仕事用の車として今や欠かせない存在となった軽商用モデル、中でも屋根付きトラックの軽ワンボックスバンはいろいろなところで重宝されています。
三菱からもミニキャブ・バンという軽商用ワンボックスバンが発売されていますがこのモデル、実のところ三菱の車ではありません。
ここでは、そんな三菱・ミニキャブ・バンがどんな車なのか、商用モデルとしてどれだけの性能を持っているのかを検証したいと思います。
※ご注意
ここでは三菱・ミニキャブ・バンの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。
目次
今の三菱・ミニキャブ・バンはスズキ製
三菱自動車は、スポーツモデルや4WDシステム以外にも軽自動車を作ることも得意としている自動車メーカーで古くから軽乗用モデル、軽商用モデルを作ってきました。
軽乗用モデルは、eKシリーズや古いところではミニカ、トッポなどといったモデルが代表的なモデルとなり、軽商用モデルはミニキャブシリーズが販売されてきました。
ミニキャブシリーズにはワンボックスバンのミニキャブ・バンとトラックのミニキャブ・トラックがありますが、ミニキャブ・トラックはもっぱら農業や漁業、酪農業、大工さんなどといった職業に従事する方に用いられることが多く、どちらかというと少数派、多くは全天候型であるワンボックスバンのミニキャブ・バンを購入しているようです。
ミニキャブ・バンは1966年に発売されたミニキャブ・トラックから2年ほど遅れる形で1968年に発売されました。
その後4回のモデルチェンジを行いながら進化してきたわけですが、三菱製のミニキャブ・バンとしての進化は1999年に発売された商用バンモデルとしての5代目モデルで終止符を打ちます。
終止符を打つことになってしまった理由は、本当は単なる運送会社の整備能力不足が原因だった「リコール隠し問題」によって三菱自動車の評判が悪くなり、そして販売台数が不振となったことで、新たなモデルの開発費を確保することが難しくなり、最終的には軽自動車の自社開発・生産を取りやめることになってしまったのです。
ただ、確実に利益につながる軽自動車を売らない手はないということで、自社開発モデルはあきらめたものの軽乗用モデルに関しては当時はまだ親会社ではなかった日産との共同事業として軽乗用モデルの開発を行う自動車メーカー、NMKVの設立をし、そこで開発を行うことで軽乗用モデルの販売をすることができました。
対してこのミニキャブ・バンのような軽商用モデルはEV関連モデル以外のすべてをOEM供給モデルで補うことにしたのです。
ミニキャブ・バンはエブリイ・バンのOEM供給モデル
ミニキャブ・バンとして販売するためのOEM供給モデルをどこから調達したのかといいますと、それは今ではトヨタグループの一員となってしまいましたが当時はまだ日産派だったスズキからです。
スズキが古くから軽商用モデルとして製造販売しているエブリイシリーズ、キャリイシリーズのOEM供給を受けることになったのです。
OEM供給が開始されたのは、軽ワンボックスバンとしては6代目モデル、軽トラックとしては7代目モデルとなる2014年からでした。
これで、軽ワンボックスバンのミニキャブ・バンはDA64系型エブリイ・バンの、軽トラックのミニキャブ・トラックはDA16T型キャリイのOEM供給モデルとなったわけですが、軽ワンボックスバンのミニキャブ・バンは、OEM供給元モデルであるエブリイ・バンのモデル末期にあたるタイミングでOEM供給を受ける形になり、約1年後の2015年にエブリイ・バンがモデルチェンジを行い、新しいモデルとなったことから、このミニキャブ・バンはたった1年間しか販売されない形ですぐに7代目モデルへとモデルチェンジされた形になりました。
この中身がDA17V型エブリイ・バンとなる7代目モデル、DS17V型が2019年10月時点の現行モデルとなります。
三菱・ミニキャブ・バンのこれまでの出来事(2019年10月時点)
●初代モデル LT30系型 1968年6月発売
※三菱自動車オリジナルモデル時代
・1969年某月 マイナーチェンジ デザインの小変更 エンジンの仕様変更
・1971年某月 マイナーチェンジ デザインの小変更 車種名を「ミニキャブEL・バン」に変更
●2代目モデル L012・013・015系型 1976年某月発売
※三菱自動車オリジナルモデル時代
※車種名を「ミニキャブ5・バン」に変更
・1977年某月 マイナーチェンジ デザインの小変更 エンジン排気量を546ccに変更
・1979年某月 マイナーチェンジ デザインの小変更
