マツダが今でも軽視する軽自動車、特に商用モデルはその最たるものですが、市場の動向を見てどうしても作らざるを得なくなったことからしぶしぶ販売し始めたのがこのマツダ・スクラム・バンです。
お察しの通り、OEM供給モデルでマツダのオリジナルモデルではありません。

ここではそんなマツダ・スクラム・バンがどういう車なのか、軽自動車としてどれくらいの性能を持っているのかを検証してみたいと思います。

※ご注意
ここではマツダ・スクラム・バンの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。

目次

マツダ・スクラム・バンはスズキ・エブリイ・バンのOEM供給モデル

マツダがはじめて自動車関連の商品を発売したのは、マツダがまだ「東洋工業株式会社」と呼ばれていた1930年代の時でした。
トラックのラダーフレームを用いて作った三輪トラック、いわゆるオート三輪と呼ばれるもので、太平洋戦争が始まるまで作られていました。
その後は軍に工場を抑えられてしまったため、何も作れませんでしたが、戦後になってオート三輪の再販から初めてとなる4輪トラックを作るようになりました。

こういった歴史を持つ企業はだいたいその後に軽自動車を作り始め、そしてのちに登録車を作り始めることとなり、最終的には三菱自動車のようにそのまま軽自動車と登録車の併売を続けるところ、ダイハツのように軽自動車だけを作るところに分かれるところと違う方向性を持つようになるものですが、このマツダはそのどちらでもない「軽自動車を途中で捨てて登録車だけを作る」といった方向性を取ったのです。

その考え方は現在までそのまま受け継がれており、1970年代中盤あたりまで軽自動車を作った後は2代目キャロルやAZ-ワゴンなどを販売しても中身はスズキのもの、あるいはスズキのOEM供給モデルということでマツダオリジナルモデルではなく、景気の良い時にいたずらにオートザムAZ-1という軽スポーツモデルを作りましたがそれも一種の「企画モノ」で終わってしまっています。

この時の1台として導入されたのがこのスクラムシリーズの商用バンモデルであるスクラム・バンで、このモデルの初代モデルからスズキのエブリイ・バンのOEM供給モデルとして販売されています。

マツダ・スクラム・バンも兄弟モデルがたくさん

これはワゴンモデルのスクラム・ワゴンも同様なのですが、スクラム・バンには最近では珍しい兄弟モデルがたくさんあります。

これは登録車をメインとしている自動車メーカーがそれまで細々とでも軽自動車の自社生産をしていたものを更なるコスト削減をするためにOEM供給モデルに頼る方針に切り替えるという手段を取るようになったからで、それらの企業が軽自動車をメインとするダイハツとスズキにOEM供給を求めたことから同じモデルが名称違いでたくさん発売されるという状況になってしまったわけです。

マツダは現状ではトヨタグループの一員です。
となると自然と同じトヨタグループの一員であり、完全子会社であるダイハツからOEM供給を受けるべきなのですが、スクラム・バンの現行モデルが発売されたのは2015年のことでその時はトヨタとマツダは今ほどの強いつながりはなかったのです。
そこで2代目キャロルの時代から付き合いのあるスズキからのOEM供給を受ける形となって、現在のモデルもスズキのエブリイ・バンのOEM供給モデルということになりました。

ちなみに、その後スズキもトヨタグループの一員となったことからトヨタグループの自動車メーカーからのOEM供給という形になり、一応は「めでたしめでたし」となったのです。

実はこのスズキからエブリイ・バンのOEM供給を受けている自動車メーカーはマツダだけではありません。
とうじはまだトヨタグループではなく、どちらかというと日産派だったことから日産や今では日産グループの企業となった三菱自動車にもOEM供給を行っており・・・

・日産:NV150クリッパー(ワゴンモデルはNV150クリッパーリオ)
・三菱:ミニキャブ・バン(ワゴンモデルはタウンボックス)

