何かを買う=税金が課せられてしまうこの世の中、特にたくさんのお金が動く高額商品である自動車においてはいろいろな税金がかけられています。
もしその税金が安くなる、あるいは納めなくてもいいといわれたらどうでしょうか。
恐らく「なんと良い制度だ」といった形で政府に対する好感度が高まることでしょう。
それも税金を安くしてくれる、納めなくてもいいとする理由が、「エコ目的」ときたらさらに好感度がアップするのではないでしょうか。

そんなことで始められたエコカー減税、実はこの施策に対してちょっとした勘違いをしている方がかなりの数いることをご存じでしょうか。
今回は自動車税とエコカー減税の関係です。

インターネット上にあるアフィリエイト目的のWebサイトなどでよく見かけるのが

「エコカー減税で自動車税が安くなる」
「この車はエコカー減税適合車だから自動車税は免税される」

などという言葉です。
これ、実は真っ赤な嘘です、エコカー減税で自動車税が安くなったり、免除になったりすることはありません。

ではどうしてそういったことが言われるようになったのかを見ていきたいと思います。

エコカー減税

自動車購入・維持に関わる税金

エコカー減税 自動車税 関係
エコカー減税と自動車税の関係を説明する前に個人が自動車を購入し、それを維持していくためにかかる税金を知っておく必要があります。

自動車取得税

自動車取得税は自動車を購入した際に車両価格やオプション品などの合計額に対して課税されるもので、新車のみならず50万円以上の価値がある中古車においても課税されます。

2019年5月時点の税率は

・自家用車(登録車):3%
・自家用車(軽自動車):2%
・営業車:2%

となっています。
この税金は地方税ですので、国ではなくその車を購入した販売店が属する地方自治体、都道府県に対して納める形を取ります。
納税のタイミングは新車登録をする時と中古車の場合は名義変更手続きを行う時となりますが、逆に自動車取得税を納めていない状態では新車登録や名義変更手続きができないようになっています。

ちなみにこの自動車取得税は2019年10月で廃止されています。

自動車重量税

自動車重量税は、対象となる車の車両重量(商用モデルは積載量も含めた車両総重量)に対して掛けられる税金で、すべての車両において課税される国税です。

税額は重量や新車登録からの年月などによって決められており、適用される重量に対して500kgごとにランク分けがされておりそれぞれに税額が決められています。

例えば、身近なところで乗用車の例に挙げてみますと

●新車登録から13年未満

0.5トン以下:4,100円
0.5トンオーバー~1トン:8,200円
1トンオーバー~1.5トン:12,300円
1.5トンオーバー~2トン:16,400円
2トンオーバー~2.5トン:20,500円
2.5トンオーバー~3トン:24,600円

●新車登録から13年~18年未満

0.5トン以下:5,700円
0.5トンオーバー~1トン:11,400円
1トンオーバー~1.5トン:17,100円
1.5トンオーバー~2トン:22,800円
2トンオーバー~2.5トン:28,500円
2.5トンオーバー~3トン:34,200円

●新車登録から18年オーバー
0.5トン以下:6,300円
0.5トンオーバー~1トン:12,600円
1トンオーバー~1.5トン:18,900円
1.5トンオーバー~2トン:25,200円
2トンオーバー~2.5トン:31,500円
2.5トンオーバー~3トン:37,800円

といった形になります。

この金額は年額となるため、通常は新車登録の際は3年分をまとめて、継続車検の時は2年分をまとめてといった形で、次回の継続車検までの期間分を収める形になります。

自動車重量税を収めるタイミングは通常は新車登録時と継続車検の時で、滞納を避けるために自動車重量税を収めないと新車登録や継続車検手続きができないような仕組みとなっています。

自動車税(軽自動車税)