・1981年某月 マイナーチェンジ デザインの小変更 車種名を「ミニキャブ・バン」に変更 上級モデル「エステート」の追加
・1982年某月 一部改良 デザインの小変更 4WDモデルの追加
●3代目モデル U11V・U12V・U14V・U15V・U18V・U19V系型 1984年6月発売
※三菱自動車オリジナルモデル時代
・1987年6月 マイナーチェンジ デザインの小変更 エンジンの仕様変更 スーパーチャージャーモデルの追加
・1989年某月 「エステート」を「ミニキャブ・ブラボー」へ改名
・1990年2月 マイナーチェンジ デザインの小変更 NAエンジンのエンジン排気量を657ccに変更
●4代目モデル U41V・42V系型 1991年2月発売
※三菱自動車オリジナルモデル時代
・1992年1月 一部改良
・1993年1月 一部改良 一部のグレードに5速マニュアルトランスミッションの採用
・1994年2月 マイナーチェンジ デザインの小変更
・1996年1月 マイナーチェンジ デザインの小変更 一部のグレードのエンジン仕様変更
・1996年5月 「V30 SPECIAL EDITION」の追加
・1997年12月 一部改良 一部のグレードのエンジン仕様変更 一部のグレードにフロントディスクブレーキの採用
・1998年2月 最廉価グレード「V」グレードの追加
●5代目モデル U61V・62V系型 1999年2月発売
※三菱自動車オリジナルモデル時代
・2000年12月 マイナーチェンジ デザインの小変更
・2004年10月 エアバッグの採用
・2005年12月 一部改良
・2006年5月 「40周年記念スペシャル」の追加
・2006年12月 一部改良
・2007年10月 「ミニキャブ バイフューエル」の追加
・2007年12月 マイナーチェンジ デザインの小変更
・2008年12月 一部改良
・2009年10月 一部改良 「黒バン」の追加
・2009年12月 一部改良 デザインの小変更
・2010年8月 一部改良 「ROAR Complete」の追加
・2011年11月 一部改良 デザインの小変更 乗用グレード「ブラボー」の追加
・2012年7月 一部改良
・2012年12月 一部改良
●6代目モデル DS64V型 2014年2月発売
※スズキ・エブリイ・バンのOEM供給モデル時代
●7代目モデル DS17V型 2015年3月発売
※スズキ・エブリイ・バンのOEM供給モデル時代
・2015年12月 一部改良
・2016年3月 一部改良
・2019年7月 一部改良
三菱・ミニキャブ・バンが属するカテゴリー
●車格:軽商用車
●用途・目的:業務用 生活車
●車両カテゴリー:軽ワンボックスバン
●エンジン排気量クラス:軽自動車クラス
三菱・ミニキャブのオーナー層
●年齢層:特になし
●性別:特になし
●経済力:大衆層(新車購入)低収入層(中古車購入)
●その他:法人・個人問わず、主に商用目的として購入される
三菱・ミニキャブ・バンの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・ガソリンエンジン
●トランスミッション
・5速マニュアルトランスミッション
・4速オートマチックトランスミッション
・5速セミオートマチックトランスミッション
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FR
・スタンバイ式4WD
・パートタイム4WD
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:I.T.L「アイソレーテッド・トレーリング・リンク」(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ソリッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
●ベースモデル
・あり…スズキ・エブリイ・バン
●兄弟車
・あり…スズキ・エブリイ・バン、日産・NV100クリッパー、マツダ・スクラムバン
三菱・ミニキャブ・バンのモデル構成とグレード構成
三菱・ミニキャブ・バンにはパワーユニット違いモデルが2種類用意されています。
NAエンジンモデル
このモデルには2つのグレードが用意されています。
・M グレード(2WD・4WD)
・G グレード(2WD・4WD)
●「M」グレードの主な装備
・マルチリフレクターハロゲンヘッドライト
・ピラーアンテナ
・フロント マッドフラップ
