バルブ景気を大人の時代で過ごした方ならば「マツダのキャロル」と聞けば、「あ~、あのキャロルね」とすぐにピンとくると思います。
その頃のキャロルとは全く違う性格を持つモデルとなってしまいましたが、現在でもキャロルは販売されています。
ここではそのキャロルがどういう車なのか、軽自動車としてどれくらいの性能を持っているのかを検証してみたいと思います。
※ご注意
ここではマツダ・キャロルの自動車としての具体的な性能(動力性能や走行性能など)とこの車を自動車メーカーがどういう風に作り、どういった形で販売しているのかということについてだけ書かれており、個人の好みやセンスによって評価が変わる見た目のエクステリアデザインやインテリアデザイン、使い勝手などには一切触れていません。
目次
マツダ・キャロルもスズキのOEM供給モデル
マツダのキャロルは1962年にマツダの軽自動車、小型モデルとして発売されたモデルです。
発売当初はそこそこの売れ行きを示していましたがライバルモデルの台頭によって、モデル後半はからっきし売れないモデルとなってしまい、1970年に早々に生産終了となってしまいました。
その後しばらくの間は新型モデルが作られることもなく存在しないモデルとなっていましたが、1980年代後半のあの空前の好景気において自動車がバンバン売れるようになったことから、マツダの軽自動車ラインナップを埋める1台として約19年ぶりにキャロルが再販されるようになりました。
そのモデルはとにかくよく売れました。
特にその見た目から、当時急増中だった若年層女性ドライバーから人気となり、「軽自動車だったらキャロル、コンパクトカーだったらフェスティバ」などといったことを言う女性ドライバーがたくさんいました。
キャロルはこの時点で「女性用モデル」という1つのステータスを手に入れたことになります。
女性ウケが良いことから若年層男性ドライバーが購入するということも多少あって、若年層女性ドライバーだけでなく、若年層男性ドライバーからの需要もあったのですが若年層女性ドライバーほどの人気になりませんでした。
そもそも若年層男性ドライバーがこのモデルを買う理由は女性ウケがいいからであって、あくまでも見た目を重視したもので、中身はさておき・・・といいますか車の構造や性能といった部分が全く分からない男性ドライバーだけとなっていました。
では逆に車の構造や性能を知った男性ドライバーが購入しなかった理由はというと、実はこの時代のモデルはマツダオリジナルではなく、90%をスズキの車だったからです。
実はこの時代のAA5PA系型キャロルは当時スズキが生産していた3代目アルトのシャシー、エンジン、トランスミッション、ドライブトレーンなどプラットフォームのほとんどの供給を受けて、それにマツダオリジナルのキャロルのボディを載せたような形で作られていた車で、見た目はキャロルですが中身はスズキのアルトそのものだったのです。
同じような軽自動車を買うのであれば、わざわざマツダのモデルを買う必要もありませんし、アルトにはアルト・ワークスといった純粋なスポーツモデルがあったことから、車を知る男性ドライバーがこのキャロルを買うことがなかったのです。
その後、この2代目モデルはバブル崩壊と共に中古車市場にあふれかえることになりましたが、マツダは同じようなコンセプト・・・要するに女性ウケが良いデザインを持たせた3代目モデルを1995年に発売しましたが、このモデルも2台目同様に、モデルチェンジして新しくなった4代目アルトのプラットフォームを利用して作られたモデルでした。
がしかしこのモデルが発売されたころは急激に景気が悪くなったことから自動車の販売が不振となり、見た目や性能よりも「販売価格の安さ」、「維持費の安さ」、「燃費性能の良さ」が優先されるようになり、ベースモデルといってよいスズキのアルトも保守的な車作りとなっていったことで、このキャロルも同様に保守的な昔ながらの「つまらない」軽自動車になっていったのです。
それが4代目モデルとなるHB12S系型モデルです。
実はこの4代目モデルからはアルトをベースにしたモデルではなく、完全なアルトになった・・・要するにスズキからアルトのOEM供給をうけて「OEM供給モデル」となりました。