自動車税は公道を走る車両すべてにおいて課税される地方税で、搭載されるエンジンの排気量と新車登録からの経過年数、車両区分などによって税額が決められています。

乗用車の一例を挙げておきます。

●新車登録から13年未満

エンジン排気量1リッター以下:29,500円
エンジン排気量1リッターオーバー~1.5リッター以下:34,500円
エンジン排気量1.5リッターオーバー~2リッター以下:39,500円
エンジン排気量2リッターオーバー~2.5リッター以下:45,000円
エンジン排気量2.5リッターオーバー~3リッター以下:51,000円
エンジン排気量3リッターオーバー~3.5リッター以下:58,000円
エンジン排気量3.5リッターオーバー~4リッター以下:66,500円
エンジン排気量4リッターオーバー~4.5リッター以下:76,500円
エンジン排気量4.5リッターオーバー~6リッター以下:88,000円
エンジン排気量6リッターオーバー~:111000円

●新車登録から13年オーバー

エンジン排気量1リッター以下:33,900円
エンジン排気量1リッターオーバー~1.5リッター以下:39,600円
エンジン排気量1.5リッターオーバー~2リッター以下:45,400円
エンジン排気量2リッターオーバー~2.5リッター以下:51,700円
エンジン排気量2.5リッターオーバー~3リッター以下:58,600円
エンジン排気量3リッターオーバー~3.5リッター以下:66,700円
エンジン排気量3.5リッターオーバー~4リッター以下:76,400円
エンジン排気量4リッターオーバー~4.5リッター以下:87,900円
エンジン排気量4.5リッターオーバー~6リッター以下:101,200円
エンジン排気量6リッターオーバー~:127,600円

上記の税額は年額となっており、毎年4月1日付で所有者となっている方の住所宛に納税通知書が送られてくるのでそれを使って、しかるべきところで納税をします。

滞納をすると他の税金と同じように差し押さえなどの処分が行われることになる一方で、継続車検や名義変更手続きなどの法的な手続きが一切できなくなります。

消費税

自動車を購入する場合においても消費税は課税されます。
税率は通常の商品と同じように8%(2019年5月時点で)となり、2019年の10月からは10%となります。

エコカー減税とはなんだろう

エコカー 減税 自動車税
様々な税金がかけられていますが、そのうち

・自動車取得税(2019年5月時点)
・自動車重量税

に対して減税措置、免税措置を取るのがエコカー減税です。

もともとは2009年に行われた経済危機対策の一環として始められたもので、当時はエコカー減税の他に「エコカー補助金」という、個人が自動車を購入する時にその費用の一部を国が税金の中から工面してくれるという経済対策も同時に行われていました。

エコカー補助金は既定の金額を超えたことで既に終了していますが、エコカー減税に関しては現在も断片的ですが継続されています。

もともとは当時、注目されていた地球環境問題に対する日本のひとつの答えとして、地球環境の破壊をわずかに遅らせることができる車…

・排気ガスを出さない車
・排気ガスの排出量が少ない車
・排気ガスがクリーンな車
・石油の消費が少ない燃費性能が優れている車

などといったものに対して、その車の購入の補助や買い替えの促進を行うためとされていたのですが、一方では商品価値が高かった「エコ」に便乗して、政府の支持率を上げるため、またある自動車メーカーから発売される新型のハイブリッドカーの販売を後押しするために行われたものと噂されています。

2019年5月時点のエコカー減税による各税金の減税額は

・自動車取得税:排ガス基準の達成率、燃費基準の達成率に応じて「20%の減税~免税」
・自動車重量税:排ガス基準の達成率、燃費基準の達成率に応じて「25%の減税~免税」

となっています。

エコカー減税と自動車税は全く関係ない

エコカー減税 自動車税
前項でも取り上げましたとおり、エコカー減税はあくまでも自動車取得税と自動車重量税に対してだけ減税や免税を行うものであって、よく間違われる自動車税には一切影響がありません。

なのにどうして自動車税までエコカー減税の影響があるとされてしまっているのでしょうか。
おそらく一部のアフィリエイトサイトなどで知識のない方が間違って覚えたことを書いてしまったり、間違った知識で書かれていたWebサイトを参考に文章を書いたりすることで情報がゆがんでしまったり、そもそも自動車税と自動車重量税、自動車取得税などとの違いを正確に把握しておらず、自動車にかかる税金すべての総称が「自動車税」であると間違って理解しているということからそうなっているようですが、それでも混同されてしまっているのはきっと「グリーン化特例」というものがあるからではないでしょうか。

グリーン化特例ってなんだ?

