古くから商用車としてなじみの深いライトバン、ここのところは「低燃費」とかなんだとか言って軽ワンボックスバンにそのお株を取られているような形となり需要は落ちてきているようですが、それでも根強い人気を持ちます。
マツダがこのライトバンとして販売しているモデルにファミリア・バンというモデルがあります。
ここではそのマツダ・ファミリア・バンがどういった車なのか、商用車としての性能をどれだけ持っているのかを検証してみたいと思います。
※ご注意
ここではマツダ・ファミリア・バンの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。
目次
3つの形態を持つマツダ・ファミリア・バン
マツダ・ファミリア・バンは、マツダが過去に小型モデルとして発売していたファミリアの商用モデル、ライトバンモデルとして用意されたもので、1963年に発売されたファミリアの初代モデルの時から作られていました。
その後は乗用モデルのセダンやクーペ、更にはハッチバックモデルなどと共に作られ続けていくわけですが、商用モデルということで「乗用モデルと同じタイミングでモデルチェンジをしていたらコストがかかって販売価格が高くなってしまう」といったような、導入コストが販売台数に大きくかかわってくる商用モデルとしてはできれば避けたいことが起こる可能性があったため、1973年に発売された乗用モデルでいうところの3代目モデルと1980年に発売された乗用モデルの5代目モデル、1989年に発売の7代目モデルの時には同時にモデルチェンジされず、マイナーチェンジを行う形で継続販売する形を取りました。
乗用モデルが7代目モデルの時は1985年に発売された乗用モデルの6代目モデルとなる時に作られたものが継続販売となっていたわけですが、1994年に乗用モデルが8代目モデルとなる時にライトバンモデルのファミリア・バンに大きな転機が訪れます。
実はこの頃、マツダでは多チャンネル化の失敗によって引き起こされた経営の悪化から商用モデルの新規開発を順次取りやめることとしており、現にカペラのライトバンモデルであるカペラ・カーゴは1999年に生産終了としましたし、ワンボックスバンのボンゴシリーズも1999年に発売したモデルを最後に2020年まで継続販売するといった形を取る形になりました。
それにならってこのファミリア・バンもモデルとしては継続する形を取りながら、マツダのオリジナルモデルではなく、OEM供給を受ける形でOEM供給モデルを販売することになったのです。
OEM供給元となったのは当時はまだ近しい関係にあった日産です。
日産では1982年からサニーやパルサーのバンモデルの後継モデルとしてADバンというモデルを作っており、それの2代目モデルとなるY10型のOEM供給を1994年から受け、それをファミリア・バンとして販売することになったのです。
この関係は、1999年にADバンがY11型へとモデルチェンジし、2006年にY12型へとモデルチェンジした時まで続けられたのですが、それまでのパートナーであったフォードが2008年にマツダの株式を売却した時からじわじわとマツダに近寄ってきたトヨタと技術供与や業務資本提携を行ったことでマツダが事実上のトヨタグループ傘下に収められたことから(要するにお金に目が眩んで日産派から完全にトヨタ派に鞍替えしたということ)トヨタのライバル企業である日産のOEM供給モデルを販売することができなくなってしまったのです。
そこで新たなるOEM供給モデルとして受け入れたのがダイハツ製造のトヨタ・サクシード・プロボックス兄弟モデルでした。
それが2019年11月現在でのファミリア・バンということになるのですが、現在までにファミリア・バンは・・・
・マツダオリジナルモデル
・日産のADバンのOEM供給モデル
・トヨタのサクシード・プロボックス兄弟モデルのOEM供給モデル
と3つの形態を渡り歩いてきたということになります。
その中でも日産のADバンからトヨタのサクシード・プロボックス兄弟モデルへとOEM供給元を変更したのにはマツダとトヨタのえげつなさを垣間見ることができます。
マツダ・ファミリア・バンとトヨタ・サクシード・プロボックス兄弟モデルとの違い
このモデルも他のマツダの商用モデル、軽自動車同様にOEM供給元モデルとエンブレムやステッカーだけが違うバッジエンジニアリングによって作られています。