といった名称で販売されています。

これでベースモデルとなるスズキのモデルを加えて・・・

・スズキ・エブリイ・バン
・マツダ・スクラム・バン
・日産・NV150クリッパー
・三菱・ミニキャブ・バン

と4兄弟構成となったのです。

マツダ・スクラム・バンとスズキ・エブリイ・バンの違い

この両車においても、エンブレムとステッカーが違うだけで車体の作りは全く同じというバッジエンジニアリングによってスクラム・バンがもたらされています。

違うのは販売面だけで、モデル構成とグレード構成、そしてわずかな標準装備の違いがあります

モデル構成の違いは、エブリイ・バンでは・・・

●ルーフ高
・標準ルーフ
・ハイルーフ

●エンジンバリエーション
・NAエンジン
・ターボエンジン

●4WDシステム
・パートタイム4WD
・スタンバイ4WD

となりますが、スクラム・バンでは・・・

●ルーフ高
・ハイルーフ

●エンジンバリエーション
・NAエンジン

●4WDシステム
・パートタイム4WD

と選択肢がありません。

それからトランスミッションの設定も種類としてはエブリイ・バンと同じ・・・

・5速マニュアルトランスミッション
・4速オートマチックトランスミッション
・4速オート・ギヤ・シフト

の3種類がありますが、スクラム・バンではグレードごとに選択肢が限られるようになっています。

次にグレード構成ですが、エブリイ・バンでは・・・

・「GA」グレード
・「PA」グレード
・「PC」グレード
・「JOIN」グレード
・「JOINターボ」グレード

と5グレードが用意されていますが、スクラム・バンでは・・・

・「PA」グレード
・「PAスペシャル」グレード
・「PC」グレード
・「PCスペシャル」グレード
・「BUSTER(バスター)」グレード

と同じ数のグレードとなりますが・・・

・「PA」グレード:エブリイ・バンの「PA」グレード相当
・「PAスペシャル」グレード:エブリイ・バンの「PA」グレード「デュアルカメラブレーキサポート」オプション装着モデル相当
・「PC」グレード:エブリイ・バンの「PC」グレード相当
・「PCスペシャル」グレード:エブリイ・バンの「PC」グレード「デュアルカメラブレーキサポート」オプション装着モデル相当
・「BUSTER(バスター)」グレード:エブリイ・バンの「JOIN」グレード相当

とエブリイ・バンの最廉価グレードとなる「GA」グレードとターボエンジンモデルの「JOINターボ」グレードを除いた3つのグレードをメーカーオプションとなっている「デュアルカメラブレーキサポート」を組み合わせてそれをグレード化して5グレードとしている形を取っています。

更に標準装備においても多少の違いがあります。

マツダ・スクラム・バンのこれまでの出来事(2019年11月現在)

●初代モデル DG41/DH41/DG51/DH51系型 1989年6月発売

※スズキ・エブリイ・バンのOEM供給モデル時代

・1990年3月 660ccエンジンの採用 「オートザム・スクラム・バン」へ改名
・1990年6月 「スタンドオフ」の追加

●2代目モデル DL51/DM51系型 1991年10月発売

※スズキ・エブリイ・バンのOEM供給モデル時代

・1993年2月 一部改良
・1995年6月 一部改良
・1997年4月 マイナーチェンジ 「スクラム・バン」へ改名

●3代目モデル DG52V//DH52V/DG62V系型 1999年1月発売

※スズキ・エブリイ・バンのOEM供給モデル時代

・2000年5月 一部改良
・2001年9月 一部改良 K6A型エンジンの採用 デザインの小変更

●4代目モデル DG64V系型 2005年9月発売

※スズキ・エブリイ・バンのOEM供給モデル時代

・2007年7月 一部改良 デザインの小変更
・2010年5月 一部改良 デザインの小変更 オートマチックトランスミッションの改良
・2013年4月 一部改良

●5代目モデル DG17V系型 2015年3月発売

※スズキ・エブリイ・バンのOEM供給モデル時代

・2015年12月 一部改良 先進安全装備の改良 「PAスペシャル」「PCスペシャル」グレードの追加
・2017年5月 一部改良 グレード構成の変更
・2019年7月 一部改良 先進安全装備の改良

