アウトドアスポーツに興味を持つ方が非常に少ないのに、オフロード走行を強いられる環境もほとんどないのにどういうわけか人気となっている「クロスオーバーSUV」…実際のところは既存オンロードモデルを流用して作られた「なんちゃってクロスオーバーSUV」が多数ですが、その人気傾向は登録車だけでなく軽自動車の世界にも波及しています。
軽自動車でクロスオーバーSUVといえば、スズキのハスラーが大人気となっていますが、そのハスラーの対抗すべきモデルとして発売されたのが三菱のeKクロスです。
このeKクロスを取り上げたウェブサイトなどを見ると大抵が低燃費装備のハイブリッドシステムや高速道路同一車線運転支援技術のMI-PILOT…といったことばかりが話題にされていますが、ここではeKクロスを1台のクロスオーバーSUVとしてみて、それに対する評価、検証をする形にしていきたいと思います。
※ご注意
ここでは三菱・eKクロスの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。
目次
三菱・eKクロスはeKシリーズのクロスオーバーSUV
三菱・eKクロスはeKワゴンの新しい派生モデル
eKクロスは三菱のeKシリーズに属するモデルとして発売されているモデルですが、これまでのeKシリーズを見ると基本モデルとなるeKワゴンの他に必ずドレスアップモデルなどといったは派生モデルが併売されていました。
初代モデルでは、スポーティードレスアップモデルの「eKスポーツ」、女性向けのクラシカルドレスアップモデルの「eKクラッシィ」、「なんちゃってクロスオーバーSUV」の「eKアクティブ」の3車種、2代目モデルでは、スポーティードレスアップモデルの「eKスポーツ」のみ、3代目モデルも名称は変更されていますが、同様にスポーティードレスアップモデルの「eKカスタム」が発売されていました。
そして4代目モデルとなるeKワゴンが2019年3月に発売されたのですが、その時には前モデルやそれよりももっと前のモデルに必ず存在したスポーティードレスアップモデルは発売されませんでした。
もしかしたら後から追加販売されるかもしれませんがこの記事を書いている2019年10月の時点ではありません。
スポーティードレスアップモデルはありませんでしたがそのかわりのeKワゴンの派生モデルとして発売されたのがこのeKクロスであるわけです。
それまではオンロードでのスポーティードレスアップモデルを発売してきましたが今回は「流行」というものを踏まえてオンもオフもいけるアウトドアスポーツをするための車であるクロスオーバーSUVとして発売されました。
eKクロスも当然ながらNMKVモデル
eKクロスは、同時に発売された軽トールワゴンのeKワゴンをベースにして作られた、いわゆる「なんちゃってクロスオーバーSUV」ですので、基本的な部分はeKワゴンと全く同じです…というよりほとんど同じといっていいでしょう。
ということはこのモデルも当然ながら三菱オリジナルのモデルではなくNMKVによって企画、開発、設計がされたOEM供給モデルということになります。
NMKVとは資金はあるが軽自動車を作る技術や生産ラインを持たない日産と技術や生産ラインはあるが開発資金がない三菱(当時は独立してた企業同士だった)がお金を出し合って設立した合弁会社で、軽乗用車の開発や設計などだけを行う自動車メーカーとして機能している企業です。
企画や開発、設計などだけを行う自動車メーカーであって、生産ラインのような設備や部品供給といった機能は持っていないことからその部分は既にたくさんの軽自動車を作ってきて実績のある三菱に委託する形で生産するという流れを持ちます。
車体を見るとすべての部分に三菱の部品が使われいるので一見すると三菱の軽自動車のように見えますが、実際にはNMKVから生産委託を受けた三菱が軽自動車を作っているだけで、本来のその車の製造元はあくまでも「NMKV」であって、三菱がこのモデルをeKクロスとして販売しているのは、NMKVからOEM供給を受けているという形になります。
日産にはeKクロス相当のモデルがない
NMKVからOEM供給をうけてeKシリーズを発売するようになったのは2013年に発売されたB11W型からということになりますが、その当時はNMKVからOEM供給を受けて軽自動車を販売する日産においてもeKシリーズと同じラインナップを持っていました。
三菱でeKワゴンと発売されていたものを日産では「デイズ」の標準モデルとして、三菱でeKカスタムとして販売されていたものを日産で「デイズ」の中の「ハイウェイスターモデル」として販売する形を持っていたわけです。
しかし今回はちょっと違うようで、2019年に発売された2代目デイズには三菱でeKクロスとして発売している軽クロスオーバーSUVモデルがないのです。
