新車レビュー 三菱・ミニキャブ・ミーブ
燃料の爆発の恐れがなく地球環境に一番やさしい車として注目されている電気自動車・EV、乗用モデルにおいてもまだ普及半ばといったところなのに、三菱はすぐに商用モデルにもEVを用意しました。
それがこの三菱・ミニキャブ・ミーブです。
ここでは三菱・ミニキャブ・ミーブがどういう車なのか、商用車としてどれくらいの性能を持っているのかを検証してみたいと思います。
※ご注意
ここでは三菱・ミニキャブ・ミーブの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。
目次
国産量産モデル初のEV商用モデル、三菱・ミニキャブ・ミーブ
三菱・ミニキャブ・ミーブは、軽乗用モデル(当時は軽自動車扱いだった)のi-MiEVが発売された2009年7月から遅れること約2年4カ月後の2011年11月に発売された国産モデルで量産車として初めてとなる電気自動車の軽商用モデルです。
車体としては全てにおいて新たに開発されたものではなく、1999年から2014年の間に発売されていた6代目ミニキャブのボディ、フレーム、シャシーを流用しそれを土台として、その車体にエンジンの代わりとして大きなリチウムイオンバッテリーと駆動用の電気モーターを搭載した形で作られました。
ベースとなったミニキャブは2014年まで生産したモデルを最後に生産終了となり、それ以降の7代目モデルからはスズキからエブリィ・バンのOEM供給を受けてそれをミニキャブとして販売していますが、EVのミニキャブ・ミーブはEVシステムを搭載しなければならない関係上、他社モデルを使うわけにいかないため、このモデルだけ最後の三菱オリジナルモデルである6代目ミニキャブをベースにしたモデルが2019年10月現在でも使用されています。
搭載されているEVシステムに関しては乗用モデルのi-MiEVと基本は同じで、Y51型の永久磁石式交流同期電気モーターと16.0kWhのリチウムイオンバッテリーの組み合わせとなりますが、このモデルにはi-MiEVで既に廃止となった10.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載する廉価モデルも用意されています。
このモデルは軽商用バンモデルということになり、ボディ形状はクラッシャブルゾーン確保のためのわずかなボンネットを持つワンボックススタイルとなりますが、当初は兄弟モデルとしてミニキャブ・ミーブ・トラックといったミニキャブ・トラックをEV化したモデルも併売されていました。
しかし、商用バンモデルもあまり売れていなかった中で、更に潜在的な需要の偏りがある軽トラックはほとんど売れずに2017年の5月に生産終了となり、ワンボックスバンのこのモデルのみが残されている形になっています。
確かに軽トラックといえば、農業や漁業、林業、酪農業などといった地方で活動する職業に用いられることが多く、長距離運転を強いられることもありますし、まめに充電をしなければならないといったこともあるため、自宅で充電することができるといっても充電スポットが少ない地方ではいささか使いにくい部分があります。
ワンボックスバンであれば、そういった職業以外にも配送とか営業などといったどちらかというと都市部で活動することが多い業務に使うことができますので、ある程度の需要があるのでしょう。
三菱・ミニキャブ・ミーブのこれまでの出来事(2019年10月時点)
●初代モデル U68V型 2011年11月発売
・2013年11月 一部改良
・2014年10月 一部改良
・2015年7月 一部改良 急速充電機能の追加
・2017年1月 一部改良 グレード構成の見直し 「CD(10.5kWh)」グレードの2シーター・ハイルーフモデルの廃止 全グレードにおいて標準ルーフの廃止
三菱・ミニキャブ・ミーブが属するカテゴリー
●車格:軽商用モデル
●用途・目的:生活車 業務用
●車両カテゴリー:軽ワンボックスバン 電気自動車
●エンジン排気量クラス:軽自動車クラス 電気自動車クラス
三菱・ミニキャブ・ミーブのオーナー層
●年齢層:特になし
●性別:特になし
●経済力:大衆層(新車購入)低収入層(中古車購入)
●その他:法人・個人問わず、主に商用目的として購入される
三菱・ミニキャブ・ミーブの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・EVシステム
●トランスミッション
なし
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・ミッドシップ
