自動車保険 引継ぎ 等級
日本には複数の損害保険会社があって、複数の自動車保険と呼ばれる保険商品があります。
基本的にはどの自動車保険においても補償内容はほぼ同じで、細かい付帯サービスや保険料の割引制度などによって違いを作っている程度です。
なので、どの損害保険会社のどの自動車保険に加入してもいいのですが、場合によっては使える割引制度や損害保険会社の企業努力などによって大幅に保険料が安くなっていたり、付帯サービスが良かったり、評判がよかったりといったことで損害保険会社を変えたいと思うこともあります。

自動車保険は、途中解約ができる損害保険であるため、いつ辞めてもいいわけで、そしていつ違う自動車保険に加入してもいいのですが、その際にちょっと気になるのが保険料の金額を決める要素といっていい「ノンフリート等級」のことです。

せっかく今日まで無事故できてノンフリート等級を上げてきたのにこれはどうなってしまうのか?
こんな疑問を持った方もいるかと思います。

ここではそういったことを含めて自動車保険のノンフリート等級の引継ぎについて見ていきたいと思います。

保険 等級 引継ぎ

自動車保険のノンフリート等級は引継ぎされる

自動車保険 ノンフリート等級 引継ぎ
まずは安心してください、これまでコツコツと上げてきたノンフリート等級は例え自動車保険を変更したとしてもある一定の条件下であればそのまま引き継がれることになっています。

実は損害保険会社同士で自動車保険を含めた損害保険に加入している人間の個人データがデータベース化されていて、それが共有されています。

その個人データの内容はざっと挙げると以下のようなものとなります。

・加入している損害保険商品の保険会社名
・加入している損害保険商品の保険種類
・加入している損害保険商品の証券番号
・保険契約者の名前
・保険契約者の住所
・被保険者の名前
・自動車保険に登録されている車両登録番号
・自動車保険に登録されている車台番号
・自動車保険に登録されている用途車種
・保険期間
・解約、解除の有無
・適用ノンフリート等級
・過去の保険事故の件数
・過去の事故年月日

この中にある「ノンフリート等級」というもの、それがどの損害保険会社でも確認することができるのです。
自動車保険を変更しても損害保険会社はそのデータベースを参照して、どの損害保険会社の自動車保険から自分のところの自動車保険に変更してきたのかとか前の自動車保険の時にノンフリート等級は何等級だったのかということを確認することができるようになっています。

それを活用して、自動車保険を変更しても前の損害保険会社で扱っていたノンフリート等級を適用してあげましょうということが損害保険会社同士の中で取り決められているのです。
なので、これまでノンフリート等級が20等級であったものがいきなり6等級に下がるということはありません。

ノンフリート等級とは

ここまで既にいろいろなことを書いてしまいましたが、このことをもっと深く知るにはノンフリート等級の仕組みを知っておく必要があります。
ここではノンフリート等級について見ていきたいと思います。

ノンフリート等級の「ノンフリート」とは、もともとは船舶向けの損害保険であったことの名残からくるもので、複数の船をまとめて加入する損害保険を「フリート(艦隊、船団)損害保険」といっていたことに対して、単体あるいは10隻以下の少数の船団で加入する損害保険を「ノン・フリート損害保険」といっていたことから、その損害保険と似たような仕組みを持つ自動車保険に対しても、個人が1台ないし少数の車のために自動車保険に加入することを「ノンフリート加入」と呼び、そのノンフリート加入したものに対する割引・割増制度の等級のことを「ノンフリート等級」と呼ぶようになったのです。

「ノンフリート等級」とは早い話が、自動車保険に加入した被保険者の成績表のようなもので、これまでの自動車保険としての経歴を踏まえて、成績がいい方はノンフリート等級が上り、成績が悪い方はノンフリート等級が下がっていくという仕組みになっています。

ノンフリート等級が上がるとどうなる、下がるとどうなるのかというと、年間の保険料が変わってくるのです。
ノンフリート等級には以下のような割引・割増が適用されており、基本となる保険料にこの利率をかけたものを保険料としています。