マツダはどうやらOEM供給モデルにはお金をかけたくないようです。
ただ販売面に関わる部分はいくつか変更点があります。
まず、モデル構成はハイブリッドモデルの設定はなく、すべてガソリンエンジンモデルとなります。
グレード構成はサクシード・プロボックス兄弟モデル共に4グレード設定となっていますがファミリア・バンでは3グレード構成で・・・
・「DX」グレード:サクシード=「UL」グレード相当 プロボックス=「DXコンフォート」グレード相当
・「VE」グレード:サクシード=「UL-X」グレード相当 プロボックス=「GL」グレード相当
・「GX」グレード:サクシード=「TX」グレード相当 プロボックス=「F」グレード相当
といった形で、サクシード・プロボックス兄弟モデルでの最廉価グレード、サクシード「U」グレード、プロボックス「DX」グレード以外のグレードがグレード名を変えて販売されている形になっています。
装備面ではステアリングホイールの装飾が違ったり、寒冷地仕様車が4WDモデルにおいて標準装備されているといった程度の違いが与えられています。
マツダ・ファミリア・バンのこれまでの出来事(2019年11月現在)
●初代モデル BSAVD/BPAV型 1963年10月発売
※マツダオリジナルモデル時代
・1965年11月 1リッターエンジンモデル「ファミリア1000バン」の追加
●2代目モデル BPBV/BTAV/BTBV/BPCV型 1968年2月発売
※マツダオリジナルモデル時代
・1970年4月 マイナーチェンジ デザインの小変更 エンジン仕様の変更 レシプロエンジンモデルが「ファミリア・プレスト」に改名
・1972年2月 マイナーチェンジ デザインの小変更
・1973年9月 マイナーチェンジ デザインの小変更
●3代目(乗用モデル:4代目)モデル FA4型 1978年6月発売
※マツダオリジナルモデル時代
・1979年4月 マイナーチェンジ デザインの小変更
・1980年6月 マイナーチェンジ デザインの小変更
●4代目(乗用モデル:6代目)モデル BF型 1985年12月発売
※マツダオリジナルモデル時代
・1987年4月 マイナーチェンジ デザインの小変更
・1989年11月 マイナーチェンジ デザインの小変更
●5代目モデル Y10型 1994年月発売
※日産・ADバンのOEM供給モデル時代
・1996年6月 マイナーチェンジ デザインの小変更
●6代目モデル Y11型 1999年6月発売
※日産・ADバンのOEM供給モデル時代
・2000年1月 仕様変更 排ガス規制対策
●7代目モデル Y12型 2007年月発売
※日産・ADバンのOEM供給モデル時代
・2008年12月 一部改良 1.6リッター4WDモデルの追加
・2010年8月 一部改良
・2013年5月 一部改良 CVTの採用 デザインの小変更 1.2リッターエンジンモデルの廃止
・2017年2月 マイナーチェンジ デザインの小変更 先進安全装備の標準装備化
●8代目モデル NCP160M系型 2018年6月発売
※トヨタ・サクシード・プロボックス兄弟モデルのOEM供給モデル時代
・2018年12月 一部改良 Toyota Safety Sense(Toyota Safety Sense C)のグレードアップ
マツダ・ファミリア・バンが属するカテゴリー
●車格:小型商用バン
●用途・目的:業務用、生活車
●車両カテゴリー:ライトバン
●エンジン排気量クラス:1.5リッタークラス
マツダ・ファミリア・バンのオーナー層
●年齢層:特になし
●性別:特になし
●経済力:大衆層(新車購入)、低収入層(中古車購入)
●その他:主に商用目的
マツダ・ファミリア・バンの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・ガソリンエンジン
●トランスミッション
・CVT
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FF
・スタンバイ式4WD
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:トレーリングリンク式リジットサスペンション(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
●ベースモデル