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション: 3リンク式ド・ディオン(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ソリッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
●ベースモデル
・あり…i-MiEV ミニキャブ(U61系型)
●兄弟車
・あり…i-MiEV、シトロエンC-ZERO、プジョーiON
三菱・ミニキャブ・ミーブのモデル構成とグレード構成
ミニキャブ・ミーブには駆動用バッテリーの総電力量の違いによって2種類のモデルがあります。
10.5kWhモデル
このモデルはモノグレードとなります。
・CD 10.5kWh(2WD)(4シーター)
●「CD 10.5kWh」グレードの主な装備
・普通充電リッド
・急速充電リッド
・大型ドアミラー
・上下昇降式スライドドアウィンドウ
・熱線プリントテールゲートガラス
・ヘッドレスト一体型フロントシート
・PVCレザー シート生地
・運転席 シートスライド&リクライニング調整機能
・助手席 リクライニング調整機能
・助手席 前方フラットダウン機構
・運転席/助手席 シートヒーター
・フラット格納機構付きリヤシート
・コンビネーションメーター
・マニュアルエアコン
・運転席/助手席 パワーウィンドウ
・ドアトリム
・フロントドアアームレスト
・運転席/助手席 ドアポケット
・運転席/助手席 サンバイザー(運転席チケットホルダー付き)
・運転席/助手席 乗降グリップ
・運転席/助手席 アシストグリップ
・運転席/助手席 カップホルダー
・フロント/リヤ 乗降ステップ
・ビニール製フロアマット
・ビニール製ラゲッジルームマット
・トラクションコントロール
・高電圧遮断システム
・運転席/助手席 SRSエアバッグ
・ABS
・LEDハイマウントストップランプ
・車両接近通報装置
・フルフロアアンダーカバー
・フロント スタビライザー
・センタードアロック
・寒冷地仕様
・フロント間欠ワイパー&ウォッシャー
・リヤ間欠ワイパー&ウォッシャー
・マッドガード
・大型フットレスト
・グローブボックス
・アクセサリーボックス
・コインホルダー
・ボックス付きフロアコンソール
・ルームランプ
・ラゲッジルームランプ
・ヘッドライトオートカット
・ヘッドライトレベリングスイッチ
・コンフォートフラッシャー
など
16.0kWhモデル
このモデルもモノグレードとなります。
・CD 16.0kWh グレード(2WD・4WD)(2シーター・4シーター)
●「CD 16.0kWh」グレードの主な装備
・普通充電リッド
・急速充電リッド
・大型ドアミラー
・上下昇降式スライドドアウィンドウ(4シーターモデルのみ)
・熱線プリントテールゲートガラス
・ヘッドレスト一体型フロントシート
・PVCレザー シート生地
・運転席 シートスライド&リクライニング調整機能
・助手席 リクライニング調整機能
・助手席 前方フラットダウン機構
・運転席/助手席 シートヒーター
・フラット格納機構付きリヤシート(4シーターモデルのみ)
・コンビネーションメーター
・マニュアルエアコン
・運転席/助手席 パワーウィンドウ
・ドアトリム
・フロントドアアームレスト
・運転席/助手席 ドアポケット
・運転席/助手席 サンバイザー(運転席チケットホルダー付き)
・運転席/助手席 乗降グリップ
・運転席/助手席 アシストグリップ
・運転席/助手席 カップホルダー
・フロント/リヤ 乗降ステップ
・ビニール製フロアマット
・ビニール製ラゲッジルームマット
・トラクションコントロール
・高電圧遮断システム
・運転席/助手席 SRSエアバッグ
・ABS
・LEDハイマウントストップランプ
・車両接近通報装置
・フルフロアアンダーカバー
・フロント スタビライザー
・センタードアロック
・寒冷地仕様
・フロント間欠ワイパー&ウォッシャー
・リヤ間欠ワイパー&ウォッシャー
・マッドガード
・大型フットレスト
・グローブボックス
・アクセサリーボックス
・コインホルダー
・ボックス付きフロアコンソール
・ルームランプ
・ラゲッジルームランプ
・ヘッドライトオートカット
・ヘッドライトレベリングスイッチ
・コンフォートフラッシャー
など
三菱・ミニキャブ・ミーブに搭載されるパワーユニットと動力性能
三菱・ミニキャブ・ミーブには1種類のパワーユニットが設定されています。
○電気モーター
・電気モーター型式:Y51型
・電気モーター種類:永久磁石式交流同期電気モーター
○バッテリー:リチウムイオンバッテリー 総電力量=10.5kWh/16.0kWh
◆スペック
・最大出力:41ps
・最大トルク:20kgf・m
・パワーウェイトレシオ:約27.07kg/ps
