少なくとも日本国内ではいろいろな税金を納めないと車を買えませんし、いろいろな税金を収めながらでないと公道を走行することができないようになっています。
それが国にとっても収入であり、国会議員のお給料であり、通行料であるわけですが、これらの税金は
・「車を購入する」
・「車を所有する」
・「車を公道で運転する」
ということに対して納税義務が発生するものですので、例えば「買取店で車を売却した」となった場合はそれらの税金を納める必要がなくなるということになるわけです。
自動車に関わる税金の中には一定期間の分を前もって収めているものも含まれているため、このような「売却」や「譲渡」を行った場合にはその前もって納めていた税金はどうなってしまうのでしょうか。
こういったことに関して間違って解釈されがちな問題点を正していきたいと思います。
目次
自動車を売却した時の既に収めた税金の取り扱い
まず1つ目の勘違い…「自動車を買取店や友人などに売却した、新車購入のために下取りに出したなどといった時に既に収めた自動車関連の税金がいくらか戻ってくるかもしれない」と言うのは間違いです。
そもそも車の売却や譲渡、下取りというのはあくまでも金銭の授受を表すだけのことですので、それに対して「税金が戻ってくる」などいったことは一切ありません。
自動車関連の税金が戻ってくる可能性が出るのは、車とお金を交換した時ではなく、それにともなって名義変更をした時となります。
なので…
例
誤:「自動車を売ったから○○税が戻ってくるかもしれない」
正:「自動車を売って名義変更をしたから○○税が戻ってくるかもしれない」
ということになるわけです。
まずこれだけはしっかりと理解していただきたい部分です。
ではここからは
「自分が持っている車を買取店で売却し、それと同時に名義変更を自分から買取店へと変更した」
といったアクションを起こした時にこれまで納めてきた税金がどうなるかを見ていきたいと思います。
自動車を売って名義変更をしたら自動車取得税はどうなる?
自動車取得税は自動車を購入した時に車両価格やオプション品などの合計額に対して課せられる税金です。
納めるタイミングは新車・中古車問わずその車を購入した時で、2019年5月時点ではそれを納めないと新車登録や名義変更などができない仕組みになっています。
この税金は名義変更をしようが、抹消登録をしようが一切還付されることはありません。
納税義務が発生し、その対象となるのは、国民が「自動車を購入して手に入れる」という行動を起こした瞬間だけで、「何年分を前もってまとめて納める」ということではありませんので戻すもの自体がありませんし、名義変更をしたからといって「車を購入して手に入れた」という事実がなくなるわけでもありませんから、還付する義務もされる義務もないのです。
自動車を売って名義変更をしたら自動車重量税はどうなる?
自動車重量税は、新車登録をした時と継続車検の手続きをした際に納めるべき税金で次の継続車検までの分、例えば
・乗用車:新車時は3年分、以降継続車検の時に2年分
・8トン以下の商用車:新車時は2年分、以降継続車検の時に1年分
・8ナンバー車:新車時は2年分、以降継続車検の時に2年分
を新車登録手続きや継続車検手続きをした際に納めます。
この自動車重量税は、その車の名義変更をしたことで還付されることはありません。
そもそも自動車重量税というのは、その車の所有者にかかる税金では、車体に対してかかる税金ですので、名義変更を行って登録上の所有者が変更となっても全く関係ないことなのです。
自動車重量税が還付されるのは、対象となる車体がなくなった時だけ。要するに永久抹消登録手続きを取った時だけで、その車が「自動車」として存在する場合は還付されることはありません。
自動車を売って名義変更をしたら消費税はどうなる?
新車購入にしても中古車購入にしても車を購入した際にほぼ自動的といっていいほど自然に納める形になる消費税ですが、こちらも還付されることはありません。
CDやビデオゲームなどを中古品買取店で売却しても一切還付されることがないのと同じです。
自動車を売って名義変更をしたら自動車税はどうなる?
自動車税はいわゆる「公道の通行料」となるもので、公道を走ることができる状態なっている車に対して課せられるものです。
毎年4月1日付で「所有者」(信販系の自動車ローンで借金をしている場合は「使用者」)となっている人間に納税義務が与えられ、当年の4月1日から3月31分(の通行料)として通常であれば5月31日までにしていの方法で納めることになっています。
「自動車税が還付される」は大ウソ
自動車税は自動車重量税のように車体にかけれらる税金ではなく、「所有者(一部では使用者)」といった人間に対してかけられるものであるため、自動車を売却して名義変更をして年度内に「所有者」が変更になれば、還付するシステムがあってもいいものですが、実は自動車税においても税制上の還付のシステムはありません。
なので、自動車を売却して名義変更をしても自動車税(一部を含む)は戻ってきません。
自動車税はその車の「所有者(使用者)」に対して1年分の納税義務が発生するものですが、ただそれだけではなく、もっと細かく言うと
「当年の4月1日に「所有者(使用者)」になっている人間が1年分の自動車税を納めなければならない」
という形になっていて、例え名義変更をして5月1日に違う人間が新しい「所有者」になったとしも税制上の納税義務はその方にはないのです。
そして、納める自動車税はあくまでも「1年分」であって「12か月分」ではないので、例え自動車税に還付の仕組みがあったとしても月割で還付されるという形にすらならないのです。
税制上は「4月1日に所有者(使用者)となっている人間が1年分の自動車税を納めればいい」ということでしかないということです。
「自動車税が還付される」といわれるようになった理由
自動車税には還付制度がないのにのかからわず、買取店で自動車を売却する際に自動車税の話をすると