2019年時点の割引・割増利率は以下のようになります。

20等級:63%割引
19等級:55%割引
18等級:54%割引
17等級:53%割引
16等級:52%割引
15等級:51%割引
14等級:50%割引
13等級:49%割引
12等級:48%割引
11等級:47%割引
10等級:45%割引
9等級:43%割引
8等級:40%割引
7等級:30%割引
6等級:19%割引
5等級:13%割引
4等級:2%割引
3等級:12%割増
2等級:28%割増
1等級:64%割増

例えば基礎となる保険料が5万円だったとすると保険料は

20等級:18,500円
19等級:22,500円
18等級:23,000円
17等級:23,500円
16等級:24,000円
15等級:24,500円
14等級:25,000円
13等級:25,500円
12等級:26,000円
11等級:26,500円
10等級:27,500円
9等級:28,500円
8等級:30,000円
7等級:35,000円
6等級:40,500円
5等級:43,500円
4等級:49,000円
3等級:56,000円
2等級:64,000円
1等級:82,000円

といった形なります。
等級によっても違いはありますが、少なくても500円の差、多くて18,000円の差額が1等級違うだけで発生するのです。
自動車保険 ノンフリート等級 ランク
このノンフリート等級は、スタートは誰でも6等級で

・1年間無事故(正確には損害保険会社に賠償金や補償金、保険金の請求を行っていない)であれば1等級のランクアップ

・対人賠償保険、対物賠償保険によって賠償金の支払いや事故による車の損害に対して車両保険による保険金の支払いを受けた場合は3等級ダウン

・交通事故以外の車両保険による保険金の支払いを受けた場合は1等級ダウン

といった形で次の契約時のノンフリート等級が推移していくことになります。
要するに「損害保険会社にお金を払わせたら、次からはもっと多くの保険料を取られる」ということです。

更に損害保険会社がもっと多くの保険料を取る手段はそれだけではありません。
実はもう1つのノンフリート等級があるのです。
それが「事故有係数」と呼ばれるものです。

これは交通事故を起こして…というよりかは損害保険会社に賠償金や補償金、保険金の請求を行った場合に適用されるもので、通常のノンフリート等級と同じように等級により割引・割増制度が用意されています。

20等級:44%割引
19等級:42%割引
18等級:40%割引
17等級:38%割引
16等級:36%割引
15等級:33%割引
14等級:31%割引
13等級:29%割引
12等級:27%割引
11等級:25%割引
10等級:23%割引
9等級:22%割引
8等級:21%割引
7等級:20%割引
6等級:19%割引
5等級:13%割引
4等級:2%割引
3等級:12%割増
2等級:28%割増
1等級:64%割増

見てお分かりのように、無事故の時のものと比べると割引率が低くなっていることに気が付くと思います。
ここでも損害保険会社は賠償金や保険金を払わせた相手に対して更なるペナルティを与えるわけです。

ちなみにこの「事故有係数」は3等級ダウンの場合は3年間、1等級ダウンの場合は1年間だけ適用されてその期間が過ぎればまた通常のノンフリート等級の割引・割増制度に戻ることができます。

ノンフリート等級の引継ぎは7日以内に

自動車保険 ノンフリート等級 引継ぎ
自動車保険を変更するのに対して、いつ辞めても、いつ違う損害保険会社と新たな自動車保険の契約をしてもいいわけですが、ノンフリート等級のことを考えたら前の自動車保険の契約を打ち切った7日以内に新しい自動車保険の契約をしなければなりません。

これは自動車保険における一つの取り決めで、前の自動車保険の時に使っていたノンフリート等級をそのまま継続して使うためには7日以内に新しい自動車保険の契約をしなければならないのです。

例えば3月31日に自動車保険を解約したとしたら4月7日までの次の自動車保険に加入していなければならないということです。
そうしないと今まで20等級でかなり安い保険料で自動車保険に加入できていたものが、リセットされて6等級になってしまいかなり高い保険料を支払わなければいけなくなります。