この4代目モデルから5代目モデル、6代目モデル、そして2019年11月現在で発売されている7代目モデルに至るまでキャロルはずっとスズキ・アルトのOEM供給モデルとして販売されるようになったのです。
マツダ・キャロルとスズキ・アルトの違い
キャロルとアルトの違いは、自動車メーカーや車種、グレードを表すエンブレムやステッカーなどだけで、キャロルは、アルトのいわゆる「バッジエンジニアリング」によって作られたモデルということになっています。
ですので、車体自体は全く同じということになります
ただ、販売面に関わる部分においては多少の違いがつけられており、モデルの限定やグレード名、トランスミッションの設定、4WDモデルの設定、標準装備内容などと言った点に違いが設けられています。
モデルはアルトでいうところの乗用モデルの標準モデルのみという形になり、スポーツモデルのアルト・ワークスや商用モデルのアルト・バン相当のモデルは販売されていません。
グレードは、基本的なグレード構成とグレード数は同じですがグレード名が・・・
・「GF」グレード:アルトの「F」グレード相当
・「GL」グレード:アルトの「L」グレード相当
・「GS」グレード:アルトの「S」グレード相当
・「GX」グレード:アルトの「X」グレード相当
といった形で変更されています。
トランスミッションは、アルトの「F」グレードでは5速マニュアルトランスミッションとスズキオリジナルのセミオートマチックトランスミッションの5速オートギヤシフトの設定がされていますが、キャロルの「GF」グレード(アルトの「F」グレード相当)では5速マニュアルトランスミッションだけとなります。
4WDモデルはアルトでは全グレードに設定されていますが、キャロルでは最廉価グレードの「GF」グレードと最上級グレードの「GX」グレードには設定がありません、2WDモデルだけとなります。
標準装備内容の違いはインテリアの装飾の違いやオーディオ関連などといったちょっとした部分に違いがあるだけです。
マツダ・キャロルのこれまでの出来事(2019年11月現在)
●初代モデル KPDA型 1962年2月発売
※マツダオリジナルモデル時代
・1962年11月 600ccエンジンモデル「キャロル600」の追加
・1963年某月 4ドアモデルの追加
・1970年某月 生産終了
●2代目モデル AA5PA/AA6PA型 1989年10月発売
※スズキ・アルトの派生モデル時代
※「オートザム・キャロル」時代
・1990年3月 マイナーチェンジ エンジン排気量を660ccに変更
・1991年9月 マイナーチェンジ 5速マニュアルトランスミッションの採用
●3代目モデル AC6P型型 1995年10月発売
※スズキ・アルトの派生モデル時代
※「オートザム・キャロル」時代
・1997年4月 マイナーチェンジ デザインの小変更
●4代目モデル HB12S/22S/23S型 1998年10月発売
・※スズキ・アルトのOEM供給モデル時代
・1999年10月 マイナーチェンジ デザインの小変更 クラッチスタートシステムの採用 「ミレディ-L」モデルの追加
・2000年5月 仕様変更 「FUN2エディション」の追加
・2000年12月 マイナーチェンジ デザインの小変更 エンジンの仕様変更
・2001年5月 仕様変更 グレード構成の変更
・2001年11月 「SXスペシャル」の追加
・2002年4月 一部改良 「ミレディ-L」の廃止
●5代目モデル HB24S型 2004年9月発売
・※スズキ・アルトのOEM供給モデル時代
・2005年7月 「G Special」の追加
・2006年1月 仕様変更 ボディカラーの変更
・2006年7月 仕様変更 ボディカラーの変更 「G II」グレードの追加
・2006年12月 マイナーチェンジ デザインの小変更 ボディカラーの変更
・2008年6月 仕様変更 ボディカラーの変更
●6代目モデル HB25S/35S型 2009年12月発売
・※スズキ・アルトのOEM供給モデル時代
・2010年2月 5速マニュアルトランスミッションモデルの追加