・あり・・・トヨタ・サクシード・プロボックス兄弟モデル
●兄弟車
・あり・・・トヨタ・サクシード・プロボックス兄弟モデル
マツダ・ファミリア・バンのモデル構成とグレード構成
このモデルは単一モデル構成となります。
標準モデル
このモデルには3つのグレードが用意されています。
・DX グレード(2WD・4WD)
・VE グレード(2WD・4WD)
・GX グレード(2WD・4WD)
●「DX」グレードの主な装備
・運転席/助手席 SRSエアバッグシステム
・サイドインパクトバー
・頸部衝撃緩和フロントシート
・4輪アンチロック・ブレーキ・システム
・電子制御制動力配分システム
・ブレーキアシスト
・緊急ブレーキシグナル
・ダイナミック・スタビリティ・コントロールシステム
・トラクション・コントロール・システム
・Toyota Safety Sense(Toyota Safety Sense C):プリクラッシュセーフティ
・Toyota Safety Sense(Toyota Safety Sense C):レーンディパーチャーアラート
・Toyota Safety Sense(Toyota Safety Sense C):オートマチックハイビーム
・先行車発進告知機能
・ドライブスタートコントロール
・一体式ヘッドレスト型フロントシート
・ハイマウントストップランプ
・防眩インナーミラー
・熱線プリント式リアウインドーデフォッガー
・ハロゲンヘッドランプ
・オートライトシステム
・間欠フロントワイパー
・電動リモコン式ドアミラー(2WDモデルのみ)
・ヒーテッド機能付電動格納リモコン式ドアミラー(4WDモデルのみ)
・運転席 パワーウインドウ
・UVカットグリーン フロントガラス
・UVカットグリーン フロントドアガラス
・UVカットグリーン リヤドアガラス
・UVカットグリーン リヤクォーターガラス
・UVカットグリーン バックドアガラス
・エコドライブインジケーター
・シフトポジションインジケーター
・デジタルクロック
・チルトステアリング調整機構
・ルームランプ
・ラゲッジルームランプ
・ドアアームレスト
・助手席/後席 アシストグリップ
・成型ドアトリム
・スカッフプレート
・フューエルリッドオープナー
・12V アクセサリーソケット
・充電用USB端子
・運転席/助手席 サンバイザー
・イルミネーテッドエントリーシステム
・インパネトレイ
・マルチホルダー
・ワイドフリーラック
・センターボックス
・運転席 カップホルダー
・運転席 ロアポケット
・運転席 ドアポケット
・デッキサイドポケット
・助手席 ボトルホルダー付きドアポケット
・助手席/後席 コートフック
・買い物フック
・マルチインフォメーションディスプレイ
・ウレタン 3本スポークステアリングホイール
・インパネテーブル
・センターコンソールトレイ
・センタートレイ
・塩化ビニール ラゲッジデッキ
・スライド&リクライニング機構付 フロントシート
・運転席シートリフター
・シートバック一体可倒式リヤシート
・クリーンエアフィルター付マニュアルエアコン
・2スピーカー
・ピラーアンテナ
・AM/FMラジオ
・電動パワーステアリング機構
・フットパーキングブレーキ
・スタビライザー
・アイドリングストップ機構(2WDモデルのみ)
・155/80R14 88/86N LTサイズ タイヤ
・14インチ×5J スチールホイール
・ホイールセンターキャップ
・スペアタイヤ
・イモビライザー
・バックドア連動パワードアロック
・電波式キーレスエントリーシステム
・寒冷地仕様(4WDモデルのみ)
など
●「VE」グレードの主な装備
「DX」グレードの装備に加えて・・・
・時間調整間欠フロントワイパー
・リヤ間欠ワイパー
・ボディ同色 電動格納式リモコンドアミラー(2WDモデルのみ)
・ボディ同色 ヒーテッド機能付電動格納式リモコンドアミラー(4WDモデルのみ)
・運転席/助手席 パワーウインドウ
・UVカットダークティンテッド リヤドアガラス
・UVカットダークティンテッド リヤクォーターガラス
・UVカットダークティンテッド バックドアガラス
・ボディ同色 アウトサイドドアハンドル
・ボディ同色 バックドアガーニッシュ
・ドアサッシュ ブラックアウト
が追加されています。
●「GX」グレードの主な装備
「VE」グレードの装備に加えて・・・