・熱線プリントテールゲートガラス
・UVカット フロントウィンドシールドガラス
・UVカット フロントドアガラス
・マニュアルエアコン
・スピーカー内蔵型AM/FMラジオ
・灰皿
・ウレタン ステアリングホイール
・アクセサリーソケット
・マルチインフォメーションディスプレイ
・リクライニング・スライド機能付フロントシート
・ビニールレザー シート生地
・助手席前倒し機能
・運転席/助手席 乗降グリップ
・助手席 アシストグリップ
・インパネボックス
・ビニール フロアカーペット
・ビニール ラゲッジカーペット
・オーバーヘッドコンソール
・センターコンソールトレイ
・インパネ カップホルダー
・フロントドアポケット
・ルームランプ
・ラゲッジルームランプ
・乗降ステップ
・運転席/助手席 チケットホルダー付きサンバイザー
・テールゲートインサイドグリップ
・助手席 インパネトレイ
・運転席 インパネアッパーポケット
・コンビニフック
・グローブボックス
・センターミドルトレイ
・運転席 インパネアッパーポケット
・運転席/助手席SRSエアバッグ
・ヒルスタートアシスト(5速セミオートマチックトランスミッションモデルのみ)
・EDB付ABS
・ブレーキペダル後退抑制機構
・ハイマウントストップランプ
・2速発進モード(5速セミオートマチックトランスミッションモデルのみ)
・パワードアロック機構
・足踏み式パーキングブレーキ(4速オートマチックトランスミッションモデルのみ)
・サイドパーキングブレーキ(4速オートマチックトランスミッションモデル以外)
・ウォッシャー付き間欠式フロントワイパー
・ウォッシャー付きリヤワイパー
・フロント スタビライザー
・フットレスト
・145/80R12サイズ タイヤ
・12インチ×4.00B スチールホイール
・ホイールセンターキャップ
・フューエルリッドオープナー
など
●「G」グレードの主な装備
「M」グレードの装備に加えて
・UVカット機能付プライバシー スライドドアガラス
・UVカット機能付プライバシー クォーターガラス
・UVカット機能付プライバシー テールゲートガラス
・タコメーター
・自発光メーター
・ファブリック シート生地
・e-Assist:衝突被害軽減ブレーキシステム
・e-Assist:ハイビームアシスト
・e-Assist:後退時ブレーキサポート
・e-Assist:リヤパーキングセンサー
・e-Assist:後方誤発進抑制機能
・e-Assist:前進時誤発進抑制機能
・e-Assist:車線逸脱警報機能
・e-Assist:ふらつき警報機能
・e-Assist:先行車発進お知らせ機能
・アクティブスタビリティコントロール
・エマージェンシーストップシグナルシステム
・ブレーキアシスト
・キーレスエントリーシステム
・フロント パワーウィンドウ
・セキュリティーアラーム
・オートライトコントロール
・足踏み式パーキングブレーキ
・ヒルスタートアシスト
が追加されています。
ターボエンジンモデル
このモデルはモノグレードとなります。
・ブラボー ターボ グレード(2WD・4WD)
●「ブラボー ターボ」グレードの主な装備
・マルチリフレクターハロゲンヘッドライト
・電動格納式リモコンカラードドアミラー
・サイドアンダーミラー付助手席ドアミラー
・ヒーテッドドアミラー(4WDモデルのみ)
・ピラーアンテナ
・フロント マッドフラップ
・熱線プリントテールゲートガラス
・UVカット フロントウィンドシールドガラス
・UVカット フロントドアガラス
・UVカット機能付プライバシー スライドドアガラス
・UVカット機能付プライバシー クォーターガラス
・UVカット機能付プライバシー テールゲートガラス
・マニュアルエアコン
・リヤヒーター
・AM/FMラジオ&CDプレーヤー
・2スピーカー
・灰皿
・メッキメーターリング
・タコメーター
・自発光メーター
・ウレタン ステアリングホイール
・アクセサリーソケット
・マルチインフォメーションディスプレイ
・リクライニング・スライド機能付フロントシート
・ファブリック シート生地
・フロントセンターアームレスト
・リヤセンターアームレスト
・ヘッドレスト
・分割可倒式リヤシート
・フルフラットシート
・助手席前倒し機能
・運転席/助手席 乗降グリップ
・運転席/助手席 アシストグリップ
・助手席 シートバックポケット
・ドアトリムクロス
・ニードルパンチ フロアカーペット
・ビニール ラゲッジカーペット
・リヤドアボトルホルダー