マツダ・スクラム・バンが属するカテゴリー

●車格:軽商用車
●用途・目的:業務用 生活車
●車両カテゴリー:軽ワンボックスバン
●エンジン排気量クラス:軽自動車クラス

マツダ・スクラム・バンのオーナー層

●年齢層:特になし
●性別:特になし
●経済力:大衆層(新車購入)低収入層(中古車購入)
●その他:法人・個人問わず、主に商用目的として購入される

マツダ・スクラム・バンの車体の構成・選択肢

●パワーユニット

・ガソリンエンジン

●トランスミッション

・5速マニュアルトランスミッション
・4速オートマチックトランスミッション
・5速セミオートマチックトランスミッション

●エンジン・ドライブトレーンレイアウト

・FR
・パートタイム4WD

●サスペンション構造

・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:I.T.L「アイソレーテッド・トレーリング・リンク」(コイルスプリング)

●ブレーキシステム

・フロント:ソリッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ

●ベースモデル

・あり・・・スズキ・エブリイ・バン

●兄弟車

・あり・・・スズキ・エブリイ・バン、日産・NV100クリッパー、三菱・ミニキャブ・バン

マツダ・スクラム・バンのモデル構成とグレード構成

スクラム・バンは単一モデル構成となっています。

標準モデル

このモデルには5つのグレードが用意されています。

・PA グレード(2WD・4WD)(5速マニュアルトランスミッション・5速オート・ギヤ・シフト)
・PAスペシャル グレード(2WD)(4速オートマチックトランスミッション)
・PC グレード(2WD・4WD)(5速マニュアルトランスミッション)
・PCスペシャル グレード(2WD・4WD)(4速オートマチックトランスミッション)
・BUSTER(バスター) グレード(2WD・4WD)(4速オートマチックトランスミッション)

●「PA」グレードの主な装備

・軽量衝撃吸収ボディ
・歩行者傷害軽減ボディ
・前席 頭部衝撃軽減構造インテリア
・頸部衝撃緩和フロントシート
・サイドインパクトバー
・運転席/助手席 SRSエアバッグシステム
・ブレーキペダル後退抑制機構
・エンジンクラッチスタートシステム(マニュアルトランスミッションモデルのみ)
・4輪アンチロック・ブレーキ・システム
・電子制御制動力配分システム
・シート一体式フロント ヘッドレスト
・ヒルホールドコントロール(5速オート・ギヤ・シフトモデルのみ)
・LEDハイマウントストップランプ
・間欠式&ミスト付フロントワイパー
・リアワイパー&ウォッシャー
・熱線プリント式 リアウインドーデフォッガー
・マルチリフレクターハロゲンヘッドランプ
・UVカット機能付熱線吸収グリーン フロントガラス
・UVカット機能付熱線吸収グリーン フロントドアガラス
・熱線吸収グリーン リアドアガラス
・熱線吸収グリーン リアクォーターガラス
・熱線吸収グリーン バックドアガラス
・ブラック 手動ピボット式ドアミラー
・ブラック アウタードアハンドル
・フロント マッドフラップ
・両側 スライドドア
・燃料残量警告灯
・エンジンオイル交換お知らせ機能
・ビニールレザー製ラゲッジカーペット
・ウレタン ステアリングホイール
・運転席/助手席 サンバイザー
・インパネ アクセサリーソケット
・バックドアインサイドグリップ
・フューエルリッドオープナー
・フロント/ラゲッジルーム 残照式3ポジションルームランプ
・マルチインフォメーションディスプレイ
・エコドライブインジケーター(5速オート・ギヤ・シフトモデルのみ)
・2速発進モードインジケーター(5速オート・ギヤ・シフトモデルのみ)
・シフトポジションインジケーター(5速オート・ギヤ・シフトモデルのみ)
・助手席 アシストグリップ
・運転席/助手席 乗降グリップ
・乗降ステップ
・フットレスト(5速オート・ギヤ・シフトモデルのみ)
・ビニールレザー フロアカーペット
・運転席側/助手席側 インパネドリンクホルダー
・インパネセンターミドルトレイ
・センターコンソールトレイ
・フロント ドアポケット
・運転席 サンバイザーチケットホルダー
・助手席 インパネトレイ
・インパネ・助手席側 ショッピングフック
・グローブボックス
・運転席 インパネアッパーポケット
・運転席 インパネポケット
・灰皿
・インパネボックス
・オーバーヘッドシェルフ
・フロントドア ボトルホルダー
・ユーティリティナット
・フロントシートスライド&リクライニング付セパレートタイプ フロントシート
・助手席 前倒し機構
・ビニールレザー シート生地
・一体可倒式 リアシート
・エアフィルター付マニュアルエアコン
・ピラーアンテナ
・AM/FMラジオ
・電動パワーステアリング
・フロント スタビライザー
・サイドパーキングブレーキ
・145/80R12 80/78N LTサイズ タイヤ
・12インチ×4.00B スチールホイール
・ホイールセンターキャップ
・バックドア連動 パワードアロック