低等級と事故有係数は長期間引き継がれる

「7日以内に新しい自動車保険に加入しなければノンフリート等級がリセットされて6等級に戻ってしまう」…これを見て聞いて、ニンマリした方もいるかと思います。

要するにこれまで損害保険会社に賠償金や保険金を請求することを何回も行ってきてノンフリート等級が6等級はおろか、保険料の割り増しとなる3等級以下に落ちてしまっている方であれば、この制度をうまく利用してわざと一時的に自動車保険がない状態として8日目以降に新たに自動車保険に加入すれば保険料が安くなる6等級に戻すことができると思っているようです。

確かに前述いたしました取り決めだけで見ればそうなのかもしれませんが損害保険会社も馬鹿ではありません、その辺もきちんと手は打っています。

実は6等級以下のノンフリート等級と事故有係数は、向こう1年間は保持されているのです
要するに先ほどのように、1等級の方が8日後に別の損害保険会社の自動車保険に加入したとしても1等級であることには違いはありませんし、もしまだ事故有係数の期間内であればそれも引き継がれた形での加入となります。
損害保険会社も損をしないように一所懸命のようです。

ノンフリート等級や事故有係数をリセットしたいのであれば、自動車保険の契約が満了あるいは解約をしてから1年を超える13カ月後に加入するしかありません。
出来ればその間は車の運転も避けた方がいいかもしれません。

ノンフリート等級の長期にわたる保持もできる

たとえば、タイミング的に次の車を決める前に今の車を売却してしまい、しばらくの間車の無い期間ができそうであるとか、将来的にまた車を運転することはあるが、今は車が必要でなくなったといったように、自動車保険に継続的に加入したいのに車がないことで解約を強いられるという場合にのみ、10年にわたってノンフリート等級を保持しておける制度があります。
それが中断証明書というものです。

これは最後に解約した自動車保険を販売する損害保険会社に対して請求するもので

・解約日・満期日まで廃車、売却(他人への譲渡)、リース業者への返還を完了している場合
・解約日・満期日まで車検証の有効期限が満了している場合
・解約日・満期日まで抹消登録が完了されている場合

などといった自動車を運転できない環境となるいずれかの条件をクリアし、更にノンフリート等級が7等級以上である場合に適用されるものです。

この書類があれば、10年以内に自動車保険に加入する際に6等級スタートではなく、それまでのノンフリート等級でスタートすることができます。

自動車保険の変更タイミングに注意!

自動車保険 変更 タイミング
自動車保険を変更しても通常はノンフリート等級が引き継がれていくことには間違いはないのですが、変更するタイミングによってはちょっとばかり損をしてしまうことがあります。

例えば、わかりやすい例として12月31日に契約期間が満了する自動車保険に加入しているとします。
現在のノンフリート等級は15等級で、そのまま同じ自動車保険を継続して加入していれば、来年の1月1日をもって16等級へとランクアップします。
ここまでは普通の流れですのでいいでしょう。

しかしこの方は、同程度の保険料でありながら補償内容がもっといい自動車保険を見つけてしまったのです。
そこで8月25日に現在の自動車保険を解約して9月1日付けで新しい自動車保険に加入することにしました。
その際、正常な手続きを踏んで変更をしたのでノンフリート等級はきちんと受け継がれ15等級のままとなったのですが、その数か月後の1月1日になってもノンフリート等級が16等級にはならなかったのです。

自動車保険を変更しないでそのまま加入し続けていたとしたら1月1日には16等級になったのに、自動車保険を他の損害保険会社の商品に変更したことでランクアップすることができなかったのです。

それもそのはずです、自動車保険を変更した場合はノンフリート等級自体は保持されますが、自動車保険の契約期間がリセットされ、今回の場合ですと9月1日が契約のスタートとなり、そこから1年後の来年の9月1日が初めてのノンフリート等級のランクアップの時となるのです。

この例ですと9か月分、ノンフリート等級のランクアップが遅れたことになり、その分だけわずかに高い保険料を支払うことになってしまったわけです。
なので、自動車保険の変更はできれば現在の自動車保険が満了した時に行った方がいいと思います。

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