そのかわりといっては何ですが、逆にデイズには前モデル同様にスポーティードレスアップモデルの「ハイウェイスターモデル」と女性向けモデルの「ボレロ」が用意されています。
多分、軽自動車に対する考え方が違うのだと思いますが、これまでなかったことだったのでちょっと不思議に思いました。
eKワゴンとeKクロスの違い
eKクロスはeKワゴンベースのクロスオーバーSUVとして作られているモデルです。
ここで両車の違いを見ておきましょう。
・エンジンバリエーション:eKクロス=NAエンジンとターボエンジン eKワゴン=NAエンジンのみ
・ハイブリッドシステム:eKクロス=簡易型ハイブリッドシステム eKワゴン=なし
・トランスミッション:CVT(共通)
・サスペンション構造:マクファーソンストラット+トーションビーム(4WDはコイルリジット)(共通)
・ブレーキ構造:前=ディスクブレーキ 後=ドラムブレーキ(共通)
・ボディ形状:共通
・最低地上高:155mm(共通)
・フロントバンパー:専用パーツ
・フロントグリル:専用パーツ
・ヘッドライトアッセンブリー:専用パーツ
・フェンダーアーチカバー:eKクロスのみ
・サイドマッドガード:eKクロスのみ
・ルーフエンドスポイラー:eKクロス=ロングタイプ eKワゴン=ショートタイプ
・リヤバンパー:専用パーツ
・リヤコンビネーションランプ:専用パーツ
・タイヤ/ホイールサイズ:eKクロス=155/65R14と165/55R15 eKワゴン=155/65R14のみ
・グリップコントロール:共通
・スタンバイ4WDシステム:共通
・MI-PILOT:共通
など
こうしてみると見た目とターボエンジンの採用、ハイブリッドシステムの採用以外は全く同じであることがわかります。
この中で特に気になるのが最低地上高の数字です。
通常はクロスオーバーSUVとなると標準モデルよりもロードクリアランスを確保するためにサスペンションセットで車高をある程度持ちあげるものですが、eKクロスの場合はeKワゴンと同じ最低地上高となっています。
これらのことを見てもeKクロスは、クロスオーバーSUVではなく、見た目だけの「なんちゃってクロスオーバーSUV」であるということになります。
三菱・eKクロスのこれまでの出来事(2019年10月時点)
●初代モデル B34W系型 2019年3月発売
三菱・eKクロスが属するカテゴリー
●車格:軽自動車
●用途・目的:生活車
●車両カテゴリー:軽クロスオーバーSUV
●エンジン排気量クラス:軽自動車クラス
三菱・eKクロスのオーナー層
●年齢層:18歳ぐらいから50歳ぐらいまで 特になし
●性別:男性
●経済力:高収入層(新車購入)、大衆層(新車購入)、低収入層(中古車購入)
●その他:クロスオーバーSUVとして購入する方はほとんどいない
三菱・eKクロスの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・ガソリンエンジン+ハイブリッドシステム
●トランスミッション
・CVT
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FF
・スタンバイ式4WD
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:FF=トーションビーム(コイルスプリング) 4WD=リンク式コイルリジット(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ソリッドディスク(一部グレードでベンチレーテッドディスク) ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
●ベースモデル
・eKワゴン
●兄弟車(2019年7月時点)
・あり…eKワゴン、日産・デイズ
三菱・eKクロスのモデル構成とグレード構成
eKクロスにはパワーユニット違いのモデルが2つあります。
NAエンジンモデル
このモデルには2つのグレードが用意されています。
・M グレード(2WD・4WD)
・G グレード(2WD・4WD)
●「M」グレードの主な装備
・LEDヘッドライト
・LEDポジションランプ
・LEDストップランプ付リヤコンビネーションランプ
・テールゲートガーニッシュ
・サイドシルガーニッシュ
・ルーフスポイラー
・LEDサイドターンランプ付電動格納式カラードヒーテッドドアミラー
・UVカット フロントウインドシールドガラス
・UVカット フロントドアガラス
・UVカット機能付プライバシー リヤドアガラス
・UVカット機能付プライバシー リヤウインドウガラス
・LEDハイマウントストップランプ
・バータイプ アウタードアハンドル
・ドアサッシュブラックアウト
・ブラック ホイールアーチ
・リヤデフォッガー
・リヤワイパー&ウォッシャー
・ルーフアンテナ
・カラー液晶マルチインフォメーションディスプレイ
