス・クロスのライバルモデル比較
三菱・エクリプス・クロスのライバルとなるのはホンダ・CR-V
エクリプス・クロスは現在発売されているクロスオーバーSUVの中で数少ないまともなクロスオーバーSUVですが、実はもう1台、同じクラスのクロスオーバーSUVにそういったクロスオーバーSUVがありました。
それがホンダのCR-Vです。
CR-Vは1995年に発売されたホンダのクロスオーバーSUVですが、その初代モデルから2016年に販売終了となった4代目モデルまで一貫して見た目だけのオンロードだけしか走れないクロスオーバーSUV…シビックベースの「なんちゃってクロスオーバーSUV」として作られてきたモデルだったのですが、2016年に発売されたモデルで、シビックベースであることには違いはないのですが、それまでのモデルよりもよりオフロードに重きを置いた設計となり、晴れて「なんちゃってクロスオーバーSUV」から「クロスオーバーSUV」になることができました。
それが2019年10月時点で現行モデルとなるRW1系型です。
モデルバリエーションは、1.5リッターVTECターボエンジンモデルと2リッターハイブリッドモデルの2種類となります。
ここでは1.5リッターターボエンジンモデル同士で比較してみたいと思います。
●三菱・エクリプス・クロスの概要
・カテゴリー:中型クロスオーバーSUV
・車格:中型大衆モデル
・エンジン排気量:約1.5リッター
・エンジン形式:4B40型
・比較対象グレード:「G Plus Package」グレード
●ホンダ・CR-Vの概要
・カテゴリー:中型クロスオーバーSUV
・車格:中型大衆モデル
・エンジン排気量:約1.5リッター
・エンジン形式:L15B型
・比較対象グレード:「EX」グレード
三菱・エクリプス・クロスとホンダ・CR-Vのパワースペック比較
●三菱・エクリプス・クロス
・最大出力:150ps/5,500rpm
・最大トルク:24.5kgf・m/2,000rpm~3,500rpm
●ホンダ・CR-V
・最大出力:190ps/5,600rpm
・最大トルク:24.5kgf・m/2,000rpm~5,000rpm
※パワースペック比較結果
この違いは、エクリプス・クロスが低燃費のためのダウンサイジングターボエンジンとなっているのに対して、CR-Vはモアパワーを狙ったターボエンジンであるからです。
三菱・エクリプス・クロスとホンダ・CR-Vの燃費性能比較
●三菱・エクリプス・クロス(4WD)
・カタログ燃費(JC08モード):最大14.0km/L
・実燃費:約10km/L
●ホンダ・CR-V(4WD)
・カタログ燃費(JC08モード):最大15.0km/L
・実燃費:約8km/L
※燃費性能比較結果
やはりパワーを狙ったターボエンジンはいつの時代でも実燃費が悪くなるのもです。
三菱・エクリプス・クロスとホンダ・CR-Vの販売価格帯比較
ここでは1.5リッターエンジンモデルの販売価格で比較してみたいと思います。
●三菱・エクリプス・クロス
約254万円~約310万円
●ホンダ・CR-V
約323万円~約403万円
※販売価格帯比較結果
どちらも1.5リッターターボエンジンモデルだけの価格となるのですが、装備を見てもあまり違いがないのに70万円から90万円ぐらいの差額があるのはどうしてでしょうか。
多分ですが、もともとホンダの車は価格が高めの設定になっていることが多いのでこの両車においてもそれが理由として該当するのではないかと思います。
まとめ
クロスオーバーSUVというとほとんどがセダンやワゴンモデルのドレスアップモデル的な「なんちゃってクロスオーバーSUV」になっている中で、一貫して本当のクロスオーバーSUVを作り続けている三菱、このエクリプス・クロスも格上モデルのアウトランダーに引けを取らないほどの優れたオンロード走行性能、オフロード走行性能を持ったクロスオーバーSUVとして作られているようです。
性能を見てもエンジンパワーこそたいしたことはありませんが、強固なシャシーと剛性たっぷりなボディ、優れた4WDシステムにオフロードもものともしないストロークのあるサスペンションとクロスオーバーSUVとしての性能をとことん追求しつつ、オンロードでもそこそこ走れるようなセッティングがされているのはさすがと言えます。
多少野暮ったく思えるかもしれませんが、これが本当のクロスオーバーSUV!といえるものです。
※総合評価:★★★★☆(4)