・オーバーヘッドコンソール
・センターコンソールトレイ
・インパネ カップホルダー
・フロントドアポケット
・ルームランプ
・ラゲッジルームランプ
・乗降ステップ
・運転席/助手席 チケットホルダー付きサンバイザー
・テールゲートインサイドグリップ
・助手席 インパネトレイ
・運転席 インパネアッパーポケット
・コンビニフック
・グローブボックス
・センターミドルトレイ
・運転席 インパネアッパーポケット
・e-Assist:衝突被害軽減ブレーキシステム
・e-Assist:ハイビームアシスト
・e-Assist:後退時ブレーキサポート
・e-Assist:リヤパーキングセンサー
・e-Assist:後方誤発進抑制機能
・e-Assist:前進時誤発進抑制機能
・e-Assist:車線逸脱警報機能
・e-Assist:ふらつき警報機能
・e-Assist:先行車発進お知らせ機能
・アクティブスタビリティコントロール
・エマージェンシーストップシグナルシステム
・ブレーキアシスト
・運転席/助手席SRSエアバッグ
・ヒルスタートアシスト(5速セミオートマチックトランスミッションモデルのみ)
・EDB付ABS
・ブレーキペダル後退抑制機構
・ハイマウントストップランプ
・2速発進モード(5速セミオートマチックトランスミッションモデルのみ)
・パワードアロック機構
・キーレスエントリーシステム
・フロント/リヤ パワーウィンドウ
・セキュリティーアラーム
・オートライトコントロール
・足踏み式パーキングブレーキ
・ウォッシャー付き間欠式フロントワイパー
・ウォッシャー付きリヤワイパー
・フロント スタビライザー
・フットレスト
・145/80R12サイズ タイヤ
・12インチ×4.00B スチールホイール
・フルホイールキャップ
・フューエルリッドオープナー
など
三菱・ミニキャブ・バンに搭載されるパワーユニットと動力性能
三菱・ミニキャブ・バンには2つのパワーユニットが用意されています。
●NAエンジン
・エンジン型式:R06A型
・エンジン排気量:658cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:3気筒
・バルブ構造:DOHC12バルブ
・燃料供給:ポート噴射
◆スペック
・最大出力:49ps/5,700rpm
・最大トルク:6.3kgf・m/3,500rpm
・1リッターあたりのパワー:約74.2ps
・パワーウェイトレシオ:約17.7kg/ps
このパワーユニットは、「M」グレード、「G」グレードに採用されているものです。
このエンジンはスズキの軽自動車で主力エンジンとなるもので、スズキの軽自動車のNAエンジンモデルの多くに採用されているものです。
ただ、ワゴンRやハスラー、スペーシアなどで採用しているものとはパワースペックが違い、それらは52psとなっていますがこのモデルでは、燃費性能を向上させるのと低速域でのトルクを高めるために49に抑えられています。
可変バルブタイミング機構であるVVTも52ps仕様では吸気側・排気側両方に採用されていますが、このミニキャブ・バンに使われているエンジンでは吸気側だけとなります。
パワースペック的には、経済性も重要な商用モデルとしてみれば、これでいいのかもしれませんが、荷物を満載にした時のことを考えるとやはりパワー不足を感じることになるでしょう。
※パワーユニットの評価:★☆☆☆☆(1)
●ターボエンジン
・エンジン型式:R06A型
・エンジン排気量:658cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:3気筒
・バルブ構造:DOHC12バルブ
・燃料供給:ポート噴射
・過給器:ターボチャージャー
◆スペック
・最大出力:64ps/6,000rpm
・最大トルク:9.7kgf・m/3,000rpm
・1リッターあたりのパワー:約96.9ps
・パワーウェイトレシオ:約14.2kg/ps
このパワーユニットは、「ブラボーターボ」グレードに採用されているものです。
NAエンジンモデルに搭載されているR06A型をターボチャージ化したもので、軽自動車の自主規制値である64psを発生させています。
軽商用モデルとはいえやはり64psぐらいのパワーはあった方がいいです。
荷物満載時や高速道路、アップダウンの激しい道路での走りはNAエンジンモデルとはけた違いです。
※パワーユニットの評価:★★★☆☆(3)
三菱・ミニキャブ・バンに採用されているトランスミッション