・ウレタン ステアリングホイール
・ステアリングスイッチ
・コンビメーター
・チルトステアリング調整機能
・ブラック インテリアカラー
・運転席 カードホルダー付バニティミラー
・車内色 インナードアハンドル
・ラゲッジアンダーボックス
・ラゲッジフロアボード
・運転席側 アンダートレイ
・センター&助手席側 アッパーオープントレイ
・センタートレイ
・センターロアボックス
・助手席側 アッパーグローブボックス
・助手席側 ロアグローブボックス
・助手席側 コンビニエントフック
・運転席/助手席 ドリンクホルダー
・ボトルホルダー
・DC12Vアクセサリーソケット
・マップランプ
・ラゲッジルームランプ
・ドアトリム 生地インサート
・6スピーカー
・TVアンテナ
・GPSアンテナ
・ピアノブラック 7インチ用ナビパネル
・ファブリック シート生地
・フロントシート 助手席側シートバックポケット
・フロントシート 助手席側シートアンダートレイ
・リヤシート スライドレバー
・シートスライド機構付ベンチタイプ フロントシート
・運転席ハイトアジャスター調整機能
・フロントシート センターアームレスト、
・運転席/助手席 シートヒーター
・フロントシート 高さ調節機能付ヘッドレスト
・左右一体スライド機構/分割可倒/フォールド/リクライニング機能付リヤシート
・リヤシート 高さ調節機能付ヘッドレスト
・イモビライザー
・e-Assist:衝突被害軽減ブレーキシステム
・e-Assist:踏み間違い衝突防止アシスト
・e-Assist:車線逸脱警報システム
・e-Assist:車線逸脱防止支援機能
・e-Assist:オートマチックハイビーム
・オートライトコントロール
・ソナー
・運転席&助手席SRSエアバッグ
・SRSサイドエアバッグ
・SRSカーテンエアバッグ
・エマージェンシーストップシグナルシステム
・アクティブスタビリティコントロール
・フロントスタビライザー
・ヒルスタートアシスト
・ブレーキアシスト
・EBD付ABS
・キーレスエントリーシステム
・マニュアルエアコン
・ウェルカムライト
・カミングホームライト
・155/65R14サイズ タイヤ
・14インチ×4.5J スチールホイール
・樹脂製フルホイールキャップ
・電動パワーステアリング機構
・グリップコントロール
・センタードアロック
・リヤヒーターダクト
・オートストップ&ゴー(AS&G)
・寒冷地仕様
・減速エネルギー回生システム
・ヘッドライトオートカット
・コンフォートフラッシャー
・全席パワーウインドウ
・車速感応可変間欠フロントワイパー&ウォッシャー
・リバース連動機能付間欠リヤワイパー&ウォッシャー
など
●「G」グレードの主な装備
「M」グレードの装備に加えて
・フロントフォグランプ風タウンランプ
・シルバーアクセント付リヤバンパー
・IRカット/99%UVカット フロントドアガラス
・本革巻ステアリングホイール
・メッキアクセント付セレクターノブ
・助手席 バニティミラー
・メッキ インナードアハンドル
・キーレスオペレーションシステム&エンジンスイッチ
・タッチパネル式フルオートエアコン
・165/55R15サイズ タイヤ
・15インチ×4.5J アルミホイール
が追加されています。
ターボエンジンモデル
このモデルはモノグレードとなります。
・T グレード(2WD・4WD)
●「T」グレードの主な装備
・LEDヘッドライト
・LEDポジションランプ
・LEDストップランプ付リヤコンビネーションランプ
・フロントフォグランプ風タウンランプ
・シルバーアクセント付リヤバンパー
・テールゲートガーニッシュ
・サイドシルガーニッシュ
・ルーフスポイラー
・LEDサイドターンランプ付電動格納式カラードヒーテッドドアミラー
・UVカット フロントウインドシールドガラス
・IRカット/99%UVカット フロントドアガラス
・UVカット機能付プライバシー リヤドアガラス
・UVカット機能付プライバシー リヤウインドウガラス
・LEDハイマウントストップランプ
・バータイプ アウタードアハンドル
・ドアサッシュブラックアウト
・ブラック ホイールアーチ
・リヤデフォッガー
・リヤワイパー&ウォッシャー
・ルーフアンテナ
・カラー液晶マルチインフォメーションディスプレイ
・本革巻ステアリングホイール
・メッキアクセント付セレクターノブ
・ステアリングスイッチ
・コンビメーター
・チルトステアリング調整機能
・ブラック インテリアカラー
・運転席 カードホルダー付バニティミラー
・助手席 バニティミラー
・メッキ インナードアハンドル
・ラゲッジアンダーボックス
・ラゲッジフロアボード
・運転席側 アンダートレイ
・センター&助手席側 アッパーオープントレイ
・センタートレイ
・センターロアボックス