など

●「PAスペシャル」グレードの主な装備

「PA」グレードの装備に加えて・・・

・デュアルセンサーブレーキサポート
・前進時 誤発進抑制機能
・後退時ブレーキサポート
・後退時 誤発進抑制機能
・車線逸脱警報機能
・ふらつき警報機能
・先行車発進お知らせ機能
・ハイビームアシスト機能
・リアパーキングセンサー
・エマージェンシーストップシグナル
・ブレーキアシスト
・ヒルホールドコントロール
・オートライトシステム
・UVカット機能付ダークティンテッド リアドアガラス
・UVカット機能付ダークティンテッド リアクォーターガラス
・UVカット機能付ダークティンテッド バックドアガラス
・タコメーター
・常時照明式自発光式メーター
・エコドライブインジケーター
・シフトポジションインジケーター
・フットレスト
・フットパーキングブレーキ
・電波式キーレスエントリーシステム
・セキュリティアラームシステム

が追加されています。

●「PC」グレードの主な装備

「PA」グレードの装備に加えて・・・

・UVカット機能付ダークティンテッド リアドアガラス
・UVカット機能付ダークティンテッド リアクォーターガラス
・UVカット機能付ダークティンテッド バックドアガラス
・フロント パワーウインドウ
・ファブリック シート生地
・電波式キーレスエントリーシステム
・セキュリティアラームシステム

が追加されています。

●「PCスペシャル」グレードの主な装備

「PC」グレードの装備に加えて・・・

・デュアルセンサーブレーキサポート
・前進時 誤発進抑制機能
・後退時ブレーキサポート
・後退時 誤発進抑制機能
・車線逸脱警報機能
・ふらつき警報機能
・先行車発進お知らせ機能
・ハイビームアシスト機能
・リアパーキングセンサー
・エマージェンシーストップシグナル
・ブレーキアシスト
・ヒルホールドコントロール
・オートライトシステム
・ボディ同色 電動格納リモコン式カラードドアミラー(2WDモデルのみ)
・ボディ同色 ヒーテッド機能電動格納リモコン式カラードドアミラー(4WDモデルのみ)
・タコメーター
・常時照明式自発光式メーター
・エコドライブインジケーター
・シフトポジションインジケーター
・フットレスト
・AM/FMラジオ/CDプレーヤー
・2スピーカー
・フットパーキングブレーキ

が追加されています。

●「BUSTER(バスター)」グレードの主な装備

「PCスペシャル」グレードの装備に加えて・・・

・上下可動式フロント ヘッドレスト
・上下可動式リヤヘッドレスト
・フロント/リア パワーウインドウ
・後席両側 アシストグリップ
・リアドア ボトルホルダー
・助手席 シートバックポケット
・センターアームレスト付分割可倒式リアシート
・フルフラットシート機構
・リアヒーター
・フルホイールキャップ

が追加されています。

マツダ・スクラム・バンに搭載されるパワーユニットと動力性能

マツダ・スクラム・バンには1種類のパワーユニットが設定されています。

・エンジン型式:R06A型
・エンジン排気量:658cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:3気筒
・バルブ構造:DOHC12バルブ
・燃料供給:ポート噴射