このモデルには軽商用モデルとしても珍しい3つのトランスミッションが用意されています。
残念ながらすべてのグレードですべてのトランスミッションが選べるということではありませんが、このバリエーションの豊富さはオーナーにとってありがたいことだと思います。
●5速マニュアルトランスミッション
このトランスミッションは、「M」グレードのみに設定されています。
商用モデルによくある経済性重視、機能性重視のマニュアルトランスミッションで、このモデルでは5速のものが採用になっています。
構造的にもごく普通の乾式単板クラッチとシンクロ付きギヤボックスを持つもので、ギヤレシオもワイドレシオの実用型マニュアルトランスミッションとなります。
構造も性能も特にこれといって悪い部分も良い部分もないのですが、ただひとつだけインパネシフトになっているところが操作性の低下を招いています。
※トランスミッションの評価:★★☆☆☆(2)
●4速オートマチックトランスミッション
このトランスミッションは全モデル、全グレードに設定されています。
このオートマチックトランスミッションは、電子制御・油圧作動式のごく普通のオートマチックトランスミッションです。
構造もごく一般的なもので、トルクコンバーターとプラネタリーギヤを組み合わせたギヤボックスを持ちます。
構造的にも機能的にも特にこれといってメリットもデメリットもありませんが、インパネシフトとされたセレクターレバーの操作性は最悪です。
※トランスミッションの評価:★★☆☆☆(2)
●5速セミオートマチックトランスミッション
このトランスミッションも「M」グレードのみに設定されています。
このトランスミッションはスズキが開発したセミオートマチックトランスミッションで、「AGS(オート・ギヤ・シフト)」と呼ばれているものです。
このトランスミッションは、トルクコンバーター式のオートマチックトランスミッションと同様にセレクターレバーをDレンジに入れておけば、あとはアクセルペダルとブレーキペダルの操作だけでゴーストップを行うことができるもので、法的にもオートマチックトランスミッション、自動変速機として認められています。
なので、AT限定免許しか持っていない方でも運転できます。
しかし、構造的にはトルクコンバーター式オートマチックトランスミッションとは全く違うもので、マニュアルトランスミッションに近い構造を持ちます。
乾式単板クラッチに5速のギヤボックスといった構造となっているのですが、マニュアルトランスミッションモデルを運転する時にドライバーが行うクラッチ操作、変速操作をこのオート・ギヤ・シフトでは電子制御・油圧作動で自動化させているのです。
簡単にいえばマニュアルトランスミッションを自動化させたもの、セミオートマチックトランスミッションということになります。
このトランスミッションのメリットは、物理的な結合をする乾式単板クラッチと金属製のギヤの組み合わせで構成されたギヤボックスを用いていることによってダイレクトな走り、パワーロスの少ない走りができるという点です。
特に軽商用モデルはエンジンパワーがないので、パワーロスが少ないことは動力性能を向上させることに繋がります。
対してデメリットは、ときどきギクシャクした走りになってしまうところです。
特にクラッチ操作は人間でもなれないと中々スムーズにできないことなのにそれをいくら電子制御といっても機械任せにするのはかなり無理があることなのです。
プログラムデータとして用意されている中では快適な走りをすることができますが、イレギュラーな状態になるとそれに対応できずにクラッチミートが遅かったり、急にクラッチを繋いだりといった不可解な動作をすることがあるわけです。
走りとしてはトルクコンバーター式のオートマチックトランスミッションより上ですが、機能的にまだまだ煮詰まりきれていないという部分があるのは確かです。
※トランスミッションの評価:★★★☆☆(3)
三菱・ミニキャブ・バンの走行性能を決める構造
三菱・ミニキャブ・バンのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
ミニキャブ・バンのフレームは一見すると軽乗用モデルなどによく使われているモノコックフレームのように見えますが実はシャシーには頑丈なラダーフレームのような構造のメインフレームが埋め込まれています。
いわゆるビルトインラダーフレームなどと言われる構造のもので、ラダーフレームが持つ優れた強度、剛性、耐久性とモノコックフレームの持つ乗り心地の良さや静寂性の両方を良いところを併せ持っています。