・助手席側 アッパーグローブボックス
・助手席側 ロアグローブボックス
・助手席側 コンビニエントフック
・運転席/助手席 ドリンクホルダー
・ボトルホルダー
・DC12Vアクセサリーソケット
・マップランプ
・ラゲッジルームランプ
・ドアトリム 生地インサート
・6スピーカー
・TVアンテナ
・GPSアンテナ
・ピアノブラック 7インチ用ナビパネル
・ファブリック シート生地
・フロントシート 助手席側シートバックポケット
・フロントシート 助手席側シートアンダートレイ
・リヤシート スライドレバー
・シートスライド機構付ベンチタイプ フロントシート
・運転席ハイトアジャスター調整機能
・フロントシート センターアームレスト、
・運転席/助手席 シートヒーター
・フロントシート 高さ調節機能付ヘッドレスト
・左右一体スライド機構/分割可倒/フォールド/リクライニング機能付リヤシート
・リヤシート 高さ調節機能付ヘッドレスト
・イモビライザー
・e-Assist:衝突被害軽減ブレーキシステム
・e-Assist:踏み間違い衝突防止アシスト
・e-Assist:車線逸脱警報システム
・e-Assist:車線逸脱防止支援機能
・e-Assist:オートマチックハイビーム
・オートライトコントロール
・ソナー
・運転席&助手席SRSエアバッグ
・SRSサイドエアバッグ
・SRSカーテンエアバッグ
・エマージェンシーストップシグナルシステム
・アクティブスタビリティコントロール
・フロントスタビライザー
・ヒルスタートアシスト
・ブレーキアシスト
・EBD付ABS
・キーレスオペレーションシステム&エンジンスイッチ
・タッチパネル式フルオートエアコン
・ウェルカムライト
・カミングホームライト
・165/55R15サイズ タイヤ
・15インチ×4.5J アルミホイール
・電動パワーステアリング機構
・グリップコントロール
・センタードアロック
・リヤヒーターダクト
・オートストップ&ゴー(AS&G)
・寒冷地仕様
・減速エネルギー回生システム
・ヘッドライトオートカット
・コンフォートフラッシャー
・全席パワーウインドウ
・車速感応可変間欠フロントワイパー&ウォッシャー
・リバース連動機能付間欠リヤワイパー&ウォッシャー
など
三菱・eKクロスに搭載されるパワーユニットと動力性能
三菱・eKクロスには2種類のパワーユニットが設定されています。
●NAエンジン+ハイブリッドシステム
○エンジン
・エンジン型式:BR06DE型
・エンジン排気量:659cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:3気筒
・バルブ構造:DOHC12バルブ
・燃料供給:ポート噴射
○電気モーター
・電気モーター形式:SM21型
○ハイブリッドシステム:マイルドハイブリッド(簡易型ハイブリッドシステム)
○ハイブリッドバッテリー:リチウムイオンバッテリー
◆スペック
○エンジン
・最大出力:52ps/6,400rpm
・最大トルク:6.1kgf・m/3,600rpm
○電気モーター
・最大出力:2.7ps
・最大トルク:4.1kgf・m
○システムパワー:52ps
・1リッターあたりのパワー:約78ps
・パワーウェイトレシオ:約17.5kg/ps
このパワーユニットは、「M」グレード、「G」グレードに採用されているもので、NAエンジンに簡易型ハイブリッドシステムを組み合わせたものです。
仕組みとしては、スズキのS-エネチャージと似たようなもので、エコモーターと呼ばれる電気モーターでエンジンに負担がかかる加速時に短時間のアシストを行います。
発電は通常のエンジンによる発電の他に減速時の回生エネルギーの回収によっても行われており、その電気を専用のリチウムイオンバッテリーに蓄えて、アイドリングストップ時の電子機器への電力供給に使うといった流れになります。
ですので、電気モーターでのアシストが加わってもシステムパワーが高まることもありません。
エンジン自体はNMKVが開発して三菱で製造したルノーのコンパクトカー向けエンジンである「BR08型」のエンジン排気量を小さくして660cc規格にあうように改良したもので、可変バルブタイミング機構としてMIVECが採用されています。
パワースペック的には通常の軽自動車のNAエンジンモデルのものと同等レベルで、特にこれといって特徴のあるものではありません。
かなりのパワーの無さを感じます。
※パワーユニットの評価:★★☆☆☆(2)
●ターボエンジン+ハイブリッドシステム
○エンジン
・エンジン型式:BR06DET型
・エンジン排気量:659cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:3気筒
・バルブ構造:DOHC12バルブ
・過給器:ターボチャージャー
・燃料供給:ポート噴射
○電気モーター