「査定額に含まれています」
とか
「月割で計算した金額をご返金させていただきます」
などといったことを言われます。
そして更にインターネットで自動車税の還付のことを検索してみても
「自動車を売却した時に還付されるのは自動車税だけ」
「売却した時に自動車税が還付されます」
「自動車税の還付を受けよう!」
などいった情報サイトの記事やWebサイトをよく見かけます。
「だったらやっぱり自動車税は還付されるのではないか!」
といいたくなると思いますが実はこれらのことは受け取る側の勘違い、情報提供側の無知ゆえのことから生まれる大きな間違いなのです。
これが2つ目の勘違いです。
前項でも言いました通り、自動車税には還付の仕組みはありません。
嘘だと思うなら、名義変更にまつわる自動車税の還付の手続きを、どのお役所に行って、どういった書類を用いて行うかを調べてみてください。
永久抹消登録をした時の自動車税の還付の手続き方法は出てきても売却による名義変更における自動車税の還付の方法は絶対に出てこないはずです。
当たり前です、存在しない手続きなのですから出てくるはずもありません。
しかし、世の中ではあたかも自動車税の還付制度あるかのように扱われているわけですが、それにはいろいろな理由があってそれがどこでどう捻じれてしまったのかわかりませんが間違って解釈されてしまい、皿のそれが広まってしまったことからあたかも自動車税に還付制度があるかのようになってしまったのです。
では1つずつ見てきます。
●買取店でのやり取りで勘違い
まずは買取店で自動車税のことを言うと、「査定額(買取金額)に自動車税の一部が含まれている」といったような言い方をされるということの理由ですが、これはいわゆる商売文句、売り文句です。
1つには、「当店で車を売却すれば還付されるはずのない自動車税が返金されるから得ですよ、だから今売却して下さい」といった金銭的に得をすることを言ってすぐさま売却させようとする買取店側の1つの戦略です。
これはあくまでも戦略であるため、たとえ自動車税の返金制度がこの買取店になくても査定額や買取金額は同じです。
例えば、エアコンを買った時に実際に支払う料金が同じでも
・商品代金90,000円+取り付け工賃10,000円=10万円
とするよりも
・取り付け工賃込みの価格が10万円
と言われた方がお得な気分になるのと同じです。
それからもう1つ、客側からの査定額アップの交渉があった時の切り札的に利用するためです。
客側から
「査定額、もう少し高くならないの?」
としつこく言われた際に
「(実際は余裕があっても)もうギリギリなんですよ…では、自動車税の戻り分もお付けしますのでこれくらいで勘弁して下さい。」
といったようにあたかもギリギリまで上げていて、更に自動車税の一部も返してくれるといった形で、「お客様のことを考えていますよ」と受け取れるように持っていこうとするパターンでも言葉のあやとして使うことがよくあります。
こういったことがインターネットや口コミを介して広まってしまったことで
「買取店で車を売却すると自動車税の一部が返金される」
から
「買取店で車を売却すると自動車税の一部が還付される」
となり
更に「自動車の売却には自動車税の還付制度が適用される」
となってしまったということです。
●Webサイトでの勘違い
これには明確な理由があります。
それはWebサイトに掲載する記事や文章を書く人間に正しい知識がないからです。
インターネット上にある情報サイトやWebサイトというのは、我々のような専門のライターやジャーナリストなどが記事を書くことが思いのほか少なく、安価で仕事をお願いできるいわゆる「素人ライター」に記事を依頼します。
その際、当然ですが知識ないライターはインターネットで検索をして、書きたいテーマに似たようなテーマで書かれているWebサイトを見つけ、その内容に沿って自分なりに文章を書き換えて記事を作ります。
その際にその参考とするWebサイトの記事の内容が間違っていることにも気がつかず、鵜呑みにして記事を書いてしまい、それを業者がそのまま掲載させてしまうのです。
それが繰り返し繰り返し行われることで間違った内容がどんどん広まり、それがあたかも正しい情報であるかのようになってしまうのです。
そういった経緯で広まってしまったのが「売却の際に自動車税の還付を受けることができる」といったことで、前述しました買取店の商売文句から始まった「間違った自動車税の還付制度」が口コミなどでインターネット上に上がり、それ見た素人ライターがそれを信じきって記事を作成したのちに公表される、そしてまたそれを見た素人ライターが信じきって記事を作成したのちに公表される…を繰り返してそれが当たり前のこととして扱われるようになったというわけです。
それともう1つ、実はこういったいい加減なWebサイトにおいて勘違いを拡大さえる要素が含まれています。
それが「還付」という言葉の乱用です。
「還付」とは、国に納めた税金が国民に戻ってくることを指します。
例えば、源泉徴収として前もって納税していた所得税が確定申告をしたことで過剰な納税であることがわかった際にその過剰分となる税金が国から国民に返金される…といったようなことがまさに還付です。
なので仮に買取店で車を売却した時にサービスの一環(実は言葉のあやですが)として自動車税を月割計算してもどすことは「還付」ではなく「返金」というべきなのです。
そもそも自動車の売却時に自動車税は還付されることはないので、名目上買取店から客側の支払われるお金は、「国から国民へ」ではなく、「買取店という一企業から客へ」といった形で流れることになるので「還付」などといったたいそうなことばではなく、あくまでも「返金」なのです。
素人ライターが書いた記事には必ずといっていいほど「自動車を売却すると自動車税の一部が“還付”される」と書かれていることが多いので、読み手も鵜呑みにせず、いくつかのサイトを読むなどして勉強するほうが安心です。