◆スペック

・最大出力:49ps/5700rpm
・最大トルク:6.3kgf・m/3500rpm

・1リッターあたりのパワー:約74.2ps
・パワーウェイトレシオ:約17.7kg/ps

このパワーユニットは、スズキの軽自動車の主力エンジンとなるもので、このモデルやOEM供給元モデルのエブリイ・バン以外にも多くのスズキの軽自動車やそのOEM供給モデルに搭載されています。

R06A型のNAエンジンはワゴンRやハスラー、スペーシアなどに採用されていますが、それらに搭載されているものとはパワースペックが違い、このモデルでは52psから49psにパワーダウンされています。

これには燃費性能の向上、低回転域トルク型エンジンとすべく燃調や点火タイミング、バルブタイミングなどが変更されていることによります。
それと可変バルブタイミング機構のVVTが52psのR06A型では吸気側・排気側両方に採用されているのに対してこのモデルのR06A型エンジンでは、吸気側だけに採用されていることも影響しています。

パワー的には、商用モデル向けの実用型エンジンということで動力性能はあまり期待できません。

※パワーユニットの評価:★☆☆☆☆(1)

マツダ・スクラム・バンに採用されているトランスミッション

●5速マニュアルトランスミッション

このトランスミッションは、「PA」グレード、「PC」グレードに設定されています。

乗用モデルではあまり使われなくなったマニュアルトランスミッション、商用モデルでは今でも現役バリバリです。
なぜなら商用モデルでは、経済性・・・要するに燃費性能と機能性が必要になるからです。
燃費性能に優れた自動トランスミッションとしてCVTがよく使われていますが、CVTではエンジン回転数をドライバーが自ら調整することができない、要するに「このスピードではこのエンジン回転数で走りたい」ということが調整できません。

それによって無駄にエンジン回転数を高めて走ることになって無駄なガソリンを消費してしまったり、パワーが必要な時に2000rpm以下に抑えられてしまい思ったような走りができなくなってしまうのです。

それをカバーするために商用モデルのこのスクラム・バンでは、5速のマニュアルトランスミッションを用意しているのです。

構造はいたって普通のもので乾式単板クラッチとシンクロ付きギヤボックスを組み合わせた実用型マニュアルトランスミッションとなり、特にこれといって構造としては問題はないのですが、インパネシフトによる操作性の悪さは最悪です。

※トランスミッションの評価:★★☆☆☆(2)

●4速オートマチックトランスミッション

このトランスミッションは「PAスペシャル」グレード、「PCスペシャル」グレード、「BUSTER」グレードに設定されています。

いわゆるごく普通のオートマチックトランスミッションで、トルクコンバーターとプラネタリーギヤを内蔵したギヤボックスを組み合わせたものを電子制御・油圧作動で機能させているものです。

性能としてもごく普通の「可もなく不可もなし」といった感じですが、インパネシフトがもたらす操作性の悪さは最悪です。

※トランスミッションの評価:★★☆☆☆(2)

●5速セミオートマチックトランスミッション

このトランスミッションは「PA」グレードのみに設定されています。

このトランスミッションはスズキが独自に開発したセミオートマチックトランスミッションで、「AGS(オート・ギヤ・シフト)」と呼ばれているものです。
クラッチペダルがないことから法的には「自動変速装置」扱いとなります。

このトランスミッションは、乾式単板クラッチに5速のギヤボックスを組み合わせたマニュアルトランスミッションを自動化させたようなもので、マニュアルトランスミッションモデルを運転する時にドライバーが左足で行うクラッチ操作、と左腕で行う変速操作を電子制御・油圧作動によって自動的に動かします。

ドライバーはオートマチックトランスミッションやCVTのようにアクセルペダルでスピード調整を行い、ブレーキペダルで減速や停止を行うだけです。

AGSのメリットはオートマチックトランスミッションやCVTのようにトルクコンバーターを使っていないのでパワーロスが少なく、フィーリングもダイレクトになるということ、DCTのような複雑な構造ではないため生産コストが安くできるということです。