・電気モーター形式:SM21型
○ハイブリッドシステム:マイルドハイブリッド(簡易型ハイブリッドシステム)
○ハイブリッドバッテリー:リチウムイオンバッテリー
◆スペック
○エンジン
・最大出力:64ps/5,600rpm
・最大トルク:10.2kgf・m/2,400rpm~4,000rpm
○電気モーター
・最大出力:2.7ps
・最大トルク:4.1kgf・m
○システムパワー:64ps
・1リッターあたりのパワー:約96.9ps
・パワーウェイトレシオ:約14.3kg/ps
このパワーユニットはNAエンジンを搭載したハイブリッドモデルのエンジンをターボチャージ化させたものです。
ハイブリッドシステムの仕組みなどはNAエンジン搭載のものと全く同じですがエンジンのパワーが64psあるのでシステムパワーも64psとなります。
最低でもこれくらいパワーがないとなんちゃってクロスオーバーSUVでも走りを楽しむことはできないでしょう。
※パワーユニットの評価:★★★☆☆(3)
三菱・eKクロスに採用されているトランスミッション
●CVT
eKクロスにはトランスミッションの選択肢はなく、すべてのモデルにおいてCVTが搭載されています。
このCVTは3代目eKワゴンや初代eKスペースに採用されていた副変速機付CVTとは違うもので、新たに開発された副変速機のないCVTとなります。
これは副変速機付CVTがあまりにも故障が多かったからで、それを回避するために構造が単純な副変速機なしで新たに開発したものの採用となったわけです。
そのため、これといった特徴のないごく普通のCVTになってしまい、走行性能的にも全くメリットを見いだせません。
ただ、これは構造というより制御によるものなのですが、このCVTには「Dステップ変速」機能というものが採用されています。
これはシフトアップの際に途中途中で変速比を固定して、まるで有段式オートマチックトランスミッションのように疑似有段変速を行う制御で、CVT特有のモッサリとした加速をドライバーに気がつかせないようにするものです。
実際にはCVTのプーリーの幅を意図的に固定する制御を行っているだけで、ベルト滑りが解消されたわけではなく、意図的に変速比を固定した時にわずかにベルトの滑りを感じます。
どうせ疑似有段変速を取り入れるのであれば、最初からオートマチックトランスミッションを搭載した方が良いのはないかと思ってしまいますが、このeKクロスはあくまでもeKワゴンの派生モデルであることからこのモデルだけオートマチックトランスミッションにすることもできなかったのでしょう。
一応はこのモデルもクロスオーバーSUVなのですからCVTは使ってほしくありませんでした。
ただ走るだけ…そういった感じのCVTです。
※トランスミッションの評価:★☆☆☆☆(1)
三菱・eKクロスの走行性能を決める構造
三菱・eKクロスのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
eKクロスにはベースモデルであるeKワゴンと全く同じルノー日産グループのCMF-Aプラットフォームが採用されています。
このプラットフォームはルノー日産がアジア向けコンパクトカーに採用するために作ったもので、それを流用した軽自動車規格に合うサイズにあわせて作られました。
もともとはアジア向けのコンパクトカー用のプラットフォームですので、強度・剛性はかなり高くなっており、軽自動車特有のボディ全体がサスペンションになってしまうことはありません。
この部分だけはクロスオーバーSUVとして褒められる部分でしょう。
※ボディ剛性の評価:★★★★☆(4)
三菱・eKクロスの走りの質を決めるサスペンション構造
サスペンション構造もベースモデルのeKワゴンと全く同じ…
・フロント:マクファーソンストラット
・リヤ:FFモデル=トーションビーム 4WDモデ=トルクアーム式3リンクリジットサスペンション
が採用されています。
既存モデルを流用した「なんちゃってクロスオーバーSUV」では、通常ベースモデルに対してクロスオーバーSUVらしさをアピールするために車高をわずかに高めるようなサスペンションセットを組み合わせることが多いのですが、このeKクロスではeKワゴンと何一つ変わらないサスペンションセットが採用されていて、ロードクリアランスを多く確保されるようなこともされていません…eKワゴンそのものです。
eKクロスは仮にも「なんちゃってクロスオーバーSUV」ですのでFFの2WDモデルを買う人はいないと思いますが、2WDモデルのサスペンションは最悪です。
フロントのマクファーソンストラットは実績もあり、独立懸架で性能もいいので良いのですが、今回のeKシリーズから採用になったトーションビームは全く以て使い物になりません。
