自動車税は、毎年4月1日付で登録上の「所有者」(信販系の自動車ローンを利用して借金で自動車を購入した方は「使用者」)となっている人間に納税義務があるもので、4月の中旬以降に送られてくる納税通知書を使って各種の方法で納税をするものです。
納税期限はその年の5月31日まで、これの期日までに納税を行わず延滞した形になると延滞期間によってさまざまなペナルティが課せられることになります。
納税期限までにきちんと収める方には関係ない話ですが、ここでは自動車税の納税を延滞した場合どうなってしまうのかを見ていきたいと思います。
目次
自動車税を延滞した時の処理
自動車税を延滞して滞納した形になった場合どういった処理が行われていくのかを見ていきます。
ただここからの流れは管轄となる都道府県・自治体によってまちまちで、必ずしも全国一律ではありません。
細かい違いは自治体などに問い合わせる必要があります。
催促状の送付
納税期限である5月31日を過ぎてからだいたい20日から50日ぐらいの間にまずは郵便で「催促状」が送られてきます。
差出人は、都道府県の税事務所からで、内容的には
「自動車税の納税を忘れていませんか?すでに期限が過ぎていますので、○月○日までにお早目に納税してください。」
といったような、「納税者がついうっかりしていて忘れてしまった」といったスタンスで、それに対して納税を促す形の文面が掛かれた書面が送られてきます。
その書面にはしっかりと「滞納をしつづけると資産の差し押さえなどをすることがある」といった注意書きもありますが、この時点ですぐに差し押さえなどが行われることはまずないでしょう。
延滞期間が延びた場合、自治体によってはこの催促状が複数回送られてくることがあります。
督促状
これは納税期限が過ぎてからだいたい1か月から3か月の間ぐらいに郵便で送られてくるもので、その内容は「催促状」よりもちょっと強い言い方で
「自動車税が滞納になっています。○月○日までに納税しないと差し押さえなどを行う可能性があります」
といった形で、最初からいきなり「差し押さえ」という言葉を出してきます。
この書類が届いた時から少しずつ「差し押さえ」をする可能性が高まってきます。例外はもちろんありますが、この段階でも差し押さえが行われる可能性は低いといえます…とはいっても法律上は可能ですので絶対に行われないとは言い切れません。
ちなみに納税期限を過ぎてから1か月が経過した段階で年2.6%の延滞金が発生することになり、更に1か月を過ぎると年8.9%の延滞金が発生し、それも同時に請求される形になります。
債権回収業者への委託
度重なる「催促状」「督促状」が送られてきているのにも関わらず、納税を行わないと次にこういった文書が送られてきます
「滞納となっているあなたの自動車税の督促業務を債権回収業者へ委託します」
というものです。
これはそれまで税事務所などが直接的に督促業務を行っていたものをこれからは民間の債権回収業者に督促や納税の相談などすべての督促業務を依頼して、その業者が取り仕切るということの宣言です。
これまで督促業務を行ってきた税事務所は、公的機関、お役所であったためそれほど大げさな動きや強制的な言葉を使うことができませんでした。
しかし、この段階で「お役所」から「民間」へ委託されたことによって、言い方はちょっと悪いですが、ダイレクトな方法を取るようになってきます。
だからといって違法貸金業者の取り立てのような暴力的なことをするわけではありませんが、これまで以上に積極的にグイグイと納税を迫ってくるようになります。
この時点になると債権回収業者の人間の自宅訪問、複数回にわたる督促状の送付、納税相談の案内の送付などが行われるようになります。
そして差し押さえなど実力行使は目の前に迫ってきており、差し押さえなどの準備段階に入っているといっていいでしょう。
差し押さえなどを避けたい場合はこの段階が限界です。
差押予告通知書の送付
税事務所、債権回収業者からの督促もむなしくこの段階でも納税が行われないと最後の段階であることを表す最終警告の「差押予告通知書」が送られてきます。
これには
「○月○日まで納税をしないと即刻、資産の差し押さえを行います」
とか
「○月○日までに自動車税を納めないと資産の調査を開始し、それによって差し押さえを行います」
などと書かれています。
まさに最後の警告…というか最後の情けとなります。
この段階で納めないと本当に差し押さえが実行されることになります。
差し押さえの実行
「差押予告通知書」が送られてきてだいたい2週間ぐらいの猶予を取った後に納税が確認できない場合はすぐに差し押さえが始まります。
差し押さえにはいろいろなパターンがありますが、その中からよくあるものについて説明したいと思います。
ちなみに「差し押さえ」は強制執行であるため、裁判所から派遣された、または指定された執行官や警察官が経ちあっていれば、カギを壊してなどして留守宅に入ることも許されます。
●当該車両の差し押さえ
自動車税の滞納で一番多いのがこの当該者車両、自動車の差し押さえです。
まずはとりあえず、滞納者のところへ行き、最後の納税の催促を行います。
そこですぐに滞納額と延滞金をあわせたすべての金額を収めることができれば、それで終わりです。
差し押さえも何もなく、強制執行の執行官は帰っていきます。
もしここでも納税が行わなかった場合は、すぐさま車のタイヤにタイヤロックをかけて「差し押さえ物件」と書かれたプレートが付けられます。
この時点でこの車は差し押さえられた形となり、オーナーといえども自由に扱うことはできません。
タイヤロックを壊したり、プレートを取り外したりした場合はまた更に違う罪で罰せられることになります。