・上下調整式ヘッドレスト付フロントシート
・ヘッドレスト付シートバック一体可倒クッション引き起こし式リヤシート
・全席 パワーウインドウ
・シルバー加飾 シフトパネル
・メッキ加飾 エアコンセンタールーバーノブ
・メッキ加飾 空調ダイヤル
・メッキ加飾 シフトロッド
・ピアノブラック エアコンサイドルーバーリング
・ニードルパンチ ラゲッジデッキ
・オーディオレス
が追加されています。
マツダ・ファミリア・バンに搭載されるパワーユニットと動力性能
マツダ・ファミリア・バンには2種類のパワーユニットが設定されています。
●1.5リッターNAエンジン(2WD用)
・エンジン型式:1NZ-FE型
・エンジン排気量:1496cc
・エンジン形状:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・燃料供給:ポート噴射
◆スペック
・最大出力:109ps/6000rpm
・最大トルク:13.9kgf・m/4800rpm
・1リッターあたりのパワー:2WDモデル=約72.6ps
・パワーウェイトレシオ:約10.0kg/ps
このパワーユニットは、2WDモデルにのみ採用されているものです。
このエンジンはOEM供給元モデルのサクシード・プロボックス兄弟モデルやトヨタのアリオン・プレミオ兄弟モデル、ヴィッツ、ポルテ・スペイド兄弟モデル、カローラ・アクシオといったモデルに採用されているエンジンと同じもので、いわゆる「トヨタの低価格モデル用実用型エンジン」といえるものです。
パワーを求めたものではなく、生産コストを安くするためのエンジンですのでパワーはありません。
※パワーユニットの評価:★☆☆☆☆(1)
●1.5リッターNAエンジン(4WD用)
・エンジン型式:1NZ-FE型
・エンジン排気量:1496cc
・エンジン形状:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・燃料供給:ポート噴射
◆スペック
・最大出力:103ps/6000rpm
・最大トルク:13.5kgf・m/4400rpm
・1リッターあたりのパワー:約68.6ps
・パワーウェイトレシオ:約10.5kg/ps
このパワーユニットは、4WDモデルに採用されているものですが、エンジン形式としては2WDモデルのものと全く同じです。
ただ、4WDモデルという性質上、雪道や多少のオフロードなど低回転域でのトルクを必要とする走りをすることが想定されるため、最大トルクの発生回転数を低くなるような燃調、バルブタイミング、点火タイミング、圧縮比などが採用されています。
それによって6ps、0.4kgf・mほどダウンしてしまっていますがその分、最大トルクの発生回転数が400rpmほど低くなっています。
どちらにしてもこのエンジンもパワーがありません。
※パワーユニットの評価:★☆☆☆☆(1)
マツダ・ファミリア・バンに採用されているトランスミッション
●CVT
マツダのファミリア・バンでは全モデルで、CVTを採用しています。
このCVTは当然ですがトヨタのもので、その名も「Super CVT-i」と呼ばれているトヨタの廉価モデル用のCVTです。
構造はいたって普通で、2つのプーリーと金属ベルトで構成されたベルト式変速機とトルクコンバーターを組み合わせたものを電子制御、油圧作動で動かしているだけのものです。
当初はベルト滑りがあまりにもひどいということでドライブトレーンに何かと負担がかかる商用モデルには採用を見送っていたのですが、燃費性能の良し悪しが売り上げに大きな影響を与えることを知っているトヨタは強硬策でファミリア・バン(サクシード・プロボックス兄弟モデル)にもCVTを採用してしまったといった感じです。
おかげで全く走らない・・・ベルトが滑ってしまいエンジン回転数が上がるだけで加速がドンくさい、だらだらとメリハリの無い走りしかできない、ダイレクト感がない・・・と悪いことだらけです。
※トランスミッションの評価:☆☆☆☆☆(0)
マツダ・ファミリア・バンの走行性能を決める構造
マツダ・ファミリア・バンのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
ファミリア・バン(サクシード・プロボックス兄弟モデル)のプラットフォームは、トヨタの現行小型モデル用プラットフォームのBプラットフォームとその1つ前の世代の小型モデル用プラットフォームのNBCプラットフォームを繋げた形で作った混合型プラットフォームとなっています。