・2010年5月 「GS4」グレードの追加
・2010年11月 仕様変更 ボディカラーの変更
・2012年11月 低燃費モデル「キャロル・エコ」の追加
・2013年3月 一部改良 デザインの小変更 ボディカラーの変更 「キャロル・エコ」に「エネチャージ」「エコクール」の採用
・2013年12月19日 「キャロル・エコ」一部改良 エンジンの仕様変更 ボディカラーの変更
・2014年4月 「キャロル・エコ」へ統合
●7代目モデル HB36S型 2015年1月発売
・※スズキ・アルトのOEM供給モデル時代
・2017年5月 仕様変更 ボディカラーの変更
・2018年12月 一部改良 先進安全装備の改良
マツダ・キャロルが属するカテゴリー
●車格:軽自動車
●用途・目的:生活車
●車両カテゴリー:軽ハッチバックセダン
●エンジン排気量クラス:軽自動車クラス
マツダ・キャロルのオーナー層
●年齢層:40歳ぐらいから80歳ぐらいまで
●性別:特になし
●経済力:高収入層(新車購入)、大衆層(新車購入)、低収入層(新車購入・中古車購入)
●その他:中年齢層は女性に、高齢層は男女に買われる傾向がある
マツダ・キャロルの車体の構成・選択肢
●パワーユニット
・ガソリンエンジン
●トランスミッション
・5速マニュアルトランスミッション
・CVT
●エンジン・ドライブトレーンレイアウト
・FF
・スタンバイ式4WD
●サスペンション構造
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット(コイルスプリング)
・リヤサスペンション:FF=トーションビーム(コイルスプリング) 4WD=コイルリジット(コイルスプリング)
●ブレーキシステム
・フロント:ソリッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
●ベースモデル
・あり・・・スズキ・アルト
●兄弟車
・あり・・・スズキ・アルト
マツダ・キャロルのモデル構成とグレード構成
キャロルは単一モデルとなっています。
標準モデル
このモデルには4つのグレードが用意されています。
・GF グレード(2WD)
・GL グレード(2WD・4WD)
・GS グレード(2WD・4WD)
・GX グレード(2WD)
●「GF」グレードの主な装備
・頭部衝撃軽減構造インテリア
・頸部衝撃緩和フロントシート
・運転席/助手席 SRSエアバッグシステム
・ブレーキペダル後退抑制機構
・フロントシート シート一体式ヘッドレスト
・ダイナミック・スタビリティ・コントロールシステム
・トラクション・コントロール・システム
・エマージェンシーストップシグナル
・4輪アンチロック・ブレーキ・システム
・電子制御制動力配分システム
・ブレーキアシスト
・エンジンクラッチスタートシステム
・ハイマウントストップランプ
・間欠式&ミスト付フロントワイパー
・熱線プリント式リアウインドーデフォッガー
・マルチリフレクターハロゲンヘッドランプ
・UVカット機能付熱線吸収グリーン フロントガラス
・熱線吸収グリーン フロントドアガラス
・熱線吸収グリーン リヤドアガラス
・熱線吸収グリーン バックドアガラス
・フロント ロック機構付パワーウインドウ
・ブラック 手動ピボット式 ドアミラー
・ウレタン ステアリングホイール
・残照式3ポジションフロント ルームランプ
・運転席/助手席サンバイザー
・アクセサリーソケット
・マルチインフォメーションディスプレイ
・助手席 可倒式アシストグリップ
・ブラック インサイドドアハンドル
・ブラック エアコンサイドルーバー
・ブラック エアコンサイドルーバーリング
・センター インパネトレイ
・グローブボックス
・ラゲッジアンダーボックス
・センターロアポケット
・フロント ドアポケット
・フロント/リヤ コンソールドリンクホルダー
・インパネ/助手席シートバック ショッピングフック
・インパネセンターポケット
・ネイビー ファブリックシート生地
・一体可倒式 リアシート
・抗菌処理タイプ/エアフィルター付マニュアルエアコン
・2スピーカー
・AM/FMラジオ/CDプレーヤー