軽商用モデルですのでこれによって走行性能が劇的に向上するわけではありませんが、ひと昔前までの軽商用モデルとは比べものにならないほどの快適性と耐久性を持ちます。
※ボディ剛性の評価:★★★☆☆(3)
三菱・ミニキャブ・バンの走りの質を決めるサスペンション構造
このモデルにはちょっと変わったサスペンション構造が与えられています。
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:I.T.L(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)
フロントサスペンションのマクファーソンストラットは広くいろいろなモデルの採用されている独立懸架サスペンションですので特に物珍しくはないでしょう。
ちょっと変わっているというのはリヤサスペンションのI.T.Lです。
I.T.Lとは、スズキが開発したオリジナルのリジットサスペンション構造で、トレーリングアーム式サスペンションをさらに進化させ、デフハウジングを2本のトレーリングアームと1本のラテラルロッドで支えるといった構造持つものです。
通常のコイルリジットサスペンションと呼ばれるものやFFモデルによく使われているトーションビームなどよりもサスペンション構造としての剛性が高く、まさに軽商用モデルにピッタリなサスペンション構造といえます。
走行性能を劇的に良くするわけではありませんが壊れにくいのがメリットです。
※サスペンション構造の評価:★★★☆☆(3)
三菱・ミニキャブ・バンのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
ミニキャブ・バンには以下のようなブレーキシステムが採用されています。
・フロント:1ポットフローティングキャリパー+ソリッド ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング式 ドラムブレーキ
まあ、軽商用モデルとして一般的でかつ必要最低限の装備といった感じですが、ブレーキの効きはそれなりです。
ちなみにこのモデルの乗用モデルとなるタウンボックス(エブリイ・ワゴンのOEM供給モデル)ではフロントのディスクブレーキのブレーキローターがベンチレーテッドディスクとなっています。
欲を言えば、このミニキャブ・バンにもタウンボックスと同様にベンチレーテッドディスクを採用してくれればフェードによる制動力の低下をある程度防ぐことができたのですが、ベースモデルのエブリイ・バンがそうなっているので仕方ありません。
※ブレーキシステムの評価:★★☆☆☆(2)
三菱・ミニキャブ・バンに搭載されている4WDシステム
かなり珍しいことなのですが、ミニキャブ・バンには2つの4WDシステムが用意されています。
1つは、ターボエンジンを搭載する「ブラボーターボ」グレードに採用されているもので、トランスファーからフロントアクスルに伸びるプロペラシャフトの途中にビスカスカップリングを内蔵したスタンバイ4WDです。
スタンバイ4WDですので、通常はリヤ駆動の2WD状態で走り、滑りやすい路面でリヤタイヤが空転するなどしてフロントタイヤとの回転差が大きくなった時だけビスカスカップリングの作用で一時的に4WD状態になるといった感じになります。
トラクション性能は低いですが、スイッチ操作やトランスファー操作などが必要ないため、世話なしであるというのがメリットです。
そしてもう1つは、NAエンジンを搭載する「M」グレード、「G」グレードに採用されているもので、電磁クラッチ式のトランスファーを持つパートタイム4WDです。
リヤ駆動の2WDと4WD状態をインパネにあるスイッチで切り替えるタイプのパートタイム4WDで、強力なトラクション性能を発揮することができますが、路面状態に合わせて2WDと4WDを使い分ける知識と経験、そしてスイッチ操作が付きまといます。
※4WDシステムの評価:★★☆☆☆(2)
三菱・ミニキャブ・バンの燃費性能
三菱・ミニキャブ・バンのカタログ燃費と実燃費
●NAエンジンモデル(2WD)
・カタログ燃費(JC08モード):最大19.4km/L
・実燃費:約17km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
●ターボエンジンモデル(2WD)
・カタログ燃費(JC08モード):最大16.2km/L
・実燃費:約13km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
●NAエンジンモデル(4WD)