この2つのプラットフォームはどちらもトヨタの廉価大衆モデル用のプラットフォームで、剛性や強度、耐久性といったことよりもいかに安く作ることができるのかということを最優先に考えて作られているもので、質の低い鋼材を薄く延ばして作られていて、とにかくフニャフニャでそれを二つ組み合わせたといっても剛性の低さは変わりません。
しかし、このモデルを作る際に商用モデルということを強く意識したのか、かなりの補強が入れられていて、あの軟弱プラットフォームを繋げて作ったものとは思えないほどのボディ剛性、強度、耐久性が持たされています。
※ボディ剛性の評価:★★★★☆(4)
マツダ・ファミリア・バンの走りの質を決めるサスペンション構造
ファミリア・バンは商用モデルのライトバンですのでサスペンション構造に何かこだわりがあるとか特別な構造が取り入れられているといったようなことはなく、ごく普通のライトバンらしいものが採用されています。
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:トレーリングリンク式リジットサスペンション
フロントは多くのモデルで使われているおなじみのマクファーソンストラットでそれなりの性能を持ちます。
リヤのトレーリングリンク式リジットサスペンションとは2本のトレーリングアームでFFの場合は車軸を、4WDの場合はホーシングを保持し、その補助としてラテラルロッドが車軸またはホーシングの後ろ側に付けられるといったものです。
非常に強度が高く、多少のオフロード走行でもびくともしないため汎用性が高いサスペンション構造となっています。
荷物の荷重のほとんどがリヤサスペンションにかかるライトバンには非常に適したサスペンション構造です。
リジットサスペンションですので乗り心地は独立懸架と比べると悪く感じますが、走行性能としてはFFモデルでよく使われている低コスト向けサスペンション構造のトーションビームよりははるかに優れています。
まあ、ただあくまでも商用モデルとしての評価ですので、自動車の走行性能としてはまずまずといった感じです。
※サスペンション構造の評価:★☆☆☆☆(1)
マツダ・ファミリア・バンのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
ブレーキ構造も商用モデルらしいものが採用されています。
・フロント:1ポットフローティングキャリパー+ベンチレーテッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
必要最低限のブレーキシステムといった感じですが、特に効き目に問題があるわけはありません。
しかし、ブレーキパッドやブレーキシューの特性なのかブレーキの油圧系統の性能なのかはわかりませんが、主要モデルでよくある「空荷と荷物を積んだ時のブレーキの効き方の違い」が非常に大きいのが気になるところです。
※ブレーキシステムの評価:★★★☆☆(3)
マツダ・ファミリア・バンに搭載されている4WDシステム
このモデルに用意されている4WDモデルにはトヨタの「Vフレックスフルタイム4WD」が採用されています。
この4WDシステムは、トランスファーから後ろ向かって延びるプロペラシャフトとリヤデファレンシャルギヤの間にビスカスカップリングを置き、そのビスカスカップリングの作用を利用して、自動的に2WDと4WDを切り替えながら走るものです。
従って、常に4WD状態で走るのではなく、フロントタイヤの回転数とリヤタイヤの回転数の違いが大きくなった時だけ(フロントタイヤが空転した時だけ)ビスカスカップリングの結合力が高まり4WD状態になるといった形になる完全なる受動型スタンバイ4WDシステムであるということです。
フルタイム4WDなどというと聞こえはいいですが、緊急用の4WDシステム以外の何物でもなく、仕事用の車としては良いかと思いますが、走行性能やトラクション性能を向上させるためのものではないということだけは理解しておきましょう。
※4WDシステムの評価:★☆☆☆☆(1)
マツダ・ファミリア・バンの燃費性能
マツダ・ファミリア・バンのカタログ燃費と実燃費
●2WDモデル
・カタログ燃費(JC08モード):最大19.6km/L