・ピラーアンテナ
・電動パワーステアリング機構
・145/80R13 75Sサイズ タイヤ
・13インチ×4.00B スチールホイール
・樹脂製フルホイールキャップ
・セキュリティアラームシステム
・バックドア連動 パワードアロック
・電波式キーレスエントリーシステム
など
●「GL」グレードの主な装備
「GF」グレードの装備に加えて・・・
・デュアルセンサーブレーキサポート
・前進時 誤発進抑制機能
・後退時ブレーキサポート
・後退時 誤発進抑制機能
・車線逸脱警報機能
・ふらつき警報機能
・先行車発進お知らせ機能
・ハイビームアシスト機能
・リアパーキングセンサー
・オートライトシステム
・UVカット機能付熱線吸収グリーン フロントドアガラス
・運転席オート&挟み込み防止機構/ロック機構付パワーウインドウ
・リアワイパー&ウォッシャー(4WDモデルのみ)
・ステータスインフォメーションランプ
・エネルギーフローインジケーター
・シフトポジションインジケーター
・運転席 シートヒーター
・助手席 シートヒーター(4WDモデルのみ)
・エコクール
・アイドリングストップシステム
・エネチャージ
が追加されています。
●「GS」グレードの主な装備
「GL」グレードの装備に加えて・・・
・リアシート 上下可動式ヘッドレスト
・ディスチャージヘッドランプ
・UVカット機能付ダークティンテッド リヤドアガラス
・UVカット機能付ダークティンテッド バックドアガラス
・ボディ同色 電動格納リモコン式カラードドアミラー
・ヒーテッド機能ドアミラー(4WDモデルのみ)
・リアワイパー&ウォッシャー
・運転席/助手席 バニティミラー
・後席両側 可倒式アシストグリップ
・運転席シートリフター
・オーディオレス
が追加されています。
●「GX」グレードの主な装備
「GS」グレードの装備に加えて・・・
・ボディ同色 LEDサイドターンランプ/オート格納機能付電動格納リモコン式カラードドアミラー
・外気温度計
・チルトステアリング調整機構
・シルバー インサイドドアハンドル
・サテンメッキ エアコンサイドルーバーリング
・サテンメッキ加飾 エアコンセンタールーバー
・抗菌処理タイプ/エアフィルター付フルオートエアコン
・スタビライザー
・165/55R15 75Vサイズ タイヤ
・15インチ×4.5J アルミホイール
・イモビライザー
・アドバンストキーレスエントリー&キーレスプッシュボタンスタートシステム
が追加されています。
マツダ・キャロルに搭載されるパワーユニットと動力性能
マツダ・キャロルには2種類のパワーユニットが設定されています。
●660ccNAエンジン(廉価モデル用)
・エンジン型式:R06A型
・エンジン排気量:658cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:3気筒
・バルブ構造:DOHC12バルブ
・燃料供給:ポート噴射
◆スペック
・最大出力:49ps/6500rpm
・最大トルク:5.9kgf・m/4000rpm
・1リッターあたりのパワー:約74.2ps
・パワーウェイトレシオ:約12.4kg/ps
このエンジンは、最廉価グレードの「GF」グレードのみに採用されているもので、いわゆる廉価モデル用のエンジンとなるものです。
後述する標準モデル用のエンジン、他のスズキの軽自動車に採用されているR06A型エンジンとの違いは可変バルブタイミング機構のVVTが廃止されていることとだけで、低燃費装備であるエネチャージもこのエンジンでは採用されていません。
それによってエンジン単体での生産コストを安くすることができているのですが、パワーで3ps、トルクで0.5kgf・mほど動力性能が低下してしまいました。
52psのNAエンジンでもパワー不足をてきめんに感じるのに更に低いパワーではもはやまともに走れません。
「街乗り専用」のエンジンといえるでしょう。
※パワーユニットの評価:★☆☆☆☆(1)
●660ccNAエンジン(標準モデル用)
・エンジン型式:R06A型
・エンジン排気量:658cc
・シリンダー配列:直列