確かに走りはオートマチックトランスミッション以上のものを持ちます・・・がしかし変速動作やクラッチミート動作にちょっと癖があるのでそれになれる必要があるでしょう。

重たい荷物を積んで走ってもオートマチックトランスミッションやCVTのようにパワーが無駄になっている感覚にもなりませんし、そこそこスポーティーな走りにも対応できるということでなかなか優れたトランスミッションだと思います。

※トランスミッションの評価:★★★☆☆(3)

マツダ・スクラム・バンの走行性能を決める構造

マツダ・スクラム・バンのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー

耐久性と強度が必要な商用モデル、このスクラム・バンにはラダーフレームをベースとした強靭なシャシーが使われています。

正確にいえばモノコックフレームのフロア面にラダーフレーム形状のメインフレームをくっつけたような形のビルトインラダーフレームと呼ばれるもので、ラダーフレームが持つ強靭性・耐久性とモノコックフレームの静寂性・乗り心地の良さの両方のメリットを兼ね備えているといっていいでしょう。

軽乗用車などに採用されているモノコックフレームより確実に強度、剛性、耐久性は高く、まさにタフさが求められる商用モデルのシャシーにふさわしいものといえます。

※ボディ剛性の評価:★★★☆☆(3)

マツダ・スクラム・バンの走りの質を決めるサスペンション構造

スクラム・バンのサスペンション構造はまさに商用モデルらしいものとなっています。

・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:I.T.L(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)

フロントサスペンションのマクファーソンストラットはもうおなじみですのでいいでしょう。
独立懸架の優れたサスペンション構造です。

リヤサスペンションのI.T.L(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)はスズキの独自のもので一般的な言い方で表すのであれば「コイルリジットサスペンション」といった感じです。

デフケーシングを前から延びる2本の太いトレーリングアームで支え、補助としてデフケーシングの後ろ側にもラテラルロッドで更に支えるといった非常に強度と耐久性のあるサスペンション構造です。

スズキではFFベースの4WDモデルのリヤサスペンション構造としてよく使われていますが、このスクラム・バンはFRレイアウトを持つモデルで2WDでもりやくどうとなることから採用されています。

走行性能は特にこれといっていい部分も悪い部分もありません。
しかし、サスペンション構造自体に強度があるため、直進安定性が優れていてコーナーリング性能も癖がないことから、軽自動車などによく使われている低コストサスペンションのトーションビームより優れたものであるといえます。

※サスペンション構造の評価:★★★☆☆(3)

マツダ・スクラム・バンのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム

スクラム・バンのブレーキシステムは、必要最低限のかなりパフォーマンスに低いものが採用されています。

・フロント:1ポットフローティングキャリパー+ソリッド ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング式 ドラムブレーキ

軽商用車ですので、パワーもなく激しい運転をするわけではないため、これで十分だということなのでしょうが、できればフロントブレーキのブレーキローターはソリッドではなくベンチレーテッドディスクにしてもらいたかったです。

軽商用モデルでも荷物満載で長い下りが続くところを走るとなるとブレーキにもかなり負担がかかり、フェード気味になってしまうことがあるので、その予防策としそうしてもらいたいです。

※ブレーキシステムの評価:★★☆☆☆(2)

マツダ・スクラム・バンに搭載されている4WDシステム

OEM供給元モデルのエブリイ・バンでは一部のモデルにビスカスカップリングを用いたスタンバイ4WDを採用しているようですが、このスクラム・バンではスタンバイ4WDの設定はなく、全モデルでパートタイム4WDが用意されています。

4WDモデルが設定されているのは「PAスペシャル」グレード以外に全てのグレードとなります。
採用されているパートタイム4WDシステムは、電磁クラッチ内蔵のトランスファーを持つもので、インパネにあるスイッチを切り替えることで電磁クラッチの結合と開放を行い、FR状態と4WD状態を作るといった構造を持ちます。
4WD状態にすると完全に前後アクスルが結合しますので、強大なトラクションを得ることができます。
特に深い雪道やオフロードでは有難みを感じることでしょう。
ただ、その反面で路面状態が良い時に4WD状態にしておくとタイトコーナーブレーキング現象が起こり走行不良、やドライブトレーンの故障を引き起こしてしまうため、パートタイム4WDに対する正しい知識とテクニックを必要とします。