・実燃費:約11km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
●4WDモデル
・カタログ燃費(JC08モード):最大15.8km/L
・実燃費:約8km/L
※燃費性能の評価:★★☆☆☆(2)
特にこれといって特別な低燃費装備が付けられているわけではないのでこれくらいの燃費性能になるのも納得です。
マツダ・ファミリア・バンに採用されている低燃費装備
●2WDモデル
・可変バルブタイミング機構
・CVT
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
・アイドリングストップ機構
●4WDモデル
・可変バルブタイミング機構
・CVT
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
マツダ・ファミリア・バンのライバルモデル比較
マツダ・ファミリア・バンのライバルとなるのは日産・NV150AD
マツダ・ファミリア・バンはトヨタのサクシード・プロボックス兄弟モデルのOEM供給モデルです。
となると、ライバルモデルは日産の車となり、日産のライトバンであるNV150 ADということになるでしょう。
奇しくもNV150 ADは、マツダがトヨタグループの仮メンバーになる前までファミリア・バンとして販売していたモデルであって、それと比較するというのもなんだかおもしろい気がします。
NV150 ADは1.5リッターエンジンを搭載したFFモデルと1.6リッターエンジンを搭載した4WDモデルがありますが、ここでは1.5リッターエンジンモデル同士で比較してみたいと思います。
●マツダ・ファミリア・バンの概要
・カテゴリー:ライトバン
・車格:小型商用バン
・エンジン排気量:約1.5リッター
・エンジン形式:1NZ-FE型
・比較対象グレード:「GX」グレード
●日産・NV150 ADの概要
・カテゴリー:ライトバン
・車格:小型商用バン
・エンジン排気量:約1.5リッター
・エンジン形式:HR15DE型
・比較対象グレード:「VE」グレード
マツダ・ファミリア・バンと日産・NV150ADのパワースペック比較
●マツダ・ファミリア・バン
・最大出力:109ps/6000rpm
・最大トルク:13.9kgf・m/4800rpm
●日産・NV150 AD
・最大出力:111ps/6000rpm
・最大トルク:15.1kgf・m/4000rpm
※パワースペック比較結果
わずかにNV150 ADの方がパワーもトルクも上回っていることになっていますがたった2psと1.2kgf・mですので現実的には同じと見ていいでしょう。
マツダ・ファミリア・バンと日産・NV150ADの燃費性能比較
●マツダ・ファミリア・バン
・カタログ燃費(JC08モード):最大19.6km/L
・実燃費:約11km/L
●日産・NV150 AD
・カタログ燃費(JC08モード):最大17.4km/L
・実燃費:約14km/L
※燃費性能比較結果
カタログ燃費では上回っているが実燃費では下回る・・・といったトヨタの車と燃費性能を比較する時によくあるパターンですが、こちらも実際に走ったらほぼ同じですし、ドライバーの運転技量や走り方次第で大きく変わってくるものです。
マツダ・ファミリア・バンと日産・NV150ADの販売価格帯比較
ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。
●マツダ・ファミリア・バン
約162万円~約190万円
●日産・NV150AD
約158万円~約197万円
※販売価格帯比較結果
性能面において優劣つけがたいものがありますので、価格帯も同じようなものになっても不思議ではありません。
まとめ
マツダは基本的に国内での商売、特に商用モデルでの商売にほとんど興味がないようで、一応は販売しているもののファミリア・バンのような商用モデルで儲けようなどとは思ってはいません。
そういった企業の気持ちがよく出ているようで、このファミリア・バンも買う価値は全くない、どうせ買うなら本家のサクシード・プロボックス兄弟モデルを買った方がいいと思います。
車としてはトヨタの車ですので無難な作りで可もなく不可もなしといった具合ですのでいいのですが、マツダのやる気のなさが気に入りません。
※総合評価:★☆☆☆☆(1)