・シリンダー数:3気筒
・バルブ構造:DOHC12バルブ
・燃料供給:ポート噴射
◆スペック
・最大出力:52ps/6500rpm
・最大トルク:6.4kgf・m/4000rpm
・1リッターあたりのパワー:約78.7ps
・パワーウェイトレシオ:約13.4kg/ps
このエンジンは、「GF」グレード以外のすべてのグレードに採用されているものです。
スズキの軽自動車用エンジンの主力エンジンとなるもので、多くのスズキの軽自動車に採用されています。
このキャロルではエネチャージが採用されているため、スターターモーターの代わりにスターターモーターと発電機を兼ねたISGが搭載されています。
パワースペック的には軽自動車のNAエンジンとしては標準となる数字で、特にパワフルさは感じません。
ごく普通の軽自動車が持つパワーといったところでしょう。
街乗りであれば十分対応できると思います。
※パワーユニットの評価:★☆☆☆☆(1)
マツダ・キャロルに採用されているトランスミッション
●5速マニュアルトランスミッション
キャロルでは最廉価グレードの「GF」グレードをマニュアルトランスミッショングレードとして扱っています。
要するに低価格を実現するためにマニュアルトランスミッションを採用したといった感じで採用されたもので、構造的、性能的にこれといって目立つメリットはありません。
ただ、構造的にはターボエンジンを搭載したスポーツモデル、アルト・ワークスと同じ構造を持ちますので、強度や耐久性は問題ないと思います。
※トランスミッションの評価:★★★★☆(4)
●CVT
「GF」グレード以外のすべてのグレードに採用されているのがこのCVTです。
このCVTは少し前にスズキの標準的なCVTとされていたジャトコ製の副変速機CVTで、アウトプットシャフト上に付けられた2段変速式の副変速機によって幅広い変速幅を持たせたもので、燃費性能の向上に一役買っています。
しかし、そうでなく手も呼称が非常に多いCVTに更に複雑な構造を追加してしまったことからより一層故障を起こす頻度が多くなってしまい、昨今ではそれを嫌ってこの副変速機付CVTを採用しなくなってきました。
現に後発のスペーシアでは普通の副変速機のないタイプのCVTが採用されています。
性能はいたってよくあるCVTのあれです。
アクセルペダルを踏んで加速しようとしてもエンジン回転数ばかりが高まってなかなか加速していかない、そうかと思えばアクセルペダルをパーシャルにしておくとすぐにエンジン回転数がまるで止まってしまったのかと思うぐらい低回転まで落ちてしまう・・・といったひどい状況です。
走りだけを見たら5速マニュアルトランスミッションの方が確実に上です。
※トランスミッションの評価:☆☆☆☆☆(0)
マツダ・キャロルの走行性能を決める構造
マツダ・キャロルのボディ剛性を決めるプラットフォーム・シャシー
キャロルにはスズキの新しいプラットフォーム「HEARTECT」が採用されています。
スズキの軽自動車用のプラットフォーム、シャシーはライバル会社のダイハツのものと比べても「月とスッポン」と言えるぐらいの丈夫なものを使い続けてきましたが、この新しいプラットフォーム技術の「HEARTECT」は更にその上をいく強度、剛性、耐久性を持ちます。
その理由はフロア下に入れられた太いメインフレームがあるからでまるでラダーフレームのような構造を持つからです。
残念ながらキャロルでサスペンション構造がチープなのでこのシャシーの良さを活かしきれていませんが、最大で52ps程度のパワーしか持たないキャロルでは十分といえるぐらいの剛性を持ちます。
※ボディ剛性の評価:★★★★☆(4)
マツダ・キャロルの走りの質を決めるサスペンション構造
キャロルには他のスズキの軽自動車と同じように駆動方式によってリヤサスペンションの構造を変えており・・・
2WDモデルには・・・
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:トーションビーム
4WDモデルには・・・
・フロントサスペンション:マクファーソンストラット