※4WDシステムの評価:★★★★☆(4)

マツダ・スクラム・バンの燃費性能

マツダ・スクラム・バンのカタログ燃費と実燃費

●2WDモデル

・カタログ燃費(JC08モード):最大19.4km/L
・実燃費:約16km/L

※燃費性能の評価:★★★★☆(4)

●4WDモデル

・カタログ燃費(JC08モード):最大19.0km/L
・実燃費:約15km/L

※燃費性能の評価:★★★★☆(4)

軽商用モデルでこれくらいの実燃費はかなり優れているといっていいでしょう。
ちなみにどちらも5速オート・ギヤ・シフトモデルでの数字です。

マツダ・スクラム・バンに採用されている低燃費装備

●全モデル

・可変バルブタイミング機構
・電動パワーステアリング機構
・オート・ギヤ・シフト(5速オート・ギヤ・シフトモデルのみ)

マツダ・スクラム・バンのライバルモデル比較

マツダ・スクラム・バンのライバルとなるのはトヨタ・ピクシス・バン

スクラム・バンはスズキのエブリイ・バンのOEM供給モデルで、そのモデルのライバルは昔からダイハツのハイゼット・カーゴと決まっています。
ここではそのハイゼット・カーゴのOEM供給モデルであるトヨタのピクシス・バンをスクラム・バンのライバルモデルとします。

トヨタのピクシス・バンは2011年12月から子会社であるダイハツからの書類上のOEM供給モデルとして、2004年に発売開始された10代目モデルの供給を受けたものです。
バリエーションはNAエンジンモデルとターボエンジンモデルがあります。

ここではNAエンジンモデル同士で比較してみたいと思います。

●マツダ・スクラム・バンの概要

・カテゴリー:軽ワンボックスバン
・車格:軽自動車
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:R06A型
・比較対象グレード:「PA」グレード

●トヨタ・ピクシス・バンの概要

・カテゴリー:軽ワンボックスワゴン
・車格:軽自動車
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:KF-VE型
・比較対象グレード:「スペシャル SA III」グレード

マツダ・スクラム・バンとトヨタ・ピクシス・バンのパワースペック比較

●マツダ・スクラム・バン

・最大出力:49ps/5700rpm
・最大トルク:6.3kgf・m/3500rpm

●トヨタ・ピクシス・バン
・最大出力:46ps/5700rpm
・最大トルク:6.1kgf・m/4000rpm

※パワースペック比較結果

どちらもかなり非力ですが、軽商用モデルのNAエンジンはこんなものです。

マツダ・スクラム・バンとトヨタ・ピクシス・バンの燃費性能比較

●マツダ・スクラム・バン

・カタログ燃費(JC08モード):最大19.4km/L
・実燃費:約16km/L

●トヨタ・ピクシス・バン

・カタログ燃費(JC08モード):最大17.8km/L
・実燃費:約12km/L

※燃費性能比較結果

ピクシス・バンは基本的に2004年のモデルですので、こういったところにどうしても年代の差が出てしまうようです。

マツダ・スクラム・バンとトヨタ・ピクシス・バンの販売価格帯比較

ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。

●マツダ・スクラム・バン

約96万円~約142万円

●トヨタ・ピクシス・バン

約95万円~約153万円

※販売価格帯比較結果

設計が古い割にはトヨタのピクシス・バンは意外と高い価格が付けられていることがわかります。

まとめ

軽商用モデルもほとんどの方がスズキやダイハツ、ホンダなどから発売されているモデルを購入している中で古くから発売されているからといってもあえてOEM供給モデルのマツダ・スクラム・バンを買う人はほとんどいないと思います。

車体の出来は、そもそもがスズキのエブリイ・バンですので、エンジンもトランスミッションもドライブトレーンもそして最近話題の先進安全装備も全てにおいて良い作りがされています。
しかし、それをあえてマツダのディーラーで買う気は起こりません。

※総合評価:★★★☆☆(3)

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