この状態でだいたい10日から2週間の間放置されます。
この猶予期間に納税を行えば、執行官がきてタイヤロックやプレートなどを取り外して差し押さえは解除されます。
しかしその猶予期間を過ぎても納められない場合は、レッカー車やキャリアカーが来て当該車両を持ち去っていき、すぐさま競売にかけられて現金化されます。
その現金の中から滞納分となる金額を差し引いて、残った場合は持ち主に返金されます。
●預金の差し押さえ
これもよく行われる差し押さえ方法なのですが、滞納者名義の預金口座を差し押さえてその預金の中から強制的に滞納分を納税させるというものです。
これで滞納分をすべて納めることができればそれで終わりとなりますが、預金額が足りない場合はその預金口座の預金全額の差し押さえと銀行口座が凍結される形となります。
●給与の差し押さえ
滞納者が勤務する会社の毎月の給与の中から最低限の生活ができる程度の金額を残してそれ以外の金額を滞納分にあてがう形が取られます。
もしひと月分の充当額で足りない場合は、滞納分すべてを収める形になるまで毎月同じようにこの形が取られ、全て納めた状態になった時に差し押さえが解除されます。
この方法を取られると勤務している会社に自動車税を滞納していること、そして差し押さえになったことがバレてしまいます。
キャリアアップを狙っている方にとっては大きな害をもたらすことでしょう。
●自宅にある財産の差し押さえ
これは自動車税の滞納だけではあまり取られない方法ですが、滞納額が大きくなると行われることが多くなります。
この方法もとりあえずは最後の催促ということで、その場で全額納税を求めてきます。
その時に納めることができればそれで終わりですが、納めることができない場合は、裁判所の執行官立ち合いの上で家捜しをはじめ、自宅にある現金、貴金属、宝石、高額調度品、電化製品、コレクションの中から生活に最低限必要な分の現金と電化製品(エアコンや冷蔵庫など)を残して運び出されてしまいます。
現金はそのまま滞納額に充当され、運び出されたものは後日オークションにかけられ現金化されたのちに滞納額に充当されます。
自動車税を延滞している時のペナルティ
自動車税の延滞を続けていくと最終的に差し押さえになることがお分かりになったかと思いますが、それだけが自動車税の延滞に対するペナルティではなく差し押さえになる前の段階でもペナルティとなることがあります。
登録関係の手続きができない
自動車税が滞納状態になっている時には下記のような登録上の手続きができません。
・名義変更
・構造変更
・永久抹消登録
・一抹抹消登録
など
車検を受けることができない
継続車検をうけて、新しい車検証を手にするには自動車重量税、自賠責保険料の他に自動車税が既に納税済みでないといけません。
継続車検を受ける際の必要書類として「自動車税納税証明書」が必要なのはそのためです。
最近では確認が取れれば「自動車税納税証明書」の提出は必要なくなったようですが、それでも当然ですが自動車税の納税が確認できなければ継続車検の手続きができません。
自動車税の延滞で差し押さえにならないために
自動車税の徴収をするのは管轄の都道府県であり、税事務所であるわけですが、そういったいわゆるお役所も鬼ではありません。
小学校の社会の時間の時に習った厳しい「年貢の取り立て」ではあるまいし、そこまで無理矢理税金をむしり取ろうということはしません。
しかし、税金は必ず納めなければならないもので、一部の人だけ「自動車税を納めなくてもいい」などといった例外などありませんので、何とか収めなければならないのも事実です。
税事務所では、納税相談を行っていてなるべく無理のない形で滞納している税金を納めるための相談の門戸を開き、いろいろな納税方法も用意しています。
その中で一番無理がないと思われるのが分割払いです。
税金は現金一括で納めるのが原則となっていて自動車税に関しても同じです。
しかしその金額をまとめて納めることができない場合は、「毎月いくらずつ」という分割払いにしてくれる場合もあります。
残念ながらそういったことに全く対応してくれない都道府県もあるようですが、少なくとも私が住んでいる東京都ではやってくれるそうです。
例えば、2リッターエンジンを搭載した中型ミニバンを持っていて、その車の自動車税(税額は39,500円)の納税が苦しかったとしましょう。
この場合、税事務所に電話を入れて、まとめて納税することが難しいという旨を伝えて、何とか月に1万円ずつなら納めることができるということを言えばきっとその納め方にしてくれるでしょう。
1月目:10,000円
2月目:10,000円
3月目:10,000円
4月目:9,500円
合計:39,500円
といったような形にしてくれると思います。
ここまでしてくれなくても「月に2万円は納められる」とか、「再来月ならまとめて納めることができるから2か月だけ待ってくれ」といった納めることできる方法を伝えるだけで、それなりの対応をしてくれるようになると思います。
ただ冒頭でも申し上げましたとおり、扱うお役所によって対応が違いますのでどこまでしてくれるのかということは断言できません。
しかし、それでも1本電話を入れて現況を伝えるだけきっといい方向に進むと思います。
一番いけないのは、まったく無視をすることです。
催促状や督促状が来ても無視、電話がかかってきても無視、自宅に来ても虫といった形では税金を収めようとする意志もわかりませんし、逆にお役所も意地になって取り立ててやろうという心理状態になってしまうことでしょう。
今納めることが難しいならその旨を伝えるべき、そしてどう見ても絶対に納めることができないというのであれば、車を売却することも考えた方がいいかもしれません。