・リヤサスペンション:I.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)
と言った構造を与えています。
フロントサスペンションはどちらもマクファーソンストラットでこちらは性能としても問題ありません。
一方、リヤサスペンションはトーションビームとI.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)と呼ばれるコイルリジットの2種類が用意されていることになっています。
4WDモデルに採用されているI.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)はコイルリジットサスペンションですが、軽自動車としては十分な性能を持っており、サスペンション構造もしっかりしていることから直進安定性もコーナーリングも大衆車レベルでは満足のいくものとなっています。
しかし2WDモデルに採用されているトーションビームは、コスト最優先で設計されたトーションビームという形式もさることながら、乗り心地を確保するためにビーム自体に柔軟性を持たせているため、まっすぐ走ってもいてもフニャフニャ、コーナーリングでもフニャフニャ、更にコーナーリングではリヤタイヤがほとんどグリップしてくれません。
まあ、生活用の軽ベーシックモデルですのでそれでも許されますが、それを超える走りをするとなると途端に悪いところが目立ってきます。
どうせなら全モデル、I.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)にしてもらいたかったです。
※サスペンション構造の評価:★☆☆☆☆(1)
マツダ・キャロルのストッピングパワーを生み出すブレーキシステム
キャロルのブレーキシステムは、まさに軽ベーシックモデルらしい必要最低限ともいえるレベルのチープなものとなります。
・フロント:1ポットフローティングキャリパー+ソリッドディスク ディスクブレーキ
・リヤ:リーディングトレーリング ドラムブレーキ
フロントブレーキは一応、ディスクブレーキとなっていますが、ブレーキローターは一枚の板っぺらのソリッドディスク、放熱性が劣るため、頻繁なブレーキングには向きません。
リアブレーキは効き目重視のドラムブレーキ、こちらも効き目は十分で軽自動車としてみれば妥当な選択なのかもしれません。
キャロルは軽ベーシックモデルですので、過激なブレーキングを必要とするような運転をするわけでもないですし、峠を攻めるような車でもありませんのでこういった最低レベルのブレーキシステムでもよいのかもしれませんが、安全性としてみても性能面から見てもフロントブレーキはぜひともベンチレーテッドディスクにしてもらいたかったです。
過去にこの車で箱根ターンパイクを走ったことがあるのですが、片道・下り1本で速攻、ブレーキペダルがふかふかになり、待避所の使用も考えたぐらいになりました。
速く走るためでなく安全のためにぜひともブレーキのグレードアップを望みます。
※ブレーキシステムの評価:★☆☆☆☆(1)
マツダ・キャロルに搭載されている4WDシステム
キャロルでは最廉価グレードと最上級グレードを除いた「GS」グレード、「GL」グレードのみに4WDモデルの設定があります。
4WDモデルといっても採用されている4WDシステムは、ドライブトレーンにビスカスカップリングを内蔵させたスタンバイ4WDシステムで、フロントタイヤが空転した時だけ4WD状態になるいわゆる「生活四駆」と呼ばれるものです。
オフロードでのトラクション性能の向上もそうですが、オンロードでの走行性能にも全く良い影響はありません。緊急脱出用の4WDシステムといっていいでしょう。
ちなみにこのモデルのベースモデルとなるアルトの4WDモデルで都心に時々降る程度の雪の中(積雪3センチ程度)をノーマルタイヤで走っていた時に水戸街道の四つ木橋に上る坂道を上ることができませんでした。
※4WDシステムの評価:☆☆☆☆☆(0)
マツダ・キャロルの燃費性能
マツダ・キャロルのカタログ燃費と実燃費
●マニュアルトランスミッション+エネチャージ非搭載モデル(「GF」グレード)