オンロードをまっすぐ走っていても常にビームが暴れてタイヤがしっかりと路面を捕らえない、左右方向の強度が弱いので常にリヤタイヤがフラフラする、コーナーリングでも踏ん張ってくれずすぐにASCが介入してくる。
クロスオーバーSUVで求められる程度のオフロード走行でもわずかな段差でもタイヤのどこかがすぐに浮いてしまうほどのストロークの無さを感じます。
対して4WDモデルに採用されているコイルリジットはオンロードでもオフロードでも意外としっかりと路面を捕らえてくれて、直進安定性も優れています。
前モデルのeKシリーズでは2WDモデルも4WDモデルもどちらもコイルリジットを採用していており、そのままでもよかったのにトーションビームを採用してしまったのか、非常にもったいないと思います。
※サスペンション構造の評価:2WD=★☆☆☆☆(1) 4WD=★★☆☆☆(2)
三菱・eKクロスのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
eKクロスは基本的に…
・フロント:1ポットフローティングキャリパー ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング式ドラムブレーキ
といったブレーキシステムが採用されているのですが、フロントブレーキのディスクブレーキがグレードによって「ソリッドディスク」と「ベンチレーテッドディスク」で使い分けられています。
ソリッドディスクが標準装備となるのですが、ターボエンジンモデルとなる「T」グレードとメーカーオプションの「先進快適パッケージ」を注文した場合のみベンチレーテッドディスクが与えられるようになっています。
どちらがいいかというとやはり熱に対する耐久性が高いベンチレーテッドディスクがいいに決まっているわけですが、ソリッドディスクでも峠道を攻めるとか、オフロードをガンガン走るといったことをしない限り、それなりの制動力を保ち続けることはできます。
※ブレーキシステムの評価:★☆☆☆☆(1)
三菱・eKクロスに搭載されている4WDシステム
eKクロスは「なんちゃってクロスオーバーSUV」です。
そのモデルにビスカスカップリングを使ったスタンバイ4WDを採用するのはおかしいでしょう。
スタンバイ4WDは別名「生活四駆」「なんちゃって4WD」などとよばれるもので、フロントタイヤが滑りやすい路面で空転してリヤタイヤとの回転差が激しくなった時だけリヤタイヤにもトラクションが与えられて一時だけ4WD状態になるといった簡易的なものです。
通常はオンロードモデルの4WDモデルに採用されるものですが、それをある程度のオフロード走行性能が求められるクロスオーバーSUVに採用するのはちょっとどうかと思います。
※4WDシステムの評価:☆☆☆☆☆(0)
三菱・eKクロスの燃費性能
三菱・eKクロスのカタログ燃費と実燃費
●NAエンジン搭載モデル(2WD)
・カタログ燃費(WLTCモード):最大21.2km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・市街地):最大16.9km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・郊外):最大23.0km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・高速道路):最大22.6km/L
・実燃費:約21km/L
※燃費性能の評価:★★★★☆(4)
●NAエンジン搭載モデル(4WD)
・カタログ燃費(WLTCモード):最大18.8km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・市街地):最大15.9km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・郊外):最大20.3km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・高速道路):最大19.3km/L
・実燃費:約16km/L
※燃費性能の評価:★★★★☆(4)
●ターボエンジン搭載モデル(2WD)
・カタログ燃費(WLTCモード):最大19.2km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・市街地):最大16.0km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・郊外):最大20.6km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・高速道路):最大20.1km/L
・実燃費:約18km/L
※燃費性能の評価:★★★★☆(4)
●ターボエンジン搭載モデル(4WD)