このパワーユニットはi-MiEVに搭載されているものと同じもので、バッテリーの総電力量と制御が違うだけのものとなります。
i-MiEVのパワースペックである
・最大出力:64ps
・最大トルク:16.3kgf・m
と比べると最大出力にして23ps低く、トルクにして3.7kgf・m高くなっていますが、駆動用電気モーターは全く同じものですので、この違いはバッテリーの総電力量と総電圧の違い、それからEVの制御システムのプログラムの違いからくるものです。
商用モデルということからパワーよりもトルク、航続距離を重視したのでしょう。
電気モーター特有のガツンとくる感覚はだいぶマイルドにされていますので乗りにくさはありませんが、ただやはり、低回転域トルクが高くても絶対的なパワーが41psというのは少々心細さを感じます。
※パワーユニットの評価:★☆☆☆☆(1)
三菱・ミニキャブ・ミーブの走行性能を決める構造
三菱・ミニキャブ・ミーブのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
ミニキャブ・ミーブは、三菱がまだ軽自動車を独自で生産していた頃に発売されていたミニキャブの車体を使って作られているモデルですので、シャシーもミニキャブと同じラダーフレームを用いたものとなります。
ラダーフレームは大型トラックなどにも使われるぐらい強度、剛性、耐久性の高いフレームで、ミニキャブ・ミーブでは加えてワンボックス形状のモノコックボディを載せる形取っているため、強度、剛性、耐久性はさらに向上しています。
商用モデルですのでだからといって走行性能が良くなる、サスペンションがよく動くということにはなりませんが、長年使うことを考えれば丈夫であることに濾したことはありません。
※ボディ剛性の評価:★★★☆☆(3)
三菱・ミニキャブ・ミーブの走りの質を決めるサスペンション構造
ミニキャブ・ミーブのサスペンション構造は
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション: 3リンク式ド・ディオン
となっています。
このモデルのベースとなる6代目ミニキャブではリヤサスペンションに3リンク式コイルリジットサスペンションを採用したのですが、EVシステムを搭載する都合上、デファレンシャルギヤを車体側に固定する必要があったことから通常のコイルリジットサスペンションではなく、デファレンシャルギヤを車体に固定しながらもリジットっすペンション構造を取ることができるド・ディオン式を選択したわけです。
性能としては商用モデル然としたもので、走行性能を語るようなものではありませんが、良いとは言えません。
※サスペンション構造の評価:★★☆☆☆(2)
三菱・ミニキャブ・ミーブのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
ブレーキシステムにおいても軽商用バンとして必要最低限のものしか採用されていません。
まずフロントブレーキですが、こちらは1ポットのフローティングキャリパーを持つディスクブレーキなのですが、酷使されることが想定されていないのでしょうか、ベンチレーテッドディスクではなくソリッドディスクがブレーキローターして使われています。
次にリヤですが、こちらは軽自動車や商用モデルなどで広く使われているタイプのリーディング・トレーリング式のドラムブレーキとなります。
通常の軽商用モデルとしての使われ方であればこれで十分なのかもしれませんが、山間部や高速道路を頻繁に使うような業種やエリアにいる方では、フロントブレーキのフェードによる効き目の甘さを感じることになるのでしょう。
※ブレーキシステムの評価:★★☆☆☆(2)
三菱・ミニキャブ・ミーブの電費性能
EVには燃費性能という概念がありませんのでここでは1kmの距離を走るのにいくらぐらいの費用が掛かるのかところで経済性の良し悪しを見ていきたいと思います。
●10.5kWhモデル
○計算に使用するデータ
・一充電走行距離(JC08モード):100km
・一充電走行距離(実値平均):約85km
・1kWhあたりの電気代(昼間):約30円
・バッテリー総電力量:10.5kWh
○カタログ値計算
30円(電気代1kWh単価)×10.5(kWh)=約315円(フル充電にかかる概算費用)
315円÷100km(一充電走行距離)=約3.15円
・カタログ値:約3.15円/km
○実値計算
30円(電気代1kWh単価)×10.5(kWh)=約315円(フル充電にかかる概算費用)
315円÷85km(一充電走行距離)=約3.7円
・実値:約3.7円/km
●16.0kWhモデル
○計算に使用するデータ
・一充電走行距離(JC08モード):150km
・一充電走行距離(実値平均):約130km