・カタログ燃費(JC08モード):最大19.0km/L
・実燃費:約15km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
●ターボエンジンモデル(4WD)
・カタログ燃費(JC08モード):最大15.4km/L
・実燃費:約12km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
軽自動車というとどうしても20km/Lとか30km/Lといった数字を求めがちですが、このミニキャブ・バンは商用モデルですので、お金をかけてまでそこまでしません。
それでもこれくらい走ればいいのではないでしょうか。
三菱・ミニキャブ・バンに採用されている低燃費装備
●全モデル共通
・可変バルブタイミング機構
・電動パワーステアリング機構
・オート・ギヤ・シフト(オート・ギヤ・シフト搭載モデルのみ)
三菱・ミニキャブ・バンのライバルモデル比較
三菱・ミニキャブ・バンのライバルとなるのはスバル・サンバー・バン
ミニキャブ・バンはスズキのエブリイ・バンのOEM供給モデル、それならライバルモデルとなるのはエブリイ・バンのライバルであるハイゼット・カーゴのOEM供給モデルであるスバルのサンバー・バンとなります。
エブリイ・バンとハイゼット・カーゴのOEM供給モデル対決といったところでしょうか。
ここではターボエンジンモデル同士で比較してみたいと思います。
●三菱・ミニキャブ・バンの概要
・カテゴリー:軽ワンボックスバン
・車格:軽自動車
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:R06A型
・比較対象グレード:「ブラボーターボ」グレード
●スバル・サンバー・バンの概要
・カテゴリー:軽ワンボックスワゴン
・車格:軽自動車
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:KF-DET型
・比較対象グレード:「VCターボスマートアシスト」グレード
三菱・ミニキャブ・バンとスバル・サンバー・バンのパワースペック比較
●三菱・ミニキャブ・バン
・最大出力:64ps/6,000rpm
・最大トルク:9.7kgf・m/3,000rpm
●スバル・サンバー・バン
・最大出力:64ps/5,700rpm
・最大トルク:9.3kgf・m/2,800rpm
※パワースペック比較結果
軽自動車の枠内なのでどちらも同じレベルといえます。
三菱・ミニキャブ・バンとスバル・サンバー・バンの燃費性能比較
●三菱・ミニキャブ・バン
・カタログ燃費(JC08モード):最大16.2km/L
・実燃費:約13km/L
●スバル・サンバー・バン
・カタログ燃費(JC08モード):最大18.8km/L
・実燃費:約12km/L
※燃費性能比較結果
エンジン性能やボディ形状、車両重量、ドライブトレーン、低燃費装備などといったものが両車でほぼ同じような感じですので、実燃費もほぼ同じぐらいになっています。
三菱・ミニキャブ・バンとスバル・サンバー・バンの販売価格帯比較
ここではNAエンジンモデル、ターボエンジンモデル両方の販売価格で比較してみたいと思います。
●三菱・ミニキャブ・バン
約98万円~約159万円
●スバル・サンバー・バン(オープンデッキを除く)
約95万円~約162万円
※販売価格帯比較結果
どちらもOEM供給の元のモデルより若干高い価格設定がされていますが、どちらのモデルも常識の範囲内でおさまっていますし、大きな価格差もないので価格に関しても同等レベルといっていいでしょう。
まとめ
軽自動車を作るのも得意とする三菱が他社からOEM供給を受けてそれを販売するというのに違和感を持つ方も多いかと思いますが、軽商用モデルというのは頻繁に買い替えられるものでもないですし、一度買ったら同じモデルを乗り換えるといった傾向が強いことから乗用モデルより利益を得ることが難しいので、それを自社開発して販売するというのは、登録車をメインと据えている現在の三菱自動車にはできないことなのです。
三菱も日産の子会社となり、OEM供給をしているスズキがトヨタグループの手に落ちたことでこれからどういうことになるかはわかりませんが、ここしばらくはスズキのモデルをOEM供給を受けて販売することになるでしょう。
それから商用モデルとしての性能ですが、そこは軽自動車作りに長けたスズキのことですので、最低限の商用モデルとしての走りの性能はしっかりと抑えられているので安心できます。
※総合評価:★★★☆☆(3)