エコカー減税 グリーン化特例 自動車税
「グリーン化特例」とは、エコカー減税の趣旨と同じように地球環境問題に対する日本政府の答えとして、クリーンな排気ガスと燃料消費の少ない車に対して自動車税の減税などを行う対策です。
ただ、このグリーン化特例においては排ガス基準や燃費基準に応じて納める税金が少なくなるだけではなく、逆に一定の排ガス基準、燃費基準を満たさないであろう、年式が古い車に対して増税も行います。

当初は2019年3月までの適用だったのですが急遽2021年3月までと期間が延長されました。

減税・増税額は以下のようになります。

グリーン化特例による減税措置

●自動車税:排ガス基準の達成率、燃費基準の達成率に応じて「50%~75%の減税」

※乗用車での例 減税後の自動車税額(新車登録から13年未満)
エンジン排気量1リッター以下:7,375円~14,750円
エンジン排気量1リッターオーバー~1.5リッター以下:8,625円~17,250円
エンジン排気量1.5リッターオーバー~2リッター以下:9,875円~19,750円
エンジン排気量2リッターオーバー~2.5リッター以下:11,250円~22,500円
エンジン排気量2.5リッターオーバー~3リッター以下:12,750円~25,500円
エンジン排気量3リッターオーバー~3.5リッター以下:14,500円~29,000円
エンジン排気量3.5リッターオーバー~4リッター以下:16,625円~33,250円
エンジン排気量4リッターオーバー~4.5リッター以下:19,125円~38,250円
エンジン排気量4.5リッターオーバー~6リッター以下:22,000円~44,000円
エンジン排気量6リッターオーバー~:27,750円~55,500円

●軽自動車税:排ガス基準の達成率、燃費基準の達成率に応じて「25%~75%の減税」

※乗用車での例 減税後の軽自動車税額(新車登録から13年未満)
軽自動車(乗用車)一律:2,700円~8,100円

グリーン化特例による増税措置

●自動車税:新車登録から13年経過した車は「15%の増税」

※乗用車での例 増税後の自動車税額(新車登録から13年オーバー)
エンジン排気量1リッター以下:33,925円
エンジン排気量1リッターオーバー~1.5リッター以下:39,675円
エンジン排気量1.5リッターオーバー~2リッター以下:45,425円
エンジン排気量2リッターオーバー~2.5リッター以下:51,750円
エンジン排気量2.5リッターオーバー~3リッター以下:58,650円
エンジン排気量3リッターオーバー~3.5リッター以下:66,700円
エンジン排気量3.5リッターオーバー~4リッター以下:76,475円
エンジン排気量4リッターオーバー~4.5リッター以下:87,975円
エンジン排気量4.5リッターオーバー~6リッター以下:101,200円
エンジン排気量6リッターオーバー~:127,650円

●軽自動車税:新車登録から13年経過した車は「20%の増税」

※軽自動車(乗用車)一律:2,700円~8,100円

軽自動車(乗用車)一律:12,960円

まとめ

エコカー減税 自動車税 まとめ
似たような時期に似たように趣旨で似たような減税対策を取ったことからごっちゃになりやすい「エコカー減税」と「グリーン化特例」ですが、両者は全く違うものであり、自動車税や自動車税の減税というものも「エコカー減税」とは全く関係なものであることがおわかりいただけたかと思います。

自動車購入の際に

「この車ってエコカー減税でどれだけ自動車税が安くなるの?」

などと質問してしまわないように注意しましょう。

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