・1kWhあたりの電気代(昼間):約30円
・バッテリー総電力量:16.0kWh
○カタログ値計算
30円(電気代1kWh単価)×16(kWh)=約480円(フル充電にかかる概算費用)
480円÷150km(一充電走行距離)=約3.2円
・カタログ値:約3.2円/km
○実値計算
30円(電気代1kWh単価)×16(kWh)=約480円(フル充電にかかる概算費用)
480円÷130km(一充電走行距離)=約3.69円
・実値:3.69円/km
※参考値(ガソリン単価:137円)
・燃費性能10km/L:約13.7円
・燃費性能15km/L:約9.13円
・燃費性能20km/L:約6.85円
・燃費性能25km/L:約5.48円(プリウス、アクア実燃費相当)
・燃費性能30km/L:約4.5円
EVがどれだけ経済性に優れているのかがよくわかります。
三菱・ミニキャブ・ミーブのライバルモデル比較
三菱・ミニキャブ・ミーブのライバルとなるのは三菱・ミニキャブ・バン
三菱のミニキャブ・ミーブは世界でたった1車種となるEVの軽商用バンであることから、ライバルとなるモデルは存在しません。
そこでここでは現在のミニキャブ・バンのガソリンエンジンモデルと比較してみたいと思います。
現行型ミニキャブ・バンはスズキのエブリィ・バンのOEM供給モデルでNAエンジンモデルとターボエンジンモデルがあります。
ここでは経済性に優れたNAエンジンモデルと比較してみたいと思います。
●三菱・ミニキャブ・ミーブの概要
・カテゴリー:軽ワンボックスバン 電気自動車
・車格:軽商用モデル
・エンジン排気量:---
・パワーユニット形式:Y51型 永久磁石式交流同期電気モーター
・比較対象グレード:「CD 16.0kWh」グレード
●三菱・ミニキャブ・バンの概要
・カテゴリー:軽ワンボックスバン
・車格:軽商用モデル
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:R06A型
・比較対象グレード:「G」グレード
三菱・ミニキャブ・ミーブと三菱・ミニキャブ・バンのパワースペック比較
●三菱・ミニキャブ・ミーブ
・最大出力:41ps
・最大トルク:20kgf・m
●三菱・ミニキャブ・バン
・最大出力:49ps/5,700rpm
・最大トルク:6.3kgf・m/3,500rpm
※パワースペック比較結果
最大出力はガソリンエンジンモデルのミニキャブ・バンにわずかに届きませんが、最大トルクは雲泥の差が生まれました。
電気モーターのとくる特性がなせる業です。
これに魅了されてガソリンエンジンモデルではなく、EVのミニキャブ・ミーブを購入する方も多いのではないでしょうか。
三菱・ミニキャブ・ミーブと三菱・ミニキャブ・バンの燃費性能比較
ここでは1kmの距離を走るのにどれだけの費用が掛かるかを比較してみたいと思います。
●三菱・ミニキャブ・ミーブ
※1kWhあたりの電気代:約30円
・カタログ値(一充電走行距離=150km):約3.2円/km
・実値(一充電走行距離=約130km):3.69円/km
●三菱・ミニキャブ・バン
※ガソリン単価:137円
・カタログ値(JC08モード燃費=17.0km/L):約8.05円/km
・実値(実燃費:約13.0km/L):約10.5円/km
※燃費性能比較結果
経済性はEVにはかないません。
三菱・ミニキャブ・ミーブと三菱・ミニキャブ・バンの販売価格帯比較
ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。
●三菱・ミニキャブ・ミーブ
約180万円~約220万円
●三菱・ミニキャブ・バン
約99万円~約160万円
※販売価格帯比較結果
EVとガソリンエンジンモデルの販売価格を比較すること自体がナンセンスなのですがこれでもEVは安くなった方です。
ただ、ガソリンエンジンモデルの燃料費がEVの倍以上かかることを考えたら長い目で見たらEVのミニキャブ・ミーブの方が安上がりなのかもしれません。
まとめ
現在のところ、国産自動車メーカーでEVを量産モデルとして商品化しているのはこのミニキャブ・ミーブを発売している三菱自動車とその親会社の日産のみとなっていますが、その中でもいち早くEVを量産化したのは三菱自動車です。
海外ではテスラモーターズなどが最先端のEVを作っていますが日本国内では三菱自動車がそういった立場に置かれているといってもいいでしょう。
その三菱が作った軽商用モデル型のEVですからEVとしての完成度は非常に高く、充電スポットの不自由さを考えなければ、商用モデルとしてはかなりおすすめできる車だと思います。
業務用としてだけではなく、セカンドカーとして購入しても面白いかもしれません。
※総合評価:★★★☆☆(3)