・カタログ燃費(JC08モード):最大27.2km/L
・実燃費:約20km/L
※燃費性能の評価:★★★★☆(4)
●CVT+エネチャージ搭載モデル(「GF」グレード以外)
・カタログ燃費(JC08モード):最大37.0km/L
・実燃費:約28km/L
※燃費性能の評価:★★★★☆(4)
軽ベーシックモデルなのでこれくらいに燃費性能を持ってくれていないと困ります。
マツダ・キャロルに採用されている低燃費装備
●「GF」グレード
・電動パワーステアリング機構
・オルタネーター制御
●「GF」グレード以外
・運動エネルギー回生システム(エネチャージ)
・可変バルブタイミング機構
・CVT
・電動パワーステアリング機構
・充電制御
・アイドリングストップ機構
マツダ・キャロルのライバルモデル比較
マツダ・キャロルのライバルとなるのはトヨタ・ピクシス・エポック
マツダ・キャロルはスズキのアルトのOEM供給モデル、スズキのアルトのライバルはダイハツのミラ・イース、ミラ・イースのOEM供給モデルはトヨタのピクシス・エポックということで、ここでは「アルトVSミラ・イース」の同門対決の代理戦争ということでOEM供給モデル同士を比較してみたいと思います。
ピクシス・エポックは、トヨタのライバル企業である日産が軽自動車の販売を始めたことに対応して急遽トヨタも軽自動車を発売しなければならなかった際に、ダイハツのムーヴ・コンテのOEM供給モデルとなるピクシス・スペースに続く第二弾の軽乗用モデルとして2012年に発売されたモデルです。
2019年11月現在で発売されているのは2代目ミラ・イースのOEM供給モデルとなる2代目モデルでNAエンジン搭載の低燃費モデルとして作られています。
●マツダ・キャロルの概要
・カテゴリー:軽ハッチバックセダン
・車格:軽自動車
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:R06A型
・比較対象グレード:「GX」グレード
●トヨタ・ピクシス・エポックの概要
・カテゴリー:軽ハッチバックセダン
・車格:軽自動車
・エンジン排気量:約0.66リッター
・エンジン形式:KF-VE型
・比較対象グレード:「B」グレード
マツダ・キャロルとトヨタ・ピクシス・エポックのパワースペック比較
●マツダ・キャロル
・最大出力:52ps/6500rpm
・最大トルク:6.4kgf・m/4000rpm
●トヨタ・ピクシス・エポック
・最大出力:49ps/6800rpm
・最大トルク:5.8kgf・m/5200rpm
※パワースペック比較結果
パワー的には3ps、0.6kgf・mほどキャロルの方が上回っていますが「どんぐりの背比べ」といったところです。
マツダ・キャロルとトヨタ・ピクシス・エポックの燃費性能比較
●マツダ・キャロル
・カタログ燃費(JC08モード):最大37.0km/L
・実燃費:約28km/L
●トヨタ・ピクシス・エポック
・カタログ燃費(JC08モード):最大34.2km/L
・実燃費:約19km/L
※燃費性能比較結果
カタログ燃費も実燃費もキャロルの圧倒的な勝利です。
マツダ・キャロルとトヨタ・ピクシス・エポックの販売価格帯比較
ここでは全モデルの販売価格で比較してみたいと思います。
●マツダ・キャロル
約86万円~約124万円
●トヨタ・ピクシス・エポック
約85万円~約137万円
※販売価格帯比較結果
どの部分も秀でていないのにキャロルより高い価格設定がされているのはさすがトヨタです。
まとめ
キャロルというと昔の「女性向けモデル」のイメージがどうしてもちらついてしまいますが、現在のキャロルは女性向けではありませんが、低燃費型の軽ベーシックモデルとして優れた性能を持っている車として作られていて、なかなかのものに仕上がっていると思います。
もちろんそれは低燃費型の軽ベーシックモデルとしての評価ですから、動力性能とか走行性能といった部分はある意味で無視した形になっています。
ただ、これは商標的に難しいのかもしれませんが、できればOEM供給元モデルのアルトのように5速オートギヤシフトを搭載したモデルも欲しかったです。
※総合評価:★★★★☆(4)