・カタログ燃費(WLTCモード):最大16.8km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・市街地):最大14.3km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・郊外):最大17.8km/L
・カタログ燃費(WLTCモード・高速道路):最大17.4km/L
・実燃費:約15km/L
※燃費性能の評価:★★★★☆(4)
全モデル、ハイブリッドモデルといっても簡易型ハイブリッドシステムですので大幅な燃費性能の向上が見られるわけではありませんが、軽自動車でこれだけに実燃費なら納得ではないでしょうか。
三菱・eKクロスに採用されている低燃費装備
●全モデル
・ハイブリッドシステム(簡易型ハイブリッドシステム)
・可変バルブタイミング機構(MIVEC)
・CVT
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
・アイドリングストップ機構
三菱・eKクロスのライバルモデル比較
三菱・eKクロスのライバルとなるのはスズキ・ハスラー
eKクロスは、軽クロスオーバーSUV(実は「なんちゃってクロスオーバーSUV」ですが)として作られているモデルですので、ライバルは軽自動車界にクロスオーバーSUVブームを持ちこんだスズキのハスラー以外にありません。
スズキのハスラーは2014年にワゴンRをベースにして作られた軽クロスオーバーSUVで、2019年10月時点でもそのモデルが発売されています。
モデルバリエーションは、NAエンジンモデル、NAエンジン+簡易型ハイブリッドモデル、ターボエンジン+簡易型ハイブリッドモデルの3つです。
ここではその中から同じ構造をもつ「ターボエンジン+簡易型ハイブリッドモデル」同士で比較してみたいと思います。
●三菱・eKクロスの概要
・カテゴリー:軽クロスオーバーSUV
・車格:軽自動車
・エンジン排気量:約0.66リッター
・パワーユニット形式:BR06DET型+SM21型 簡易型ハイブリッドシステム
・比較対象グレード:「T」グレード
●スズキ・ハスラーの概要
・カテゴリー:軽クロスオーバーSUV
・車格:軽自動車
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:R06A型+WA04A型 簡易型ハイブリッドシステム
・比較対象グレード:「Jターボ」グレード
三菱・eKクロスとスズキ・ハスラーのパワースペック比較
●三菱・eKクロス
・システムパワー:64ps
●スズキ・ハスラー
・システムパワー:64ps
※パワースペック比較結果
両車とも軽自動車でターボエンジンモデルとなっているためどちらも自主規制値である64psまで出してきています。
パワー的はどちらも同じレベルといっていいでしょう。
三菱・eKクロスとスズキ・ハスラーの燃費性能比較
●三菱・eKクロス
・カタログ燃費(JC08モード):最大25.2km/L
・実燃費:約18km/L
●スズキ・ハスラー
・カタログ燃費(JC08モード・WLTCモード):最大27.8km/L
・実燃費:約20km/L
※燃費性能比較結果
カタログ燃費も実燃費もわずかにハスラーの方がよくなっていますが、その差はごくわずかですのでほぼ同じといっていいと思います。
三菱・eKクロスとスズキ・ハスラーの販売価格帯比較
ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。
●三菱・eKクロス
約144万円~約180万円
●スズキ・ハスラー
約112万円~約178万円
※販売価格帯比較結果
後発のeKクロスの方がわずかに高いですがこちらもわずかな違いしかありません。
ちなみにハスラーで約112万円で売られているモデルは、NAエンジンを搭載した最廉価グレードとなり、簡易型ハイブリッドシステムも採用されていないものです。
まとめ
軽自動車とは言え、一応はクロスオーバーSUVとして作り発売しているわけですからもう少しクロスオーバーSUVを意識したつくりにしても良かったような気がします。
パワーユニットは仕方がないにしてもトランスミッションやサスペンション構造、4WDシステムはもっと考えたつくりにできたはずです。
例えば、トランスミッションはオートマチックトランスミッションやマニュアルトランスミッション、サスペンションは全モデルコイルリジットサスペンション、4WDシステムはセンターデフ付の本当の意味でのフルタイム4WDシステムにするといった具合です。
これで販売価格が多少高くなってもクロスオーバーSUVを欲しがっている人ならきっと文句は出ないはずです。
前モデルのeKカスタムの代わりといってもeKクロスは、「なんちゃって」でもクロスオーバーSUVなのですからオンロードだけを狙った車ではないことをもっと意識する必要があると思います。
※総合評価:★★☆☆☆(2)